最弱から最強へ【擬人化】スキルによって、僕は神話級アイテムたちに好かれました。どうやら人間の仲間は必要ないようです

お茶っ葉

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第三章

第84話 優しい盾

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「わあああああああああ!?」

「ひあああああああああ!?」

 第二の浮島の森の中で、二人の綺麗な悲鳴が響き渡る。
 上空から乱れ落ちる木製の矢が大地に突き刺さり。
 真横の茂みからは無数の槍が次々と樹木を貫く。

「逃げてばかりでは~駄目ですよ~。わたくしの創造領域からは逃れられません~」

 ティアマトの試練の途中から、唐突にユグの試練が始まった。
 よくわからないままにアイギスは走る。隣でも巻き込まれたエルが。

 創造領域はユグを中心とした、彼女の望みの形を瞬時に生み出す場だ。

「あれ、えるは、きかないよね?」

「そうでした! エルは不死身です!」

 反転してエルが立ち向かう。その後ろでカバーにアイギスが。
 飛んできた矢を頭突きで跳ね返し、槍を身体で受け止めてみせた。

「おやおや~」

「これでもう何もできませんよ~!」

「それは~どうでしょう?」

 瞬間、エルの足元から巨大な蔦が伸びた。檻となって封じ込める。
 
「不死身ではあれど、攻撃力はありませんよね~?」

「捕まってしまいました! エルの弱点もバレてます!」

 何度体当たりしても小柄なエルでは檻はビクともしない。

「ま、まってね。たすけるから!」

 アイギスの身体が帯電して檻と接触、火をつけた。
 燃え広がった蔦の檻からエルが飛び出し、ユグの足を掴む。

「今度はこっちの番です! あいぎすさんは上をお願いです!」

「あら~」

「おとなしくして!」 

 二人でユグを羽交い締めにする。ようやく落ち着いた。
 と、安堵したその瞬間。ユグの身体が硬い何かに変貌した。

「ゆぐさんが木になっちゃいました!?」

「にせもの!?」

 振り返ると無数の気配が動き出す。木の枝の上にユグが立っていた。
 その下の地面にも。右にも左にも。二人は一人に包囲されていたのだ。
 
『どれが本物のわたくしか~見破れますか~』
 
 同時に創造された武器群が飛んでくる。足元からは蔦が。
 エルの不死身の肉体はエルだけのもの。アイギスは前へ出る。

「くっ……!」

 アイギスが魔法障壁を展開して防ぎ止めた。
 ユグの生み出す物体はすべて魔力で出来ている。
 反射しようにも形を変え物量で障壁を押し込めていく。
 
「☆5.1の国宝級の守りを崩すのは困難ですね~わたくしは所詮☆4.8ですから」

 たった0.3の違いに見えても、アイテムには5.0の壁というものがある。
 国宝級以上とそれ未満で、物の価値というものに天と地の差が生じるのだ。
 
 もちろん性能はアイテムの種類にも影響を受けるのだが。
 彼女らは【擬人化】によってある種、対等な立場となっている。

 対等ならばレアリティの差は大きく響く。その筈なのだが。

「でも……つよい。ゆぐは……わたしより……!」

 ☆4.8の国宝級未満のユグの強さは圧倒的だ。
 レアリティの差を超えて、アイギスを苦しめている。

「どうしてだと~思います~?」

「……それは、わたしが、よわいから……」

「不正解です~」

 ユグは身体を揺らしながら、アイギスに語りかける。
 終始変わらない笑顔のままで。子供に言い聞かせるように。
 
「わたくしがアイギス様を圧倒出来ているのは――貴女が強くて、優しすぎるからですよ?」

「えっ?」

 その瞬間に、すべての創造物が消え失せる。 

「どうして、アイギス様はエル様を守ったのです~? 彼女は不死身の器なのですよ」

 アイギスの後ろには体勢を崩したエルが居た。
 二人分の大きさの魔法障壁を展開して守ったのだ。

「貴女が一人分の障壁を展開していたのであれば~、余力で反射も可能だったはずです」

「そんなの……」

 自分が盾だから。そうに決まっている。
 仲間を守るのが役目で。自分が力不足なのが悪い。

「同じ盾であるティアマト様であれば~必要のない行動は取りません。あくまで自身が最大限の働きが出来るようにと。不死身のエル様は置いて、最悪ではわたくしたち道具を捨てて。主人であるロロア様を最優勢に動く事でしょう~それが非情な選択だとしても」

「エルは一人でも平気ですから!」

 それはアイギスも知っている。エルは死なない。傷を負わない。
 だけど、だからといって何もせずに。見捨てるのが正解とは思えない。

 他の子たちもそうだ。マスターであるロロア一人だけを守るのが正しいとは。

「納得いかないご様子ですね~」

「……あたりまえ、よ」 

「そもそも盾が仕事をするのは最後なのです~。敵を倒すのは武器の役目で。敵を通してしまうのは武器の責任です~。それなのに貴女は、すべての失敗を自分の責任として受け取ってしまう。あの戦いで反省すべきなのは、わたくしたち全員だったのですよ~?」

 心が折れるきっかけとなった、あのクロスト戦。
 盾が弾かれ、ロロアを守る役目をまっとうできなかった。

 ロロアだけじゃない。他の子たちも危険に晒してしまった。
 盾である自分とエル以外の子が一撃でも受けてしまえば破壊されている。

 ティアマトならどうしていただろう。最悪、誰かが切り捨てられた?
 ロロアだけを守るべく。【擬人化】さえ残ればアイテムには替えが効く。

 王さえ残せば――それはある意味、盾の一つの正しい在り方だろう。

「自分を取り巻くすべての仲間を守り通す。それは神話級の盾ですら不可能です~。必ず、取捨選択の場面は出てきます~。そんな不可能な理想を常に求めていては。いつか心が砕け、挫折だってしますよ~当然です」

「でも、それでも……わたしは……」

 叶わない理想だったとしても、今さらティアマトのようにはなれない。
 ロロアだけじゃないエルたちも。みんなを死なせたくないと思っている。

「……あいぎすさんが優しい盾。エルはいいと思います!」

 エルがアイギスの手を強く握った。二ヵ月間身近に感じた熱。

「そんなあいぎすさんだからこそ、あるじさまが一番に信頼して、今もみんなが応援しているんです! エルもあいぎすさんじゃないとダメです。代わりなんていないんです!」

「エル……」

 上手くいかずに逃げ出して、泣き喚いて。
 どうしようもない自分を待っている人たちが居る。

 理想を理想のままで終わらすのか。実現できると抗うのか。

「散々偉そうに言いましたが。わたくしはこうも思うのです~。同じ盾でも性格や方向性が違ってもいいと。理想も突き抜けていけば、他の誰も真似できない新たな境地に辿り着けるのではないかと。それこそが唯一無二、神話へと至る道であると」

 どうか貴女の信念、覚悟を見せてくださいと。ユグが手を差し伸べていた。

「神話級が完全無欠の存在であるのであれば。どうして盾や剣、槍、本や霊薬。細かい分類に分かれて存在しているのでしょうか。一つに集約されていないのでしょうか。アイギス様?」

 その答えは既に知っている。アイギスはユグを見た。その次にエルを。
 ここには居ないライブラをコクエンをトロンを。そしてロロアを。
 超えないといけない相手を。自分のやり方を貫き通す為に。

「――お願い。今さらもう遅いかもしれないけど、私にみんなの力を貸して……!」

「喜んで!」

「はい~最初からそのつもりです~」
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