未踏のダンジョンで育ったボクが竜の力を使って最強のハンターを目指す話~ハンター学校の令嬢を助けた姿が配信されてシルバー様と崇められる

甲賀流

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第31話 これからのこと

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 どれくらい時間が経っただろう。
 大我くんもサラも同じ気持ちなのかな。

 あの場からは少し離れた。
 一度モンスターの気配がない場所で気持ちを落ち着かせている。

 あの時、鈍い爆発音と共に彼ら3人の姿は完全に消え去っていた。
 いや……正確に言うと消し飛んだという方が正しいか。

 結論から述べるとあの防刃服には火薬が仕込まれており、通話直後の爆発だったためおそらくロベールの好きなタイミングで起爆するようになっていたのだろう。
 爆発の威力としては決して大きいものではなかった。
 あくまで最小限。
 しかし人間を木っ端微塵にするには申し分ない威力だった。

 あの場から離れたのは、目の前で人が飛び散った姿を見て大我くんとサラが正気を保てなかったからだ。
 千切れた体の部位、吹き出した血液、剥き出しになった臓器、そしてその臭いに2人は思わず吐物を吐き出した。
 
 ボクはダンジョンでモンスターを剥いで食べたりしていたため、そういう耐性は他の人よりあった。

 だけど……友達が目の前で死ぬなんて初めてだ。
 さっきまで楽しくお話して、地上へ戻った時の約束までした。
 そんな彼らを失って初めて巻き起こる感情。

 悲しい――

 ボクはひたすら泣き叫び、喚き散らす。
 大我くんとサラもボクと一緒になって枯れるまで涙を流した。

 そしてその声がダンジョン内に響き渡っていたようで、

「3人とも! ここにいたか! そんなに泣いてどうした?」

 ボク達に声をかけてくれたのは飛田さん。
 女王蜘蛛ラクナの件で共に戦ったという認識も強く、今回の出来事を全て打ち明けた。

 彼はロベール直属の護衛ハンター。
 今思えばグルの可能性の方が圧倒的に高く、相談すべき相手としては適切でなかったのかもしれない。
 だけど、ボク達の話を全て聞いた飛田さんは、

「そうか……。よく話してくれた……っ!」

 そう言ってボク達3人をまとめて抱きしめてくれた。
 そのまま彼は話を続けて、

「俺達はあくまで雇われ、ロベール様の身内ってわけじゃない。彼の黒い噂はなんとなく耳にしていたが、これで完全にクロだな。リュウくん、大我くん、サラさん、後は俺に任せておけっ!!」

「うう……飛田さんありがとう……っ!! ボク、地上へ戻ったらロベールってやつをぶっ飛ばすよ!」

「リュウくん、それはやめた方がいい」

「え、なんで?」

 あんな奴さっさとぶっ飛ばす方が良い。
 ボクには彼が止める意味がわからなかった。

「今はロベール様が完全にクロだっていう物的な証拠がない。彼は一応養成学校の十傑であり、大手ギルドマスターのご子息でもある。今の時点で彼に攻撃したらリュウくん、君が悪者になってしまうんだ。そんなの、命を落とした彼らも望んではいないはずだよ」

「……そうだぜ、旦那。俺もエイジ達の仇を取りたい。だけどロベール様ってのは地上ではなぜか圧倒的な人望がある。今俺達が何を言っても信用してもらえないだろうよ」

「そっか。ならどうすれば……?」

「その辺は帰ってから考えようか。俺が探し始めてかなり時間も経つ。そろそろ外の連中が中へ捜索に来るかもしれないし。この話が聞かれるのもマズイだろ?」

 たしかに飛田さんのいうとおり。
 ロベールにもボク達は認識されているわけだし、あまり飛田さんの長い時間過ごすのも怪しまれる。
 そうなると、飛田さん自身も被害を受けるかもしれない。

「みんな帰還石はあるね?」

 ボク達はみんなそれを取り出すことで所持していることを伝えた。

「ロベール様の件もあるし、念の為時間をズラして戻ろうか。それと俺が見つけたということは秘密にしてくれ。怪しまれる可能性もある。じゃあ先に戻るね」

 そう言って飛田さんは初めに戻っていった。
 よし、ボク達もそれに続こう。

 そう思った時、

「あの、リュウさん……」

 サラがボクの制服の裾を引っ張ってきた。
 彼女のか細い声は微かに震え、今すぐ泣き出してしまいそうな表情をしている。

「どうしたの?」
 
 サラの視線はオロオロと泳いでおり何か言いづらそうな、そんな雰囲気だ。

「ようしっ!  旦那、俺ァ先戻ってるぜ!」

「え、あ……でもサラが今何か言おうと……」

 大我くんはボクの肩に腕を回してきて耳打ちしてくる。

「旦那ァ! 女性ってのは特定の男性に聞いてほしい話っつーのがあんだよ。サラさんにとってそれは俺でも飛田さんでもねぇ。危険を顧みずミノタウロスから身を守ってくれたヒーロー、リュウのことなんだ。旦那にしか話せねぇ胸の内ってのがあんのさ。旦那も男ならサラさんの話しっかり聞いてやんなっ!」

 大我くんはそう言うと、ボクの背中をパシッと強く叩いてから帰還石で地上へ戻って行った。

 男なら、か。
 父さんもよくそんなこと言ってたっけ。

 なんにせよ、彼女はボクのことを相談相手として頼ってくれた。
 その気持ちには精一杯応えてあげたい。
 それからボクはサラの話を聞くことになったのだ。
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