深淵の調教 続ある調教物語

あさき のぞみ

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実行

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萱野の命令は、完璧に実行された。
まゆみ(育美)との同居を始めたその夜、彼女が安らかに眠りについた隙を突き、田山(小山)は、まゆみの全てを奪い去った。財布、通帳、カード、契約書、そして彼女の未来を担保するあらゆる財産が、彼の手に握られた。
夜明け前、田山(小山)は、その奪い取った全てを抱え、萱野が待つマンションへと戻ってきた。
「すべて、回収してきました」
田山(小山)は、無言で萱野に奪い取った品々を手渡した。萱野はそれを一つ一つ確認し、冷徹な目で頷く。
その時、田山(小山)の顔に、一瞬、ニヤリと嘲笑(あざわら)うような笑みが浮かんだ。それは、彼自身の破滅を招いた女への、そしてかつての自分を陥れた「育美」という存在への、複雑な感情が入り混じった、屈折した笑みだった。
萱野は、その笑みを無言で見つめ、隣の部屋へと田山(小山)を促した。
田山(小山)は、そこで疲れ果てたかのように、すぐに深い眠りについた。薬の影響もまだ残っているだろう。
しかし、萱野の冷酷な計画に、慈悲の心など存在しない。
隣の部屋で眠る田山(小山)の姿を、壁に仕掛けた監視カメラで確認していた萱野は、すぐに海斗を呼び出した。
「お前の任務だ。あの男を、捨てるように」
萱野の言葉は、まるでゴミを捨てるかのように淡々としていた。
海斗は、言われるがままに、深く眠り込んだ田山(小山)を抱え、人通りの少ない路上へと捨てた。彼は再び、かつての場所へと、無一文で置き去りにされたのだ。
その頃、目覚めたまゆみ(育美)は、隣に田山がいないこと、そして、自身の全てが失われていることに気づき、戦慄した。彼女の「勝算」は、最悪の形で裏切られたのだ。
田山と全財産を失ったショックで、まゆみ(育美)は膝から崩れ落ちた。しかし、彼女の身体を蝕むものは、精神的なショックだけではなかった。
保険証すら奪われていたまゆみ(育美)は、何とか這いつくばって病院にたどり着いた。しかし、そこで彼女が知らされたのは、絶望的な現実だった。
「血液検査の結果、HIVの陽性反応が出ています。そして……現状では、余命2週間というのが診断です」
医師の言葉は、彼女の耳には遠い雷鳴のように響いた。
まゆみ(育美)は、自身の計画のすべてが、より大きな、そして残酷な復讐劇の一部に過ぎなかったことを、その時、初めて悟った。彼女が仕掛けた「勝算」は、萱野によって用意された破滅への道筋だったのだ。
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