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第三章
第61話 神化の秘薬
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静謐な地底湖に痩せた頬が特徴的な人物が現れる。
意識のない冒険者たちを確認しながら、荷物から【神技書】を取り出す。
「愚かな冒険者どもめ。自分の能力が奪われているとも知らずに。もっと争い合え。そして可能性を我が主へと献上するのだ」
クロストは邪悪な笑みを浮かべて冒険者の額に手のひらを乗せる。
青白い光が記憶を消し去っていく。そしてスキルを【神技書】に封じ込める。
新たに得られた可能性を眺めて悦に浸る。そんなクロストの背後に影が掛かる。
「そんな隙を見せていいのか能力喰らいさんよ。愚かなのはどちらの方かな?」
「おや、ルガンじゃないか。能力喰らい? 一体何の話だ?」
この期に及んで言い訳をするクロスト。
落ちている【神技書】を背中に隠すがもう遅い。
「そこに証拠がたくさん落ちているじゃないか。寝ている連中を起こして確かめてみるか?」
まだ全員の記憶は消し切っていない。
【神技書】には奪われたスキルが刻まれている。
持ち主に確かめさせれば犯行が明らかになるだろう。
「……ルガン、俺たち同じEランクで何度もパーティを組んだ仲だろう? 見逃してくれないか。魔が差したんだ、反省している。もうしないと約束するから」
クロストが【神技書】を地面に置いて、ルガンさんに近付いていく。
「その言葉が本心であれば、考えてやってもよかったが……」
僕はすかさず天井からクロストの肩を撃ち抜く。
「ぐあっ」
悲鳴をあげてクロストは肩を押さえる。隠していた腕が青白く光っていた。
「卑怯な犯罪者を問い詰めるんだ。俺が一人だと思ったのか?」
「ぐうぅ……薄汚い冒険者どもが、群れなきゃ何もできない弱者がああ……!」
怒りを露わにしてクロストは叫ぶ。
「それがお前の本性か。残念だよ。せめて俺が楽にしてやる」
ルガンさんが大剣を構える。僕も頭を狙って――気付いた。
「ッ! ルガンさん、急いで奴の腕を止めてください! コイツは【理の破壊者】です!!」
照準器を通して奴の手元に隠していた注射器が見えた。
腕を目掛けて雷光弾を放つも、クロストは身体を盾にした。
「貴様!」
「ぐふっ……一歩遅かったなぁ!?」
ルガンさんも同時に斬り付けるが、素手で受け止められていた。
既に注射器は首筋に深く刺し込まれている。肉体が膨張していた。
「……油断したな、ルガン。俺は既に神に等しい力を得ているのだ!!」
クロストの背中に腕が新たに二本生えている。
額に第三の目が開き、膨大な魔力が地下を震わす。
「馬鹿な、人間を辞めるつもりか!?」
「捨ててやったのさ。可能性を縛る余計な器をなぁ!!」
ライブラさんに教わった神話級の秘宝【神化の秘薬】。
異界神の細胞を取り込み、人の器を凌駕した怪物に変化する薬だ。
「ルガンさん油断しないでください。奴は器の限界を超え奪ったスキルすべてを使えるんです!」
僕は天井から【創造の樹杖】で滑り台を生み出し。
雷光弾を放ちながら地表に降り立つ。弾は魔法障壁で防がれた。
「無駄だ無駄あああああ!!」
クロストは巨大化した肉体を獣の如く俊敏に動かし、
地底湖から突き出した岩の上に立つ。全身が棘の鎧と化している。
「お前らの可能性すべてヲ喰らってやル!!」
カナンの時よりも更に理性が残されているように感じる。
人によって適性があるのか。それとも薬に改良が施されたのか。
「ロロア、怪物と化した奴を倒す術はあるのか!?」
「奴が投与した薬は一時的に神の力を宿す神話級の秘宝です。莫大な神力に人の身体では受け止め切れず、時間と共に肉体が自壊するはずです!」
「その制限時間は?」
「およそ数日ですかね……」
薬が改良されているとなると、更に制限時間が伸びている可能性も。
エルたちの力を借りたいけど、短期睡眠に入ってまだ二日目だ。
最低でも三日目にならないと人の肉体に戻れない。あと一日足りない。
「数日だと!? その前に俺たちが壊されるぞ!」
「ぐわはははは、漲る、漲るぞおおおおおおおおお」
クロストの周囲の魔力渦が実体化し放たれる。
各属性魔法弾をアイギスの魔法障壁で受け止める。
「クロスト! お前は自分が何をしているのかわかっているのか!? 自殺行為だぞ!!」
「何の話だぁ? 命乞いをしても無駄だぞ!!」
死に至る薬を投与したというのに、危機感のない返事だった。
「きっと末端の人間には、薬の副作用を知らされていないんです」
「【理の破壊者】は人間をなんだと思っているんだ!」
哀れにも思うけど、それ以前にクロストも犯罪者だ。
彼自身も人間を食い物とする怪物。同情の余地はない。
「ひっ……な、何だあの怪物は……!」
「あれも試験の一部なのか!? 聞いていないぞ!」
隣で目を覚ました復帰者パーティが騒ぎ出す。
「お前ら手を貸せ。奴は【理の破壊者】だ、地上に出したら王都にも被害が及ぶぞ!」
「ば、馬鹿。【理の破壊者】を捕らえるなんて騎士団の仕事だろ! 俺たちには関係ない!」
次々と逃げ出していく。残ったのは僕とルガンさんだけだ。
「ちっ、臆病者め。冒険者としての誇りはないのか!」
「勝てないと理解して逃げた奴らは利口じゃないか。愚かなのは残ったお前たちの方だ!!」
クロストが飛び掛かってくる。超質量が地面を砕き。
天井が揺れて鍾乳石が落ちてくる。僕はアイギスを振るう。
「死ねぇぇぇ!!」
「させるかっ!」
クロストの両腕が輝く【剛力】と【腕刃】だ。
まともに受けられない、力を抜き盾の表面を掠らせる。
激しい接触音と帯電効果で火花が散る。足元を潜り抜けた。
肉壁が薄い足の腱を短剣で斬り付けるも、【自然治癒】で瞬時に治される。
コクエンの消えない闇の炎すらも治癒速度に間に合っていない。
ルガンさんも合間に大剣を叩きつけるも筋肉に弾かれていた。
「くそっ、大量のスキルを使い放題とは、厄介すぎるぞ!!」
いったん距離を取って今度はトロンを構える。
エルの魔力水を口に含み、全力の魔力を充填する。
「最大出力を喰らえ!」
片膝を付いて、移動し続けるクロストの上半身を狙う。
全身の骨に響く反動。全力雷光弾が腕を二本吹き飛ばした。
「ぐあああああああああああっ」
血飛沫と肉を飛ばしてクロストが呻き声をあげる。
同時に僕にも腕の痺れが襲う。次弾の充填をしないと。
もう一度魔力水を取り出すも、指が上手く動かない。
「させるかあああああ!!」
クロストもトロンの脅威を理解したのか。
一気にこちらに距離を詰めてくる。横に転がり回避。
「クリエイト!」
反撃を受ける前に【創造の樹杖】の二重の木砦で囲う。
地表を滑り魔力水を飲み込む。うつ伏せになって照準器を覗き込む。
「ぐおおおおおおおおおおおお」
木砦を破壊した瞬間に、もう一度全力雷光弾を。
今度は腰の一部を破壊した。治癒も間に合っていない。
「貴様ああああ、よくもやってくれたなあああああああ!」
「くっ……まだ死なないのか。しぶとい……!」
僕の未熟な身体では、トロンの衝撃を受け止め切れない。
三発目を用意しないと、だけど、全身が悲鳴をあげている。
「ロロア、大丈夫か! すまない、どうやら俺は足手まといのようだ。お前が頼りだ」
駆け付けたルガンさんに背負われる。
容赦なくクロストの魔法弾がはじけ飛ぶ。
「ぐうっ……」
飛び散る破片を喰らって、ルガンさんの口元から血が流れた。
「大丈夫ですか!」
「気に留めるなロロア、俺が足になる。お前はそのまま魔導銃を使え!!」
「……っ、わかりました!」
ルガンさんに担がれながらもう一度照準器を覗きこむ。
「無駄な足掻きだああああああああ!」
煙を放ちながら修復していくクロストの肉体。
揺れる視界を抑えて、削れた部分に三発目を撃ち込む。
「ぐぎぎぎぎぎぎ……」
ついに心臓部が露呈した。あと一撃だ。
「ぐおおおおっ」
襲い来る反動にルガンさんも苦しむ。骨の折れる音が続いた。
耐え切れず倒れる寸前に、彼は僕を遠くに投げつける。
「ルガンさん!」
「俺はいい、四発目を放て!!」
「まずは貴様からだルガン! 地獄に落ちろ!!」
追い付いたクロストがトドメを刺そうと拳を振り上げる。
僕は急いで魔力水を飲み心臓部を狙う。間に合うか、どうか。
「死ねええええええ!!」
「シューシュウー」
肉が弾ける音と金属音が同時に響いた。
白い魔導ゴーレムが、フロストの腕を止めていた。
意識のない冒険者たちを確認しながら、荷物から【神技書】を取り出す。
「愚かな冒険者どもめ。自分の能力が奪われているとも知らずに。もっと争い合え。そして可能性を我が主へと献上するのだ」
クロストは邪悪な笑みを浮かべて冒険者の額に手のひらを乗せる。
青白い光が記憶を消し去っていく。そしてスキルを【神技書】に封じ込める。
新たに得られた可能性を眺めて悦に浸る。そんなクロストの背後に影が掛かる。
「そんな隙を見せていいのか能力喰らいさんよ。愚かなのはどちらの方かな?」
「おや、ルガンじゃないか。能力喰らい? 一体何の話だ?」
この期に及んで言い訳をするクロスト。
落ちている【神技書】を背中に隠すがもう遅い。
「そこに証拠がたくさん落ちているじゃないか。寝ている連中を起こして確かめてみるか?」
まだ全員の記憶は消し切っていない。
【神技書】には奪われたスキルが刻まれている。
持ち主に確かめさせれば犯行が明らかになるだろう。
「……ルガン、俺たち同じEランクで何度もパーティを組んだ仲だろう? 見逃してくれないか。魔が差したんだ、反省している。もうしないと約束するから」
クロストが【神技書】を地面に置いて、ルガンさんに近付いていく。
「その言葉が本心であれば、考えてやってもよかったが……」
僕はすかさず天井からクロストの肩を撃ち抜く。
「ぐあっ」
悲鳴をあげてクロストは肩を押さえる。隠していた腕が青白く光っていた。
「卑怯な犯罪者を問い詰めるんだ。俺が一人だと思ったのか?」
「ぐうぅ……薄汚い冒険者どもが、群れなきゃ何もできない弱者がああ……!」
怒りを露わにしてクロストは叫ぶ。
「それがお前の本性か。残念だよ。せめて俺が楽にしてやる」
ルガンさんが大剣を構える。僕も頭を狙って――気付いた。
「ッ! ルガンさん、急いで奴の腕を止めてください! コイツは【理の破壊者】です!!」
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腕を目掛けて雷光弾を放つも、クロストは身体を盾にした。
「貴様!」
「ぐふっ……一歩遅かったなぁ!?」
ルガンさんも同時に斬り付けるが、素手で受け止められていた。
既に注射器は首筋に深く刺し込まれている。肉体が膨張していた。
「……油断したな、ルガン。俺は既に神に等しい力を得ているのだ!!」
クロストの背中に腕が新たに二本生えている。
額に第三の目が開き、膨大な魔力が地下を震わす。
「馬鹿な、人間を辞めるつもりか!?」
「捨ててやったのさ。可能性を縛る余計な器をなぁ!!」
ライブラさんに教わった神話級の秘宝【神化の秘薬】。
異界神の細胞を取り込み、人の器を凌駕した怪物に変化する薬だ。
「ルガンさん油断しないでください。奴は器の限界を超え奪ったスキルすべてを使えるんです!」
僕は天井から【創造の樹杖】で滑り台を生み出し。
雷光弾を放ちながら地表に降り立つ。弾は魔法障壁で防がれた。
「無駄だ無駄あああああ!!」
クロストは巨大化した肉体を獣の如く俊敏に動かし、
地底湖から突き出した岩の上に立つ。全身が棘の鎧と化している。
「お前らの可能性すべてヲ喰らってやル!!」
カナンの時よりも更に理性が残されているように感じる。
人によって適性があるのか。それとも薬に改良が施されたのか。
「ロロア、怪物と化した奴を倒す術はあるのか!?」
「奴が投与した薬は一時的に神の力を宿す神話級の秘宝です。莫大な神力に人の身体では受け止め切れず、時間と共に肉体が自壊するはずです!」
「その制限時間は?」
「およそ数日ですかね……」
薬が改良されているとなると、更に制限時間が伸びている可能性も。
エルたちの力を借りたいけど、短期睡眠に入ってまだ二日目だ。
最低でも三日目にならないと人の肉体に戻れない。あと一日足りない。
「数日だと!? その前に俺たちが壊されるぞ!」
「ぐわはははは、漲る、漲るぞおおおおおおおおお」
クロストの周囲の魔力渦が実体化し放たれる。
各属性魔法弾をアイギスの魔法障壁で受け止める。
「クロスト! お前は自分が何をしているのかわかっているのか!? 自殺行為だぞ!!」
「何の話だぁ? 命乞いをしても無駄だぞ!!」
死に至る薬を投与したというのに、危機感のない返事だった。
「きっと末端の人間には、薬の副作用を知らされていないんです」
「【理の破壊者】は人間をなんだと思っているんだ!」
哀れにも思うけど、それ以前にクロストも犯罪者だ。
彼自身も人間を食い物とする怪物。同情の余地はない。
「ひっ……な、何だあの怪物は……!」
「あれも試験の一部なのか!? 聞いていないぞ!」
隣で目を覚ました復帰者パーティが騒ぎ出す。
「お前ら手を貸せ。奴は【理の破壊者】だ、地上に出したら王都にも被害が及ぶぞ!」
「ば、馬鹿。【理の破壊者】を捕らえるなんて騎士団の仕事だろ! 俺たちには関係ない!」
次々と逃げ出していく。残ったのは僕とルガンさんだけだ。
「ちっ、臆病者め。冒険者としての誇りはないのか!」
「勝てないと理解して逃げた奴らは利口じゃないか。愚かなのは残ったお前たちの方だ!!」
クロストが飛び掛かってくる。超質量が地面を砕き。
天井が揺れて鍾乳石が落ちてくる。僕はアイギスを振るう。
「死ねぇぇぇ!!」
「させるかっ!」
クロストの両腕が輝く【剛力】と【腕刃】だ。
まともに受けられない、力を抜き盾の表面を掠らせる。
激しい接触音と帯電効果で火花が散る。足元を潜り抜けた。
肉壁が薄い足の腱を短剣で斬り付けるも、【自然治癒】で瞬時に治される。
コクエンの消えない闇の炎すらも治癒速度に間に合っていない。
ルガンさんも合間に大剣を叩きつけるも筋肉に弾かれていた。
「くそっ、大量のスキルを使い放題とは、厄介すぎるぞ!!」
いったん距離を取って今度はトロンを構える。
エルの魔力水を口に含み、全力の魔力を充填する。
「最大出力を喰らえ!」
片膝を付いて、移動し続けるクロストの上半身を狙う。
全身の骨に響く反動。全力雷光弾が腕を二本吹き飛ばした。
「ぐあああああああああああっ」
血飛沫と肉を飛ばしてクロストが呻き声をあげる。
同時に僕にも腕の痺れが襲う。次弾の充填をしないと。
もう一度魔力水を取り出すも、指が上手く動かない。
「させるかあああああ!!」
クロストもトロンの脅威を理解したのか。
一気にこちらに距離を詰めてくる。横に転がり回避。
「クリエイト!」
反撃を受ける前に【創造の樹杖】の二重の木砦で囲う。
地表を滑り魔力水を飲み込む。うつ伏せになって照準器を覗き込む。
「ぐおおおおおおおおおおおお」
木砦を破壊した瞬間に、もう一度全力雷光弾を。
今度は腰の一部を破壊した。治癒も間に合っていない。
「貴様ああああ、よくもやってくれたなあああああああ!」
「くっ……まだ死なないのか。しぶとい……!」
僕の未熟な身体では、トロンの衝撃を受け止め切れない。
三発目を用意しないと、だけど、全身が悲鳴をあげている。
「ロロア、大丈夫か! すまない、どうやら俺は足手まといのようだ。お前が頼りだ」
駆け付けたルガンさんに背負われる。
容赦なくクロストの魔法弾がはじけ飛ぶ。
「ぐうっ……」
飛び散る破片を喰らって、ルガンさんの口元から血が流れた。
「大丈夫ですか!」
「気に留めるなロロア、俺が足になる。お前はそのまま魔導銃を使え!!」
「……っ、わかりました!」
ルガンさんに担がれながらもう一度照準器を覗きこむ。
「無駄な足掻きだああああああああ!」
煙を放ちながら修復していくクロストの肉体。
揺れる視界を抑えて、削れた部分に三発目を撃ち込む。
「ぐぎぎぎぎぎぎ……」
ついに心臓部が露呈した。あと一撃だ。
「ぐおおおおっ」
襲い来る反動にルガンさんも苦しむ。骨の折れる音が続いた。
耐え切れず倒れる寸前に、彼は僕を遠くに投げつける。
「ルガンさん!」
「俺はいい、四発目を放て!!」
「まずは貴様からだルガン! 地獄に落ちろ!!」
追い付いたクロストがトドメを刺そうと拳を振り上げる。
僕は急いで魔力水を飲み心臓部を狙う。間に合うか、どうか。
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「シューシュウー」
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