背徳の調教 続ある調教物語

あさき のぞみ

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まゆみとしての船出

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新しい店が用意してくれた源氏名は、**「まゆみ」**だった。
育美は、その響きを口の中で転がし、**「まゆみ」という新たな仮面を自分のものにしていく。それは、純粋で、どこか儚げな印象を持つ名だった。萱野を陥れた「なつみ」**とは、全く異なるイメージ。
(これで完璧だ)
彼女は、心の中で呟いた。
新しい店での新人研修が始まった。育美は、真面目な顔で、店長や先輩スタッフの説明に耳を傾けた。
「お客様への接客で一番大切なのは、共感と寄り添いよ。あなたは新人だから、まずは素直に学ぶことね」
先輩スタッフの言葉に、育美は**「はい!」**と、溌剌とした声で返事をした。
真面目さのアピール
彼女は、**「わからないフリ」**をすることに長けていた。
施術の基本や接客マナー、店のシステムについて、既に熟知しているはずの内容も、初めて聞くかのように真剣な表情で講義を受けた。ポケットから取り出した小さなメモ帳には、誰が見ても感心するほど几帳面にメモを取った。
「なるほど、こうするとお客様は安心されるんですね!」
「勉強になります! もっとたくさん覚えたいです!」
彼女の瞳は、「学ぶことに貪欲な新人」の輝きを宿しており、その真面目さとひたむきさは、店長や先輩スタッフの誰もが好感を抱くものだった。
「まゆみちゃんは真面目だし、覚えも早いわね。きっと、すぐ人気が出るわよ」
先輩スタッフからの褒め言葉に、育美は謙虚に微笑んだ。
(これで、誰も私を疑わない)
彼女は知っていた。人は、「真面目そうに見える人間」や「弱そうに見える人間」には、警戒心を抱かないものだ。そして、その「無垢」に見える仮面の下で、どれほど恐ろしい**「戦略」**が練られているかなど、誰も想像すらしないだろう。
「まゆみ」としての船出は順調だった。
育美の心の中には、三千万円という示談金を手にしたことで得た自信と、次なる獲物への期待が満ちていた。彼女は、**「未経験の新人」**という最良の武器を手に、新たな狩場へと足を踏み入れたのだ。
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