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第二章
第19話 魔塔都市の姫君
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「【星渡りの塔】に再挑戦ですか。ロロアさんはまた自ら苦行に挑まれるおつもりで、お好きですねぇ」
僕たちは街の公園にエルを迎えに来ていた。
その道中で、僕は考えていた事を二人にも話す。
知名度を上げるのに【星渡りの塔】の制覇が手っ取り早い。
上位ランクの冒険者は、最低でも二つの魔塔を攻略している。
七魔塔の内【星渡りの塔】は難易度は二番目に低い。
最上層が六十階であり、他は三桁階層なので時間も掛からない。
「今回は信頼できるみんなとしか組まないし、大丈夫だと思うけど」
というか怖がられているので、組む相手が他にいない。
「もちろんロロアがそれを望むなら、私は構わない。一緒に神話級を目指すと約束したものね」
アイギスが快い返事をしてくれる。
「私様も実際にこの目で最上層のデータを集めてみたい欲求があります。断る理由はありませんが……知名度を上げるのでしたら、暴虐王のままでよかったのでは?」
「変にあがってもらっても困るよ! せめて納得できる形にして欲しいかな!」
不倒無血の盾使いも微妙なんだけどね。
他に問題があるとすれば、僕の経験不足。
荷物持ち以外で魔塔に挑戦するのは二度目で。
準備からすべて自分でこなすのは初めてなんだ。
あとは上層の能力喰らいの存在も気になっている。
どうしてだか、僕はそこに妙に惹きつけられるんだ。
犯罪者と関わりたい気持ちなんてないのに、自分でも矛盾してる。
「あるじさま! 何のお話ですか?」
考え事をしていると、エルが隣に立っていた。
お友達の子たちと別れを告げて、すっかり順応している。
彼女にもさっきと同じ説明をする。
「エルもついていきます! また冒険の始まりですね!」
ちょっと遊びに行く感覚で、楽しそうにそう語ってくれる。
危険な仕事なんだけど、不死身だからこその認識なのかな。
「トロンにもあとで話をするとして、魔塔探索の心得をヘラさんに教えてもらおう」
「むむ」
「またその名前……!」
今回は同行者ではなく挑戦者として、必要な情報を集めよう。
ヘラさんと聞いて、ライブラさんとアイギスが一瞬反応したけど。
いい人なんだよ? どうも二人は人間そのものに苦手意識があるみたい。
全員集合して、もう一度ギルドの方を目指していると。
目の前で一人の女性が馬車から降り立った。
見た目の服装からして高貴な身分の人だ。
桃色の髪に白銀の軽鎧、意志の強そうな蒼瞳。
人間の知り合いがいない僕は、気にせず傍を通り過ぎる。
「――お待ちください!」
呼び止められた。すかさずアイギスが前に立つ。
「ロロアに何の用?」
アイギスの冷たい視線にも怯まず、女性は僕に丁重に頭を下げた。
「私は王都コ―レリアから参りました、ガーベラ王国第三王女レイリアと申します。突然のご無礼をお許しください。どうか、ロロア様とお話をさせていただけないでしょうか?」
◇
王都コ―レリアを有するガーベラ王国は、
魔塔都市ラティア並びに【星渡りの塔】を管理する一大国家だ。
七賢人の一人の血を受け継ぐガーベラ王家は、
代々高名なユニークスキル持ちを輩出しているらしい。
僕も以前から噂で耳にしていた。
この街ではお姫さまが冒険者として活動していると。
【王女の激励】というユニークスキルを持ち、効果は周囲の味方強化。
その美貌と能力から、高位パーティの誘いを毎日のように受けているとか。
ただ彼女は固定のパーティを組まないらしい。
同じユニーク持ちという共通点があっても、
関わり合う機会なんて、一生ないだろうと思っていた。
とりあえず酒場に案内したけど、緊張してきた。
おもてなしとか必要かな。周りの人も恐れから近付いて来ない。
「王家の血を引くといっても、継承権は二十を超える兄弟の下から数えた方が早く。私は比較的自由な身分ですので、そう緊張なされなくても大丈夫ですよ」
レイリアさんは僕に人好きのする笑顔を見せてくれる。
そう言われましても、庶民からすれば王族には変わりないし。
雰囲気に気圧されて背筋が伸びる。男の僕と話して怒られないよね。
(私様の出番ですか? 王として威厳ある返しを……!)
ライブラさんがこっそり語りかけてくる。
ここで偽僕を使われると不敬罪で首が飛んじゃうよ。
「お姫さま? ですか。初めてお会いしましたけど、綺麗です!」
エルが隣に座って興味深そうにレイリアさんを見つめる。
「……うまうま」
酒場で食事ができるからと、トロンも人の姿に。
お姫さま関係なく自分の世界に入っている。
「それで、用件は何? 私たちも忙しいのだけど」
まともに会話ができるアイギスは終始不機嫌だ。
うん、僕の悪評はいつの日か王国まで届きそうだよ。
「ロロア様、もしかしてこちらの方々は例の【擬人化】の?」
「あ、僕のスキルを知っていらっしゃったんですね」
「もちろん、この街では有名な話ですし。今回私もその噂を頼りに足を運ばせていただきました」
本来ユニークスキル持ちは自分の力を隠すもので。
嫉妬や、犯罪に巻き込まれないよう、自衛するんだけど。
僕の場合は、何処からか情報が漏れたらしく。
いつの間にか【擬人化】が広まっていた経緯がある。
レイリアさんの方は【王女の激励】の特性上、
スキルを使った時点で周囲の人に勘付かれるので隠す意味がない。
彼女は王族だし、それで不利益になる事は少ないだろうけど。
ああそうか。何となく、話は読めてきたかも。
「僕を頼るという事はつまり、【擬人化】絡みですよね?」
「はい。ご明察の通りで、どうかロロア様のお力で私の望みを叶えていただけないでしょうか?」
畏まった態度で、レイリアさんが机に布に包まれた武器を置いた。
目の前に差し出されたのは、一振りの宝剣だった。
僕たちは街の公園にエルを迎えに来ていた。
その道中で、僕は考えていた事を二人にも話す。
知名度を上げるのに【星渡りの塔】の制覇が手っ取り早い。
上位ランクの冒険者は、最低でも二つの魔塔を攻略している。
七魔塔の内【星渡りの塔】は難易度は二番目に低い。
最上層が六十階であり、他は三桁階層なので時間も掛からない。
「今回は信頼できるみんなとしか組まないし、大丈夫だと思うけど」
というか怖がられているので、組む相手が他にいない。
「もちろんロロアがそれを望むなら、私は構わない。一緒に神話級を目指すと約束したものね」
アイギスが快い返事をしてくれる。
「私様も実際にこの目で最上層のデータを集めてみたい欲求があります。断る理由はありませんが……知名度を上げるのでしたら、暴虐王のままでよかったのでは?」
「変にあがってもらっても困るよ! せめて納得できる形にして欲しいかな!」
不倒無血の盾使いも微妙なんだけどね。
他に問題があるとすれば、僕の経験不足。
荷物持ち以外で魔塔に挑戦するのは二度目で。
準備からすべて自分でこなすのは初めてなんだ。
あとは上層の能力喰らいの存在も気になっている。
どうしてだか、僕はそこに妙に惹きつけられるんだ。
犯罪者と関わりたい気持ちなんてないのに、自分でも矛盾してる。
「あるじさま! 何のお話ですか?」
考え事をしていると、エルが隣に立っていた。
お友達の子たちと別れを告げて、すっかり順応している。
彼女にもさっきと同じ説明をする。
「エルもついていきます! また冒険の始まりですね!」
ちょっと遊びに行く感覚で、楽しそうにそう語ってくれる。
危険な仕事なんだけど、不死身だからこその認識なのかな。
「トロンにもあとで話をするとして、魔塔探索の心得をヘラさんに教えてもらおう」
「むむ」
「またその名前……!」
今回は同行者ではなく挑戦者として、必要な情報を集めよう。
ヘラさんと聞いて、ライブラさんとアイギスが一瞬反応したけど。
いい人なんだよ? どうも二人は人間そのものに苦手意識があるみたい。
全員集合して、もう一度ギルドの方を目指していると。
目の前で一人の女性が馬車から降り立った。
見た目の服装からして高貴な身分の人だ。
桃色の髪に白銀の軽鎧、意志の強そうな蒼瞳。
人間の知り合いがいない僕は、気にせず傍を通り過ぎる。
「――お待ちください!」
呼び止められた。すかさずアイギスが前に立つ。
「ロロアに何の用?」
アイギスの冷たい視線にも怯まず、女性は僕に丁重に頭を下げた。
「私は王都コ―レリアから参りました、ガーベラ王国第三王女レイリアと申します。突然のご無礼をお許しください。どうか、ロロア様とお話をさせていただけないでしょうか?」
◇
王都コ―レリアを有するガーベラ王国は、
魔塔都市ラティア並びに【星渡りの塔】を管理する一大国家だ。
七賢人の一人の血を受け継ぐガーベラ王家は、
代々高名なユニークスキル持ちを輩出しているらしい。
僕も以前から噂で耳にしていた。
この街ではお姫さまが冒険者として活動していると。
【王女の激励】というユニークスキルを持ち、効果は周囲の味方強化。
その美貌と能力から、高位パーティの誘いを毎日のように受けているとか。
ただ彼女は固定のパーティを組まないらしい。
同じユニーク持ちという共通点があっても、
関わり合う機会なんて、一生ないだろうと思っていた。
とりあえず酒場に案内したけど、緊張してきた。
おもてなしとか必要かな。周りの人も恐れから近付いて来ない。
「王家の血を引くといっても、継承権は二十を超える兄弟の下から数えた方が早く。私は比較的自由な身分ですので、そう緊張なされなくても大丈夫ですよ」
レイリアさんは僕に人好きのする笑顔を見せてくれる。
そう言われましても、庶民からすれば王族には変わりないし。
雰囲気に気圧されて背筋が伸びる。男の僕と話して怒られないよね。
(私様の出番ですか? 王として威厳ある返しを……!)
ライブラさんがこっそり語りかけてくる。
ここで偽僕を使われると不敬罪で首が飛んじゃうよ。
「お姫さま? ですか。初めてお会いしましたけど、綺麗です!」
エルが隣に座って興味深そうにレイリアさんを見つめる。
「……うまうま」
酒場で食事ができるからと、トロンも人の姿に。
お姫さま関係なく自分の世界に入っている。
「それで、用件は何? 私たちも忙しいのだけど」
まともに会話ができるアイギスは終始不機嫌だ。
うん、僕の悪評はいつの日か王国まで届きそうだよ。
「ロロア様、もしかしてこちらの方々は例の【擬人化】の?」
「あ、僕のスキルを知っていらっしゃったんですね」
「もちろん、この街では有名な話ですし。今回私もその噂を頼りに足を運ばせていただきました」
本来ユニークスキル持ちは自分の力を隠すもので。
嫉妬や、犯罪に巻き込まれないよう、自衛するんだけど。
僕の場合は、何処からか情報が漏れたらしく。
いつの間にか【擬人化】が広まっていた経緯がある。
レイリアさんの方は【王女の激励】の特性上、
スキルを使った時点で周囲の人に勘付かれるので隠す意味がない。
彼女は王族だし、それで不利益になる事は少ないだろうけど。
ああそうか。何となく、話は読めてきたかも。
「僕を頼るという事はつまり、【擬人化】絡みですよね?」
「はい。ご明察の通りで、どうかロロア様のお力で私の望みを叶えていただけないでしょうか?」
畏まった態度で、レイリアさんが机に布に包まれた武器を置いた。
目の前に差し出されたのは、一振りの宝剣だった。
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