推し様たちを法廷で守ったら気に入られちゃいました！？〜前世で一流弁護士の僕が華麗に悪役を弁護します〜

19. ‐小休止‐元奴隷少女のつぶやき

　それは夜のことだった。皆が馬鹿騒ぎしている酒場の近くの路地にて、グルムはミナを送る係を任せられていた。ミナとグルムが街灯ランプの下で歩き、笑い合って話す。

　グルムはミナにひとりごちる。

「……実は自分、もともと裁判記録官でね。英雄族の裁判に絶望して、情報屋に転向した。でもな、今日のでちょっと元気づけられたよ。……英雄族の裁判は、初めから答えが決まってる茶番だった。何十回、無実の奴が潰されるのを見たことか……」
　グルムは苦く笑い、しかしすぐに口元を緩めた。
「でもな、あいつは…本気で覆した。あんなの、初めてだ」

　そしてグルムはいつものように胡散臭く笑った。
「…弁護士サマはただ者じゃねぇよな。ホント民の味方だぜ」


「……やっぱりレオンさまはすごいですねっ―――だけど」


　無邪気に笑うミナだが次の瞬間、表情から笑みが消えた。

「……ミナは、役に立てたでしょうか」

　真っ黒な瞳で呟いた。




　酒場の笑い声と楽器の音が、遠くで泡のように弾けていた。
　しかしこの路地は、街灯の下にだけ小さな光が落ちているだけだ。

　グルムは目の前の少女に対する答えを探したが、なぜか喉が凍りついたように動かなかった。
　また、何かが起こる予感がした。