「俺、女子高生になります

あさき のぞみ

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番外編

第5話 七海との出会い

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それから数年後。

『HANAKA』は、全国展開する人気ブランドになっていた。

ある日。

渋谷の本店に、一人の女性が訪ねてきた。

「あの……」
「はい、いらっしゃいませ」

花奈が、振り返る。

「私、近藤七海と申します」

「近藤……さん?」

「実は、ライターをしていまして」

七海は、名刺を渡した。

「女子高生向けのコスメブランドについて、取材をしたいんです」

「取材……」

花奈は、名刺を見た。

『フリーライター 近藤七海』

「もちろんです。喜んで」


数日後。

オフィスで、七海のインタビューが始まった。

「なぜ、高校生向けなんですか?」

「……実は、きっかけがあって」

花奈は、語り始めた。

「昔、ある女の子にメイクを教えたことがあるんです」

「ある女の子?」

「帰国子女で……すごく真剣だった」

七海の手が、止まった。

「その子が、私に教えてくれたんです」

「何を?」

「高校生って、自分を作っていく時期なんだって」

花奈は、窓の外を見た。

「私、その手伝いをしたいって、思ったんです」
「……」

七海は、何も言えなかった。

その「ある女の子」が――

自分の夫だということを。

「近藤さん?」

「あ、すみません。感動して……」

「ありがとうございます」

取材は、続いた。


取材が終わって。

七海が、オフィスを出ようとした時
――

「あの、近藤さん」

「はい?」

「もしかして……聖ヶ丘女子学園の卒業生ですか?」

「……!」

七海が、振り返った。 

「どうして……?」

「名簿を見たことがあって。美山理事長から」

「そうなんですか……」

「もしかして、佐伯さんと同じクラスでした?」

七海の顔が、強張った。

「佐伯……さん?」

「帰国子女の子。私がメイクを教えた」

「……ええ、同じクラスでした」

「そうなんですか! あの子、元気ですか?」

「……」

七海は、少し考えてから――
「はい、元気ですよ」 

嘘は、つかなかった。

「良かった」

花奈は、安心したように笑った。


それから数ヶ月後。

七海は、女子校への潜入取材の準備をしていた。

「コスメ、どうしよう……」

スマホを見ながら、考える。

「高校生らしいブランドで、でも品質がいいもの……」

その時、思い出した。

「HANAKAだ」

すぐに、花奈に連絡した。

『香山さん、お願いがあるんです』

『何ですか?』

『実は……女子高生の取材をしていまして』

少し嘘をついた。

『コスメを協賛していただけませんか?』

『もちろんです! 喜んで!』


潜入取材中。

七海は、HANAKAのコスメを使っていた。

「それ、どこの?」

クラスメイトが、聞いてきた。

「HANAKA」

「あ! 私も使ってる!」

「マジで? 可愛いよね」

「うん、しかも安い」

HANAKAは、七海の女子高生役を支えた。

そして――

花奈は知らない。

自分が支援している「女子高生」が――

かつてメイクを教えた「佐伯みゆき」の妻だということを。

10年後

七海の取材が終わって。

美山理事長主催のパーティーで。

花奈、美山理事長、斎藤みゆき、近藤七海――

四人が、揃った。 

「皆さん、お疲れ様でした」

美山理事長が、乾杯の音頭を取る。

「実は……」

七海が、口を開いた。

「花奈さん、話したいことがあるんです」

「何ですか?」

「あなたが昔、メイクを教えた『佐伯さん』……」 

「ええ」

「実は……」

七海は、みゆきの手を握った。

「私の夫なんです」

「……え?」

花奈の顔が、真っ青になった。

「夫……? でも、あの子、女の子……」

「男性だったんです」

「……!」

花奈は、みゆきを見た。

みゆきは、深く頭を下げた。

「ごめんなさい。騙していました」

「……嘘」

「潜入取材でした」

「……」

長い沈黙。
そして――

花奈は、笑い出した。

「あはは……あはははは!」

「花奈さん……?」

「そうだったんだ……だから、あんなに真剣だったんだ」

花奈は、涙を流しながら笑っていた。
「でも、良かった」

「え……?」

「あの経験があったから、HANAKAができた」

花奈は、みゆきの手を握った。

「ありがとう。佐伯さん……いや、斎藤さん」

「花奈……さん」

「これからも、よろしくね」

四人で、グラスを掲げた。
「乾杯!」
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