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六話 魂無き獣
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「迷宮核には小迷宮を創造する以外にも、守護者を補助する機能があります」
フォンが臓器に似た赤い宝珠を操作している。一見すると触れているだけだけど。
空間に幾つもの文字が浮かんでいた。僕は魔法技術には疎いので内容はわからない。
現在でも再現不可能な古代技術なんだろう。昔、少しだけ齧った古代文字が使われていた。
「凄いなぁ……僕には全然わかんないよ」
「私も……母様の真似をしているだけで、全てを把握しているわけではないです」
フォンが手を虚空にかざす。すると、迷宮核から光が射出される。
細かな粒子が立体となり、現れたのはブヨブヨの肉体を持った中央に魔核がある生物。
主に第一層で見かける冒険者にとっても馴染み深いブルースライムが三匹。
ただしユグドラシル産とは少し違う、小迷宮の魔物は若干、透明色で色が薄いのだ。
「小迷宮を守る魂無き獣です。魔物と違い意思はなく、守護者の命によって動きます」
「なるほど、道理で小迷宮の魔物は倒すと死骸が残らず消滅した訳だ」
僕たち冒険者にとっての常識。ギルドで最初に学ぶ内容だ。
ユグドラシルに生息する魔物と、小迷宮の魔物は別種のものだと教えられてきた。
色の違いもそうだけど、同じ種の魔物でも動き方がまったく変わり、死骸が残らなくなる。
実はそもそも魔物ですらなかったらしい。守護者によって生み出された創造物だったと。
納得しながら、僕はポケットから鉱石を取り出す。魂無き獣を倒した際にとれる魔石だ。
「あ、それは……!」
「別の小迷宮を攻略した時に手に入れた屑魔石だよ。残念ながら迷宮核はなかったけどね」
魔石は魔法道具の素材や燃料になるので、地上でもかなり需要がある。
といっても等級の低い魔石は手に入れること自体は簡単なので、売値の変動も激しい。
等級は屑、銅、鉄、鋼、銀、金、白と七段階に分かれていて、これは迷宮核も魔石も同じだ。
それなりの値打ちになるまで保管しておくつもりだったけど。僕はフォンに幾つか屑魔石を譲る。
「ありがとうございます。迷宮核は魔力を栄養分としています。機能を利用するには魔力が必要で……」
「魔石は迷宮核の栄養補給には最適解ってことだね?」
「はい。他の守護者を倒すには迷宮核の力を頼る必要があります。魔石は重要です」
フォンはさっそく屑魔石を迷宮核に与える。光を失い魔石はただの石になった。
つまり要約すると、迷宮核は同じ迷宮核を取り込んで成長するけど。
迷宮核の機能を利用するにはそれとは別に、魔石が必要になるわけだ。先は長い。
「栄養補給に魔力が重要なのはわかったけど、他に有効な手段はないかな?」
「あとは……生物の死骸ですね。全ての生物には魔力が宿っています。これは、生きている間は魂に紐付けられ奪う事が難しいのですが。魂を失えば魔力は主を失い、地上を彷徨いますから」
「死骸か……たとえば、ユグドラシルで魔物を狩りまくるとか?」
「魂を失った肉体からは、魔力は徐々に霧散してしまいます。ですが、小迷宮は死骸に残った魔力を留める特殊な領域です。仮に、生物から魔力を集めるのであれば、小迷宮内に誘い込む必要があります」
「……もしかして、小迷宮内で財宝が見つかるのも守護者が冒険者を誘い込むためとか?」
「……だと思います。優れた能力の持ち主には相応の魔力が宿っていますから」
「はぁ、納得だ」
そうして誘い込んだ冒険者を殺して、迷宮核の栄養源にすると。
昔から僕って食料扱いだったんだな。いや、僕だけじゃない全員に言えることだけど。
っと、食べ物の話をしていたら、さっそくお腹が鳴り始めた。僕にそっくりで素直な身体だ。
「まっ、迷宮核の栄養も大事だけど、まずは僕たちのお腹を満たす手段を見つけないと。このままじゃ争奪戦の前に守護者が飢え死にしそうだ」
カルロスから奪った食料は既に底を尽きている。
水は手に入るから多少は延命できるけど、今の状況で他の守護者に襲われたら厳しい。
フォンもそれは理解しているのか、頷いて、迷宮核を指で操作しだす。
先ほど召喚されたブルースライムたちが一斉に動き出した。
「あの子たちに外で食料を集めさせます。スライムの持つ消化機能で毒を中和すればなんとか……」
「あはは……それは、美味しくはなさそうだね?」
「それでもきっと……一人で孤独に飢えを凌ぐよりも、ずっと美味しくいただけると思います」
ここまで一人で生きていたからか、フォンは意外と逞しいことを言っている。
僕はそうだねと頷いて、今後の方針を考えながら、ブルースライムたちの帰りを待ち続けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇ブルースライム
第一層に生息。迷宮異世界を訪れた誰しもが最初に討伐するであろう弱さ。
S~Gまであるランクの中で堂々のGランク。素材として採れる青い液は薬の材料となる。
スライム族は基本的には雑魚として扱われているが、物理耐久には優れている。
とはいっても、中心に見える魔核が弱点なので武器を使って苦戦する事はあまりない。
実は最上位のスライムはSランク級の能力を秘めているとか。
しかし過去に一、二件しか目撃されておらず、神話の域にまで達している。
第一層には他にレッドスライムもいる。こちらはブルースライムが一回り強くなった程度。
フォンが臓器に似た赤い宝珠を操作している。一見すると触れているだけだけど。
空間に幾つもの文字が浮かんでいた。僕は魔法技術には疎いので内容はわからない。
現在でも再現不可能な古代技術なんだろう。昔、少しだけ齧った古代文字が使われていた。
「凄いなぁ……僕には全然わかんないよ」
「私も……母様の真似をしているだけで、全てを把握しているわけではないです」
フォンが手を虚空にかざす。すると、迷宮核から光が射出される。
細かな粒子が立体となり、現れたのはブヨブヨの肉体を持った中央に魔核がある生物。
主に第一層で見かける冒険者にとっても馴染み深いブルースライムが三匹。
ただしユグドラシル産とは少し違う、小迷宮の魔物は若干、透明色で色が薄いのだ。
「小迷宮を守る魂無き獣です。魔物と違い意思はなく、守護者の命によって動きます」
「なるほど、道理で小迷宮の魔物は倒すと死骸が残らず消滅した訳だ」
僕たち冒険者にとっての常識。ギルドで最初に学ぶ内容だ。
ユグドラシルに生息する魔物と、小迷宮の魔物は別種のものだと教えられてきた。
色の違いもそうだけど、同じ種の魔物でも動き方がまったく変わり、死骸が残らなくなる。
実はそもそも魔物ですらなかったらしい。守護者によって生み出された創造物だったと。
納得しながら、僕はポケットから鉱石を取り出す。魂無き獣を倒した際にとれる魔石だ。
「あ、それは……!」
「別の小迷宮を攻略した時に手に入れた屑魔石だよ。残念ながら迷宮核はなかったけどね」
魔石は魔法道具の素材や燃料になるので、地上でもかなり需要がある。
といっても等級の低い魔石は手に入れること自体は簡単なので、売値の変動も激しい。
等級は屑、銅、鉄、鋼、銀、金、白と七段階に分かれていて、これは迷宮核も魔石も同じだ。
それなりの値打ちになるまで保管しておくつもりだったけど。僕はフォンに幾つか屑魔石を譲る。
「ありがとうございます。迷宮核は魔力を栄養分としています。機能を利用するには魔力が必要で……」
「魔石は迷宮核の栄養補給には最適解ってことだね?」
「はい。他の守護者を倒すには迷宮核の力を頼る必要があります。魔石は重要です」
フォンはさっそく屑魔石を迷宮核に与える。光を失い魔石はただの石になった。
つまり要約すると、迷宮核は同じ迷宮核を取り込んで成長するけど。
迷宮核の機能を利用するにはそれとは別に、魔石が必要になるわけだ。先は長い。
「栄養補給に魔力が重要なのはわかったけど、他に有効な手段はないかな?」
「あとは……生物の死骸ですね。全ての生物には魔力が宿っています。これは、生きている間は魂に紐付けられ奪う事が難しいのですが。魂を失えば魔力は主を失い、地上を彷徨いますから」
「死骸か……たとえば、ユグドラシルで魔物を狩りまくるとか?」
「魂を失った肉体からは、魔力は徐々に霧散してしまいます。ですが、小迷宮は死骸に残った魔力を留める特殊な領域です。仮に、生物から魔力を集めるのであれば、小迷宮内に誘い込む必要があります」
「……もしかして、小迷宮内で財宝が見つかるのも守護者が冒険者を誘い込むためとか?」
「……だと思います。優れた能力の持ち主には相応の魔力が宿っていますから」
「はぁ、納得だ」
そうして誘い込んだ冒険者を殺して、迷宮核の栄養源にすると。
昔から僕って食料扱いだったんだな。いや、僕だけじゃない全員に言えることだけど。
っと、食べ物の話をしていたら、さっそくお腹が鳴り始めた。僕にそっくりで素直な身体だ。
「まっ、迷宮核の栄養も大事だけど、まずは僕たちのお腹を満たす手段を見つけないと。このままじゃ争奪戦の前に守護者が飢え死にしそうだ」
カルロスから奪った食料は既に底を尽きている。
水は手に入るから多少は延命できるけど、今の状況で他の守護者に襲われたら厳しい。
フォンもそれは理解しているのか、頷いて、迷宮核を指で操作しだす。
先ほど召喚されたブルースライムたちが一斉に動き出した。
「あの子たちに外で食料を集めさせます。スライムの持つ消化機能で毒を中和すればなんとか……」
「あはは……それは、美味しくはなさそうだね?」
「それでもきっと……一人で孤独に飢えを凌ぐよりも、ずっと美味しくいただけると思います」
ここまで一人で生きていたからか、フォンは意外と逞しいことを言っている。
僕はそうだねと頷いて、今後の方針を考えながら、ブルースライムたちの帰りを待ち続けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇ブルースライム
第一層に生息。迷宮異世界を訪れた誰しもが最初に討伐するであろう弱さ。
S~Gまであるランクの中で堂々のGランク。素材として採れる青い液は薬の材料となる。
スライム族は基本的には雑魚として扱われているが、物理耐久には優れている。
とはいっても、中心に見える魔核が弱点なので武器を使って苦戦する事はあまりない。
実は最上位のスライムはSランク級の能力を秘めているとか。
しかし過去に一、二件しか目撃されておらず、神話の域にまで達している。
第一層には他にレッドスライムもいる。こちらはブルースライムが一回り強くなった程度。
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