未踏のダンジョンで育ったボクが竜の力を使って最強のハンターを目指す話~ハンター学校の令嬢を助けた姿が配信されてシルバー様と崇められる

甲賀流

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第17話 実技試験開幕

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 ボクが男気バトルに勝利してちょうど1週間。

 あの後、ソルイは本体に再び戻った。

 孝二さんが言うに、武器の魂が具現化するなんて現状はあり得ない。
 このことが世間にバレると色々大変になるから隠しておくように、とのことだ。

 ソルイは少しゴネていたが、

「バレたら間違いなく、研究として武器を解体されるでしょう」

 と、孝二さんに言われてから顔を真っ青にして本体へ戻っていった。

 それからは武器を通して、念話のようなものでボクの頭に直接訴えかけてくる。
 なんだかうるさいかったので、この1週間はあまり本体に触れていない。

 そして今日は待ちに待った3級ハンター試験。

 荷物もリュックに詰めたし、準備万端だ。
 とはいえ実際に荷造りしたのはボクではなく、玲奈だけど。
 昨日、食べ物や飲み物なんかを詰めてくれていた。
 
 ボク達は今、その試験会場、ダンジョン『零』の前で待機している。
 ダンジョンの外観ってどんなのだろうって思ってたけど、目の前には人が横並びで10人は並べそうな広い階段が地下に続いている、それだけだった。

「いやぁ~ここがダンジョン『零』の入口っ!  俺ぁダンジョンってのはタワー状に上へ連なってるもんかと思ってたんだが、違うかったんだなぁ。なっ?  そうは思わねぇか、旦那っ?」

「うん、ビックリだけどさ、旦那じゃなくてボクはリュウだって何回も言ってるよね?」

「細けぇことはいいんだよっ!  強ぇやつをそう呼んでるだけだ。そりゃあハンター養成学校の代表する護衛ハンターの『前田 秦』と有名Dチューバーの『ケンタ』を素手で倒したやつが旦那じゃねぇならどこのどいつが旦那なんだっ!?  俺の前に連れてきてみろってな!  ナハハッ!」

 ボクの目の前にいる金髪の男の人、この人は本当におしゃべりな人だ。
 
 男気バトルの配信を見たとかでこの1週間「旦那っ!  旦那っ!」と、しつこく話しかけてきた。

 まさかハンター試験まで一緒とは。

「……まぁどう呼ぼうと君の勝手だけどさ」

 最初はリュウだと否定し続けていたけど、もうめんどくさくなってきた。

「だろ?  だから俺にとっては旦那なのよっ!  それと俺のことは君、じゃなく鳴上なるかみとか大我たいがとか名前で呼んでくれって言ったじゃん~!」

 この人の名前は、鳴上大我というらしい。
 笑った時にキラッと見える八重歯が彼の陽気さを表しているみたいだ。
 その歯と同じようにその金髪もたくさんの毛束がピンッピンッと尖っている。

「わかったよ、大我くん」

 とりあえずそう呼ぶことにした。
 それを聞いて彼は満足そうに微笑んでいる。

「えー皆様お揃いのようですね。今年の3級ハンター試験は我々、ロベール様直属の護衛ハンター数名が取り仕切らせて頂きます。僕はその中のリーダー飛田翔眞ひだしょうまと申します。しかしダンジョン『零』は広い。僕達少数では心許ないので、10人ほどアルバイトのハンターにも手伝ってもらうつもりです。尚、アルバイトといっても皆さん2級ハンター以上の実力を持っていますのでダンジョン内で緊急事態があれば、是非とも頼ってもらえればと思います」

 目の前の身なりを整えた男性、飛田というらしい人はそう挨拶の言葉を述べ、深々と頭を下げた。

「ロベール様?」

 知らない名前が出てきたので、ポロッと口に出すと

「旦那、知らねーのか!?  ハンター養成学校内最強の称号を得た10人『十傑』のうちの1人、第九席:ロベール・ド・コルネ様だぞ!?  ……まぁあんまりいい噂は聞かねぇけどな」

 へぇ、そんな人全然知らないや。

「なぁ、今回の報酬知ってるか?」
「あ?  知らなきゃ誰もバイトしねぇだろ!」
「言われたことをするだけで、日給5万ってそんなのやるしかねぇよな」
「やっぱりロベール様は羽振りがいいお方だ」

 ボク達の後方に並んでいるアルバイト?の人達がコソコソと話をしている。
 あの人達もロベールがなんとか言ってるってことは本当に有名な人なんだね。

 あんなにペラペラと話しているのに、周りの人は誰も気にした素振りすらない。
 父さんいわくボクの耳は普通の人間よりよく聞こえるようになっていると言っていたしあの話し声、もしかしたらボクにしか聞こえないのかもしれないな。

 そう思って隣の大我くんに確認すると、

「一体なんのことだっ?」

 そう言ってあっけらかんとした顔をしている。
 やっぱりボクだけらしい。
 なんか怪しいし、ちょっと気にしている方がいいのかな?

 そう考えていると飛田さんが、

「では改めて簡単にルールをおさらいしますね!  試験合格の基準は、ダンジョン『零』の10階層まで到達したもの。その階層はすでに開拓されているところですので、皆さん受験生には平等にダンジョンマップのデータをお送り致します。……ただ、今年は受験される方が多いので、全員がゴールしたとしても今回の合格者は最大10人とします。皆さん、無理せず危険を感じたら後で配る『帰還石』で帰ってきてください。では早くゴールできるといいですねっ!」

 スラスラとルール説明をしてくれた。
 一応ルールは玲奈から散々叩き込まれていたから大丈夫だったけど、復習がてらになってちょうど良かったよ。

 それにしても受験する人が多いって、たしかに今集まっているのは30人くらいいるのかな?

「おい、これきっと早くゴールできたやつが合格するんだぜ!」

 その中の1人がポロッと呟いたことで、周りの受験者は皆、肩をブルっと震わせる。

「では、皆さん気をつけて攻略して下さいね!  3級ハンター試験……開始っ!」

 さっきルール説明してくれた人が合図を放った瞬間、受験者は皆一様に急いで入口へ向かう。

「おい退け、俺が先に行く!」
「待て!  ずるいだろ!」
「私だって早くゴールにっ!」

 入口前から早速混雑し、あまりの人込みに後方へ押し出されて転倒するものも現れる。

「きゃっ」

 どてんと尻もちをついたその人は女の子。
 大きな大剣を背負っている。

 可愛い女の子は助けないとっ!

 そう思って彼女の正面へ回り、手を差し伸べた。

「大丈夫?」

「えっ!  あぁ……すみません」

 彼女はオロオロと目を泳がせるも、ボクの差し出した手を引いてゆっくり立ち上がった。
 
 それにしてもやはり可愛い。
 淡い水色をした長い髪は右サイドで1つ結びになっており、肩へ滑らせている。

 うるうるとさせているその大きな瞳は、可愛い小動物感を醸し出し、つい守ってあげたくなりそうだ。
 
 
「えと……その~。……あの、ありがとうございました」

 彼女は今にも消え入りそうな声でお礼を告げ、そそくさとダンジョンへ向かっていった。

「可愛い子を助けるなんて、旦那も隅に置けねぇな!」

「何を言ってるの?  可愛い子なら助けるのが常識でしょ?」

 父さんにそう教えてもらってるんだから。

「ぷっ!  違ぇねぇ」

 なぜかボクの言葉に吹き出した大我くんは

「旦那、俺達も行こうや」

「そうだね!」

 これから始まる3級ハンター試験、立て続けにトラブルが起こっていくことをボクはこの時、知る由もなかった。 


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