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第一章
第6話 階層の支配者
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フロアボス――それは魔塔に五階層毎に生息する大型の魔物だ。
通常種と違い魔導生物であり、倒しても遺骸が残らず魔石に変化する。
人だけでなく魔物にすらも襲い掛かり、ナワバリ内を常に巡回している。
その特性から、塔の守護者の意味合いが強く。
定期的に復活するので賢者の試練と呼ばれていた。
「おや、二十五階のフロアボスであるアクアドラゴンが、こちらに近付いていますね」
ライブラさんからそんな情報がもたらされる。
僕たちは水を求めて泉へ向かっている最中だった。
「困ったな、ここもナワバリなんだ。あともうちょっとお出かけして欲しかったけど」
ライブラさんが加わってからも、何度かアサシンゴブリンの襲撃に遭い。
道中、水を全部飲み干してしまった。三人になって消費量も倍増したので。
別に二十五階じゃないと水を確保できない訳じゃないけど。
この先の階層に確実に水源があるとは限らない。油断は大敵だ。
【情報板】の更新にはズレがあって、枯れていたなんて事態も起こりえる。
「あらら、アサシンゴブリンも一緒に逃げてきましたね。三秒後接触します」
ガサッと、背後の茂みが大きく揺れる。
大量のゴブリンたちが一斉に飛び出してきた。
『グギャギャギャギャ!!』
「あるじさま、急いで逃げましょう!」
「そういう大事な話は先に伝えてよライブラさん!」
「すみません、まだ新しい肉体に慣れてなく。原版との交信に不備が……」
ライブラさんを上着ポケットに入れて、エルと一緒に駆け出す。
森を抜けると、一面に大きな泉が広がっていた。ついでに泉の主も。
翼を畳んで、巨大な龍が先回りして地面に着地したところだった。
「グギャオオオオオオオオオオオオ!」
「うわっ、アクアドラゴンが正面に待ち構えてる!? ここが住処だったんだ!」
先手を取られて、強烈な横薙ぎ尻尾攻撃が。当たれば即死の威力だ。
僕は慌てて姿勢を屈め隙間を抜ける。背後のゴブリンたちが吹き飛んだ。
「ロロアさんは回避能力がお高い。ですが、エルエルが間に合わず飛ばされましたね」
「えっ、エル!? 大丈夫!?」
不死身の器を持つからか、そもそも回避する癖が付いていないみたいで。
僕の視界には、身体を回転させながら木々を薙ぎ倒していくエルの姿が映った。
「め、目が回りますぅ……」
砂煙の中、シャツ一枚のエルが足元をよろけさせ戻ってくる。
アクアドラゴンは追撃の爪を押し付けた。潰され見えなくなる。
「ロロアさん、ここはエルエルに任せて逃げるとしましょう」
「逃げるって、襲われてるエルを置いて……?」
「当然です。ロロアさんは私様たちにとって王です。尊き命を失う訳にはいかないのです」
ライブラさんは冷静な表情をして僕を説得する。
「ご安心を。エルエルは不死身ですから、水龍が飽きたあとにでも合流すればいいのです」
「…………」
言われるがままに逃げて、本当にいいのか。自分自身に問いかける。
身体は不死身でも心はどうだろう。エルは僕をあんなにも慕ってくれている。
気が付いたら、一人取り残された彼女の心情を思うと。
僕は我慢できそうにない。
孤独の辛さを理解している僕が、
それを誰かに与える存在になるなんて。
「……ッ!」
「ちょっと、ロロアさん!? アクアドラゴンに接近してどうするのですか!」
僕は背中を見せずに前へと走り出す。
当たれば即死の尻尾を左右に動いて避ける。
「階層を支配する大物の住処では宝物が見つかるんだ! なら、そこには相応のアイテムが眠っているはずだよ。現状を打破するには、目覚めた【擬人化】に賭けるしかない!」
「何故倒そうとするのですか! 無謀な試みですよ、現状は逃げる方が効率的です!」
「怒った水龍の執念深さをデータに残すのを忘れているよ、奴はきっと諦めない!」
ライブラさんは、これまで蓄えた情報を元に助言してくれているけど。
あくまで生還した人が残した情報だ。死因については精査されていない。
そこには大事な個の感情が抜けている。
アクアドラゴンは縄張りを侵され怒っている。
逃げても匂いを辿られて、この先も追いかけてくるはずだ。
その行動が非効率だとしても、僕もそうだし、龍にだって感情がある。
何事も予想通りには動いてくれない。
そうだ、僕はエルを置いて逃げるだなんてできない!
「これが生物の生の感情……! さっそくデータを更新しなくては!」
ポケットの中でライブラさんが瞳を輝かせていた。
泉の奥には、水が流れる綺麗な鍾乳洞があった。
アクアドラゴンの住処にはアイテムがたくさん転がっていた。
討伐に失敗した冒険者の人骨や、逃げて捕まった荷物持ちの遺骸。
着ている装備がバラバラで、骨の経過年数からしてかなり昔の人だ。
まず目についたのは魔導銃。亡くなった冒険者の傍に落ちていた。
―――――――――――――――――――――――――――――
改造型魔導銃トロン☆2.8
・魔力吸収
・雷属性変換
・強化スロット×4
―――――――――――――――――――――――――――――
「今一番欲しい武器ではありますが、☆2.8では【擬人化】に届きませんね」
「次だよ次!」
☆2でも高い価値はあるけど。今は保留にしておく。
望みはそれ以上の、誰もが欲しがる国宝級の宝物なんだ。
「グギャオオオオオオオオオオオオ!」
遥か後方では激しい炸裂音が続く。水龍の唸り声。
エルがアクアドラゴンを足止めしてくれている証拠だ。
小さな相棒に頼りっきりの僕には、今はこれくらいしかできないけど。
できる事は全力でやり遂げる。それが彼女の信頼に応えるたった一つの方法。
人骨に引っ掛け皮膚が裂けても、爪が割れても。
休まず手を動かし続ける。底の底、小さな窪みの奥。
岩壁の切れ目に不自然な空洞を見つける、滑り込んだ。
「ロロアさんの執念には恐れ入りました。……まさに賭けに勝ちましたね」
「願えば……叶うものだね。見つけたよ! エル、今すぐ助けに向かうから!」
僕はすぐさま目の前の神々しい盾に向かって――――スキルを発動させた。
―――――――――――――――――――――――――――――
アイギスの神盾☆5.1
・魔法障壁
・退魔結界
・自己修復
・帯電
・反射
・???
―――――――――――――――――――――――――――――
通常種と違い魔導生物であり、倒しても遺骸が残らず魔石に変化する。
人だけでなく魔物にすらも襲い掛かり、ナワバリ内を常に巡回している。
その特性から、塔の守護者の意味合いが強く。
定期的に復活するので賢者の試練と呼ばれていた。
「おや、二十五階のフロアボスであるアクアドラゴンが、こちらに近付いていますね」
ライブラさんからそんな情報がもたらされる。
僕たちは水を求めて泉へ向かっている最中だった。
「困ったな、ここもナワバリなんだ。あともうちょっとお出かけして欲しかったけど」
ライブラさんが加わってからも、何度かアサシンゴブリンの襲撃に遭い。
道中、水を全部飲み干してしまった。三人になって消費量も倍増したので。
別に二十五階じゃないと水を確保できない訳じゃないけど。
この先の階層に確実に水源があるとは限らない。油断は大敵だ。
【情報板】の更新にはズレがあって、枯れていたなんて事態も起こりえる。
「あらら、アサシンゴブリンも一緒に逃げてきましたね。三秒後接触します」
ガサッと、背後の茂みが大きく揺れる。
大量のゴブリンたちが一斉に飛び出してきた。
『グギャギャギャギャ!!』
「あるじさま、急いで逃げましょう!」
「そういう大事な話は先に伝えてよライブラさん!」
「すみません、まだ新しい肉体に慣れてなく。原版との交信に不備が……」
ライブラさんを上着ポケットに入れて、エルと一緒に駆け出す。
森を抜けると、一面に大きな泉が広がっていた。ついでに泉の主も。
翼を畳んで、巨大な龍が先回りして地面に着地したところだった。
「グギャオオオオオオオオオオオオ!」
「うわっ、アクアドラゴンが正面に待ち構えてる!? ここが住処だったんだ!」
先手を取られて、強烈な横薙ぎ尻尾攻撃が。当たれば即死の威力だ。
僕は慌てて姿勢を屈め隙間を抜ける。背後のゴブリンたちが吹き飛んだ。
「ロロアさんは回避能力がお高い。ですが、エルエルが間に合わず飛ばされましたね」
「えっ、エル!? 大丈夫!?」
不死身の器を持つからか、そもそも回避する癖が付いていないみたいで。
僕の視界には、身体を回転させながら木々を薙ぎ倒していくエルの姿が映った。
「め、目が回りますぅ……」
砂煙の中、シャツ一枚のエルが足元をよろけさせ戻ってくる。
アクアドラゴンは追撃の爪を押し付けた。潰され見えなくなる。
「ロロアさん、ここはエルエルに任せて逃げるとしましょう」
「逃げるって、襲われてるエルを置いて……?」
「当然です。ロロアさんは私様たちにとって王です。尊き命を失う訳にはいかないのです」
ライブラさんは冷静な表情をして僕を説得する。
「ご安心を。エルエルは不死身ですから、水龍が飽きたあとにでも合流すればいいのです」
「…………」
言われるがままに逃げて、本当にいいのか。自分自身に問いかける。
身体は不死身でも心はどうだろう。エルは僕をあんなにも慕ってくれている。
気が付いたら、一人取り残された彼女の心情を思うと。
僕は我慢できそうにない。
孤独の辛さを理解している僕が、
それを誰かに与える存在になるなんて。
「……ッ!」
「ちょっと、ロロアさん!? アクアドラゴンに接近してどうするのですか!」
僕は背中を見せずに前へと走り出す。
当たれば即死の尻尾を左右に動いて避ける。
「階層を支配する大物の住処では宝物が見つかるんだ! なら、そこには相応のアイテムが眠っているはずだよ。現状を打破するには、目覚めた【擬人化】に賭けるしかない!」
「何故倒そうとするのですか! 無謀な試みですよ、現状は逃げる方が効率的です!」
「怒った水龍の執念深さをデータに残すのを忘れているよ、奴はきっと諦めない!」
ライブラさんは、これまで蓄えた情報を元に助言してくれているけど。
あくまで生還した人が残した情報だ。死因については精査されていない。
そこには大事な個の感情が抜けている。
アクアドラゴンは縄張りを侵され怒っている。
逃げても匂いを辿られて、この先も追いかけてくるはずだ。
その行動が非効率だとしても、僕もそうだし、龍にだって感情がある。
何事も予想通りには動いてくれない。
そうだ、僕はエルを置いて逃げるだなんてできない!
「これが生物の生の感情……! さっそくデータを更新しなくては!」
ポケットの中でライブラさんが瞳を輝かせていた。
泉の奥には、水が流れる綺麗な鍾乳洞があった。
アクアドラゴンの住処にはアイテムがたくさん転がっていた。
討伐に失敗した冒険者の人骨や、逃げて捕まった荷物持ちの遺骸。
着ている装備がバラバラで、骨の経過年数からしてかなり昔の人だ。
まず目についたのは魔導銃。亡くなった冒険者の傍に落ちていた。
―――――――――――――――――――――――――――――
改造型魔導銃トロン☆2.8
・魔力吸収
・雷属性変換
・強化スロット×4
―――――――――――――――――――――――――――――
「今一番欲しい武器ではありますが、☆2.8では【擬人化】に届きませんね」
「次だよ次!」
☆2でも高い価値はあるけど。今は保留にしておく。
望みはそれ以上の、誰もが欲しがる国宝級の宝物なんだ。
「グギャオオオオオオオオオオオオ!」
遥か後方では激しい炸裂音が続く。水龍の唸り声。
エルがアクアドラゴンを足止めしてくれている証拠だ。
小さな相棒に頼りっきりの僕には、今はこれくらいしかできないけど。
できる事は全力でやり遂げる。それが彼女の信頼に応えるたった一つの方法。
人骨に引っ掛け皮膚が裂けても、爪が割れても。
休まず手を動かし続ける。底の底、小さな窪みの奥。
岩壁の切れ目に不自然な空洞を見つける、滑り込んだ。
「ロロアさんの執念には恐れ入りました。……まさに賭けに勝ちましたね」
「願えば……叶うものだね。見つけたよ! エル、今すぐ助けに向かうから!」
僕はすぐさま目の前の神々しい盾に向かって――――スキルを発動させた。
―――――――――――――――――――――――――――――
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・自己修復
・帯電
・反射
・???
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