未踏のダンジョンで育ったボクが竜の力を使って最強のハンターを目指す話~ハンター学校の令嬢を助けた姿が配信されてシルバー様と崇められる

甲賀流

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第29話 裏切り

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 アルバイトの人達が蜘蛛の大群に囲まれている。
 その数、数百はくだらないと思う。

「くそっ!  どうする旦那?  助けるか?」

「うん、助けたい……っ!  けどボクもさっきの戦いでかなり力を使っちゃったからこの数はさすがに……」

 ラクナ戦で使った竜装甲はかなりのエネルギーを使う。
 おそらく数日は同じ技を使えないほど。
 しかし竜エネルギーを使わずに戦える数でもない。
 
   さてどうしよう。
    そういえばさっき取り込んだラクナに対処法を聞いたり出来ないかな。

   (リュウ、悪いがさっきの吸収で思ったよりエネルギーを使ってしまった。なんとか切り抜いてくれ)

    そりゃあんなの取り込んだんだし、ソルイも負担が大きいよね。
    仕方ない、ここはなんとかするしかない。
   
「わ、私が大剣で大我さんを守りますっ!  なので守備は気にせず撃ちまくってくださいっ!」

 そう言ってサラは大剣を構え、周囲に光の膜を張る。
 その範囲はボク、大河くんまでも包み込んでくれた。
 これがある限り蜘蛛は攻めてこれないってわけだね。

 さっきの戦いでもチラッと見てたけど、よほどの数で押し切られることがない限りこの膜は破れないし、この中からも銃が放てるってことは中からの攻撃は外へ届くってことになる。

 つまりサラの守り、大我くんの遠距離攻撃はとっても相性がいいのだ。

「よっしゃ!  すまんがサラさん、守りは任せたっ!」

 大我くんはエネルギー弾を彼らに一番近い蜘蛛達へ放つ。

 バンッ――

 その攻撃は、蜘蛛十数匹を一気に蹴散らした。

「そこのアンタッ!  ありがとうーー!!」

 ハンター達も一生懸命戦っており、それでも数の力で押し切られていたものを今の一撃で戦況は五分五分となった。

「俺らが助太刀してる間に帰還石を使ってくださいっ!」

 大我くんはそう言いながら引き続き応戦していく。
 
 ボクも何か出来ることをと探した結果、ガントレットで手前にいる蜘蛛達を順に潰していっている。

「それが……この帰還石使えねぇんだ!!  なぁロベール様にはまだ連絡繋がらないのか!?」

「何度か連絡を試みてるんだが、応答がないんだ」

 ヘッドフォンのようなものをつけている男の人がそう疑問に答える。
 やっぱりアルバイトの人達はロベールという人に何か頼まれているみたいだ。

「……待てっ!  繋がったぞ!  もしもし……ロベール様、一応指示通り転移魔法陣は完成させました!  ただ帰還石が使えなくて……」

 電話とはスマホを耳に当てて行うものだと聞いたけど、あの人はヘッドフォンを通して会話をしている。
 そんな手段があるのか。

 通話中の彼はなぜか表情がどんどん青ざめていく。
 何かトラブルかな?

「二、ニセモノ?  そんなのどうやって帰れば……え……ロベール様、今なんて言いました?」

 ヘッドフォンの彼の言葉に、残る2人のハンターが敏感に反応する。

「……は?  どゆこと?  ちょっとスピーカーにしてくれ!」
「今帰れないって言ったか!?」

 すると、ヘッドフォンの設定を少しイジったのか通話越しの声が大音量でボク達にまで届くようになった。

 それは甘く優しい男の声。
 声の感じ、同年代かもう少し若い印象を受ける。
 そんなボイスとは裏腹に、放たれた言葉は実に悲惨なものだった。

『え~何度も言わせないでよ~。君らは用済みって言ったんだ。帰還石だってニセモノ、そこでモンスターの餌にでもなってな』

「う、うそですよねロベール様……」

『元々君ら3人は生きて地上へ返すつもりはなかったんだ。人工の転移魔法陣が違法なのは知ってるだろ?  俺の指示だってバレると色々マズイからねぇ』

「そんなぁ……」
「俺たちここで死ぬのか……?」
「くっそ……ふざけんなよ、ロベーーールゥゥ!!!!」

 ハンター達は絶望の淵に立たされ膝から崩れ落ちるもの、ロベールに対して激昂するものとそれぞれ感情を電話の向こうへぶつけた。

『プ……ッ!  ククク……ッ!  あ~我慢できなかった~。笑っちゃいけないのは分かってるんだけどね。君らみたいなバカがさ、騙されたことに気づいた瞬間ってどうも俺の中でツボなんだよな~。違法の仕事頼んでんだから普通は疑うだろ~!』

 ハンター達の感情に反して、ロベールは愉快に嘲笑っている。

「くっそぉ!!  こんな仕事受けるんじゃなかった」
「俺だってダチについてきただけなのに……」
「ヤバい……っ!  もう逃げ場が……っ!」
 
 そんな殺伐とした会話の中でも蜘蛛達は攻める姿勢を崩さない。
 完全に取り囲まれたまま徐々に詰め寄られる。
 
 なんとか大我くんのエネルギー弾で戦局はかろうじて均衡を保てていたが、それももう限界。
 少しずつ放つエネルギーも小さくなっているみたいだし。

 だけど、大我くんとサラのおかげでボクもわずかに力を溜めることができた。
 竜エネルギーはボクの体で生み出されるものだから時間によって少しずつ回復していくのだ。

 今のエネルギー量ならっ!
 あの3人を助けようっ!

「【  竜翼  】!  みんな、捕まってっ!!」

 よし、成功。
 今なら【  竜装甲  】は無理でもそれよりエネルギー消費量の少ない【  竜翼  】ならいけると思ったんだ。
 これは翼を生やすだけだからね。

 ボクは飛翔して、ハンター達に襲いかかる蜘蛛達をできる限り左右の竜翼で切り裂きながら3人の元へ向かう。

「うう……っ!  ありがとうぅ」
「すまねぇ……」
「助かったァ!」

 そして目の前の3人を両翼でキャッチ。
 彼らを掴むので精一杯で翼が使えなくなってしまったがそのままの勢いで蜘蛛の大群を飛び越え、華麗に着地してみせた。

「よっし、なんとか成功かな?」

「旦那ァ!  ヒヤヒヤしたぜ……。とりあえず逃げるぞっ!」

「こ、こっちです!!」

 サラは転移魔法陣近くで手招きをしている。
 彼女までの道のりに蜘蛛達の死骸が転がっていることから、ボクの到着に備えて2人が準備してくれていたのかな。

 それから後方から攻めてくる蜘蛛をみんなで処理しながら彼女の元へ向かった。

「皆さんっ!  速く飛び乗ってくださいっ!」

 サラの案内に従ってボク達は順に転移魔法陣へ足を踏み入れていったのだった。
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