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第二章
第24話 魔導銃強化
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「おい、そこのお前。一人で何をしているんだ! こっちにこい!」
「はい?」
【星渡りの塔】十五階。フロアボスが出現する階層だ。
慎重な行動を求められるので、ここで停滞する冒険者も多い。
今も十人以上の、複数パーティが岩場の手前で待機していた。
多分この先にフロアボスが潜んでいるんだ。通り道を塞いでいる。
「まさかここまで仲間を連れずに来た訳ではあるまい。何があった、パーティが壊滅したのか?」
当然だけど、その中で一人で行動している僕は酷く目立つ。
分厚い鎧を着込んだ男の人が、僕を不審そうに見下ろしてきた。
(どうしますか? 正直に答えても面倒そうですけど)
本当に面倒臭そうにライブラさんが小さくぼやいている。
「壊滅ではありませんけど。ちょっと急ぎで、あとで合流する手筈になっています」
大体三十階層までは一人で登り切るつもりだった。
【擬人化】状態ではスキルを常時強化してくれるから。
盾に戻ったアイギスの退魔結界は少し弱体化しているけど。
ここまでお膳立てされているのだから。
せめて前回の記録くらいは乗り越えてみたい。
「んなっ、単独行動かよ!? 命知らずにもほどがあるだろ! 二十階攻略を目指すにしても最低限四人は必要なんだぞ!」
「歳若い少年よ。自分の力を過信してはならんぞ。すぐに引き返すんだ」
「そうよ、この先の山道にハイオーガが三体も潜んでいるの。十五階層のフロアボス、キングオーガの手下なの。私たちも足止めされていて、そんな怪物を相手じゃ命が幾つあっても足りないわ!」
当たり前の反応が返ってきた。僕も普通ならそう思う。
どうしよう。上を目指すだけなら走り抜けたら終わりだけど。
その場合、この人たちに迷惑を掛けてしまう。
きっとフロアボスも人の臭いに反応して動き出すだろうし。
僕を心配してくれる優しい人たちに、酷い仕打ちはしたくない。
何より僕の悪評を知らない冒険者と話すのは久しぶりだ。
魔塔探索は一回の挑戦で平気で数ヶ月単位の時間を掛けるので。
地上世界の事情に疎くなる。当然、暴虐王なんて聞いた事もないはず。
(ロロアさん、ここは暴虐王として、そのお力を愚民どもに知らしめるチャンスですよ! あわよくば知名度が上がって、レアリティ上昇に繋がるかもしれません!)
ライブラさん、僕はそちらより不倒無血の方がいいです。
僕は大きく深呼吸をする。大丈夫、既に何度も超えた死線だ。
今さら低層階のフロアボスがなんだ。
僕の目指す先はいずれ神話へと至る英雄なんだ。
「一つ提案があるのですが。僕が囮になるので、全員で協力してフロアボスを倒しませんか?」
『は……? はあああああああああああああああああ!?』
◇
「……本当にいいのか? 悪いが劣勢となったらお前を置いて逃げるからな!?」
「はい、その辺りの判断はみなさんにお任せします!」
「可愛い顔をしてクレイジーな少年ね。生きて帰ってきたらお姉さんが抱きしめてあげる」
(むきぃー! 私様の王にまた色目を使う輩がっ! アイちゃん、出番――って盾のままでした!)
総勢十三人の冒険者が集い、これからキングオーガ討伐に挑む。
最初は猛反発を受けたけど。先に進めないと困るのはみんな同じ。
最終的に全責任を負うと言い切って、強引に折れてもらった。
流石に年上の肝が据わった冒険者たちだ、そうと決まれば動きは早い。
「いいか、ロロア少年。オーガはその筋力に物を言わせた一撃も強力だが、何よりも注意すべきは頑丈な皮膚だ。生半可な攻撃では弾かれ至近距離のカウンターを受けてしまう。キングオーガにいたっては指弾で人体を砕く。決して策もなく近付いてはならんぞ!」
他の冒険者をまとめ上げるのは、Dランク魔法士のケルファさん。
白髭が特徴的なおじさんだ。魔法士は歳を取るほど技に磨きがかかる。
長年の経験知識から、オーガの特性や注意点を細かく教えてくれる。
(ロロアさんには、私様のデータがあるんですけどねぇ……)
ポケットの中で拗ねてるライブラさんが、ちょっと可愛かった。
「君は何か有効な魔法攻撃を持っていないのかね?」
「愛用の魔導銃があります!」
僕はケルファさんに【改造型魔導銃トロン】を見せる。
「随分と古い型だ。昨今主流の複合属性ではない単属性、しかも雷とは珍しい。整備不良もなく、大切に扱っているようだな。コイツも喜んでいる事だろう」
「命を預ける武器ですから大切にするのは当然です。魔導銃は古い方が出力が高くて僕は好きですね。安定性は犠牲になりますけど」
古い魔導銃は装着できる強化パーツが限られてしまう弱点がある。
それらも異世界技術なので、パーツ自体がそもそも高価で手に入りにくい。
初期状態のままで高い威力を出せる単属性は、実はお財布に優しかったり。
「何度も改造された形跡があるな。効率を度外視し、ひたすら一撃に特化した銃だ。ふむ……この燃費の悪さでは、少年も魔力充填に困るだろう」
ケルファさんが細長い瓶を五つ取り出す。緑の液体が揺れている。
「自家製の魔力回復薬だ。要所で使ってくれたまえ。一本につき三発は放てるだろう」
「貴重な消耗品をありがとうございます!」
水龍の魔力水に比べると威力も効率もかなり落ちるけど。
魔力充填に苦しまなくて済むのは嬉しい。エルに蓄えてもらおう。
「それからこれも、コイツの強化に使えるはずだ――――」
追加で渡されたのは小さな銃宝珠が二つ。
魔導銃の表面にある窪みと同じ大きさ。
「まさか補助パーツですか?」
「ああ、実は私も昔は単属性魔導銃を愛用していたんだ。まだ魔法士として未熟だった頃に、補助武器としてな。まさかこんな所で同好の士と出会えるとは思わなんだ。若いのにセンスがいい。コレは今の私には不要な品だ、囮役を買って出てくれる君の勇気への対価として贈らせてくれ」
銃宝珠は主に魔導銃の機能を上昇させる補助パーツだ。
お礼を伝えて、さっそく【改造型魔導銃トロン】にセットする。
―――――――――――――――――――――――――――――
改造型魔導銃トロン☆2.8
・魔力吸収
・雷属性変換
・命中補正ランクD
・魔力伝導効率ランクE
・強化スロット×2
―――――――――――――――――――――――――――――
命中補正は、銃口の向きに合わせて弾に誘導が掛かる。
移動しながらの射撃も当てやすくなって、かなり重宝する。
魔力伝導効率は、装填した魔力が減衰し辛くなる。
魔導銃は弾を保持している間にも魔力が徐々に抜けてしまうので。
装填した魔力量と近い弾を発射できるようになると単純に威力があがる。
ランクはパーツの質を表していて、高い方が性能がいい。
強化パーツ及び補助パーツは低ランクでもかなり貴重品で。
Eランクですら、金貨数枚分の価値がある品物。最高の贈り物だ。
「では、ロロア少年。幸運を祈る。必ず生きて帰ってくるのだぞ」
「もちろんです!」
よし、さっそく強くなったトロンに大活躍してもらおう!
「はい?」
【星渡りの塔】十五階。フロアボスが出現する階層だ。
慎重な行動を求められるので、ここで停滞する冒険者も多い。
今も十人以上の、複数パーティが岩場の手前で待機していた。
多分この先にフロアボスが潜んでいるんだ。通り道を塞いでいる。
「まさかここまで仲間を連れずに来た訳ではあるまい。何があった、パーティが壊滅したのか?」
当然だけど、その中で一人で行動している僕は酷く目立つ。
分厚い鎧を着込んだ男の人が、僕を不審そうに見下ろしてきた。
(どうしますか? 正直に答えても面倒そうですけど)
本当に面倒臭そうにライブラさんが小さくぼやいている。
「壊滅ではありませんけど。ちょっと急ぎで、あとで合流する手筈になっています」
大体三十階層までは一人で登り切るつもりだった。
【擬人化】状態ではスキルを常時強化してくれるから。
盾に戻ったアイギスの退魔結界は少し弱体化しているけど。
ここまでお膳立てされているのだから。
せめて前回の記録くらいは乗り越えてみたい。
「んなっ、単独行動かよ!? 命知らずにもほどがあるだろ! 二十階攻略を目指すにしても最低限四人は必要なんだぞ!」
「歳若い少年よ。自分の力を過信してはならんぞ。すぐに引き返すんだ」
「そうよ、この先の山道にハイオーガが三体も潜んでいるの。十五階層のフロアボス、キングオーガの手下なの。私たちも足止めされていて、そんな怪物を相手じゃ命が幾つあっても足りないわ!」
当たり前の反応が返ってきた。僕も普通ならそう思う。
どうしよう。上を目指すだけなら走り抜けたら終わりだけど。
その場合、この人たちに迷惑を掛けてしまう。
きっとフロアボスも人の臭いに反応して動き出すだろうし。
僕を心配してくれる優しい人たちに、酷い仕打ちはしたくない。
何より僕の悪評を知らない冒険者と話すのは久しぶりだ。
魔塔探索は一回の挑戦で平気で数ヶ月単位の時間を掛けるので。
地上世界の事情に疎くなる。当然、暴虐王なんて聞いた事もないはず。
(ロロアさん、ここは暴虐王として、そのお力を愚民どもに知らしめるチャンスですよ! あわよくば知名度が上がって、レアリティ上昇に繋がるかもしれません!)
ライブラさん、僕はそちらより不倒無血の方がいいです。
僕は大きく深呼吸をする。大丈夫、既に何度も超えた死線だ。
今さら低層階のフロアボスがなんだ。
僕の目指す先はいずれ神話へと至る英雄なんだ。
「一つ提案があるのですが。僕が囮になるので、全員で協力してフロアボスを倒しませんか?」
『は……? はあああああああああああああああああ!?』
◇
「……本当にいいのか? 悪いが劣勢となったらお前を置いて逃げるからな!?」
「はい、その辺りの判断はみなさんにお任せします!」
「可愛い顔をしてクレイジーな少年ね。生きて帰ってきたらお姉さんが抱きしめてあげる」
(むきぃー! 私様の王にまた色目を使う輩がっ! アイちゃん、出番――って盾のままでした!)
総勢十三人の冒険者が集い、これからキングオーガ討伐に挑む。
最初は猛反発を受けたけど。先に進めないと困るのはみんな同じ。
最終的に全責任を負うと言い切って、強引に折れてもらった。
流石に年上の肝が据わった冒険者たちだ、そうと決まれば動きは早い。
「いいか、ロロア少年。オーガはその筋力に物を言わせた一撃も強力だが、何よりも注意すべきは頑丈な皮膚だ。生半可な攻撃では弾かれ至近距離のカウンターを受けてしまう。キングオーガにいたっては指弾で人体を砕く。決して策もなく近付いてはならんぞ!」
他の冒険者をまとめ上げるのは、Dランク魔法士のケルファさん。
白髭が特徴的なおじさんだ。魔法士は歳を取るほど技に磨きがかかる。
長年の経験知識から、オーガの特性や注意点を細かく教えてくれる。
(ロロアさんには、私様のデータがあるんですけどねぇ……)
ポケットの中で拗ねてるライブラさんが、ちょっと可愛かった。
「君は何か有効な魔法攻撃を持っていないのかね?」
「愛用の魔導銃があります!」
僕はケルファさんに【改造型魔導銃トロン】を見せる。
「随分と古い型だ。昨今主流の複合属性ではない単属性、しかも雷とは珍しい。整備不良もなく、大切に扱っているようだな。コイツも喜んでいる事だろう」
「命を預ける武器ですから大切にするのは当然です。魔導銃は古い方が出力が高くて僕は好きですね。安定性は犠牲になりますけど」
古い魔導銃は装着できる強化パーツが限られてしまう弱点がある。
それらも異世界技術なので、パーツ自体がそもそも高価で手に入りにくい。
初期状態のままで高い威力を出せる単属性は、実はお財布に優しかったり。
「何度も改造された形跡があるな。効率を度外視し、ひたすら一撃に特化した銃だ。ふむ……この燃費の悪さでは、少年も魔力充填に困るだろう」
ケルファさんが細長い瓶を五つ取り出す。緑の液体が揺れている。
「自家製の魔力回復薬だ。要所で使ってくれたまえ。一本につき三発は放てるだろう」
「貴重な消耗品をありがとうございます!」
水龍の魔力水に比べると威力も効率もかなり落ちるけど。
魔力充填に苦しまなくて済むのは嬉しい。エルに蓄えてもらおう。
「それからこれも、コイツの強化に使えるはずだ――――」
追加で渡されたのは小さな銃宝珠が二つ。
魔導銃の表面にある窪みと同じ大きさ。
「まさか補助パーツですか?」
「ああ、実は私も昔は単属性魔導銃を愛用していたんだ。まだ魔法士として未熟だった頃に、補助武器としてな。まさかこんな所で同好の士と出会えるとは思わなんだ。若いのにセンスがいい。コレは今の私には不要な品だ、囮役を買って出てくれる君の勇気への対価として贈らせてくれ」
銃宝珠は主に魔導銃の機能を上昇させる補助パーツだ。
お礼を伝えて、さっそく【改造型魔導銃トロン】にセットする。
―――――――――――――――――――――――――――――
改造型魔導銃トロン☆2.8
・魔力吸収
・雷属性変換
・命中補正ランクD
・魔力伝導効率ランクE
・強化スロット×2
―――――――――――――――――――――――――――――
命中補正は、銃口の向きに合わせて弾に誘導が掛かる。
移動しながらの射撃も当てやすくなって、かなり重宝する。
魔力伝導効率は、装填した魔力が減衰し辛くなる。
魔導銃は弾を保持している間にも魔力が徐々に抜けてしまうので。
装填した魔力量と近い弾を発射できるようになると単純に威力があがる。
ランクはパーツの質を表していて、高い方が性能がいい。
強化パーツ及び補助パーツは低ランクでもかなり貴重品で。
Eランクですら、金貨数枚分の価値がある品物。最高の贈り物だ。
「では、ロロア少年。幸運を祈る。必ず生きて帰ってくるのだぞ」
「もちろんです!」
よし、さっそく強くなったトロンに大活躍してもらおう!
応援ありがとうございます!
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