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【掌編小説】じいちゃんの手
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「釘なんかいらね」
宮大工だった祖父が釘とトンカチを持った僕に言う。
「木目を見て、木と木を組み合わせればいい。木は生きてるからな」
祖父は小さな椅子を作りながら言った。
黙々と作業は進んでいく。
木を組み合わせる際に木槌がトントンと軽快に響くリズムが心地良かった。
鉋で丁寧にやすられた木材で出来上がった小さな椅子からは優しい手触りと香りがした。
「じいちゃんの手と同じ匂いだ」
僕は言った。
そうか、そうか、と祖父は笑った。
祖父はあまり喋らない人だった。
温かくて良い匂いのする手をした人だった。
本当はすごく寂しがり屋な人だった。
もう会えない祖父が作った椅子に、今ではクマのぬいぐるみが座っている。
宮大工だった祖父が釘とトンカチを持った僕に言う。
「木目を見て、木と木を組み合わせればいい。木は生きてるからな」
祖父は小さな椅子を作りながら言った。
黙々と作業は進んでいく。
木を組み合わせる際に木槌がトントンと軽快に響くリズムが心地良かった。
鉋で丁寧にやすられた木材で出来上がった小さな椅子からは優しい手触りと香りがした。
「じいちゃんの手と同じ匂いだ」
僕は言った。
そうか、そうか、と祖父は笑った。
祖父はあまり喋らない人だった。
温かくて良い匂いのする手をした人だった。
本当はすごく寂しがり屋な人だった。
もう会えない祖父が作った椅子に、今ではクマのぬいぐるみが座っている。
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