最弱から最強へ【擬人化】スキルによって、僕は神話級アイテムたちに好かれました。どうやら人間の仲間は必要ないようです

お茶っ葉

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第二章

第18話 成長の兆し

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「冒険者の失踪事件ですか?」

「はい、現在【星渡りの塔】上層五十階で複数のパーティの行方がわかっていないのです。ここ数日立て続けに報告を受けまして。ギルドでは能力喰らいスキルイーターの仕業ではないかと、優秀な方に調査依頼をお願いし、注意喚起を行っているところなんです」

 ギルドの受付嬢、エルフお姉さん――ヘラさんが教えてくれる。
 
 僕はその報告を聞いて、すぐにクルトンたちの顔が浮かんだ。
 三人が生還したという情報は聞かないし、五十階は未到達階だ。

 他に仲間がいたか、それとも別のグループなのかな。
 疑問があるとすれば、五十階層で犯行に及ぶ理由が薄い事。

 スキルを奪うだけなら低階層でもできるはず。
 もちろん上層の方が人も少なくて犯行が発覚し辛いけど、
 ここまで大規模だと結局足がつくし、現にギルドが調査に乗り出した。

 能力喰らいといえば、僕も前回狙われたばかり。他人事じゃない。
 ユニークスキルは奪えないという、前提すら知らない無法者だっている。

 狙われた人の中に、僕と同じユニークスキル持ちでもいたのかな。

「大変そうですね、僕はこの頃魔塔から離れていたので知りませんでした」
 
「やっぱり不倒無血の盾使いさんには無用の忠告でしたか? 十二歳の若さながらロロアさんは優秀な方ですものね。私もすっかりファンになってしまいました。中立の立場なので、表立っては言えませんが」

「過大評価です……。あとヘラさん、本当にそれで通すのですか? 恥ずかしいんですけど……」

「不倒無血の盾使いがお気に召さないのでしたら――暴虐王の方に戻しますが」

「とっても素敵ですね! 是非、盾使いの方でよろしくお願いします!!」

 僕の返事を聞いて、ヘラさんはにっこり微笑んで書類を持っていった。

 ――例の決闘から二週間も経つと、ある程度僕の噂も落ち着きだした。
 その間は大人しくしていたし、街中で暴虐王はあまり聞こえなくなった。
 
 ライブラさんは不満そうだったけど。僕としては朗報で。
 ただ実際に戦った冒険者からの畏怖の視線は今も消えていない。

 こちらから話しかけようとすると、無言で逃げられてしまうんだ。
 虐めはなくなったけど、今度は無視されるようになって。ちょっと悲しい。

 その件でヘラさんに相談してみたら、
 新しい二つ名を広めてしまえばいいんですよと。
 不倒無血の盾使いが誕生した。アイギスが聞いたら喜びそう。

 ヘラさんはこの魔塔都市に最近転属したばかりで、
 悪い噂が多かった僕に偏見を持たない、数少ない理解者。

 勝手にファン一号を自称しているけど、本音を言えば嬉しい。

 他人に認めてもらうのも、期待されるのも、久しくなかった経験だから。
 言葉に出すとライブラさんが嫉妬しちゃうから。心の中でヘラさんに感謝する。

 上層の能力喰らいか、何だかちょっと気になる。
 そろそろ僕も、魔塔探索に再挑戦してみようかな。 

 ◇

「あの受付嬢の方は、私様たちのロロアさんに色目を使っていませんでしたか?」

「気のせいだよ。僕はまだまだ子供だし、弟を可愛がる目線だと思うよ」

 ギルドを出ると、さっそくライブラさんが上着ポケットで騒ぎ出す。
 
「ロロアさんはお人好しですし、優しく接すれば簡単に騙されそうで、私様は心配なのです!」

「流石にそれはない――――あるかも」

 常に他人の優しさに飢えていた。騙されるのも経験済み。

「考えてみたら僕は悪者から見て絶好の獲物なんだ……!」

「ようやく自覚されましたか。まぁ今はアイちゃんという護衛もいますし、トロちゃんも傍で寝ていますから。余程の強敵でもなければ返り討ちでしょうけど。その危機感の無さは心配です」

 ベルトに差したトロンを撫でながら、視線を前の通り向ける。

 アイギスが難しい顔をして、店先の鏡を使って髪を弄ってる。
 こちらに気付くと、頬を緩ませ走り寄ってくる。いつもの定位置に。

「お疲れさま、ロロア。やけに話が長かったけど、あのヘラって人に色目でも使われていたの?」

「アイギスも同じことを言ってる……」

「げっ、思考が変態妖精と被った。最悪」
「何を嫌がる事があるのです! アイちゃん!」

 二人がまた仲良く喧嘩を始める。
 そういえば、エルの姿を見かけない。 

 宿を出てから、何処かに遊びに出掛けたのは覚えている。
 地上でお友達を作ったみたいで、いつもの公園の砂場かな。
 
 僕はもう一つの【情報板ライブラボード】を取り出す。
 既に持っていたものは【擬人化】したので、予備として貰った。

―――――――――――――――――――――――――――――
 エリクシルの空瓶☆2.6【擬人化】
・不死身の器
・液体蓄積
・???
・???
・???
・???
―――――――――――――――――――――――――――――

 そこには今朝手に入れたばかりの、保存してある情報が。

 エルの☆が2.4から2.6に成長している。
 微量な変化に見えて、実はかなりすごい事だ。 

 普通のアイテムが、価値を高める方法は限られている。
 それこそ英雄クラスの人が長年使って、やっと伝説になるくらいで。

「ロロアさんの知名度の向上により、一緒に相棒のエルエルも成長したのですね」

 ライブラさんも興味深そうに情報板を覗き込んでいる。

「うーん。確かに僕も魔塔都市ラティアでは有名人の仲間入りをしているけど。一都市だけの名声だよ? こんなにすぐあがるものなのかな」

「アイテムの価値はあくまで異界の神が採点しますので、その辺りは神のみぞ知る、でしょうか。単純に好みの問題かもしれませんが」

「そうだね」

 今回の一件で☆が上昇したのはエルだけだった。
 僕と一緒に行動している時点で、否応に目立つけど。

 でも僕たちの中では、アイギスが一番注目を受けている。
 元の数値が高ければ上昇し辛いのもあるだろうけど。
 同じくらいのトロンもあがらなかったし。
 
 ただ有名になるだけではなく、
 他にも複雑な条件があるとみて間違いないかな。

「ロロアさん、今日はご機嫌ですね? 気持ち歩く速さがあがっています。データに出ていますよ!」

「難しい話はともかく、エルの価値があがってくれるのは嬉しいんだ」

 中身を失って、空瓶として価値を落とされた彼女が、
 地道に評価を上げる。それってエル自身が認められている証拠だ。  

 僕も今でこそ有名だけど、それは【擬人化】あっての評価で。
 スキルではなく、僕自身を見てくれる人が果たしてどれだけいるか。

 彼女が彼女として成長している姿を見ると、
 僕も僕として成長できるんじゃないかと、そう思うんだ。

「僕はエルに自分の願望を乗せているんだよ。……迷惑なのかな?」

「いいえ、アイテム冥利に尽きますよ。主人の夢を叶える一端を担えるなんて、私様はエルエルがとても羨ましい!」

 ライブラさんは本心からそう言ってくれる。
 
 人の目線で見ると身勝手だけど、
 アイテム目線だとそう捉えてくれるんだ。
 
「アイちゃん、先程から黙って……もしかしてエルエルに嫉妬ですか?」

「可愛い妹分の成長くらい、素直に祝ってあげるわよ! もちろん最初に神話級になるのは私だけど……」

 アイギスさんは複雑そうに答えていた。
 彼女の目的は神話級を目指す事で明確だから。
 自分より先に成長するエルに焦っているのかも。

 僕は彼女と一緒に高みを目指すと約束した。
 みんなの価値を高める方法は、魔塔攻略が一番の近道なのかもしれない。
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