最弱から最強へ【擬人化】スキルによって、僕は神話級アイテムたちに好かれました。どうやら人間の仲間は必要ないようです

お茶っ葉

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第二章

第25話 キングオーガ

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「少年、君から見て右方向から一体が近付いてきたぞ!」

 二本の角を生やした、人型の魔物が山道を疾走する。
 邪魔な枯れ木を肉体で押し倒し、太い腕で大岩を砕いた。 
 
 獲物を見つけ興奮状態から、血管が浮かび全身が赤く染まる。

 オーガは殺戮を好む危険な魔物だ。
 獰猛な肉食獣で、人も食料の一部として見ている。
 
 痩せている僕なんて食べても美味しくはないけど。
 空腹なのか、涎を落としながら汗を飛ばし湯気を放つ。
 
「上手くこちらに誘いこむのよ! お姉さんが応援しているわ!」

 僕の後方、山の高所に陣取った冒険者たちが迎撃の準備を整えた。
 動きの速いオーガに、闇雲に攻撃を放っても簡単に避けられる。

 僕は囮として敵を有効射程内まで導く。そして同時に足止めも行う。

「こっちだよ!」

 石を投げつけて、僕を常に視界に収めさせる。

「ヴオオオオオオオオオオ!」

 激昂状態のオーガは僕の背中を追ってきた。
 あくまで誘導なので、距離はあまり離せない。
 拳が振り下ろされる。大地が割れて揺れが伝わる。

「おおっと」

 身体が宙に投げ出された。瞬間、ふわりと柔らかい空気に包まれる。
 事前に魔法士のお姉さんにかけてもらった浮遊魔法フロートだ。衝撃を和らげてくれる。

「そこっ」
 
 僕は低空から雷光弾を一発撃ち込む。
 無理な姿勢からでも命中補正で押し通した。
 腕に当たりオーガは上半身が仰け反った、更に二発追加。

「ヴヴヴ……ヴアアアアアアッ!!」

 両足を傷付けて動きを止める。僕は合図を送った。

「今です!」

「一瞬冷や冷やしたが、やるじゃねぇか! 総攻撃だ!」

 僕は退避する。高所から冒険者たちの一斉攻撃が降り注いだ。
 硬質な皮膚を持つオーガも、一方的な物量に押し潰されていく。

 嵐のあとに残されたのは亡骸一つ。
 動かない事を確かめ、手を振って応える。

「無事に討伐できたみたいです!」

「よーし、この調子でキングの前に残りのオーガ二体も片付けてしまおう!」

「やるじゃない! もう、可愛くて強いって反則ね……」

「油断は禁物だぞ、ロロア少年。キングは別格だからな」

 もたらされる賞賛に心を昂らせながらも。
 冷静に身体の不調がないか確認する。うん、いける。

 オーガは動きは早いけど、動作が大雑把だ。筋肉頼りというか。
 身体が小さい僕に対して大振りに腕を振るうので、隙を突きやすい。 

「次のオーガ用に魔力充填をしておいて……」

 エルの中に入った魔力回復薬マナポーションに口をつける。

(いつも思うのですが……瓶に直接口をつけるのは、エルエルとの口付けと同義ですよね?)

「ぶぅー!」

 ライブラさんの呟きを聞いて吹き出してしまった。
 あぁ貴重なケルファさんの魔力回復薬マナポーションが、ごめんなさい。

(まぁそれが瓶本来の用途なので、特にエルエルは意識していないでしょうけど)

「僕が意識しちゃうんだよ! ライブラさんの意地悪!」

 エルの僕に向けてくれる穢れのない笑顔とか、柔らかそうな唇とか。
 頭を振って脳内イメージを追い払う。今度から顔が見れなくなっちゃうよ。

「ヴヴヴヴ……ヴヴヴオオオオ!」

 そうこうしている間に、二体目のオーガが近付いてきていた。

(とまぁ、ほどよく緊張感をほぐしたところで、次の獲物を狩りましょうか!)

「……アイギスにあとで怒られても知らないからね?」

 二体目のオーガも同じ要領で誘い込んで討伐する。
 残るは通常のオーガとフロアボスのキングオーガのみ。

『グヴオラアアアアアアアアアアアアアアアアア』

 今までとは別格の、王者の叫びが異世界内を轟かせた。
 安全圏に待機している冒険者たちですら、身震いしている。

「キングと遭遇する前に、最後のオーガを倒しておきたかったけど……」

 何事も上手くはいかない。仲間の死を嗅ぎ付けたんだ。

「来たぞ、キングだっ! 残りのオーガも従えてやがる! 二体相手に同じ手は通用しないぞ!」

「流石に同時討伐は無謀よ!? ロロアくん、早くこちらに逃げていらっしゃい……!」

「ここまでよくやってくれた。我々の事はもういい、君は自分の命を優先するんだぞ!」

 たくさんの人の心配の声を掛けられる。こんな経験は初めてだ。
 嬉しくて涙が出そう。だからこそ、足は頑なにその場を維持し続ける。

 僕がここで逃げたら、逆にみんなが危ない。逃げちゃダメだ。
 そのまま前方の巨体に向かって、【アイギスの神盾】を構えた。

「いかんっ! 避けるのだ!!」

「ヴヴヴオラアアアアアアアアアアア!」

 キングオーガの豪腕が迫る。時間が遅く感じる。
 盾から伝わる経験を、彼女の動きを思い出す。

 そして僕は――――技を放った。

「とりゃあっ!!」

 盾で傾斜を作り、腕の力を横に流して押し付ける。
 その際、焦げ付くような臭いが伴った、帯電スキルだ。
 バランスを崩したキングオーガの体毛に火がついていた。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」

「あれは、シールドバッシュか!? なんて無茶な真似を……!」

「雷属性の盾だなんて、どこまでも痺れさせてくれるわね!」

「チャンスだ、体勢を立て直させる前に、我々も援護に加わるのだ!!」

 後方でキングオーガに対して攻撃が放たれている。
 僕の前には最後のオーガが、盾越しにトロンを構える。

「ヴヴオオオオ!」

「邪魔はさせないよ!」

(ロロアさん、あのオーガは右腕の動きが鈍いです。怪我を負っているのでしょう。狙うなら左側面からですよ!)

 キングを守ろうと動くオーガを雷光弾で威嚇し。
 左側から接近、右腕の振りを躱して懐に飛び込んだ。

 銃口を腹にくっつけて、トリガーを押し込む。
 超至近距離なら硬い皮膚だろうと衝撃は防げないはず。
 一発、二発、同ヵ所に撃ち込み、致命的なダメージを与える。

 身体の小さい僕だからできる戦法。お前の動きは覚えたよ。

「ヴヴ……ヴオ……」

「これで、おしまいっ!」

 最後に盾で顔面を叩きつける。オーガは倒れて動かなくなった。

「うわあああああああああああ!?」

「な、なに!?」

 高所の方で悲鳴があがった。冒険者たちのものだ。
 振り返ると、キングオーガが指弾で小石を飛ばしていた。

 ただの石ですら、人体を貫通する威力がそこにあった。
 足を負傷して動けなくなった人もいる。もう彼らは逃げられない。

「キングオーガ、僕が相手だ!」

「グヴオオオオ……」 

 体毛を燃やした僕への、強い憎しみが眼光に宿っている。
 これだけの強敵だ、長期戦にしてはいけない。一撃で倒す。

「ロロア少年、いけない。奴には生半可な技は通用しない!」

「わかっていますよ、ケルファさん。だから全力をぶつけるんです!」

 残りの魔力回復薬を飲み干して、トロンに全魔力を込める。

「君はわかっていない! 奴は我々十二人の全力をも防いでみせたのだぞ!?」

(今さらそんな情報が何だというのです。私様の王はやると言ったら決めてくださる方です!)

「さぁ、僕が憎いだろう。やれるものなら僕を殺してみせろ!」

「グヴオラアアアアアアアアアアア!!」

 キングオーガが憎しみを前面に出して、自ら接近戦を選んだ。
 狙い通り、厄介な指弾を封じる事ができた。次にアイギス、頼むよ。

 盾を構えてキングオーガの一撃を、今度は正面から受け止める。
 衝撃が骨まで響いた。脳が震える。それでも盾を握り受け続ける。

「グヴオオオオオオオオオオオオ!!」

 何度も何度も、拳を打ち付けてくる怪物の王。
 目の前の障壁を叩き潰す事にしか、思考が回っていない。

 アイギスは流石は国宝級だ。傷一つ付かず防いでくれる。
 だけど、僕の握力が先に限界を迎える。盾を弾かれてしまった。

「くっ……!」

「グヴヴヴオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 尻持ちをついて倒れた僕を見下ろし、
 キングオーガは勝利の雄叫びを上げていた。

(今ですよ、ロロアさんっ!)

「最後に油断したね――――トドメだよ」

 僕は【改造型魔導銃トロン】の銃口を、上へと向ける。放つ。
 一筋の光が、キングの口内から頭までを貫通して、飛び出していた。

「ヴヴオ……グオッ……」

 キングオーガが、口から血泡を吹いて倒れた。
 脳を雷で焼かれて、その命を失ったんだ。
 
「硬い皮膚だとしても……身体の内部までは守り切れないよね」

(流石はロロアさん。ちょっと心臓に悪かったですが、最後はきっちり決めてくださいましたね!)

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 遅れる事、冒険者たちの歓喜の叫びが届いてきた。
 みんな僕を称えて手を振ってくれている。僕も笑顔で返した。

「なんて少年だ……あのフロアボスを一人で打ち倒すだなんて。こんな偉業を他に聞いた事があるか?」

「はぁ……私すっかりあの子のファンになっちゃった」

「我々は、未来の英雄を目の当たりにしているのかもしれんな」
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