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【掌編小説】命の色

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「おい。やめとけよ」
俺は友人を気遣って語気を強めた。
彼は心臓の病で余命幾許もない。残りわずかな時間をせめて自宅で過ごしたいと彼は退院してきたのだった。

そんな彼が学生時代から浮気することなく吸い続けてきたセブンスターに手を掛けたため、俺の言葉は少し強くなったのだった。
「よせよせ。今さら変わらねえよ」
彼はそう言って猫でも追い払うように手を振った。
「でも…」
俺は言い淀んだ。

彼が助かることがあるとすれば本当の奇跡だ。
当時80キロ以上あった体重も今では54キロ。

彼がそっとタバコを摘む。
血管が浮かんだ細指は震えていた。
「死にかければ呼吸することすらこんなに美しい。タバコを吸えばそれに色がつくんだぜ。」
彼は弱々しく口から紫煙を吐き出して言った。
「本当だ。綺麗だな」
「なあ、線香なんていいからタバコ供えてくれよ」
彼はタバコを咥えたまま、そう言って笑った。
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