最弱から最強へ【擬人化】スキルによって、僕は神話級アイテムたちに好かれました。どうやら人間の仲間は必要ないようです

お茶っ葉

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第三章

第76話 深淵化

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 魔力補充を終えて結界から出ると、晴れた視界に大きな繭が。
 クイーンの姿がなくなっている。逃げた、訳ではなさそうだけど。

「……? 様子がおかしい」

 目の前の繭は黒ずんでいて脈動を続けている。 
 邪悪な気配が漂う、クイーンではなく遺跡全体から。

 ライブラさんの表情が変わる。いつもとは違う鬼気迫るものだ。

「まさか【深淵化】……? こんな浅層で深化が引き起こされるなんて聞いた事がありませんよ!」

「ライブラさん、【深淵化】って?」

「百階層を超える魔塔でのみ発生する現象で、塔に封印された厄災の力を長年浴び続けた魔物は一定の許容量を超えるとより強大な種へと深化するのです。神に近い、新たな種族へと」

「つまり【神化の秘薬】の魔物版という事だね……」

 どんな人間でも神の力を宿らせる神話級のアイテム。
 それと同等の効力がある現象が【深淵化】なんだろう。

 討伐されず遺跡に引き籠っていた事で、厄災の力を手に入れたんだ。

「封印の間直前の魔塔最深部でごく稀に、数十年に一度のペースで報告される現象でしたが。まだ六十五階層だというのに発現するなど、私様のデータにありません! これはすぐに原板に問い合わせねば!」

「ライブラさん、考察はあとに! 繭が膨らんできた……来るよ!」

 破裂した繭から飛び出てきたクイーンは、細身の人型をしていた。
 腕を組んで遺跡の柱に立ち僕たちを見下ろす。一対の翅が振動する。

「キシシシシシシシシシシ」

 人の口からおぞましい笑い声を発して――消えた。

「っ! 動きが見えない、だけど狙いはわかる……トロン! 気を付けて!!」

 甘い風が僕を通り過ぎる、奴の狙いは以前と変わっていない。
 深化してより感情が鮮明になった。原始的な怒りを引き継いでいる。

「キシシ」

「……ぐっ」

 トロンの前に現れたクイーンが、鋭い蹴りを放つ。
 何とか、筒ごと身体を動かし回避したトロンの腕に粘液が。

 遅れて爆発が起こった。衝撃に反応する爆発性粘液だ。
 風圧がこちらまで届く。トロンは後方の壁に吹き飛ばされていた。
 
「トロちゃん!! ちっ、邪魔な近衛兵です!」

「ギュウルルルルル」

 駆け寄ろうとするも、残った甲冑虫が邪魔をする。
 唯一の攻撃役であるトロンが封じられ、反撃ができない。

「いたい……」

 煙をまとい膝を付くトロンに更なる追撃が。

「させない!」

 アイギスが間に入り込み、防ぎ止めようとするも。

「キシシシシシ」 

「シシシシシ」
 
「えっ!? うしろ――――あうっ」

 背中からもう一体のクイーンが現れ、アイギスの動きが止まる。
 腕を掴まれ地面に叩きつけられていた。その間にトロンが襲われる。

「……しつ、こい」

 クイーンの腕にブレードが、対して砲身を盾にして火花が散る。
 接近戦が苦手な彼女には耐え切れない。首元にブレードが突き刺さる。

「ますた……!」

「トロン!!」

 凶器が急所に当たる直前に、魔導銃が地面を転がった。
 咄嗟にアイテムに戻って回避したんだ。横から僕が掻っ攫う。

 表面に傷が付いているけど、動力部分は無事だ。壊れていない。

「なんでふえたの!? さっきいっぴきだったのに!」

 僕たちの前に二体のクイーンが横並びしている。
 一時的な分身でもない。増えて弱体化した訳でもない。

「クイーンの情報を元に繭の中で二体に増えたのです! 偽物ではなくどちらも本物ですよ! 時間と共に更に増えていくはずです。奴は【深淵化】により一体で軍を為せる力を得たのです!」

「最強女王だけの軍隊って……もはや厄災そのものだよ」

 魔導銃を握り締めながらクイーンと相対する。
 次の標的はアイギスか。僕を最後に回すつもりだ。

 それは知能があるからこその、効率を度外視した復讐。
 子供たちを根絶やしにした僕たちを、徹底的にいたぶる為に。

「あうっ」

 アイギスが盾の力でクイーンの攻撃をやり過ごしている。
 彼女なら一体に限っては無傷での足止めができるはず。

 今のうちに援護したいけど。魔力回復薬が手元にない。

「キシシシシシシシシ」

「グギュアアアアア」
 
 背後でもう一体のクイーンが仲間の甲冑虫を喰らっていく。
 分裂する為のエネルギーを蓄えているんだ。すぐに三体、四体目が来る。

 ――魔物の【深淵化】は、人間の【神化】とは比較にならない。

「ロロアさん! もう出し惜しみしている場合ではありませんよ!」

「うん、【情報受信】をお願い!」

「受信するまでの時間をください」

 コイツを相手に余力を残すなんて不可能だ。
 ここで全力で叩き潰さないと無尽蔵に増え続ける。 

「キシシシシシシ」

 新たな繭が形成される。壊せるだけの魔力が溜まらない。
 アイギスの元に二体目が迫る。僕は妨害すら許してもらえない。

「アイギス、今すぐ逃げて! 時間を稼ぐんだ!」

「ううっ……」

 限られた空間を駆け回るクイーンから逃れる術はなかった。
 大量の粘液を受けて、大爆発に巻き込まれアイギスが地面に倒れる。
 すぐに自己修復が始まる。けど、それ以上の攻撃がもうすぐ届いてしまう。

「キシシシシシ」

 トドメを刺そうとブレードを振り上げるクイーン。
 その頭上が爆発の衝撃で崩れる。天井に穴が開いた。

「ふあああああああああああ」

 声をあげて誰かが落ちてきた。クイーンの身体に蔦が纏わりつく。
 エルを抱えてコクエンが石柱を蹴って着地した。ユグを構えている。

「二人とも! 無事だったんだね!」

 ――仲間の窮地を救ってくれたのは、やっぱり大事な仲間だった。

「ご主人様! お助けにまいりました!」
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