最弱から最強へ【擬人化】スキルによって、僕は神話級アイテムたちに好かれました。どうやら人間の仲間は必要ないようです

お茶っ葉

文字の大きさ
111 / 116
第三章

第111話 慢心

しおりを挟む
「はっはっ、まずは二人を見つけて合流しないと。異変に気付いて二人も動いているはず」

 鬱蒼と生い茂る木々と足場の不安定な大地を駆け抜ける。
 後方では二発目の雷光砲撃が、夜空に眩い光が拡散される。

 ミミックによる魔力吸収で一瞬にして雷光は霧散していた。
 ひとまず偽トロンの砲撃は防げている。僕は額に流れる汗を拭う。

「あと何発分防げるんだろうか……急がないと時間は限られている」

 最優先は毒の治療ができるエルの捜索。けれど一人で探すには魔塔は広すぎる。
 ティアマトさんの風の力が必要だ。ユグの創造領域も。敵はフロアボスだけじゃない。

 ティアマトさんなら、真っ先に僕の元を目指しているはず。
 彼女が模倣する者ドッペルゲンガーと接触しないように僕の方で距離を取らないと。

「くそっ、邪魔だよ!!」

 【深淵化】したケイブゴブリンが襲い掛かってくる。
 通常種よりも全体的に強化された魔物の牙を盾で防ぐ。

「ギギギッ」

「よっと」

 振りかざしてきた剣を避け、その腕を踏み台に飛び越える。
 イメージするのはコクエンの動き。優秀な教師になら恵まれている。

 下半身の動きを意識して、最小限のステップを踏む。
 群れを潜り抜けて、純粋な足の速さでは僕は負けない。
 ケイブゴブリンをやり過ごすと、今度は地面が揺れ始める。

「それは読めているよっ!」

 割れた大地から、地中に住み着くアースイーターが。
 姿勢を下げて頭上を通り抜けた魔物を盾で叩きつける。
 
 グチャっとした感触が腕に残り、アースイーターは地上で痙攣していた。

「まったく、キリがないよ……」
 
 すぐに追いつてきたケイブゴブリンが弓を構える。
 その前に射線上から移動して、僕はひたすら走り続けた。

 【深淵化】しても、基本的に行動が変わらないのは理解している。
 特に武器を使う種は、結局は武器の性能に依存した動きしか取れない。

 弓を持てば弓兵の動きからは逸脱せず、予測しやすい。
 だから脅威度は、僕一人でも対処できる範囲に留まっている。
 後方で三度目の雷光砲撃。そろそろ敵も痺れを切らし接近戦に切り替えるはず。

 負傷したコクエン一人では長くは持たない。早く、早く。

「あれ。花の匂いが」

 ふと、甘い匂いが鼻腔をくすぐった。
 誘われるようにそちらに足が動き出す。
 
「……これはティアマトさん?」

 風の力といえば彼女の得意分野。ユグなら匂いを放つ植物を生み出せる。
 明らかに自分の居場所を誰かに知らせる行動だ。僕は唾を飲み、覚悟を決める。

「ティアマトさん!」

 しばらく進むと、真っ赤な髪の女性が佇んでいた。
 こちらに目をやり、ティアマトさんが片腕を上げた。

「主人よ、無事だったか。探していたぞ」

「お願いだ。エルを今すぐ探して――――」

 最後まで言葉を紡ぐ前に、全身からぞわっとした寒気が。ユグが居ない。
 ほぼ野生の勘でアイギスを前方に構える。直後不可視の刃が盾とぶつかる。

 間接的な衝撃に筋肉が悲鳴をあげる。それでもアイギスのおかげで助かった。

「お前は……偽物だな!」

「チッ、勘の鋭い人間め」

 偽ティアマトの表情が歪む。敵は神話級すらも模倣するらしい。
 またも夜空に雷光が走った。おかしい。模倣する者ドッペルゲンガーは目の前に居る。

「ま、まさか……フロアボスは一体だけじゃないのか……!」

 偽ティアマトの背後に、見覚えのある繭の殻がある。
 クイーンと同じだ。単独で繭を創り出し繁殖できるんだ。 

 本物の二人はもう一体の模倣する者ドッペルゲンガーに襲われていた。間に合わなかった。
 
「くっくっくっ。この身体は最高だ。溢れんばかりに力が漲ってくる!」

「最悪だっ!!」

 心強かったみんなの力が。最悪の敵となって襲い掛かってくる。
 今までで一番の絶望的な状況だ。勝ち目があるのか、わからない。

「ううん。まだだ。まだ何か手があるはずだ……」

「可能性など存在しない!!」

 偽ティアマトが不可視の刃を繰り出してくる。
 防御を固めて対処。移動しながら対策を考える。

「死ね死ね!! 人間ごときがこの我に敵うものか!!」

「うぐっ」

 アイギスの加護がある限り、命は繋がり続ける。
 まだ諦めるには早い。何か、弱点はないのか……。
 
「……ん? おかしい……ぞ」

 攻撃を受け続けていると、僕は違和感に気付いた。
 あまりに敵が遠距離攻撃ばかりで、時間を掛け過ぎている。
 少なくともティアマトさんの能力なら。人間相手に接近戦の方が有利。
 
 よく目を凝らすと、偽ティアマトの身体の一部が変色している。
 そうか。やはり神話級を完全に模倣するのは【深淵化】でも厳しいんだ。

 ポロポロと崩れる肉体を誤魔化しながら、偽物は風の魔法を放つ。
 自傷するとわかっていても、強者の姿を借りる方が最善だと思ったのか。

 それは人間を見下しているからこその慢心だ。通常の魔物には存在しない心の隙。

「……いける。これなら僕だって!」

「なにっ!?」

 放たれた刃を盾で受けずに紙一重で躱す。すると偽物は驚き硬直した。
 まさか僕が反転して攻めてくるとは思わなかったんだろう。中身も未熟だ。

「うわあああああああああああ!!」

 気合を入れて懐に飛び込み、アイギスのスキルリンクを発動。 
 僕自身の魔力を増幅させて、一時的に驚異的な身体能力を発現させる。

 持って二秒ほどの強化だ。それだけあれば十分。

「どれだけ力を真似たところで、中身がまるで追い付いていないんだよっ!」

「ば、馬鹿な!?」

 拳をぶつけて、片足を吹き飛ばした。
 間髪入れず顔面を殴り、そしてトドメを刺す。

 偽物は驚愕した表情のまま消滅した。
 力に固執して、防御を捨てたのが敗因だった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

借金5億で異世界転移、よりによって金本位制の世界だった

夜明け一葉
ファンタジー
32歳の個人トレーダー・佐藤慧は、5年間の雪辱を賭けたトレードで5億円の借金を抱え、意識を失った。目覚めると、そこは剣と魔法が存在する見知らぬ世界だった。常識が通じない異世界で、金貨を見るだけで嘔吐する「金アレルギー」を抱えながら、若き冒険者リナと出会い、生き延びる術を探し始める。諦めることだけができなかった男が、新たな世界で再び立ち上がる異世界サバイバル譚。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

辺境で静かに暮らしていた俺、実は竜王の末裔だったらしく気づけば国ができていた

平木明日香
ファンタジー
はるか五億四千万年前、この星は六柱の竜王によって治められていた。火・水・風・土・闇・光――それぞれの力が均衡を保ち、世界は一つの大きな生命のように静かに巡っていた。だが星の異変をきっかけに竜の力は揺らぎ、その欠片は“魂”となって新たな生命に宿る。やがて誕生した人類は文明を築き、竜の力を利用し、ついには六大陸そのものを巨大な封印装置へと変えて竜王を眠りにつかせた。 それから幾千年。 現代では六つの大国がそれぞれ封印を管理し、かろうじて世界の均衡を保っている。しかし各地で異常な魔獣が出現し、封印の揺らぎが噂されはじめていた。 そんな世界を気ままに旅する青年がいる。名はブラック・ドラグニル。三年前からハンターとして魔獣を討伐し、その肉を味わいながら各地を渡り歩く放浪者だ。規格外の実力を持ちながら名誉や地位には興味がなく、ただ「世界のうまいものを食べ尽くす」ことを楽しみに生きている。 ある日、光の王国ルミナリア近郊で王女ユリアナが大型魔獣に襲われる事件が起きる。死を覚悟した騎士団の前に現れたブラックは、その怪物をわずか数十秒で討ち倒す。彼にとっては雑魚同然だったが、その圧倒的な強さは王国中に知れ渡る。王女は自由に生きる彼の姿に心を奪われるが、ブラックは次の目的地へ向かう計画を練るばかり。 だが彼自身はまだ知らない。 自らが竜族の末裔であり、世界を再び“統合”へ導く鍵となる存在であることを。 竜の封印が揺らぐとき、自由を愛する青年は世界の命運を左右する選択を迫られる。 これは、竜の記憶と人の魂が交錯する壮大なファンタジー叙事譚である。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...