【一〇一匹モフモフ】落ちこぼれクランから追放されたGランクテイマー、獣耳少女と出会う

お茶っ葉

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5 薬草採取

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「……あっ、薬草。オルガくん、採取依頼!」

 正気に戻ったエレナが慌てて立ち上がる。俺もその声で目が覚めた。
 夕焼け空がとても眩しい。薬草採取の期限は本日までで、残りわずかだ。
 このままではただでさえ評価の低いGランクが、採取もこなせないのかと笑い者に。

 っと、笑われるのはいつもの事なので慣れているが。依頼主を困らせるのは問題だろう。

「おはようございます、主様。お困りごとでしたら、どうか我を頼ってください」

「日が暮れるまでに、薬草を集めないといけないんだが。リンネ、頼めるのか?」

 俺はリンネに確認を取る。すると彼女は柔らかい笑みで返した。
 神獣を呼び捨てるのに若干の抵抗があるが、本人たっての希望なのだ。
 彼女はどうも主従関係に厳しい。出会ったばかりの俺を完全に主として見ている。

「主様のご所望です。貴女たち、薬草を集めてくるのです!」

「ワオーン!」

 リンネの指示を聞き入れ、狼たちが散会し森の奥へと入っていく。その多くが大人。
 しかしもう半分の子供たちは命令を無視して、足元で俺に構って欲しいとじゃれてくる。
 小さな尻尾を懸命に振って、舌を出してお腹を見せたり走り回ったり、もう好き放題だった。

「うぅ!」
「わんわう!」
「きゅ~ん」
「わお?」

「こ、こら、他ならぬ主様のご命令ですよ? 遊ぶ時間ではないのです!」

「うぐぅ~うぐぅ~」
「ぺろぺろ」
「かぷかぷ」
「ぐぅ……」

 リンネは手を振って散るように命じる。が、まったく言う事を聞いていない。
 寧ろ、遊んでもらえていると勘違いして、リンネの方へと白き獣たちが群がっている。

「わうん~わうわう♪」

「……私にくれるの? ありがとう」

 エレナの足元にも人懐っこい白き獣がやってくる。一輪の花を咥えていた。
 エレナがお礼を伝えて抱きかかえると、満たされた表情のまま首元を舐めだす。

「元は同一の存在だというのに、ここまで個性が生まれているのか……不思議だ」
 
 器に宿る封印された魔神の力が、色だけでなく自我にまで影響を与えている。
 抑え込むのに相応の魂を要している為に、見た目が幼い狼ほど強い力を秘めているようだ。
 大人狼たちの方は、幾分か余裕があるのか、リンネの指示にも柔軟に対応できている。

 しばらくして、任務に向かっていた大人たちが颯爽と帰ってきた。
 大量の薬草を口に咥えており、尻尾を振りながら俺の前に置いてくれる。
 感謝の気持ちとして喉元を撫でていく。満足そうにして持ち場へ戻っていった。
 
「オルガくん、二五〇束もあるよ。えっと……銀貨一二枚と、大鉄貨五枚分だよね。【鍋底】総出でもこんなに大きな成果を挙げた事はないよ」

「ありがとうリンネ。おかげで俺たちも路頭に迷わずに済む」

「さっそく主様のお役に立てたようで――まだ指を噛むのですか、主様の前でみっともない!」

「かぷかぷ」

 合流した大人たちの方へ、子供たちが嬉しそうに駆け寄っていく。
 手に入れた薬草を持参した籠に入れる。あまりの数にはみ出ていた。重い。 
 嬉しい悲鳴だが、今から急ぎで冒険者ギルドに戻れば、期限にも間に合いそうだ。

「これから俺たちは街に戻るけど。リンネは――」

「我も主様と共に。お守りいたします故、どうかお傍に置いてください」

「この人数だと……騒動になりそう」

 エレナがもっともな意見を出した。一〇一匹の狼は連れて歩けない。
 街の敷地に一歩踏み込んだ時点で、間違いなく自警団たちが動くだろう。
 
 対策を考えていると、リンネがおもむろに人差し指を回す。煙と共に白き獣たちの姿が消失した。

「わう!」

 最初に俺たちを案内してくれた、一匹の白い狼だけが残される。
 この子が本体なんだろう。魂を分けすぎて当時の力は残されていないようだが。
 それでもゴブリンを軽々倒せる辺り、古の時代は現代とレベルがかけ離れているらしい。

「あの子たちにはしばし眠ってもらいました。我が命じればすぐにでも呼び戻せますが、主様の負担を考えて、今後は最低限の数に絞ります。ご要望があれば何なりとお申し付けくださいませ」

「……神獣様って何でもありだね」

「それはよかった。森でお留守番させるのは心苦しいからな。今後ともよろしく頼む。リンネ」

「はい、主様。今度こそ……最期までお傍に居させてください」

 薬草の入った籠を持つと、リンネが片側を支えてくれる。
 手伝うのが当然だというように。伝説の神獣は心優しい少女だった。
 今日は多めに薬草が採れて助かった。三人分の宿代は確保できているだろう。
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