最弱から最強へ【擬人化】スキルによって、僕は神話級アイテムたちに好かれました。どうやら人間の仲間は必要ないようです

お茶っ葉

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第一章

第12話 魔導銃トロン

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「おい、嘘吐きロロア……違うな、今は臆病ロロアか。隠れても無駄だぞ!」

 逃げ込んだ森の中で、三人は僕を探してうろついている。
 
「魔導銃は連射が効かないのは知っている。こちらは数で上回ってるんだよ!」

「次に外した時がお前の最期だよ。見苦しい断末魔を聞かせてちょうだい」

 木々に隠れてこっそりと様子を窺う。
 まだ居場所はバレていない。先手は取れる。

 魔導銃に弾を込めるのにまた魔力を充填しないといけない。
 かなり苦しい作業だけど。緊張感を忘れずに声を我慢して耐える。

 早くエルたちと合流したい。でも相手もそれを許すほど馬鹿じゃない。
 またお世話になるよとトロンを撫でる。僕の命を救ってくれる頼れる子だ。
 
「どうにかして一人は倒したいな、調子乗りのシーザーが狙い目かな」

「……ますた」

「エルからもう少し魔力水を分けてもらうべきだった。残るは一発分だけか」

 空になった革袋を戻して、僕は大きく息を吐く。
 痛みは徐々に引いて、魔力補充も慣れてきたかも。

「……おいし、はぐはぐ」

「……?」

 女の子の声がするぞ。右手の重みがなくなっている。

「……はぐ?」

 僕の隣に見知らぬ少女が座っていた。目をぱちぱちしている。
 時間が止まる。どちら様? どうして君は僕の指を舐めてるの。 

「……マスター」

「もしかして君は――トロン?」

「ようやく捕まえたぞガキが! 観念して地獄に落ちな!」

 頭上に影が落ちる。よそ見している間に三人に囲まれていた。

「……じぃ」

「って、お前は誰だよ、どこから湧いてきた!?」

 クルトンたちもトロンの存在に気付いた。驚いて固まっている。
 トロンは感情の見えない瞳で親指を立て、人差し指を相手に向ける。

「……バン」

「ぎゃああああああああ!」

 悲鳴が上がった。ローズの肩に穴が開いた、遅れて血飛沫が舞う。
 傷口から雷属性の魔力が入り込み、血を熱で固めて肉を焦がしていく。

「しまったっ、コイツも【擬人化】か!? シーザー、早くロロアを殺せ!」

「バン、バン」

「ぐあっ!?」

 シーザーの両足に穴が、最小限の攻撃で戦闘不能に追いやっていく。

「次」

 義務的に指を向けると最後にクルトンの腰を射抜いていた。

「ガハッ……ロロア……め……!」

 能力喰らいの三人は倒れ伏した。
 トロンは動かなくなった頭に指を突き付ける。
 彼女は敵を倒すのが使命なんだ。命を奪うのに躊躇いはない。

「ありがとう、もういいよ」

「了解」

 僕の声を聞き入れて、トロンが腕を下ろした。
 ぼんやりと立ち続ける彼女は、服を最初から着ている。
 光沢のある肌にピッタリの質感で、色合いが青と白で綺麗だ。

 魔導銃は異世界産だし、モチーフも異世界種族なんだろうか。

「あるじさま、大丈夫ですか!? エルはここにいますよ!」

「ロロアさん、可愛くて可憐なライブラ様を置いて行くだなんて人類の損失ですよ!」

「変態妖精は普通に探せないの? ロロア、返事をしなさい! 怪我はしていないわよね!?」

 僕を探しに来てくれた三人に、大きく手を振って知らせる。

「ここだよ! 僕も無事だし、嬉しい知らせがあるんだ!」

 早くみんなにトロンを紹介したい。きっと驚くだろうなぁ。
 トロンは僕の指をずっと見つめていた。美味しかったのかな。

「あるじさま!」

 エルが全力で胸に飛び込んでくる。ギュッと抱きしめる。

「ああ、ロロアさんご無事でしたか。私様は別に心配はしていませんでしたけどね。こういうとアイちゃんに色々と突っ込まれそうなので補足しますと、捜索途中に何度か魔力反応を感じまして、それがロロアさんの武器であるトロちゃんのものでしたから。私様は派手にやっているなと感心していまして――」

 ライブラさんも肩に乗って耳元で早口で話していた。
 少しだけ声が震えているのは、気付かない振りをしておこう。
  
「はいはい、変態妖精が一番取り乱していたからね」

「アイちゃん!? 貴女も途中で泣きそうになっていたではありませんか!」

「は? 気のせいよ。擬人化に失敗して目でも腐っているんじゃない?」

「この古臭い胸でかツンデレ娘め! 属性過多なんですよ! 私様は神話級ですよ!?」

「原版の方がでしょ。端末は☆1の癖に、それで威張られても悔しくはないわよ」

「むきぃー!」

 アイギスさんが飛び回るライブラさんを追い払うと、僕を両腕で包み込んでくれた。

「よかった……盾が間に合わず怪我を負わせていたら、私は自分自身を許せなくなっていた」

「……その、勝手に飛び出してごめんなさい。みんなに心配をかけてしまって」 

「貴方は私に認めてもらいたくて頑張ったのでしょう? 謝ってはダメよ。これは私の責任」

 そう言って、アイギスさんは隣に立つトロンに視線を向ける。
 それから血を流して呻いている三人組に対しても。腕の力が強まる。

「……ぐぅ、おなか、すいた」

「ロロアはまた変な子に好かれたようね」

 ◇

「それで、このゴミの処遇はどうするの? 処分場所には困らないとは思うけど」

 アイギスさんが縛られた三人を動けないよう、
 全身を痛めつけながら尋ねてくる。

 身体を撃ち抜かれ、更に殴られ続けた彼らは、
 完全に意識を失っていた。もう半殺し状態だ。
 
「……」

 処分と聞いて、トロンが黙って人差し指を三人へと向ける。

「善良な庶民としては、まずは地上へ連れ帰って然るべき機関へ突き出すかな? きっとそこでも極刑に処されると思うけど。調べたら他に余罪があるかもしれないし」

「ですが魔塔内部で起こった犯罪を立証するのは難しいですよ。ロロアさんに信用があれば話は別ですが。結局のところ、トロちゃんの活躍によりこちらの被害はゼロで終わりましたよね?」

「……うん、僕が襲われたから反撃して倒しましたと答えても、誰も信じてくれなさそう」

「普段からどれだけ馬鹿にされているのよ貴方は……!」

「無駄に知名度だけはあるんだよね。臆病者とか卑怯者とか詐欺師とか、悪い方で」

 これじゃあ訴えても、逆に僕が毒を使って闇討ちしたと疑われかねない。
 
「……ぐぅ」

 話が長引き、トロンがぼんやりと口を開けてお腹を擦っていた。
 
「お腹が空いたの?」

「……こくこく」

 トロンは一つ結びの黄髪を揺らして、勢いよく頷く。
 鞄から干し肉を取って差し出すと、僕の指ごと咥えてしまう。

「……うまうま」

 とても幸せそうなので、そのままにしておこう。

「それじゃこうしよう。罰としてクルトンたちの物資の九割をいただいていく。一割だけ残しても、ここから三十階まで辿り着くのは不可能でもないから」

 罪の立証が難しいなら、こちらで相応の罰を与えるしかない。

「命を狙われたというのに見逃すつもり? 甘すぎない? お人好しが過ぎるわ」

「エルは、あるじさまらしいと思います」

「そうかな? ここは人の通らない森の中だし、結構厳しい私刑だと思うけど」

 あくまで物資面での問題がないだけで、
 負傷したまま三十階を目指すのは難しい。

 ここから先は魔物の攻勢も更に厳しくなるんだ。
 余程の幸運に恵まれないと死者が出るはず。

 逆に戻ろうとすると今度は物資が足りなくなる。
 そういう風になるよう計算して没収する。

 どちらを選択するにしろ。
 生き死にを巡って酷い仲間割れが起こる。
 下手に希望を見せられた分だけ、絶望も大きく育ってしまうんだ。

 ここでトロンが一瞬で終わらせるよりも。
 魔物に食べられる恐怖の方が何倍も恐ろしい。

 我ながら、意地の悪い考えを思い付いてしまった。

「一瞬で楽にはさせず。こちらの手を汚さずなぶり殺しにする訳ね」

「ロロアさんも案外獰猛な牙をお持ちのようで。それでこそ私様たちの王です」

「何だかそう聞くと、僕が大悪党みたいだ」

「エルはどんなあるじさまでも大好きですよー!」

「……もぐもぐ、おいし、おいし」
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