10 / 26
10話 猛獣使い
しおりを挟む
「ぐぼあああああ!? な、何故だ、Gランクの癖に、どうしてこんなに強くなってんだ!?」
「お前はスキルを持っていないはずだ。魔法か!? そこの餓鬼がなにかしているんだろ!!」
「卑怯者め! 武器を捨てて正々堂々掛かってこいよ!!」
馬鹿どもが何かをほざいている。
「は? お前らがそれを言うのか。卑怯者はどっちだよ。冒険者の誇りを失った屑が」
フランベルクの魔力によって向上した俺の身体は、Eランク冒険者に鋼の鉄槌を与える。
リーカスは頬を押さえていた。そこそこ顔が良い男の歯が欠けている。
取り巻きを合わせても誰も今の俺には敵わない。所詮群れたところでミノタウロス以下だ。
「兄ちゃん! アイツが付けているお守りが!」
「おい、リーカス。それはこの子のかあちゃんの宝物だ。返しやがれ!!」
リーカスの首元にある値打ちがありそうな綺麗な首飾り。
まだ手放していなかったのは幸いだ。だが、リーカスは受け渡しを拒み続ける。
愚かな馬鹿は、頑なに現実を直視しようとはしなかった。
「み、認めるか……! これは何かの間違いだ。魔法はいつまでも続かない。そのうち絶対に化けの皮が剥がれるはずだ!!」
「り、リーカスさん、そろそろ親分が戻って来る頃です」
「そ、そうか! 親分ならこんな雑魚一瞬だ!!」
リーカスたちに勢いが戻ってくる。
「親分……? まだ仲間がいるのか」
直後に人の気配。入り口のドアが開かれる。
むさ苦しい男のドスの利いた声がダンジョン内を反響した。
「なんだなんだァ!? オデの可愛い子分どもを虐めるのはお前かァ!?」
二メートルはあるだろうか。魔物と間違えそうになるほどデカい図体だ。
ミノタウロス並みの筋肉と、その大木のような腕には皮の鞭が握られている。
「げっ、ちょっと強そうじゃないか……!」
「兄ちゃん頑張れ! 悪党なんかに負けるなあああ!!」
「マスターなら大丈夫です!」
「……ああ、悪は許さん。俺の手で必ず成敗してくれる!」
チビッ子たちの声援を受けて。
恐怖心を飲み込み、一日だけの正義の味方を演じていく。
「親分! やっちまってください!! 相手は所詮Gランク。親分なら問題ありません!」
「なんたって親分はDランクだからな!!」
「今さら命乞いをしても遅いぜ。お前たちは全員魔物の餌になるんだ!!」
小物に成り下がったリーカスたちは、鼻血を流しながら親分の背中に隠れる。
安全圏から罵声を飛ばしている。うわぁ……情けない。
グルルルルルルルルルルル
外から獣が侵入してきた。
親分の前で座ると指示を待っている。
「オデの可愛い獣たちが相手をしてやル。ほぉら、旨そうな餌だゾ」
「いやいや、お前が戦うんじゃないのかよ……その逞しい筋肉は飾りか?」
【調教師】のスキルを持つのはこの男だったのか。
親分が使役しているのは獣型の魔物であるレッドウルフだ。
Eランク帯の魔物で、ほぼ大陸全土に生息する繁殖力の高い獣だ。
「やっと適正ランクに近い魔物と出会えたか。……ドラゴンを倒した俺に果たして通用するかな?」
「はっ、ドラゴンを倒しただァ!? お前みたいなひょろ細い男にオデの――ホゲッエエエ!?」
親分は絶句していた。俺は背中を向けている。
奴の可愛いペットである獣は全員意識を手放した。
その間僅か一秒。魔剣の使い方に徐々に慣れてきたぞ。
「ん、これで終わりか?」
「うおおおおお!! 兄ちゃんかっけぇ!! 全然見えなかった!!」
「あぁ……マスターにたくさん使われて今日は幸せです」
チビッ子たちは大はしゃぎだ。
いやぁ照れるな。もっとカッコいいポーズを研究した方がいいかな。
って、いかんいかん。こんな無茶をするのは今日だけだ。これ以上調子に乗らない方が良い。
「オデの、オデの獣を傷付けたなぁ!? もうおしめぇだァ!! 俺を怒らせたんだからなァ!」
「村の人たちはもっと傷付いたんだぞ。……次こそはお前が戦うのか?」
「次はオデが大金を出して手に入れたとっておきの魔物だァ。もう泣いても許さないゾ!」
「いや、だからその筋肉は何に使うんだよ」
鞭を振るい大きく手を上げた親分が叫ぶ。
一体何が出てくるんだ? まさかドラゴンより強い魔物なんてそうそう――
「さぁ、いデよ、オデの可愛いしもべ――――ミノタウロス!!」
………………………………
しばらく無言の時間が続いた。待てども待てども何も出てこない。
「あデ? ……隠れてないで出て来ィ!! おーい。飯の時間だゾ」
「お、親分……?」
「あ、あれ? おかしいな? 昨日まではいた気がするんだが?」
後ろのリーカスたちも戸惑っている。なるほど。そういう事だったのか。
こんな所にCランクの魔物がいるのはおかしいと思っていたが。コイツらの切り札だったのか。
「あっ、ごめん。ミノタウロスはもう俺が倒したぞ?」
「お前はスキルを持っていないはずだ。魔法か!? そこの餓鬼がなにかしているんだろ!!」
「卑怯者め! 武器を捨てて正々堂々掛かってこいよ!!」
馬鹿どもが何かをほざいている。
「は? お前らがそれを言うのか。卑怯者はどっちだよ。冒険者の誇りを失った屑が」
フランベルクの魔力によって向上した俺の身体は、Eランク冒険者に鋼の鉄槌を与える。
リーカスは頬を押さえていた。そこそこ顔が良い男の歯が欠けている。
取り巻きを合わせても誰も今の俺には敵わない。所詮群れたところでミノタウロス以下だ。
「兄ちゃん! アイツが付けているお守りが!」
「おい、リーカス。それはこの子のかあちゃんの宝物だ。返しやがれ!!」
リーカスの首元にある値打ちがありそうな綺麗な首飾り。
まだ手放していなかったのは幸いだ。だが、リーカスは受け渡しを拒み続ける。
愚かな馬鹿は、頑なに現実を直視しようとはしなかった。
「み、認めるか……! これは何かの間違いだ。魔法はいつまでも続かない。そのうち絶対に化けの皮が剥がれるはずだ!!」
「り、リーカスさん、そろそろ親分が戻って来る頃です」
「そ、そうか! 親分ならこんな雑魚一瞬だ!!」
リーカスたちに勢いが戻ってくる。
「親分……? まだ仲間がいるのか」
直後に人の気配。入り口のドアが開かれる。
むさ苦しい男のドスの利いた声がダンジョン内を反響した。
「なんだなんだァ!? オデの可愛い子分どもを虐めるのはお前かァ!?」
二メートルはあるだろうか。魔物と間違えそうになるほどデカい図体だ。
ミノタウロス並みの筋肉と、その大木のような腕には皮の鞭が握られている。
「げっ、ちょっと強そうじゃないか……!」
「兄ちゃん頑張れ! 悪党なんかに負けるなあああ!!」
「マスターなら大丈夫です!」
「……ああ、悪は許さん。俺の手で必ず成敗してくれる!」
チビッ子たちの声援を受けて。
恐怖心を飲み込み、一日だけの正義の味方を演じていく。
「親分! やっちまってください!! 相手は所詮Gランク。親分なら問題ありません!」
「なんたって親分はDランクだからな!!」
「今さら命乞いをしても遅いぜ。お前たちは全員魔物の餌になるんだ!!」
小物に成り下がったリーカスたちは、鼻血を流しながら親分の背中に隠れる。
安全圏から罵声を飛ばしている。うわぁ……情けない。
グルルルルルルルルルルル
外から獣が侵入してきた。
親分の前で座ると指示を待っている。
「オデの可愛い獣たちが相手をしてやル。ほぉら、旨そうな餌だゾ」
「いやいや、お前が戦うんじゃないのかよ……その逞しい筋肉は飾りか?」
【調教師】のスキルを持つのはこの男だったのか。
親分が使役しているのは獣型の魔物であるレッドウルフだ。
Eランク帯の魔物で、ほぼ大陸全土に生息する繁殖力の高い獣だ。
「やっと適正ランクに近い魔物と出会えたか。……ドラゴンを倒した俺に果たして通用するかな?」
「はっ、ドラゴンを倒しただァ!? お前みたいなひょろ細い男にオデの――ホゲッエエエ!?」
親分は絶句していた。俺は背中を向けている。
奴の可愛いペットである獣は全員意識を手放した。
その間僅か一秒。魔剣の使い方に徐々に慣れてきたぞ。
「ん、これで終わりか?」
「うおおおおお!! 兄ちゃんかっけぇ!! 全然見えなかった!!」
「あぁ……マスターにたくさん使われて今日は幸せです」
チビッ子たちは大はしゃぎだ。
いやぁ照れるな。もっとカッコいいポーズを研究した方がいいかな。
って、いかんいかん。こんな無茶をするのは今日だけだ。これ以上調子に乗らない方が良い。
「オデの、オデの獣を傷付けたなぁ!? もうおしめぇだァ!! 俺を怒らせたんだからなァ!」
「村の人たちはもっと傷付いたんだぞ。……次こそはお前が戦うのか?」
「次はオデが大金を出して手に入れたとっておきの魔物だァ。もう泣いても許さないゾ!」
「いや、だからその筋肉は何に使うんだよ」
鞭を振るい大きく手を上げた親分が叫ぶ。
一体何が出てくるんだ? まさかドラゴンより強い魔物なんてそうそう――
「さぁ、いデよ、オデの可愛いしもべ――――ミノタウロス!!」
………………………………
しばらく無言の時間が続いた。待てども待てども何も出てこない。
「あデ? ……隠れてないで出て来ィ!! おーい。飯の時間だゾ」
「お、親分……?」
「あ、あれ? おかしいな? 昨日まではいた気がするんだが?」
後ろのリーカスたちも戸惑っている。なるほど。そういう事だったのか。
こんな所にCランクの魔物がいるのはおかしいと思っていたが。コイツらの切り札だったのか。
「あっ、ごめん。ミノタウロスはもう俺が倒したぞ?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる