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たまごとうみ
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三日前に掲示板に張り付けたコメントに一通のメッセージが届いていた。
『初めまして!一度会って話しませんか?』
という一行だけ。
最初は警戒した。ネットのトラブルは会うことになってから発生することが多いと聞いていたから。けど、今の僕にとってはそんなことはどうでもよかった。
ただ、一人ではなにもできない僕と一緒に、自殺してくれる友達が心から欲しかった。
『初めまして。よろしくお願いします。』
僕は返信を待つ。
五分ほど経ったあと、相手から返事が返ってきた。
『では待ち合わせ場所とかきめましょう!自己紹介とかはその時で!』
僕の思い描いていたことが、トントン拍子に進んでいく。怪しすぎる。これで会ってみて犯罪組織でした。とかだったら笑えないな。
そんなことを思いながらも、僕はさらに返信する。
『××県××町の一番大きいデパートの前に11時で大丈夫ですか?』
返事はすぐに帰って来た。
『大丈夫です!私××県に住んでいるので!!』
(さすがに無防備すぎないか?)
僕は半分呆れつつも、なぜだか少しだけ嬉しかった。後でよく考えてみると、たとえネットでも、偽りだとしても、誰かとやりとりをしたことなんて久しぶりだったからだと思う。。
その後僕は、返信をしてくれた人と実際に会うことになった。日時は二日後。もし暴力団関係だったらどうしよう、とか、人見知りの自分でも大丈夫だろうかとか、そんな不安を抱えたまま僕はその日を終えた。
◇◇◇
会う約束をしたあの日から、早くも二日がすぎた。
時刻は八時。約束の時間まで三時間ほど余裕がある。
(一応だから...一応)
柄にもなくできる限りのお洒落をして、もう一度パソコンと向き合う。シャワーを浴びて、身だしなみを調えて、これから自殺について話し合うとは思えないほどの準備だ。
(さすがに早すぎたかな)
念のため、掲示板には『今日はよろしくお願いします』と書いておいた。相手の方が忘れていて来なかった、なんてのはごめんだ。まあ全部ただの嫌がらせで自分は自殺なんてする気はありませんでした。が一番最悪なパターンだけど。
そんな俺の心配をかき消すように、すぐに返信が返ってきた。
『こちらこそよろしくお願いします!! 』
よくわからない顔文字まで一緒についてきて、とても調子が狂う。ふと、自分がにやついていることに気がついて顔を隠した。
(一人でなにやってんだ僕は...)
でもこれが本当に嫌がらせだったらけっこうしんどいな。その時は全力で笑ってやろう。もちろん自分自身を。
◇◇◇
約束の時間の三十分前、僕は待ち合わせ場所に指定したデパートの前で待機していた。
緊張のせいか、異常に早く到着してしまったのだ。遅れるよりはましだが、緊張と不安でいつもより速い鼓動を、長い時間感じていなければならないのだ。
「はぁぁ~」
高校一年生の時の、初めてのバイト面接みたいな感覚だ。あの時はめちゃくちゃ緊張したことを鮮明に、覚えている。
様々な不安を引き起こす思考を停止させるために、僕はスマホアプリを起動する。とりあえず時間までやろうとタイトル画面をタップする。その直後だった。
『すみません!もしかしてたまごさんですか??』
突如、後方から声をかけられた。
反射でビクッと体をのけぞらせた僕は、声がかけられた方向に視線を動かした。そしてその瞬間、あまりの驚愕に僕は固まってしまった。
『たまご』という単語に見覚えはある。それは僕のネット掲示板で使用しているものだ。
「た、たしかに僕はたまごですけど」
僕の返事を聞いた彼女は、安心したように表情を変え、僕に向かって言った。
『初めまして!うみです!』
僕と自殺の会合をするため、今まで掲示板で会話をしていた人物。それは予想もしていなかった僕と同じくらいの年齢で、『死』なんて言葉に生涯触れることなんてないんじゃないか、と思うほどの秀麗な女の子だった。
『初めまして!一度会って話しませんか?』
という一行だけ。
最初は警戒した。ネットのトラブルは会うことになってから発生することが多いと聞いていたから。けど、今の僕にとってはそんなことはどうでもよかった。
ただ、一人ではなにもできない僕と一緒に、自殺してくれる友達が心から欲しかった。
『初めまして。よろしくお願いします。』
僕は返信を待つ。
五分ほど経ったあと、相手から返事が返ってきた。
『では待ち合わせ場所とかきめましょう!自己紹介とかはその時で!』
僕の思い描いていたことが、トントン拍子に進んでいく。怪しすぎる。これで会ってみて犯罪組織でした。とかだったら笑えないな。
そんなことを思いながらも、僕はさらに返信する。
『××県××町の一番大きいデパートの前に11時で大丈夫ですか?』
返事はすぐに帰って来た。
『大丈夫です!私××県に住んでいるので!!』
(さすがに無防備すぎないか?)
僕は半分呆れつつも、なぜだか少しだけ嬉しかった。後でよく考えてみると、たとえネットでも、偽りだとしても、誰かとやりとりをしたことなんて久しぶりだったからだと思う。。
その後僕は、返信をしてくれた人と実際に会うことになった。日時は二日後。もし暴力団関係だったらどうしよう、とか、人見知りの自分でも大丈夫だろうかとか、そんな不安を抱えたまま僕はその日を終えた。
◇◇◇
会う約束をしたあの日から、早くも二日がすぎた。
時刻は八時。約束の時間まで三時間ほど余裕がある。
(一応だから...一応)
柄にもなくできる限りのお洒落をして、もう一度パソコンと向き合う。シャワーを浴びて、身だしなみを調えて、これから自殺について話し合うとは思えないほどの準備だ。
(さすがに早すぎたかな)
念のため、掲示板には『今日はよろしくお願いします』と書いておいた。相手の方が忘れていて来なかった、なんてのはごめんだ。まあ全部ただの嫌がらせで自分は自殺なんてする気はありませんでした。が一番最悪なパターンだけど。
そんな俺の心配をかき消すように、すぐに返信が返ってきた。
『こちらこそよろしくお願いします!! 』
よくわからない顔文字まで一緒についてきて、とても調子が狂う。ふと、自分がにやついていることに気がついて顔を隠した。
(一人でなにやってんだ僕は...)
でもこれが本当に嫌がらせだったらけっこうしんどいな。その時は全力で笑ってやろう。もちろん自分自身を。
◇◇◇
約束の時間の三十分前、僕は待ち合わせ場所に指定したデパートの前で待機していた。
緊張のせいか、異常に早く到着してしまったのだ。遅れるよりはましだが、緊張と不安でいつもより速い鼓動を、長い時間感じていなければならないのだ。
「はぁぁ~」
高校一年生の時の、初めてのバイト面接みたいな感覚だ。あの時はめちゃくちゃ緊張したことを鮮明に、覚えている。
様々な不安を引き起こす思考を停止させるために、僕はスマホアプリを起動する。とりあえず時間までやろうとタイトル画面をタップする。その直後だった。
『すみません!もしかしてたまごさんですか??』
突如、後方から声をかけられた。
反射でビクッと体をのけぞらせた僕は、声がかけられた方向に視線を動かした。そしてその瞬間、あまりの驚愕に僕は固まってしまった。
『たまご』という単語に見覚えはある。それは僕のネット掲示板で使用しているものだ。
「た、たしかに僕はたまごですけど」
僕の返事を聞いた彼女は、安心したように表情を変え、僕に向かって言った。
『初めまして!うみです!』
僕と自殺の会合をするため、今まで掲示板で会話をしていた人物。それは予想もしていなかった僕と同じくらいの年齢で、『死』なんて言葉に生涯触れることなんてないんじゃないか、と思うほどの秀麗な女の子だった。
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