ギルドを追放された【ぼっち】だけど、スキル【自動生成ダンジョン】がSSSランクの魔剣や友人を生み出してくれました。

お茶っ葉

文字の大きさ
23 / 26

23話 花の指輪

しおりを挟む
 夜の帳が下りて、小動物たちが寝静まる頃。
 パチパチと音を鳴らす焚火の前で、俺たちはゆったりとした時間を過ごしていた。
 ラックとカミアは別の場所で見張りをしている。冒険者は忙しいな。旅人は本当に気楽だ。

「小鳥さんです。こっちはクレルお姉ちゃん!」

 フランは明るい地面に枝で線を引いて絵を描く。
 簡略化された人形のような女性は、両手を重ねて天に祈っている。
 背中には魔剣を背負っていて見覚えのない聖職者のような恰好をしていた。過去のクレルか?
 
 こうして見るとまるで聖女みたいだな。

「フランは絵が上手ですね。とてもよくできています」
「一人で迷子だった時は。ちょっとずつ思い出しながら描いてました」
「寂しい思いをさせてしまったのね。ごめんなさい」

 クレルの膝の上に座り見守られながら。フランは黙々と続きを掘っていく。
 今度は彼女自身が現れる。少し今より大きく成長していて、これは将来の願望か?
 随分と胸が盛られていた。クレルのような女性らしさに憧れているのかもしれない。

「……ところで俺の事は描いてくれないのか?」
「マスターは……難しいです。今日は描かないです」
「な、なんだと……!」

 断られるとは思わなかった。ちょっと寂しい。

「フランは、カイルさんには一番良いものを見せたいのよね?」
「ですです! 今度いっぱい練習します! いっぱい喜んで欲しいです!」
「くうぅっ……!」

 駄目だ。悶え死ぬ。
 フランが健気過ぎて俺の身が持たない。 
 だが彼女の理想を崩さないように我慢して男らしくあらねば。

「ふふっ、これはカイルさんも何かお返しをしないといけませんね?」
「そ、そんな! フランはお返しなんていらないです! そんな我儘な子じゃないです!」
「甲斐性を見せたいと思うのが大人の男性なのです。恥を掻かせてはいけませんよ?」

 クレルが意味深な視線を送ってくる。
 やれやれと俺は懐から用意していた物を差し出す。

「わぁ! お花の指輪です! とっても綺麗です。マスター、これは一体?」
「これはまぁ、俺の趣味みたいなものだな。普段から薬草採取をしていると、珍しい品種の花を見つけることがあってな。この地方に伝わる不幸から身代わりになってくれるお守りのような物だ。枯れないように専用の魔法道具を使ってあるんだ」

 作るの自体は簡単だが。昔と違って材料となる花が激減していた。
 この前ダンジョンに入った時に、偶然見つけたものを馬車の中で暇潰しに加工していたんだ。
 二人にばれないようにこっそりやっていたんだが。クレルに気付かれていたか。

「カイルさん、これ一人分多くありませんか?」
「そりゃクレルの分も作ったからだよ。ほらっ、手を貸せ」
「わ、私はカイルさんの魔剣では……!」
「何を言っているんだ。仲間外れにする訳ないだろう」

 手を掴んで人差し指に入れる。サイズは目測だったが問題ないな。
 放すとクレルは逃げるように手を胸において恥ずかしそうにしていた。

「ご、強引です……」
「こうでもしないと受け取ってくれないだろう?」 
「わーい! クレルお姉ちゃんとお揃いです!」
「こ、こういうのは初めてで……どんな顔をすれば……」
「贈り物ぐらいたくさん貰っているんじゃないのか?」
「……剣精の仕事は戦う事ですから」

 昔から人に仕えていて贈り物を受け取るのは初めてか。
 数百年前は戦乱の時代だったのかもしれないが。寂しい話だ。
  
「……俺に捕まったのが運の尽きだな。俺は剣精を戦う道具として見ていない。友人としてみている。これからも贈り物は渡すし、嫌だと言ってもくだらない事にも付き合って貰うからな。……残念だったな?」
「カイルさんと一緒にいると、自分の役目を忘れてしまいそうです」
「別にそれでいいだろ。深く考えなくていいんだよ」

 時々、クレルの歌声を聴いていると。
 無性に一人にしてはいけないという気持ちにさせられる。
 記憶を失っていたフランと違って、彼女はずっと孤独だったのだ。

 見捨てられてしまっても尚。剣精として尽くそうとする。
 それが造られた感情だったとしても。俺はそれに報いたいと思う。
 寂しいじゃないか。頑張っているのに。誰にも褒められないなんて。

 俺だって、誰かに認めて貰いたくて頑張っている節があるからな。

「クレルだってご褒美を貰う資格はあるんだ。流石に、金銀財宝に劣るかもしれんが」
「……そんな事はありません。……ずっと大事にします」

 確かに強引だったのかもしれないが。
 光に照らした指輪をじっと見つめるクレルの姿を見ていると。作った甲斐はあったかなと思えた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...