最弱から最強へ【擬人化】スキルによって、僕は神話級アイテムたちに好かれました。どうやら人間の仲間は必要ないようです

お茶っ葉

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第一章

第7話 アイギスの神盾

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 光と熱に包まれ、人の形をしたシルエットが浮かび上がる。
 僕よりもずっと大きな身体だ。素早く鞄から着替えを取り出す。 
 良かった、近いサイズのシャツがあった。光が途切れる前に投げ渡す。

「……ちょ、ちょっといきなり何なのよ。どういう状況!?」

 少女が頭にシャツを被って困惑している。当然だと思う。

「おやおや、ご立派な丸二つが生えています。今後の参考に挟まれてみたいですね」

 ライブラさん、初対面の相手にその感想はどうだろう。

「目覚めたばかりで悪いけど、今すぐその服に着替えて欲しい。僕は後ろを向いてるから!」

「へっ? 着替えって――――全裸!? きゃああああああああ!」
 
 二度目なので流れ作業のように処理したけど。
 自分の格好に気付いた少女が、叫びながら逃げていく。
 人の姿になった時点で、羞恥心などの常識が埋め込まれるみたい。

 エルの場合は……あの子はそういうのに疎そうだよね。

「――んで、この私を目覚めさせた貴方の望みは、あの水龍をぶちのめして欲しいと?」

 若干、頬を朱く染めて、不機嫌そうに腕を組む金髪の少女。
 ライブラさんが唸るのもわかる。シャツの一部分がはち切れそう。

 あまり見過ぎるのも失礼なので、視線を地面に向けながら僕は頭を下げる。

「お願いします。力を貸してください、この通りです!」

「まずこのどうしようもない憤りを、貴方にぶつけてやりたいところなんだけど?」

「あとで満足するまで殴っていいです。それでエルが助かるのなら、僕は構いません」

「それでは困ります、王を傷物にされては。どうぞ代わりにこの私様を、その大きな膨らみで!」

 アイギスさんは鬱陶しそうに、飛び回るライブラさんに視線を向けた。

「はぁ……道具に慕われているところを見る限り、悪い子ではないのは確かね」

「おや、暴力はいいのですか?」

「貴女に触れると汚れそうだからやめておくわ」

「酷い言われようです。ロロアさん、傷心の私様を慰めてください。うえーん」

 ライブラさんが泣き真似をしながら僕のポケットに収まる。
 くだらない会話で怒りも冷めたのか、アイギスさんが歩きだす。

 僕もその背中を追いかけて、アクアドラゴンの住処をあとにした。

「グオギャアアアアアアアアアアア!」

「効かないわ」

 アクアドラゴンの極太尻尾が、アイギスさんに触れた瞬間弾かれる。
 水滴一つ通していない。アクアドラゴンはもう一度、今度は全体重を乗せる。

「形を変えたところで結果は同じよ」

 押し付けた力を受け流されて、アクアドラゴンが地面を転がっていく。
 その間、アイギスさんは一歩も動いていない。堅牢な盾として役割を演じる。

「すごい、アクアドラゴンが幼子のように遊ばれてるよ!」

「流石は国宝級。ですが、先程から受け流しているだけで、反撃する様子はありませんね」

 言われてみると、圧倒的しているのに防戦一方だ。

「悪いけど、私は主人を守る盾なの。敵の攻撃を受け止めるのは喜んで協力する。けれど、討ち倒す義理まではないわ。そんな野蛮な行為は他の武器の子にお願いして」

 涼しげな表情で、アイギスさんはアクアドラゴンを翻弄し続ける。
 そして横目で僕を見ていた。盾でも、敵を攻撃する技術はあるはず。

 これはきっと僕への試練だ。
 高位の武具は所有者を選ぶらしい。

 幼馴染のエルと違い彼女とは初対面。
 協力をお願いするのはこちらの我儘でしかない。

「アイギス――アイちゃんは一筋縄ではいかなさそうですね。ロロアさん、どうされるんです?」

「そんなの決まってるよ! 僕だってやる時はやるってところを見せないと!」
 
 僕はアイギスさんと一緒に見つけていた、【改造型魔導銃トロン】を構える。
 この子の持ち主の冒険者はあの水龍にやられたんだ。きっと復讐心を抱いてる。
 
 魔導銃は、自身の魔力を属性弾に変換して放つ武器だ。
 素人でも扱える、魔塔だけで見つかる地上にない異世界技術。

 トリガーを押し込む、雷属性の魔法陣が浮かび一筋の光が放たれた。

「グギャオオオオオオオオオオオオ!!」

「ダメだ、僕のちっぽけな魔力じゃ鱗を貫く事もできない……!」

 弾かれた雷弾が虚しくも霧散してしまう。自分の無力さが腹立たしい。

「あるじさま! 足りないのであれば、増やせばいいんです!」

 泥だらけのエルが僕の隣に立っていた。
 そして安心させるよう僕の手を握ってくれる。

「龍の放つ息吹には膨大な魔力が宿ってます! そして相手は”水”龍です!」

「そうか、エルは液体であれば何でも蓄えられるんだったよね!?」

「あるじさまのお帰りを信じて、たっくさん蓄えてきました!」

 エルが水を手のひらから大量に生み出していく。高密度の魔の塊だ。
 全身に弾け飛びそうなほどの圧が宿る。痛みから視界が赤く染まっていく。
 魔力を銃へと流し込む。銃口の先に、宙に連続した魔法陣が浮かび上がった。

「まだだ……まだ足りない。もっと、もっと力を……!」

「ロロアさん、龍の弱点は逆燐です。顎下の付近をよーく狙ってください。隣で可愛くて忠実な貴方のライブラ様が応援していますよ!」

 苦しい、死ぬほど痛い。こんな痛みは生まれて初めて。
 脳裏に後悔が宿る。胃液が口元まで登ってくる。それでもだ。

 エルの献身。ライブラさんの激励。そしてアイギスさんの期待。
 すべてに応えてこそ、僕は僕としての新たな価値を創り出すんだ。

「これで……終わりだっ!」

 最後の魔力水を取り込んで、僕は叫んだ。

 霞む両目を見開いて相手の首元を捉える、トリガーを引く瞬間。
 タイミングを見計らったかのように、アイギスさんが腕を振り上げた。
 シールドバッシュだ、アクアドラゴンは身体を浮かび上がらせて隙を晒す。

「グギャアアアアオオオオ――――――」

 極太の雷光が龍の首を貫いた。逆燐を超えてすべてを焼き尽くす。
 断末魔も途中で途絶えて、討伐の証である大きな魔石が転がり落ちた。

「まっ、及第点ね」

 水飛沫の合間で美しい女神像のように髪を揺らし。
 アイギスさんは一瞬、微笑んでいた――ように見えた。
 
「はぁはぁ……やったの? 倒せた……?」

 煙を放つ魔導銃を下ろし、僕の身体も脱力して尻持ちをついた。

「流石は私様たちの王です。普段は頼りなさげですが、やる時はやりますね。御見それしました!」

「あるじさまが勝ちました! わーいわーい!」
 
 ぱちぱちとポケットの中で拍手するライブラさん。
 身体を汚しながら、無傷で何度も跳ね喜びを表すエル。

 フロアボスなんて、冒険者が数十人集まってやっと倒せる相手なのに。

 たったの四人で討伐してしまった。
 ……違う、もう一人手を貸してくれた子がいた。

「君も僕に応えてくれてありがとう。ご主人の仇は取ったよ」

 功労者であるトロンを撫でる。単属性魔導銃は古い型だ。
 長い間放置されてたのか汚れ塗れ。あとで綺麗にしてあげよう。

「たったの一戦を終えただけで、大袈裟な子たちね。大した相手でもなかったでしょうに」

 アイギスさんはやれやれといった様子で戻ってくる。
 達成感に支配されて、僕はしばらく笑みが止まらなかった。
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