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俺には自信がなかった。透明人間のように、誰の目にも留まらない高校生活。
生物室の水槽の前で出会った早川さんが問いかける。「金魚と鳥、どちらが幸せだと思う?」外の世界を知らない金魚と、空を知っている鳥。彼女は言った。「中井くんは鳥だと思うよ」
しかし早川さんは突然、学校を去った。妊娠。相手は誰なのか。真実が明らかになるとき、俺は何もできない自分を呪う。
大学生になっても何も変わらなかった。教育実習で出会った渡瀬という生徒。虚無的な彼女の目は、どこか俺に似ていた。DMが始まり、距離が近づき、そして——。
水槽の外に出たつもりだった。でも俺は、もっと深い水の中に沈んでいくだけだった。息ができない。もう、引き返せない。
文字数 35,881
最終更新日 2025.12.15
登録日 2025.12.15
初めて担任を受け持つことになった高校教師、中井。完璧な教師の仮面を被る彼は、常に透明な壁越しに世界を眺める「水槽の魚」のような孤独を抱えていた。
そんな中、窓際の席に座る生徒、田中咲が彼の内面に静かに踏み込んでくる。彼女は中井を「水槽の魚」と呼び、自らを「鳥籠の鳥」だと告白する。
生徒の本質を見抜く視線に、中井の平静は揺らぎ始める。彼女の言葉は真実か、それとも挑発か? 抑え込んできた教師の仮面の下の醜い自己が、生徒との境界線を曖昧にしていく。これは、現実と妄想、欲望と倫理の狭間で繰り広げられる、静かで緊迫した心理ドラマ。
二人の隔絶された魂は、互いの檻を壊せるのか。
文字数 7,157
最終更新日 2025.12.13
登録日 2025.12.13
重度知的障害のある娘、受け入れ先を探し続ける日々、限界に達する妻——。
田中保と美樹は、五歳の娘・美保を育てながら、やっと見つけた居場所で束の間の安心を得る。しかし、ある事故をきっかけに、家族の日常は一変する。
訴訟、孤立、そして取り返しのつかない喪失。
すべてを失った保に残されたのは、何も語らない娘だけだった。
それでも、保は選ぶ。倒れることも、逃げることもせず、ただ娘と共に歩むことを。
「助けを求めていい。一人で抱え込まなくていい」
現代日本の福祉制度の隙間で苦しむ家族の姿を通して、人間の弱さと強さ、そして希望を描く、静かで力強い物語。
悲しみの先に、光はあるのか——。
文字数 31,574
最終更新日 2025.12.10
登録日 2025.12.09
僕の脳内は常に「大渋滞」!ADHDの青年、悠人(19)の人生は衝動と過集中が連発するカオスだ。そんな最悪な日に、静かで美しい女性、静香に一目惚れ!
しかし、衝動的に始まった初恋は、わずか数日で「人妻と勘違い」という壮大すぎる勘違いで即座に大破!? 傷心の中、ゲリラ豪雨が二人の運命を急接近させる。停電の夜、同じ部屋に閉じ込められた悠人を襲うのは、「童貞の焦燥感」と、静香の寝息に紛れた知らない男の名前という、最悪のノイズ!
己の特性を呪う悠人は、この非日常を乗り越え、自己肯定という名の「コンティニュー」を押せるのか? 衝動とアイデンティティを巡る、東京の青春物語!
文字数 29,609
最終更新日 2025.11.17
登録日 2025.11.17
これは、前作で描かれた「勝算」の裏に隠された、**「見えざる手」**の物語。
すべてを失い、絶望の淵にいた男、萱野。彼に残されたのは、わずかな宝くじと、育美という女への燃え盛るような憎悪だけだった。奇跡的な当選金を手にすると、萱野の心に死んでいたはずの**「復讐の炎」**が再燃する。
萱野は、その資金と冷徹な知性をもって、「駒」と呼ぶ人間たちを集め始める。路上生活者から見出した男を「田山」という完璧な仮面を被らせ、ある女には秘密を抱かせながら、田山へと近づけさせていく。彼の目的は、彼らを自身の復讐計画の歯車として完璧に機能させることだった。
標的は、かつて萱野の人生を破壊した女、育美。彼女が今、「まゆみ」という別の顔で生きていることを突き止めると、萱野は緻密な情報戦と心理戦を仕掛けていく。まゆみの行動範囲を徹底的に探り、彼女が最も心を許す場所にまで、「田山」という名の存在を刷り込ませていくのだ。
文字数 16,510
最終更新日 2025.10.05
登録日 2025.10.05
これは、現代社会の最も深い闇、SNS依存と共依存をテーマに描く、痛切な社会派サスペンス。
主人公はメンエス嬢として働く育美(25歳)。疲弊した彼女の精神を保つのは、私生活を切り売りして承認欲求を満たす**SNSの「いいね」**の数だった。
ある日、育美は店で**萱野(35歳)という客と出会う。家庭内で孤独を抱える萱野は、ネットの海から育美の非公開アカウントを探り当てる。彼は、育美のSNSへの渇望を「頑張り」と肯定し、その投稿内容や私生活にまで、「品位」**という名の詳細な指示を出し始める。
萱野の支配は、最初は**「プロデュース」という名の甘い毒だった。指示通りに振る舞う育美のフォロワーは増え、否定的なメッセージは消える。彼女は、この「調教」こそが、自分を「正しい人間」へと導く愛情**だと錯覚し、彼の命令に喜んで服従していく。
やがて、萱野の支配はSNSから育美の身体へと及び、彼女は自身の最も私的な部分までを彼に差し出す。二人の関係は、究極の支配と被支配の構造を完成させたかに見えた。
続編背徳の調教も読んで頂けると幸いです。
文字数 22,231
最終更新日 2025.10.01
登録日 2025.10.01
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