最弱から最強へ【擬人化】スキルによって、僕は神話級アイテムたちに好かれました。どうやら人間の仲間は必要ないようです

お茶っ葉

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第三章

第67話 龍威圧

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 無事に手続きを終えて、別行動しているコクエンたちを探す。
 宿は魔塔に近い場所で街の北側にある。そこまで坂を登っていく。

 切り崩した崖の空洞に【地下深淵の塔】の入り口があった。
 歴代踏破者を称える石像が並んでいる。ドワーフが手掛けた作品だ。

 威厳のある人物たちの頭に角が生えていた。龍人だろうか。
 そういえば魔塔を創った七賢人はそれぞれ別種族だったらしい。
 
 ガーベラ王国のスフィーダ様、レイリアのご先祖様は人間だ。
 けれど、リンドウ王国を治めるのはドワーフ一族で龍人ではない。

 一説によると【地下深淵の塔】を創り上げた大賢者は生涯独身で。
 魔塔の管理をドワーフに託して消えてしまった。つまり血が途絶えている。
 
 ドワーフが角のある兜を好んで身に付けるのは、
 大賢者、龍人ドラウフトの意思を継いでいる証だとか。

「コクエンとライブラさんは何処に行ったんだろう?」

 宿を見つけて中を覗いても二人の姿がなかった。
 予約はできていたから、暇潰しに遊びに出掛けたのかな。

「ふぅ……」

「あるじさま、あいぎすさんが疲れたみたいです」 

 高所で空気が薄い中、ずっと上り坂を進んできたので。
 アイギスが辛そうに肩で息をしていた。休ませてあげないと。

「エル、アイギスを連れて宿で待っていてくれるかな? 僕は二人を探してくるから」

「わかりました! お留守番ですね! あいぎすさん、部屋に行きましょう」

「うん!」

 二人が手を繋いで宿の中に入っていく。
 エルの面倒見の良さには助かっている。

「さてと、この辺りで賑やかな場所を重点的に回ろう」

 あのコクエンが自分から持ち場を離れるとは思えない。
 きっとライブラさんの気まぐれに巻き込まれているんだ。

 もう一度、ギルドのある方向に歩みを進めると。
 ふと、大きな歓声が通りにまで響いてきた。大衆酒場だ。

 ドワーフたちがたくさん集まって、外まではみ出ている。

「龍人様じゃ……ありがたやありがたや」

「龍人……?」

 気になって中の様子を覗いてみると。
 コクエンがドワーフの集団に崇められていた。

「……何をしているの?」

「ご主人様ぁ……! お助け下さいっ」

 僕の姿を発見して、コクエンが抱きついてくる。
 いつもの鼻血が出てこない。よほど焦っているみたい。

「ドワーフ族は龍を古くから信仰しています。コクエンちゃんは龍人をベースに擬人化していますので。宿で予約を取っていたら見つかってしまい、いつの間にやらこのような状況に……」

 そうだったんだ。
 ライブラさんのせいにしてごめんね。

 普段はフードを深く被っているから見えないけど。
 コクエンの頭には二本の角がある。ドワーフの兜と一緒だ。

「か、隠していましたのに、どうしてぇ」

「頭隠して目を隠さず。龍の瞳も特徴的ですからね」

 コクエンの紅瞳の中には龍の魔力が宿っている。

「眼帯もしておけば良かったよぉ……」

 両眼を塞ぐのはお勧めしないけど。
 
「龍人様も妖精さんも美人揃いじゃな。お主の仲間か?」

「あ、はい。残念ながら僕はただの人間ですけど」

 恰幅のいいドワーフに押され僕まで椅子に座らされる。
 ライブラさんは僕の肩に座って。ここでは姿を隠していない。
 
 ドワーフにとっては妖精も古くから親交のある一族なんだ。
 お酒やつまみを勧められる。コクエンのおかげで歓迎ムードだ。 

 本人は僕の腕を掴んで震えているけど。知らない人が多いもんね。

「冒険者ということは【地下深淵の塔】に挑むのじゃな?」

「既に入場の手続きを終わらせて、明日から挑戦します」

「初挑戦か。ならばこの情報はお主は知らぬじゃろう」

 ドワーフのお爺さんが僕たちにとっておきを教えてくれる。

「百階層を越える魔塔には、秘密の階層というものがあってな」

「秘密の階層ですか」

 僕も聞いた事がない。【星渡りの塔】にない要素だ。

「簡単に言うと近道じゃ。魔塔を創り上げた大賢者様も馬鹿正直に一階層ずつ移動するのが面倒だったみたいじゃな。その階層を経由すると一気に二十階層分の距離を稼ぐことができるのじゃ」

「それは、大きいですね」

 二十階層分を普通に移動するとなると二ヵ月は優に掛かる。
 それに消費する物資や、肉体、精神疲労を抑えられ有利に進める。

「といっても楽な話ばかりではない。複雑な条件を満たし、尚且つフロアボスを討伐せにゃいかん。無謀な挑戦者を生まない為に一部の者にしか知らされておらん。まさしく秘密じゃな」

 それもそうだ。誰もが簡単に使える近道ならもっと踏破者が出ているはず。
 
「ところで、ワシたちは二十五階層と六十五階層の条件を記憶している。……知りたいか?」

「もちろんです!」

 ギルドでのヘラさんとの会話を思い出した。
 残り四ヵ月で【地下深淵の塔】を踏破するという。
 不可能という言葉に抗いたくなるのが冒険者というもの。

「ほほほ。フロアボスを倒すのも条件の一つだというのに、勇気のある子供じゃな」

「あひいぃぃ」

 会話の最中に、ドワーフの一人がコクエンのお尻を触ろうとした。
 反射的に僕の膝の上まで逃げてくる。僕たちは正面から抱き合う形に。

「厚みのあるよき太ももじゃ。触り心地が良さそうじゃな」

「サービスしてくれたら、情報を何でも吐いてやるぞ?」

「ご主人様以外の男性に触れられるのは嫌ですぅ……!」

 酔っ払いたちが暴走を始めている。
 信仰の対象にセクハラをしてもいいの……?

「ドワーフ族はお酒と女の子が大好物の変態一族ですから……」

「ライブラさんがいっぱいいるみたいだ……」

「ロロアさん酷いです! 私様は二つの眼で愛でるだけで、決して触れたりはしません!」

 それはそれで高レベルの変態だと思うけど。
 僕の方から厳しく言わないと、コクエンが可哀想だ。

「嫌がる子を無理やり触らないでください。大切な仲間なんです」

「それはすまなかった。しかし、タダで教えるのは惜しいのう」

「ワシは少年、お主でもよいぞ!」

「えっ、僕ですか……?」

 予想外の方向からの提案に困惑する。

「若い人間の男子は中性的じゃからな。女装させるのも一興」

 一興じゃないよ。

「ふむ……私様としてはアリですね。とんでもない美少女が生まれるやもしれません」

 呼応してライブラさんまで興味を持ってしまった。

「ワシは男でもいけるぞ!」

 男色家を暴露するドワーフまで現れた。
 怖い。いよいよ収拾が付かなくなってきた。

「……やめろ」

 底冷えする低い声が大衆酒場に響いた。

「ご主人様に手を出すな……」

 コクエンの怒気にドワーフたちの動きが止まる。
 瞳を闇で濁らせて、身体から禍々しいオーラを発している。
 羞恥心が限界を突破して。アイギスのように別人格になっている。

「これは――龍威圧です。生物界の覇者が纏う圧で相手を屈服させる力です! コクエンちゃんの性格的に向いていないスキルでしたが、まさか羞恥心に追いやられて目覚めるとは」
 
 本能から彼女の命令に屈しそうになる。
 今自害しろと言われたら喜んで首を切りかねない。

 そんな抗えない威圧が場を制していた。コクエンの可能性。
 
「頭を下げて謝罪しろ」

『申し訳ございませんでした……!』

 僕たちを除く、大衆酒場に集うすべての生物が一斉にその場にひれ伏した。
 コクエンに眠る可能性がこんな所で開花してしまった。喜んでいいのかなぁ?
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