前世で一流弁護士の僕は推し様とともに世界を変えてみせます!〜なんで僕が溺愛不可避なの〜

ホノム

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4. カップル成立疑惑!?

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 僕がカイに指図したその後、路地裏に潜んでいた野次馬たちをカイ権限で黙らせ――正確にはライラさんがにこやかにカイの名前を使って脅し、口止めに成功した。本当ライラさんは何てことをしてるの。

 午後。ヴィランのアジト内にある応接室にて僕たちは揃って座っていた。
 分厚いカーテンで外の光は薄く、窓には雨粒の筋がいくつも流れている。外の小雨は、しとしとと硝子を叩く音を続けていた。全くソレイユとは一変した天気だなぁ。

 長机の片側に僕、向かいにカイ、ライラさん、ゼオスさん、アヅミ、ウィリアム。全員が居るのに空気は妙に張り詰めている。時計の針が「カチカチ」と音を刻むたびに、室内の沈黙が深まっていく。
 ――なんで全員、口を閉じたままなんだよぅ~~~!!

 刺客に狙われ守られた後、僕は何も説明されずにここへ連れてこられた。心臓がじわじわと落ち着かなくなる。一体どうなってやがる。
「えっと、あのー…」
 僕がとうとう口を開こうとした時。
 コツコツ、と廊下の足音が聞こえてきた。
 まるで何故か、音が近づくたび室内の温度が下がっていく気がするような、そんな気がした。

「なに、誰……?」
 僕は慌てふためいてそうつぶやく。
 全員の視線がまるで、向かってくる人物が分かっているかのように自然と扉の方へ向いた。
 ドアノブがゆっくり回る――ギィ、と静かな音。一瞬で空気が張り詰め、全員の視線が扉に吸い寄せられた。扉が開くと同時に、冷たい外気と共に雨の匂いが流れ込む。

 そこに立っていたのは、フード付きのローブを深くかぶった人物。一歩踏み入れ、指先でフードをつまみ、ゆっくりと下げた。
 シルバーブロンドの髪が滑り落ちる。深い氷のような青の瞳が、影の中から覗いた。

「お待たせしましたわ」

 その声だけで室内の空気が変わる。



「セリーヌ様……」


 僕はハッとして椅子から立ち上がった。


「…なんで、貴女がヴィランのアジトに…」

 カイは頭をかき淡々と口を開く。

「セリーヌが、あんたの命が狙われてるって――」


 しかし言葉の途中で、セリーヌが手を軽く上げ、遮る。
「カイ、あなたは何も言わないでいいのよ」

 セリーヌはため息を吐き、口元だけで笑った。
 低く、しかし揺るぎない声だ。それだけで、彼女が何をどこまで知っているのか、僕には測り知れない。

 もしかしてだけどセリーヌ。


「ひょっとして、貴女が僕の危険を知らせ」
「言うほどのことはしていないわ」

「ひえ~っ」

 ちょっと怖い顔で遮られた。もう全く。ツンデレなんだからぁ。

 君が僕の命をカイと一緒に守ってくれた。
 じーん……。やばい、左胸が熱くなってきたぁ……

「ま、レオンにあまりきつく言ってやるな」
「あら、なんのことでしょう」
 カイは口をつぐみ、ほんの少しだけ口角を上げる。セリーヌも同じ高さで視線を返し、うなずく。

「うおお……っ」
 僕はハラハラと小さく拳を握る。

 ごくりと唾を飲んでから、やっぱり思わずにはいられないことがあった。

 ――なっなにこの二人の空気…。今のってアイコンタクト?さっきもあのカイがセリーヌの言葉に一瞬で黙るって。どういう関係なの?


 これさ、もうさ。

 僕の表情が一瞬固まり、次にじわじわ笑みが浮かんでいくのが分かった。

 カップル成立済みのやつじゃん!?
 ちょっと待って待って待って!!僕知らない間に祝うべき案件ができてるんだけど!!

「あのっ」

「…何かしら」
 セリーヌは声をかけた僕の方に視線だけよこした。僕は意気揚々と拳を握りカイとセリーヌに向かって――言った。


「お二人があの後、ちゃんと仲良くなったみたいで嬉しいですっ…!」

 僕が両手を組んで握り、うっとりとした笑顔で言い放ったその時、空気にヒビが入るような間があった気がした。だがまぁ、気のせいってことで。

 カップル成立―――
「おめでとうございます!」

 ゼオスさんとライラさんが同時に小さく噴き出す。
「ふふっ…」
 アヅミはなぜだろうか、手をぶんぶんと振っている。
「えっ…ちょっ、違…!」
「はぁ?」
 ウィリアムは両手を広げ、目を丸くした。
 カイとセリーヌは揃って首をかしげている。
 ――みんなの反応がおかしいけど、まあいいや。これは祝杯を上げなければねっ。

 僕が勝手に祝福モードに入りかけたその瞬間。

 セリーヌの声が呆れたように響く。

「…冗談はさておきレオン。いい加減、あなたが刺客に狙われた理由を話しましょうか」

 一瞬で室内の空気が冷えたような錯覚。雨音と脈音だけが、やけに大きく耳に届いた。
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