ギルドを追放された【ぼっち】だけど、スキル【自動生成ダンジョン】がSSSランクの魔剣や友人を生み出してくれました。

お茶っ葉

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17話 死霊の杖

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「――――――ださい。――――――げて」

 声が聞こえる。
 掠れていて最後まで聞き取れない。
 腐った肉の臭いが脳天にまで届く。ズルズルと何かを引き摺っている。

「――もう――全です。――――――――近付か――――いで」

 身体が浮いている。夢の中だからだろうか。
 起きないといけない。早くしないと……俺には役目が……。

「っ……ここは……どこだ? ……気持ち……わりぃ」 

 目が覚めると暗闇の中にいた。
 立ち上がり石の壁を背にもたれ掛かる。
 冷たい風が流れてくる。薄暗い洞窟だった。
 
 そういえばベールは街の裏手に遺跡があると言っていた。
 きっとここがそうなのだろう。洞窟内は入り組んでいるが深くはないようだ。

「俺たちは騙されたのか……ベールも、街の人たちと同じように狂って……」

 本当にそうなのだろうか。
 食べ物を口にすれば奴らの仲間になるはずなのに。
 俺はこうして無事に意識を取り戻している。拘束もされていなかった。

「どちらにしろ。真実を知るにはこの場所から移動するしかない――――フラン目を覚ませ」
「むにゃむにゃ……マスター」

 隣で丸くなって眠っているフランを起こす。
 彼女も、それに魔剣も無事だ。一緒に洞窟内に放置されている。
 あまりにも出来すぎた状況に疑問が湧くが。今はそれどころじゃない。

 一人取り残されたクレルが心配だ。 
 俺たちは急いで遺跡を飛び出し街の中に戻っていく。

「旅人さん――――おに、おにににくははああいかががあががが」
「ミルくは、いがああ肉ああああにくにくにく」
「あぎゃ……あががががががががががががが」

「ひぃっ!? 一体何なんだ!? コイツら!?」
「ま、マスター……あの人たちから変な臭いが……」

 ウオオオ……ウウッ……オオ

 死肉を撒き散らしゆったりとした足取りで迫ってくる。
 アンデットである死人ゾンビだ。次々と町人たちが変貌していく。

「……マジか。……コイツら町民に化けてやがったのか!!」
「マスター!」
 
 フランベルクを受け取り正面に構える。
 ゾンビといえど相手は元町人。斬るのに抵抗がない訳ではない。
 だが、やらなければこちらがやられる。現世に残る怨念を断ち切らないと。

「…………ッ!! アンデットには炎が効くって相場が決まってんだ!!」

 己を鼓舞しながら。俺はフランベルクを振るい立ちはだかる死人たちを薙ぎ払った。



 ◇



「~~~~~~~~~~~」

「マスター! クレルお姉ちゃんの歌です!」
「ああ、きっとどこかで戦っているんだ。急がないと」

 霧が立ち込める視界の悪い街中を駆け巡る。
 死人の動きが鈍くなっている。これはエルフの詩による効果なのだろう。
 クレルは護身用の武器を持っていないはず。剣精が魔剣以外の武器を使うという話も聞かない。

 彼女の身が心配だ。……心配なのは彼女だけではないが。
 
 町長の屋敷の場所は知らないが。
 失われし遺産を保管できるとなると。きっと大きな建物だ。
 
「何故……逃げなかったのですか。この先は……危険です」

 やっと見つけた三階建ての大きな建物。
 その屋敷の庭に通じる正門前で彼女が待っていた。
 
「ベールもしかして君は……」

 俺たちの前に現れた彼女は素足のままだった。
 服が破けて身体の一部が破損している。それなのに血が流れていない。

「これまでも街を訪れた人たちをああやって逃がしてきたんだな……」
「……はい。旅人も商人も……可能な限り。救える者は……外に運び出していました。調査団の方たちも……私が説得……して。……今なら、間に合います……逃げてください……」

 ベールは必死に訴えてくる。
 仲間だと思われているのではなく。本当に仲間だったのだ。
 だから疑われる事なく救えてきたのだろう。眠り薬を使ったのも彼女自身の正体がばれないように……。 

「逃げる時は君も一緒だ。言っただろう。君の事を心配している子がいると!」
「カイルさんは……優しい方なんですね……。ロクも、あの子も……優しい子でした」
「まだ何か方法があるはずだ……諦めるな。俺も協力する……協力するからっ!!」
「もう、気付いているのでしょう?」

 俺はただ目の前の現実を否定する事しかできない。

「……私は既に死んでいます。町長の屋敷で死霊に操られた町長の手によって殺されました」
「――――っ!」

 彼女のお腹には大きな風穴があいていた。
 そこから肉の腐った臭いを撒き散らしている。

「強い未練が……あったから……きっと神様に……猶予を……もらえたんですね……」

 ベールは笑っていた。
 作り物じゃない。人が持つ生きた感情だった。

「失われし遺産は……死霊の杖と言って。死人を使役し。生者を……惑わす魔の力を秘めています。町長は……怪物になりました。死者を集めて……軍団を築こうとしています。止め……なければ」

 これまでも彼女は一人で戦っていたんだ。
 いつか誰かが街を救ってくれる。そう信じて今日まで抗い続けた。

「カイルさん……貴方に……託します……私を……殺して……もう……時間が……限界で」

 ベールは俺にあまりにも非情な願いを託してきた。
 魔剣を握っている事をこれほどまでに苦に思う時が来るとは思わなかった。

「私、一人っ子で両親を失って……。でもあの子が……遊びに来てくれて……楽しかったなぁ……手紙……家に置いてある。続き……書かなきゃ……それまで綺麗に……しないと。あの子に……怒られ」
「駄目だ。負けるな!! 意識を強く持つんだ!! 今までだって耐えてきたんだろう? 少年の事が大切なんだろう!? 未練だったんだろう!? 死ぬな!! 諦めるなあああああああ!!」
「ロクに……伝えて……さい。どうか、私の事は……忘れて……と。それから……私は……幸せ」

 彼女の身体が崩れていく。人の原型を失っていく。
 クソッ、クソッ!! 救えないのか。本当に殺さないと駄目なのか。
 
「ま、マスター……!」

 フランが戸惑っている。
 斬れない。甘えと罵られてもいい。
 だが俺には彼女を斬る事はできない。約束を……違える事になるから。

「……くっ、ここは一旦引くぞ。まだ……救えるかもしれない」

 ウウウア……アアア

 ベールだった死人が追いかけてくる。
 杖を破壊すれば。そんなもの気休めだとわかっている。
 既に死んでいる者をどうやって生き返らせると言うんだ。

 怒りが込み上げる。爪が肉を喰い込んでいた。
 罪なき人が踏み躙られ。命を落としていく。目の前で救えなかった。
 誰かが止めないといけない。誰かが悲しみを終わらせないといけない。

「必ず……必ず杖は俺が破壊する……!!」 
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