最弱から最強へ【擬人化】スキルによって、僕は神話級アイテムたちに好かれました。どうやら人間の仲間は必要ないようです

お茶っ葉

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第三章

第77話 経験の差

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 ユグの蔦でクイーンを足止めしている間に、
 気を失ったアイギスをコクエンが抱えて戻ってくる。

「んん……」

 意識はないけどアイギスの身体は修復している。
 爆発の衝撃で乱れた服以外は無事みたいだ。よかった。

「アイギスさんがここまでやられるなんて……あの人型の虫、強い……!」

「あるじさま、とろんさんは!?」

「大丈夫、ここにある。トロンは無事だよ」

 魔導銃に戻ったトロンを見せてエルを安心させる。
 二人がやられる状況に、敵の強大さを理解してもらえた。

「エルエル、コクエンちゃん。どうにか三分ほど時間を稼いでください! 遺跡内部はどうも受信が難しいようで……お手数をお掛けします!」

 ライブラさんの周囲に膨大な待機魔力の空間が広がる。
 神話級の威光に、あのクイーンも下手に近付けないようだ。

 そんな疑似安全地帯の中にアイギスを寝かせてあげる。
 あくまで威圧であってバリアではない。僕たちが足止めしないと。

「参謀が本気を出さないといけない相手を足止めですか……」

「望むところです!」

 エルとコクエンが並び立つ。クイーンの背後で繭が動いた。
 
「気を付けて、ここから更に二体増えるよ!」

「はい、今度こそエルにお任せください!」

 飛び出してきた、新たな二体のクイーンの道をエルが塞ぐ。
 エルは頭を掴まれ、そのまま遺跡の壁に深く押し付けられた。

「キシイイイイイイ」

 何度も拳と蹴りを喰らって、最後には地面に叩きつけられる。
 けれども無敵のエルには効かない。身体には傷一つもなかった。
 
「無駄です。エルには効きません! へなちょこです!」

「シイイイイッ」

 一方的に殴り付けた相手に挑発を受けてしまい。
 無駄だとわかっていても感情的なクイーンは止まらない。
 深化して強くなったけど、増幅した感情という弱点が増えている。

 そのまま僕たちを無視してエルだけを狙う。
 二体のクイーンは完全に足止めができている。

 残る二体を、僕とコクエンが受け持とう。

「キシイイイイイ」

 距離を詰めてきたクイーンが、コクエンを腕のブレードで斬り付ける。

「速いっ、ですが、殺気が駄々洩れで攻撃が読みやすいですよ!」

 宙返りから石柱を蹴り、クイーンの斬撃を先読みで回避していく。
 ブレードに手刀を合わせて炎が灯る。クイーンの片腕が燃え上がった。

「イイイイイッ」

「遺跡に閉じ籠っていただけの貴方とは、経験が違うんですっ!」

 純粋な能力で劣っていても、コクエンには豊富な経験があった。
 常に危険な前線で戦い続けた彼女は感覚で敵の行動を予測していく。

 もちろん多少の傷では、深化した魔物には通用しない。
 でも格下だと見下した相手にやられて、クイーンが更に苛立つ。

 敵の感情を乱して思い通りの位置へと誘導する。
 時間稼ぎは十分に果たせている。僕も同じように動こう。

 僕の方に残るクイーンが迫る。意識を集中させる。
 コクエンに倣って、こちらの有利な状況に誘い込む。

「こっちだ!」

 相手の速さに惑わされず、瓦礫を盾に接近戦を拒む。
 クイーンが邪魔な瓦礫を破壊していく。そこを狙い撃つ。

「キイッ」

 魔導銃から放たれた雷光弾が肩を掠めた。
 お返しに酸の霧を吹き出してくる。その前に離脱。

 能力は高くても、行動パターンはかなり少ない。
 新しい力に目覚めたばかりで、自分でも扱い切れていない。
 
 近接は蹴りと腕のブレード、遠距離では酸の霧。それだけだ。

 相手の立ち位置から次の攻撃を予測するんだ。
 今度は目の前の地面に影が落ちた。姿勢を下げる。

 頭上を刃が通り過ぎた。続いて右足から蹴りが来る。
 反撃は考えず左側に身体を傾けた、命を刈り取る足が空を切る。

「確かに、動きは速いだけで、組み立て方は素人そのものだ」

 言ってしまえば、ただ一番強い攻撃を繰り返しているだけ。
 そこに至るまでの隙を作ったりなどの大事な過程が抜けている。

 動き回る僕の首を狙って腕が伸びる、その前にこっちから接近。
 お腹に全力雷光弾を撃ち込む。反動を利用して強引に距離を取った。

「グキイイイィィィ」

 緑の血を散らしてクイーンのお腹に小穴が開いた。
 全力雷光弾を至近距離で受けても、まだ立てるのか。

 純粋な力比べだとこちらの分が悪い。弱点を付かないと。

「ご主人様、後ろです!」

 負傷したクイーンの背中を蹴りつけて、コクエンが追撃の炎を。
 もう一体が、僕を狙って後方から来ていたのを空中で受け止めた。

「させませんよっ! 下がれッ!」

「ギイイッ」

 コクエンの双眼が赤く光る。龍威圧で怯ませた。
 流れるように足で身体を挟んで上へと回り、踵落とし。

 お腹に穴が開いたクイーンが、コクエンを斬り付けようと近付く。

「させるかっ!」

 着地したコクエンと入れ替わる瞬間に、ユグを両手で受け取り。
 全体重を乗せて杖先でクイーンの腕を弾く。魔力を引き出し蔦を生やす。

 受け流され、互いに接触したクイーンたちを蔦で一つにまとめる。

「捕食するつもりだったのだろうけど、逆に僕たちに捕らえられたね!」

「よく燃えそうな身体です――炎牙!」

『ギイイイイイイイイイイイイイイイイ』

 コクエンが消えない炎を生み出し、二体のクイーンをまとめて燃やす。
 【深淵化】しても元の弱点は変わらず。足止めどころか倒してしまった。

「わぁあああああああああ、あるじさま~!」

 喜ぶ暇もなく、エルが悲鳴をあげる。
 振り返ると、十二体のクイーンが群がっていた。

 人型であっても虫なのは変わらない。
 黒光りした身体に細い腕。大きな目玉。
 エルが泣きそうな顔をして殴られている。

「ひぃっ……おぞましい光景です、いつの間にあれだけの数に!?」

「二体倒した程度で喜んでいる場合じゃないね……」

 一番の脅威は個の性能ではなく、あの繁殖力だ。
 消耗具合からしても、これ以上の連戦は無理がある。

「ううっ、あの数に飛び込む勇気はありません。しくしく、力不足で申し訳ありません」
 
「――何を情けなく泣いているのです。上出来ですよ、コクエン。よくぞここまで持たせました」

 息を荒げる僕たちの前に妖精の女王が君臨した。
 虹色の羽を横に広げて、大人びた横顔をしている。

 本気を出したライブラさんを見るのは僕も初めてだ。

「ロロア、危険なのでこの線より後ろに下がりなさい。巻き込まれますよ」

「わかりました」

 原板との意識が重なり合って、人格が変わっている。

「――グリモワール」
  
 ライブラさんの背後に古びた書物が召喚された。
 
「遺跡の崩壊を避ける為に、今回は控えめにしておきましょう」

 グリモワールから三体の炎の蜥蜴、サラマンダーが。
 増殖したクイーンたちに取り付いて身体を燃やしていく。

 そこに五体のキングオーガが乱入する。
 腕や足を引き千切って残虐に痛めつける。

「わぁあああああ、あるじさま、大きな目玉が怖かったです!」

「よく頑張ったね」

 隙を見て逃げてきたエルを抱きしめる。精神的に辛かったみたいだ。
 
「トドメです」

 最後にアクアドラゴンが女王の残骸を喰らっていった。
 これ以上の増殖を防ぐ為に徹底して、僅かな欠片も許さない。

「わぁ~! あくあどらごんさんです!」

「こ、これがライブラ参謀の本気……あれだけ苦戦した敵が、瞬殺だなんて」

「今まで倒した敵を模倣して操れるんだ。もう反則級だよ」

 直前まで死闘を繰り広げた相手が、手も足も出ずに消されていく。
 神話級は次元が違う。神に近いだけでは神そのものには敵わないんだ。
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