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命の価値が消えた世界
しおりを挟む僕には生きる理由がない。
毎日学校に行って、苦手な勉強に取り組み、帰って来て寝る。ただそれだけの繰り返し。
両親は死んだ。僕を置いて自ら死を選んだ。
『尊厳死』を。
今思えば、母さんも父さんも生きる理由がなかったのかもしれない。毎日大変な仕事をして、僕を育てるために苦労して手に入れたお金を失う。その繰り返し。母さんも父さんも、僕を愛した訳じゃなくて、お互いを愛していたんだ。僕は邪魔者だったろう。
両親を失くした僕に対して、国の対応は皆無だった。無数の人間がいるなかの僕なんて、気にも止まらなかったのだろう。
一応生活はできている。母さんと父さんが残した遺産と家のお陰だけども。必要最低限の食事、節電、節水で、後五年は持つはずだ。
(まあ、もう必要ないか...)
勉強も下の下、運動能力もなし、なにか特別な発想力があるわけでも、人一倍根性があるわけでもない僕は、この世界で生きていくことなどできるはずがない。
僕には何もできないから。
もう終わりにしよう。
自室のパソコンと向かい合う有馬 悠は、カチャカチャとネット掲示板に文字を打つ。
『僕と一緒に死にませんか?』
命の価値が暴落したこの世界では、そんな言葉に抵抗などない。
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