ハローワークで見つけた冒険者業が天職だった件〜ハズレ職業である武闘家の俺、最上位職のマジックブレイカーに転職したので駆け上がっていきます〜

甲賀流

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44話 自己紹介は大切

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 あんなお色気お姉さんに手招きをされてしまっては、行くしかあるまい。
 いやまぁ仕事の研修なんだし、上司に呼ばれりゃ素直に向かうのが当たり前なのだが。

 俺は冒険者の隊列を避けるかのように端を通って柳井 玲子さんの元へ向かうが、それにしても周りの視線がなぜか痛く感じる。

「なんだ、第2支部って?  」
「E級の初心者みたいだぜ  」
「きっと生ぬるい育て方されてるんだろ  」

 聞こえてるよ?
 なんかコソコソ言ってる素振りしてるけど、あんたら声大きいって。

 しかも誰か俺のこと鑑定しただろ?
 誰だ、E級をバカにしたのは。
 こちとら一生懸命冒険者やってんだよ。

 そんなこと思いながらも俺は玲子さんの近くまでやってきた。

「うんうん、近くで見ると可愛い顔してるじゃん  」

 彼女は俺の顔を間近で見て、頭ポンポンしてきた。
 そして顔を褒めてくるだと――っ!
 そんなこと経験がない……。
 ううっ……苦しい、心臓が壊れてしまうぞ。

「えっと、自己紹介すればいいですかね?  」

 ここは少しでも平然に装わねばっ!
 俺はあくまで仕事をしに来ていますという顔を作るんだ、戸波 海成っ!

「そうだね、お願いしてもいいかな?  」

 そう言って彼女は可愛く首を傾げてくる。

「分かりました  」

 俺は皆に体を向けて、

「おはようございます。レベルアップコーポレーション第2支部からきました戸波 海成と申します。まだ冒険者になって2ヶ月程度です。今日から1ヶ月こちらでお世話になります。分からないことも多々あると思いますが、どうぞよろしくお願い致します  」

 できるだけ丁寧に挨拶をした。
 1ヶ月もお世話になるのだ。
 居づらくなってもしんどいし。

 パチパチパチ――

 盛大なスタンディングオベーションが俺の研修開始を彩っている。
 まぁみんな立ったまま話を聞いているため、自然とそうなるだけなのだが。
 そんな拍手とは裏腹に俺への興味はほとんどなく、みんな早く解散しねーかなとでも思っているのか気怠げにしている人が多数、ごく少数は未だに玲子さんに見惚れているものもいる。
 特段目立ちたいと思っているわけではないので、このくらいがちょうど働きやすい。

「はーい、みんなっ! 実はこの戸波海成くんが今噂になっている『冒険者キラー』なのですっ! きっとお互い学べることもあると思うので、是非とも仲良くしてくださいね~ 」

 彼女の一言で全ての視線が俺へと集まった。

「嘘だろ……。アイツが伝説の……  」
「いや、だってどう見てもE級のステータスだぞ 」
「何かの間違いだって 」
「でもヨウスケが助けてもらったって 」

 何やら騒がしくなってきたぞ。
 なんだ、俺……冒険者キラーって呼ばれてるの?
 きっと浦岡と池上の件だな。
 玲子さんめ、要らぬことをしおって。

 そう思って彼女に目をやると、親指を立てて俺へと微笑んでいる。
 いや、「クラスに溶け込めるように話題を作ってあげたよ 」とでも言いたげだなっ!
 違うって、こういう時は変に目立っていじめられるのが相場なんだって。

「じゃあみなさーん、改めて、今日も1日頑張ってくださいっ! 解散 」

 彼女のその言葉で、みんな持ち場へ移動し始めた。

 ちょうど俺と玲子さんが立っているところはこの空間を一望できる中心地点のため、この部屋の仕組みがよく分かる。
 俺が今、仕組みという言い方をしたのは、その移動方法に対しての言葉だ。
 入ってきた時は気づかなかったが、部屋の角にはそれぞれ魔法陣のようなものが設置されている。
 それは俺が初めてE級ダンジョンで使ったものとほぼ同じもの。

 朝礼が終わった冒険者達は元々決められているかの如く、各自どれかの魔法陣へ移動し、その上に飛び乗っている。
 人が乗ったと感知した魔法陣はすぐさま起動し、対象者を転移させていく。
 今のところ冒険者は1人ずつ転移しているが、乗った瞬間に移動するため、サクサクと移動が済まされていった。
 これならあっという間にみんな持ち場へ行けるわけだ。

 この時点ですでに技術力じゃ本部には勝てないことが分かった。
 そりゃ勝ってもらわないと困るわけだが。

「戸波くん、渉は元気にやってる? 」

 突然隣の玲子さんから声をかけられた。
 渉と聞いて一瞬誰のことを言っているのか分からなかったが、すぐに名字が思い浮かんだ。

「あぁ久後さんですか? はい! いつもハツラツとしていますよ 」

「はははっ。渉らしいね 」

「あの……えっと柳井さんは久後さんとお知り合いなんですか? 」

「玲子でいいよ。みんなそう呼んでるし。彼とはね、ここの同期なの。昔から突拍子もない人だったけど、急にこの会社の第2支部を作りたいって言い始めたのにはびっくりしたわ。それを叶えちゃうところも渉らしい 」

「同期ですか!? 久後さんと言い玲子さんと言い、同期の方はすごい人ばっかりなんですね 」

「同期、か。それももう渉と私の2人だけだけどね 」

 少し玲子さんは表情を曇らせた。
 しまった、これは確実に失言というやつだ。
 聞いてはいけないことを聞いてしまったぞ。

「す、すみません…… 」

 なんというか、それ以上言葉が出てこなかった。

「ううん、気にしないで。私の同期はこの会社に殺されたも同然。きっと渉が第2支部を作りたかったのもその事と関係あるはず 」

「……!? 玲子さん、それってどういう? 」
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