1 / 6
1章/悪夢に取り憑かれた少年
1章/悪夢に取り憑かれた少年
しおりを挟む
今日はどうしてか中々寝付けず気が付けば深夜二時を過ぎていた。
十一月になったばかりだというのに今年の寒さは足が早く、真冬並みの気温が続いていた。暖房を付けたまま寝たのだが、布団の中の暑さには嫌気がさしてくる。
いっそこのまま朝まで起きていようか。部屋の電気とテレビを付けてもパチンコの攻略番組や字幕入りのモノクロ映画、ホラー映画よりも淡々と残酷な事件を読み続けるニュース番組。気が滅入るだけで眠気を誘うものは一つも無かった。
好きな曲でも聞けば気を紛らわせる事ができると思ったが、どの曲も聞き飽きた曲ばかりで初めて聞いた時の興奮が嘘のようだっだ。こういう寝付けない夜は眠れない要素の悪循環が起きる。
いっそのこと何か新しい事に手を付けて朝まで熱中したい。となれば、オンラインゲームを始めるには最適な夜とも言える。学校で噂になっていた無料バトルロイヤルを初めようとパソコンを付けるが様子がおかしい。パソコンは起動するがゲームサーバーと接続にならない。型の古いパソコンなのでいつ止まってもおかしくなかった。
いくらなんでも悪循環が続く。今日は厄日なのだろうか、なんてことを嘆く必要はなく毎夜が厄日だと思っている。しかしどうやって夜を過ごせばいいか、とりあえず漫画の読みなおしでも何でもしよう。
ゾリ、ゾリ——
ヒゲを剃っているような音がする事に気付いた。思わず自分のアゴに手を当ててみたがヒゲなんて生えていないし剃ったこともない。では何の音か? 部屋を見渡しても音源は見当たらず、どちらかと言えば部屋の外から聞こえてくる。廊下側ではなく窓の外。
窓を開けると音は遠くから近づいてくるようだった。街灯が並ぶ遠い先を見ても何かあるようには見えない。それでも音は近づいてくる。不気味で仕方ないが音は止まった。
耳を澄まして聴いていたから分かることが一つある。音は家の前で停まった……何かが家の前に居る。気味の悪さに窓とカーテンを閉めた。玄関は鍵が掛かっているはずだから入って来ることはできないだろう。
ゾリ、ゾリ——
今度の音は背後の廊下側から聞こえて来た。鍵が掛かっているはずなのに中に入って来たようだ。部屋は二階にあるがここまで来るだろうか? 何が来ているのか、何が目的なのかも分かってない。
間違いなく言えるのは何かが近づいていること。不気味な音は扉の前まで近づき、何かが部屋の扉をノックした。
「……どなたか、いらっしゃいませんか」
女性の声が聞こえた。母親の声ではない。オレには姉も妹もいない。聞いた事のない声だった。
「お前は誰だ」
家の中に入り込んでいる時点で聞く事じゃない。部屋に鍵は付いてないのでその気になれば入れるはずだ。
「私は……旅の途中で食糧を切らしてしまい、空腹で倒れそうなのです」
今の時代にそんな言葉を信じる奴がどこにいるだろうか。しかし女の声には生気が無く、今にも死にそうなか細い声だ。
「こんな飽食の時代に行き倒れ寸前か。すまないが他を当たってくれ」
家の中まで入ってきて気味が悪い。それ以前に家宅侵入の時点で警察を呼ぶべきだろう。
「他とは誰のことでしょうか、ここには貴方しかいません」
「今、警察を呼ぶので、そちらに頼っていただきたい」
スマートフォンを取り出して110番通報する。深夜二時だからこそ繋がるだろう警察署のはずが、誰も電話に出てくれない。なんとなく他の誰かに電話をしても無駄な気がした。なぜそんな気がするのか、知らないのに知っているデジャヴというものだろう。
扉の向こうにいるのが誰なのか分からないが、似たような『モノ』に会ったことがあるような気がする。いや、オレはこういった経験を何度もしている。何か大事なことを忘れている。
「警察なんて来ませんよ……貴方がこの夢の中心であり、唯一の食糧なのですから」
女はオレのことを食糧だと言った。扉越しの女はオレを喰うつもりだ。相手がどんな形をしているか見えなくても、この女は空腹を満たす為にオレを頭から喰いたくて近寄って来るのを待っている。
「なんとなく、言っている意味を理解してきた。オレは来客者を何人も相手にしてきたかもしれない。してきたのだろう……たぶん」
こらえてはいるが頭蓋骨が軋むような頭痛に声が漏れそうになる。体にまったく別の血液が流れ出したのか、体温が入れ替わっていくのがわかる。自分が別の何かに変貌し始めている。オレには「キャラクター」があった。演じるべき役割を解除する言葉。ごく普通の一般的な男子高校生の役を壊す鍵。
——夢。これは夢だ。またオレは悪夢に巻き込まれている。
キャラクターがロールアウトする。自分の存在が解除される。オレは悪夢ばかりを見るどうしようもない高校生『美里風太郎』取り戻した。
今ここは夢の中だから眠気が無く、眠ることができないんだ。
「かもしれない、ではなく、してきたんですよ……零式の貴方はこのままにしておくにはもったいないんです」
零式……オレの名前はそんなんじゃない。何かの型番だろうか。頭の片隅に言葉を置いて来客用に準備を始める。楽しいパーティーを始める気は無いが、身を守る為の用意をしておく。
「零式って確か、試作品以上で製品未満のことだろ? オレが零式ってどういうことなんだ?」
会話で時間稼ぎをしたい。準備にもう少し時間がかかりそうだ。音を殺しながら用意を続ける。
「悪夢に対して最低限の機能を備えているので零式。しかし貴方は力を持ち過ぎている。ほんの少し、私に力を分けていただければ……すぐにここから消えます」
「他の奴らはオレを喰い殺そうとするが、お前もオレを喰い殺そうとするのか?」
返事はすぐに返って来なかった。沈黙は肯定でも否定でもないが、オレからすれば肯定の意味にしかならない。無駄な会話だったかもしれないが、お陰で十分に出迎えの用意ができた。
「ほんの少し、分けてくれるだけでいいんです。扉越しの会話もなんですし、中に入れてもらえませんか? 一言『いらっしゃい』と言ってくれれば私は中に入れます」
喰い殺そうとするヤツを部屋に入れる馬鹿がどこにいるのか。
「そうですか、どうぞ『いらっしゃい』」
だが美里風太郎は悪夢の中ではどうしようもなく馬鹿をする。オレはこの扉の向こう側の人物と話がしたかった。悪夢を見続けるのはどうしてなのか、その理由でも、何か一つでも分かる事ができればと思った。悪夢でのやり取りが無駄に終わるのは何度も体験している。それでも挑戦するしかなかった。
「では失礼します」
扉は開かれるのではなく、蝶番が外れて倒れた。
そこに居たのは白髪の背の高い美女だった。肌も白いが雪のように目に照り付ける白銀の長髪と死に装束にも似た着物を着て、視線はどこを捉える訳でもなく虚ろ、足袋や草履を履いているのではなく素足のままだった。金色の瞳が目蓋によって形が変わる月のようで、幽玄さに言葉を失うほどだった。
口に、言葉にしなくても、心の奥から「綺麗」という言葉が浮かび上がって来た。こんなに美しく朧気で、儚い美女を見たのは初めてで、呼吸をすることさえ忘れてしまった。
どこを捉える訳でもない視線が、オレを見つけた時、目に活力が宿る。頬は釣り上がり、目付きも鋭くなった。獲物を見つけたケダモノの顔になる。顔はぐにゃりと歪んだ。
「ヘッ、マジかよ? そんじゃお邪魔するかねぇ~。噂に聞く『髑髏の零式』がどんな腕前だか知らんけどぉ~。アンタの力ってウザったいんだよォ~!」
豹変。だらりと長く先が二つに割れた舌を出し、中指を立てたハンドサインを両手でしている。
「だから頭から喰いに来たんだぜぇ~。へっへっへーんとぉ……お?」
女は倒れた扉を踏みつけて気付いたはずだ。オレはスイッチを握りしめ、ベッドを立たせ盾代わりにしていることを。オレは会話をする気が失せた。いや、一瞬の内に抱いた幻想をブチ壊されて腹が立ったのかもしれない。あらかじめ扉に向けてクレイモアを設置しておいた。もちろん扉が倒れても被害のない場所に設置しておいたが、あくまでも保険として使うつもりは無かった。穏便に会話をしたかった。
「うん、もういいや……死んでくれ」
クレイモアとは対人地雷のことで二本足の小さな看板のような形をしている。この地雷は火薬で鉛玉を弾き飛ばすことができる仕組みになっていて。二つのクレイモアは無線タイプのシグナルAに設定してある。
オレは立たせたベッドの陰に隠れ起動スイッチを押した。二つのクレイモアが同時に起爆する。扉があった場所に向かって小さな看板は火を噴く。中に詰まっている火薬と鉛玉が拡散し、部屋に入ろうとした者は鉛玉の雨を浴びることになるだろう。
避けるスペースは無い。薄い壁も貫通する威力で左右に避けても必ず当たるはず。できあがるのはミンチ状の肉……のはずだった。
「チッ」
穴だらけになったのは壁と廊下だけだった。血痕一つ残っていない。今の攻撃が当たっていなかった? いや、どうあがいても避けられるはずが無い。
「……そう簡単に逃げられると思うなよ!」
悪夢の中でのみ使えるクロークを着て、髑髏の仮面を付ける。仮面は装着したことにより死角を作る事はなく、視界の左下には残弾数、右下にはログボードとスコア、左上にレーダーが表示される。FPS(ファーストパーソンシューティング)ゲームと同じ表示を映し出した。レーダーに点滅する敵影はここから遠ざかろうとしていく。すでに家の中には居ない、完全に逃走しようとしていた。
「セブンス・テイスト・ペッパーズ」
名前を呼び、お気に入りの武器を召喚する。リボルバー式のグレネードランチャーを取り出した。
部屋の窓を肩から突き破り地上に着地、敵の見えない姿に向かって砲撃。爆発が見慣れた街並みを壊す。それでもレーダーの反応は消えない。全弾を打ち終えると装填しながら後を追いかける。
夢の中でもゲームでもやることは同じ。ただ一つの『化け物を殺す』ということ。オレか化け物か、どちらかが死ぬまで悪夢(ゲーム)は終わらないということ。ゲームと悪夢の違いがあるとすれば、ゲーム機を叩き壊せば二度とゲームをすることはないのに対して、悪夢を見なくする方法は自分の頭を叩き割るしかないということだ。
武器を片手にマンホールを引き剥がし、中に銃口を向けた。逃げたとしたらここしかない。
「セブンステイストペッパーズ……サルベーション!」
これは、オレを救う救済方法であって、好きでこんなことをやっているんじゃない。
底の見えない穴に向かって全弾素早く撃ち込み、すぐにマンホールから離れる。穴が飲みこんだグレネード弾が破裂し爆風を吐き出すと、隣とさらにその隣のマンホールも連鎖して火を噴きだした。街を破壊し燃やす夢。破壊の限りを尽くし、壊せる物は全て壊して行く。
「クッソがぁぁぁぁああ! どこに行きやがったぁぁぁぁぁぁァァァァァアアアア!」
地下に逃げ込んだ敵影がレーダーから消えることはなかった。悪夢はどちらか息の根が止まるまで終わらない。
そして化け物を殺すまで、オレは同じ悪夢を何度も繰り返し見続ける。
*
昔から夢を見る事が多かった。
夢で化け物に喰われると親に相談したのはとても幼かった頃だ。あの時のオレは無力そのものでただ食われるばかりだった。
親は心配したけれど子供特有の悪い夢だと相手にしてくれなかった。オレは夢の中で何度も化け物に追いかけ回され、殺され続けていた。
積み重なる恐怖も幻痛も全てが苦痛だった。夢の中でも死ぬのは辛く、悪夢の中ではどこへ逃げても誰も助けてくれないことが何よりも孤独だった。
夢の事を誰に相談しても無駄だとわかっていた。親は何もしてくれなかったのではなく、何もできなかったからだ。
自分の見ている夢を他人に話したところで介入の余地などない。鏡の向こう側に映る自分の腕を掴むくらい別次元の出来事だからだ。
悪夢に追われ疲弊しきった姿を見て、心配してくれる人は少なからずいた。誰もが上辺だけで本当の事を言うと気味悪がって離れて行った。
彼もその内の一人になるだろうと思いながら、本当の事を打ち明けた一人だった。しかし、彼に話したことによって悪夢から逃げ出す方法を知る事となる。
幼かった当時、打開策となったのはオモチャの武器を使う事だった。
それは週末の朝にやっている番組で使われているヒーローのなりきり玩具だった。幼稚園児だった友人は自分に「これでたたかえばいいじゃん!」と言い放った。
そんな物が役立つ訳ないと当時は思ったが、友人の心配する顔を見て気持ちだけでもすごく嬉しかったのを覚えている。
その日に見た悪夢は、変わらず化け物が出る悪夢だった。借りたオモチャの剣を持って必死に逃げるばかりだった。夢の終わりは化け物に喰われて終わる。
いつもと同じように喰われて終わるはずの夢は、たった一つのオモチャによって劇的に変わった。
化け物の胃袋の中で振り回した武器は、ヒーローが使っていた秘密兵器と同じように敵を切り裂いた。
初めて悪夢に勝った。友人のおかげで助かることができた。そして、化け物の腸から抜け出し、血に溺れながら初めて勝利を手に入れた時でもあった。
——あの日から何年たっただろうか。
「つーことがあって、今回は髪まで真っ白な美女だった。すぐ逃げられたが、今夜は逃がさない。必ず息の根を止めてやる」
時間は幼稚園児から高校生まで飛ぶ。
場所は美術準備室の一角を間借りした漫画研究部。教室から離れた位置にあるこの場所で、夢の話しをしても誰かに聞かれる心配は無い。背もたれの無いパイプ椅子に座り、今朝の夢の説明をしていた。
現実に近い眠れない夢と白い美女との接触と零式という名称。美女を追跡したが見つけられず戦闘無しに悪夢は終わりを迎えた。
「……マジか」
友人こと、伊藤圭太はメモ帳を取りながら握りしめてボールペンをへし折った。黒インクが漏れ出す。圭太は天然パーマかつ地毛で茶の入った髪の毛と極度の近視で眼鏡をかけている。眼鏡の奥はギラギラと燃える太陽のように情熱に満ちた瞳をしている。
「おまっ……なに折ってんだよ」
「風太郎! 大進展じゃないか!」
そのインクの付いた手でオレの肩をゆする。当然制服に黒インクは付くし前後にゆらされて目が回る。
「なにが大進展だよ、化け物は逃がしたんだぞ? つーかインク付いたぞオイ!」
「零式だよ! 夢の中で風太郎は零式って呼ばれる『何か』ってことがわかったんだ! こんな進歩今までないぞ。つまり、お前みたいな奴がこの世の中に複数存在してるんだよ!」
それのどこが喜ばしいことなのかまったくわからないが、圭太は満面の笑みで興奮しっぱなしだった。オレは『今回見た夢の中の設定』だと思うのだが、圭太は何故かそれが『全ての夢の共通常識』のように言った。
「あのさ、オレの夢の中の出来事なんだからマジに受け止めんなよ」
見た夢の話をした後は毎回このセリフを言う。
「いいや、お前の夢はマジだ。常にマジだ。絶対タダの夢なんかじゃない」
圭太も毎回同じセリフを言う。
「さらに言えば、僕は今回の夢を特に違う案件だと思っている。何かこう、もっと核心に近づくような気がするんだ!」
「そう言って少し前に見た夢は外れだっただろうが」
こんなやりとりも何年続け今に至るが、オモチャの武器を渡されてから色々な武器を思考錯誤し悪夢の中で使ってきた。エアガンを使ってみたこともあるが、エアガンはエアガンの火力しか出ず、ヒーローの武器と必殺技を借りて小学生を過ごし、中学生からは漫画の武器と必殺技を借りて過ごした。最近はFPSゲームの武器と機能を借りて戦っている。
「なにはともあれ、乾杯だな!」
部室備え付けの冷蔵庫から缶コーヒーを渡される。圭太はやたら乾杯が好きで、事あるごとに乾杯をしようとしてくる。
冷蔵庫から取り出したのは三本の缶で、圭太は二本缶を開けた。オレはいつも缶コーヒーはブラックにしている。あの胃と咽喉を焼く感覚がたまらなく好きだ。なぜか周りから理解されない。
「はい、綾も」
開けられた缶は、机に向かっているもう一人のメンバーの横に置かれた。
「それじゃ、乾杯!」
毎回音頭を取るのは圭太だ。オレは少し缶を掲げるとすぐにコーヒーを飲み干した。
圭太は人への気遣いと扱いが上手く、並行して生徒会委員長をやっている。オレのような変人に付きまとわなければ、もっとクラスの中心にいた人物のはずだ。
「綾、そっちの方はどうだ?」
圭太はさっきから黙って聞いている綾を気遣う。
「零式……零式のナイト、零式の風太郎、髑髏の零式。なるほど面白いわね」
机に向かって高速でペンを走らせていた。描いているのは絵で、髑髏のマスクを付けたオレだった。綾はショートカットの髪に飾り気のない髪留めをしていて一見では目立たない姿をしているのだが、彼女の猫を思わせる眼力のある瞳に睨まれれば男女問わずに言葉に詰まってしまうだろう。その瞳が誰かを捉えることは滅多になく、クラスでは単独行動を好む変人扱いされている。
「おぉ、ノってるね!」
「当然でしょ。そっちも早くプロット上げてよね」
青木綾。
オレの夢に興味を持つ二人目の友人。
付き合いは圭太と同じくらい長いのだが彼女にも色々と手助けをしてもらっている。
彼女が絵を描くことによって夢の中で武器を安定して取り出せるようになるからだ。
夢の中で武器を取り出すのはとても難しく、実物に手を触れて感触を確かめなければ作り出すことはできない。ゲームに出てくる銃は手で触れる事ができない。
ではどうしたらいいか、段ボールで武器に似たモノを作りポーズをとる。それを綾が模写する事で武器を持っているオレの絵ができあがる。
これを見る事で武器のイメージが定着し、取り出しやすくなる。何十種類もの装備と武器のシンプルでありながら機能性のあるデザインを考えたのは彼女だ。
武器の変な名前はほとんどが圭太が考えたものだ。
「風太郎、今日はブラストエッジの絵を練習するから用意しといて」
「へいへい」
伊藤圭太、シナリオ。
青木綾、絵。
美里風太郎、モデル。
三年前、WEB漫画『ナイト/ナイツ/ナイトメア』は三年前に中学生三人で立ち上げられ描かれていた。
漫画は閲覧数六百万を超えたとかなんとか、詳しいことは知らないが圭太はこの漫画に広告を挟む事でお金を稼いでいるらしい。
出版社が目を付けてオファーが来ているとかも聞いたが、モデルくらいしかできないオレに決定権も何もなかった。
漫画化の件もその他のことも全部任せっきりで、オレは常に自分の悪夢で精一杯だった。
「風太郎、そっちの準備はいいかしら?」
インク付きのブレザーを脱ぎ、圭太が作った壁掛け式の武器置き場から剣を取る。剣だけではなく無数の武器を模った物が丁寧に安置されてあり、作りかけの何か分からない物が床に散乱している。
「ハイハイどんなポーズでもどーぞ。あと、圭太お前のせいでインク付いたんだから洗い落としてこいよ」
「はは、スマン手を洗うついでに洗ってくるわー」
圭太は美術準備室をから出て行った。オレは大剣と呼ぶほど大きな剣。片刃で身長ほどの大きさ。ジェットエンジン搭載で飛行機の翼をイメージした剣、という設定のブラストエッジを取る。綾はこちらを向き座ったまま指示を出す。
「セリフA」
「来い、ブラストエッジ」
何も無い空間から抜刀するように大剣を振る。そこから構え敵と対峙する。
剣を何度か振り回す。動きは非常にゆっくりとした動きで、いつでも静止できるように心がける。
「セリフB」
「サルベーション!」
更に大きなモーションでとどめを刺す動きをする。倒れた敵の頭を狙い、全体重を乗せ剣先で潰し、引き抜く。
「セリフC」
「これは殺しなんかじゃない。オレが生きる為の救済方法だ」
敵の頭を潰した剣を肩に担ぐ。遠くを見て少しアゴを上げる。左足に重心を乗せて脇は少し広げる。
「頭傾けて、左少し」
言われた通りにする。どこか気に入らないのか綾は椅子から立ち上がり、手で頭の位置をなおし。腕の位置も調整する。それからオレは棒立ちではなく右足は段ボールの箱を踏まされた。
「こっち見て」
目線の調整。
「うん、いいね。そのまま」
席に戻り、絵を描き始める。十五分から二十分はこのままだろう。視線すら動かす事は許されない。
「喋ってもいいか?」
しかし、圭太に話すのとは別に、綾に話しておきたいことがあった。
「いつもは黙っているのに珍しいわね。何かしら」
「正直言いたくないんだが、実はオレも今回の夢はどこか変な気がするんだ。いつも見ている夢というか、化け物が……化け物とちゃんと話ができたのが珍しくってさ。次の夢で情報が拾えるかもしれないけど、それを漫画に組み込むのは大丈夫なのか?」
「それは圭太の仕事。私は描くだけ」
役割は役割と言わんばかりに割りきった回答だった。オレからもこの先のシナリオに口出しできる立場じゃないので綾に話したが、無駄に終わったようだ。
「目線動かさないで」
「はい」
綾はモデルを見て描きたがる。服の皺をもっと上手く描く為に服を着た人間を描きたい。ポーズを取っても絶対に動いてはいけない。今は描くのが早くなったが昔は休憩を挟み一時間近く同じ体制を取ったこともあった。
しかし彼女が本当に描きたいのは二人が組み合う絵や皺が複雑になる絵で、描く時は今でも時間かかる。
「お喋りな圭太もいないし、たまには私も質問していいかしら」
「どうぞお好きに」
「モデルをしている時って何か考えているの?」
「なにも」
実際何も考えてない。
考えることは苦手だ。今ここが現実か夢か区別する方法は実は無いからだ。
痛みを感じる夢を見る事もあるし、自分を取り戻せないまま夢が終わる事もある。
現実が現実である確証は何で判断するべきか未だわかっていない。夢から醒めれば現実だと言うのなら、現実という長い夢である可能性だってある。
「私もそうかもしれない。描く時は描くことしか考えてない。風太郎の見る夢だけど、私はそれが本当の事か作り話かなんてどうでもいい。圭太の調整したシナリオが面白いから私は付き合うし、風太郎がモデルしてくれるから描くのが楽しい。ただそれだけ」
用紙に視線を落とす彼女の横顔は氷のように無表情だ。
「クールだねぇ。惚れちまいそうだ」
楽しいと言う割には、綾の笑った顔が見られるのは原稿が終わった一瞬だけ。それ以外で表情が崩れたのを見た事が無い。
「セリフFを頼んだ覚えはないわ」
「今のは本心さ。主人公ナイトのセリフじゃなくてね」
こんなお世辞も顔色一つ変えず取りあってくれない。圭太はどうやって綾を仲間に引き込んだのか今でも分からなかった。
「それとね、圭太の事だから白髪の美女をそのまま登場させると思う。ビジュアル化の為にいくつかイメージを描いておくから近い物を選んでくれるかしら。パーツ部分の指摘で組み合わせるのもかまわないわ」
「自分で言っておいてなんだが夢の中で見た絶世の美女ってのと、あの変貌っぷりを是非とも漫画にして欲しいね。あの裏切られた気分は本当に今思い出しても許せないくらいだ」
「ふうん……客観的に言うと、何で許せないのかしら」
「え?」
綾は走らせるペンを止めて聞いた。
「悪夢の中で美女が出てきて酷い顔をしたなんて今まで何回も聞いたわ。喚き続ける女とか、石を抱えた母親とか、笑顔で血の涙を流す女神とか。どんなに気味の悪い話も何とも無いように言っていたじゃない」
「……うーん、それは」
どうしてだろうか、あの夢の中の白い美女の変貌ぶりが許せないのは何故なのか。
脳裏に白髪の美女の笑みが浮かび、醜く崩れる。
「たぶん世界一上手いサッカー選手がいきなりボールを抱えてゴールにヘッドスライディングしたら観客は怒るだろ? ラグビーじゃなくてサッカーしろって思うじゃん、それと同じかな」
「美人は美人らしくして欲しいって話ね、理解したわ」
「と言う訳で、綾はもう少し愛想良くした方がいいと思うぞ。せっかくの美人なんだからさ」
慣れないお世辞を言うが、どうも届いている様子は無かった。
「興味無い。私が興味あるのは絵を描く事と漫画の事だけだから」
「クールだねぇ」
オレも綾も表情は変えないまま話は終わった。内心でオレは笑っていたし、もしかしたら綾も内心笑っているかもしれない。そんな気がした。
それから圭太がブレザー持ってきて、部分的に洗えばいいものを水浸しにしやがって、ブラストエッジで頭を叩き割ってやるフリをすると、圭太は白刃取りをした。それがよかったのか、綾はこの瞬間を念密に描きたいと強く求められ、解散時間までモデルをすることとなった。
帰宅時間になり、帰り道でも『ナイト/ナイツ/ナイトメア』の進展について話し合った。途中ゲーセンに寄ったり文房具屋で画材をあさったり、至って普通の学生らしい放課後を過ごす。
これがオレの日常であり、心が休まる現実での話。それでも夜が近づいてくると不安になる。秒針の動く音は悪夢が近づく足音だった。
「じゃ、がんばれよ! 明日、報告を楽しみにしているからな!」
別れ際に圭太はそう言って綾を家まで送って行く。
「また明日。いい悪夢が見られるといいわね」
悪夢に良いも悪いもないが、気遣いだけは受け取っておいた。
「ああ、また明日な」
挨拶を済ませ背を向けた。これから二人がどこか寄り道をして行くのを知っている。
本当は二人が付き合っているのも、見て見ぬふりをしている。知っていても知らないふりをするし、ちゃんと内明けてくれるのをオレは待っている。どうして二人が本当の事を言ってくれないのかは知らない。
今の協力関係が崩れるのなら聞かない方がいいだろう。
オレができることは悪夢を見て、話しをして、絵のモデルをするくらいだ。
「今夜はどんな悪夢を見るんだろうな」
道は別れオレは一人になるが、明日また親友二人に会うために悪夢と戦う。
とは言えベッドに入るまでが日常だ。帰ったら学校で出された課題をするとしよう。
十一月になったばかりだというのに今年の寒さは足が早く、真冬並みの気温が続いていた。暖房を付けたまま寝たのだが、布団の中の暑さには嫌気がさしてくる。
いっそこのまま朝まで起きていようか。部屋の電気とテレビを付けてもパチンコの攻略番組や字幕入りのモノクロ映画、ホラー映画よりも淡々と残酷な事件を読み続けるニュース番組。気が滅入るだけで眠気を誘うものは一つも無かった。
好きな曲でも聞けば気を紛らわせる事ができると思ったが、どの曲も聞き飽きた曲ばかりで初めて聞いた時の興奮が嘘のようだっだ。こういう寝付けない夜は眠れない要素の悪循環が起きる。
いっそのこと何か新しい事に手を付けて朝まで熱中したい。となれば、オンラインゲームを始めるには最適な夜とも言える。学校で噂になっていた無料バトルロイヤルを初めようとパソコンを付けるが様子がおかしい。パソコンは起動するがゲームサーバーと接続にならない。型の古いパソコンなのでいつ止まってもおかしくなかった。
いくらなんでも悪循環が続く。今日は厄日なのだろうか、なんてことを嘆く必要はなく毎夜が厄日だと思っている。しかしどうやって夜を過ごせばいいか、とりあえず漫画の読みなおしでも何でもしよう。
ゾリ、ゾリ——
ヒゲを剃っているような音がする事に気付いた。思わず自分のアゴに手を当ててみたがヒゲなんて生えていないし剃ったこともない。では何の音か? 部屋を見渡しても音源は見当たらず、どちらかと言えば部屋の外から聞こえてくる。廊下側ではなく窓の外。
窓を開けると音は遠くから近づいてくるようだった。街灯が並ぶ遠い先を見ても何かあるようには見えない。それでも音は近づいてくる。不気味で仕方ないが音は止まった。
耳を澄まして聴いていたから分かることが一つある。音は家の前で停まった……何かが家の前に居る。気味の悪さに窓とカーテンを閉めた。玄関は鍵が掛かっているはずだから入って来ることはできないだろう。
ゾリ、ゾリ——
今度の音は背後の廊下側から聞こえて来た。鍵が掛かっているはずなのに中に入って来たようだ。部屋は二階にあるがここまで来るだろうか? 何が来ているのか、何が目的なのかも分かってない。
間違いなく言えるのは何かが近づいていること。不気味な音は扉の前まで近づき、何かが部屋の扉をノックした。
「……どなたか、いらっしゃいませんか」
女性の声が聞こえた。母親の声ではない。オレには姉も妹もいない。聞いた事のない声だった。
「お前は誰だ」
家の中に入り込んでいる時点で聞く事じゃない。部屋に鍵は付いてないのでその気になれば入れるはずだ。
「私は……旅の途中で食糧を切らしてしまい、空腹で倒れそうなのです」
今の時代にそんな言葉を信じる奴がどこにいるだろうか。しかし女の声には生気が無く、今にも死にそうなか細い声だ。
「こんな飽食の時代に行き倒れ寸前か。すまないが他を当たってくれ」
家の中まで入ってきて気味が悪い。それ以前に家宅侵入の時点で警察を呼ぶべきだろう。
「他とは誰のことでしょうか、ここには貴方しかいません」
「今、警察を呼ぶので、そちらに頼っていただきたい」
スマートフォンを取り出して110番通報する。深夜二時だからこそ繋がるだろう警察署のはずが、誰も電話に出てくれない。なんとなく他の誰かに電話をしても無駄な気がした。なぜそんな気がするのか、知らないのに知っているデジャヴというものだろう。
扉の向こうにいるのが誰なのか分からないが、似たような『モノ』に会ったことがあるような気がする。いや、オレはこういった経験を何度もしている。何か大事なことを忘れている。
「警察なんて来ませんよ……貴方がこの夢の中心であり、唯一の食糧なのですから」
女はオレのことを食糧だと言った。扉越しの女はオレを喰うつもりだ。相手がどんな形をしているか見えなくても、この女は空腹を満たす為にオレを頭から喰いたくて近寄って来るのを待っている。
「なんとなく、言っている意味を理解してきた。オレは来客者を何人も相手にしてきたかもしれない。してきたのだろう……たぶん」
こらえてはいるが頭蓋骨が軋むような頭痛に声が漏れそうになる。体にまったく別の血液が流れ出したのか、体温が入れ替わっていくのがわかる。自分が別の何かに変貌し始めている。オレには「キャラクター」があった。演じるべき役割を解除する言葉。ごく普通の一般的な男子高校生の役を壊す鍵。
——夢。これは夢だ。またオレは悪夢に巻き込まれている。
キャラクターがロールアウトする。自分の存在が解除される。オレは悪夢ばかりを見るどうしようもない高校生『美里風太郎』取り戻した。
今ここは夢の中だから眠気が無く、眠ることができないんだ。
「かもしれない、ではなく、してきたんですよ……零式の貴方はこのままにしておくにはもったいないんです」
零式……オレの名前はそんなんじゃない。何かの型番だろうか。頭の片隅に言葉を置いて来客用に準備を始める。楽しいパーティーを始める気は無いが、身を守る為の用意をしておく。
「零式って確か、試作品以上で製品未満のことだろ? オレが零式ってどういうことなんだ?」
会話で時間稼ぎをしたい。準備にもう少し時間がかかりそうだ。音を殺しながら用意を続ける。
「悪夢に対して最低限の機能を備えているので零式。しかし貴方は力を持ち過ぎている。ほんの少し、私に力を分けていただければ……すぐにここから消えます」
「他の奴らはオレを喰い殺そうとするが、お前もオレを喰い殺そうとするのか?」
返事はすぐに返って来なかった。沈黙は肯定でも否定でもないが、オレからすれば肯定の意味にしかならない。無駄な会話だったかもしれないが、お陰で十分に出迎えの用意ができた。
「ほんの少し、分けてくれるだけでいいんです。扉越しの会話もなんですし、中に入れてもらえませんか? 一言『いらっしゃい』と言ってくれれば私は中に入れます」
喰い殺そうとするヤツを部屋に入れる馬鹿がどこにいるのか。
「そうですか、どうぞ『いらっしゃい』」
だが美里風太郎は悪夢の中ではどうしようもなく馬鹿をする。オレはこの扉の向こう側の人物と話がしたかった。悪夢を見続けるのはどうしてなのか、その理由でも、何か一つでも分かる事ができればと思った。悪夢でのやり取りが無駄に終わるのは何度も体験している。それでも挑戦するしかなかった。
「では失礼します」
扉は開かれるのではなく、蝶番が外れて倒れた。
そこに居たのは白髪の背の高い美女だった。肌も白いが雪のように目に照り付ける白銀の長髪と死に装束にも似た着物を着て、視線はどこを捉える訳でもなく虚ろ、足袋や草履を履いているのではなく素足のままだった。金色の瞳が目蓋によって形が変わる月のようで、幽玄さに言葉を失うほどだった。
口に、言葉にしなくても、心の奥から「綺麗」という言葉が浮かび上がって来た。こんなに美しく朧気で、儚い美女を見たのは初めてで、呼吸をすることさえ忘れてしまった。
どこを捉える訳でもない視線が、オレを見つけた時、目に活力が宿る。頬は釣り上がり、目付きも鋭くなった。獲物を見つけたケダモノの顔になる。顔はぐにゃりと歪んだ。
「ヘッ、マジかよ? そんじゃお邪魔するかねぇ~。噂に聞く『髑髏の零式』がどんな腕前だか知らんけどぉ~。アンタの力ってウザったいんだよォ~!」
豹変。だらりと長く先が二つに割れた舌を出し、中指を立てたハンドサインを両手でしている。
「だから頭から喰いに来たんだぜぇ~。へっへっへーんとぉ……お?」
女は倒れた扉を踏みつけて気付いたはずだ。オレはスイッチを握りしめ、ベッドを立たせ盾代わりにしていることを。オレは会話をする気が失せた。いや、一瞬の内に抱いた幻想をブチ壊されて腹が立ったのかもしれない。あらかじめ扉に向けてクレイモアを設置しておいた。もちろん扉が倒れても被害のない場所に設置しておいたが、あくまでも保険として使うつもりは無かった。穏便に会話をしたかった。
「うん、もういいや……死んでくれ」
クレイモアとは対人地雷のことで二本足の小さな看板のような形をしている。この地雷は火薬で鉛玉を弾き飛ばすことができる仕組みになっていて。二つのクレイモアは無線タイプのシグナルAに設定してある。
オレは立たせたベッドの陰に隠れ起動スイッチを押した。二つのクレイモアが同時に起爆する。扉があった場所に向かって小さな看板は火を噴く。中に詰まっている火薬と鉛玉が拡散し、部屋に入ろうとした者は鉛玉の雨を浴びることになるだろう。
避けるスペースは無い。薄い壁も貫通する威力で左右に避けても必ず当たるはず。できあがるのはミンチ状の肉……のはずだった。
「チッ」
穴だらけになったのは壁と廊下だけだった。血痕一つ残っていない。今の攻撃が当たっていなかった? いや、どうあがいても避けられるはずが無い。
「……そう簡単に逃げられると思うなよ!」
悪夢の中でのみ使えるクロークを着て、髑髏の仮面を付ける。仮面は装着したことにより死角を作る事はなく、視界の左下には残弾数、右下にはログボードとスコア、左上にレーダーが表示される。FPS(ファーストパーソンシューティング)ゲームと同じ表示を映し出した。レーダーに点滅する敵影はここから遠ざかろうとしていく。すでに家の中には居ない、完全に逃走しようとしていた。
「セブンス・テイスト・ペッパーズ」
名前を呼び、お気に入りの武器を召喚する。リボルバー式のグレネードランチャーを取り出した。
部屋の窓を肩から突き破り地上に着地、敵の見えない姿に向かって砲撃。爆発が見慣れた街並みを壊す。それでもレーダーの反応は消えない。全弾を打ち終えると装填しながら後を追いかける。
夢の中でもゲームでもやることは同じ。ただ一つの『化け物を殺す』ということ。オレか化け物か、どちらかが死ぬまで悪夢(ゲーム)は終わらないということ。ゲームと悪夢の違いがあるとすれば、ゲーム機を叩き壊せば二度とゲームをすることはないのに対して、悪夢を見なくする方法は自分の頭を叩き割るしかないということだ。
武器を片手にマンホールを引き剥がし、中に銃口を向けた。逃げたとしたらここしかない。
「セブンステイストペッパーズ……サルベーション!」
これは、オレを救う救済方法であって、好きでこんなことをやっているんじゃない。
底の見えない穴に向かって全弾素早く撃ち込み、すぐにマンホールから離れる。穴が飲みこんだグレネード弾が破裂し爆風を吐き出すと、隣とさらにその隣のマンホールも連鎖して火を噴きだした。街を破壊し燃やす夢。破壊の限りを尽くし、壊せる物は全て壊して行く。
「クッソがぁぁぁぁああ! どこに行きやがったぁぁぁぁぁぁァァァァァアアアア!」
地下に逃げ込んだ敵影がレーダーから消えることはなかった。悪夢はどちらか息の根が止まるまで終わらない。
そして化け物を殺すまで、オレは同じ悪夢を何度も繰り返し見続ける。
*
昔から夢を見る事が多かった。
夢で化け物に喰われると親に相談したのはとても幼かった頃だ。あの時のオレは無力そのものでただ食われるばかりだった。
親は心配したけれど子供特有の悪い夢だと相手にしてくれなかった。オレは夢の中で何度も化け物に追いかけ回され、殺され続けていた。
積み重なる恐怖も幻痛も全てが苦痛だった。夢の中でも死ぬのは辛く、悪夢の中ではどこへ逃げても誰も助けてくれないことが何よりも孤独だった。
夢の事を誰に相談しても無駄だとわかっていた。親は何もしてくれなかったのではなく、何もできなかったからだ。
自分の見ている夢を他人に話したところで介入の余地などない。鏡の向こう側に映る自分の腕を掴むくらい別次元の出来事だからだ。
悪夢に追われ疲弊しきった姿を見て、心配してくれる人は少なからずいた。誰もが上辺だけで本当の事を言うと気味悪がって離れて行った。
彼もその内の一人になるだろうと思いながら、本当の事を打ち明けた一人だった。しかし、彼に話したことによって悪夢から逃げ出す方法を知る事となる。
幼かった当時、打開策となったのはオモチャの武器を使う事だった。
それは週末の朝にやっている番組で使われているヒーローのなりきり玩具だった。幼稚園児だった友人は自分に「これでたたかえばいいじゃん!」と言い放った。
そんな物が役立つ訳ないと当時は思ったが、友人の心配する顔を見て気持ちだけでもすごく嬉しかったのを覚えている。
その日に見た悪夢は、変わらず化け物が出る悪夢だった。借りたオモチャの剣を持って必死に逃げるばかりだった。夢の終わりは化け物に喰われて終わる。
いつもと同じように喰われて終わるはずの夢は、たった一つのオモチャによって劇的に変わった。
化け物の胃袋の中で振り回した武器は、ヒーローが使っていた秘密兵器と同じように敵を切り裂いた。
初めて悪夢に勝った。友人のおかげで助かることができた。そして、化け物の腸から抜け出し、血に溺れながら初めて勝利を手に入れた時でもあった。
——あの日から何年たっただろうか。
「つーことがあって、今回は髪まで真っ白な美女だった。すぐ逃げられたが、今夜は逃がさない。必ず息の根を止めてやる」
時間は幼稚園児から高校生まで飛ぶ。
場所は美術準備室の一角を間借りした漫画研究部。教室から離れた位置にあるこの場所で、夢の話しをしても誰かに聞かれる心配は無い。背もたれの無いパイプ椅子に座り、今朝の夢の説明をしていた。
現実に近い眠れない夢と白い美女との接触と零式という名称。美女を追跡したが見つけられず戦闘無しに悪夢は終わりを迎えた。
「……マジか」
友人こと、伊藤圭太はメモ帳を取りながら握りしめてボールペンをへし折った。黒インクが漏れ出す。圭太は天然パーマかつ地毛で茶の入った髪の毛と極度の近視で眼鏡をかけている。眼鏡の奥はギラギラと燃える太陽のように情熱に満ちた瞳をしている。
「おまっ……なに折ってんだよ」
「風太郎! 大進展じゃないか!」
そのインクの付いた手でオレの肩をゆする。当然制服に黒インクは付くし前後にゆらされて目が回る。
「なにが大進展だよ、化け物は逃がしたんだぞ? つーかインク付いたぞオイ!」
「零式だよ! 夢の中で風太郎は零式って呼ばれる『何か』ってことがわかったんだ! こんな進歩今までないぞ。つまり、お前みたいな奴がこの世の中に複数存在してるんだよ!」
それのどこが喜ばしいことなのかまったくわからないが、圭太は満面の笑みで興奮しっぱなしだった。オレは『今回見た夢の中の設定』だと思うのだが、圭太は何故かそれが『全ての夢の共通常識』のように言った。
「あのさ、オレの夢の中の出来事なんだからマジに受け止めんなよ」
見た夢の話をした後は毎回このセリフを言う。
「いいや、お前の夢はマジだ。常にマジだ。絶対タダの夢なんかじゃない」
圭太も毎回同じセリフを言う。
「さらに言えば、僕は今回の夢を特に違う案件だと思っている。何かこう、もっと核心に近づくような気がするんだ!」
「そう言って少し前に見た夢は外れだっただろうが」
こんなやりとりも何年続け今に至るが、オモチャの武器を渡されてから色々な武器を思考錯誤し悪夢の中で使ってきた。エアガンを使ってみたこともあるが、エアガンはエアガンの火力しか出ず、ヒーローの武器と必殺技を借りて小学生を過ごし、中学生からは漫画の武器と必殺技を借りて過ごした。最近はFPSゲームの武器と機能を借りて戦っている。
「なにはともあれ、乾杯だな!」
部室備え付けの冷蔵庫から缶コーヒーを渡される。圭太はやたら乾杯が好きで、事あるごとに乾杯をしようとしてくる。
冷蔵庫から取り出したのは三本の缶で、圭太は二本缶を開けた。オレはいつも缶コーヒーはブラックにしている。あの胃と咽喉を焼く感覚がたまらなく好きだ。なぜか周りから理解されない。
「はい、綾も」
開けられた缶は、机に向かっているもう一人のメンバーの横に置かれた。
「それじゃ、乾杯!」
毎回音頭を取るのは圭太だ。オレは少し缶を掲げるとすぐにコーヒーを飲み干した。
圭太は人への気遣いと扱いが上手く、並行して生徒会委員長をやっている。オレのような変人に付きまとわなければ、もっとクラスの中心にいた人物のはずだ。
「綾、そっちの方はどうだ?」
圭太はさっきから黙って聞いている綾を気遣う。
「零式……零式のナイト、零式の風太郎、髑髏の零式。なるほど面白いわね」
机に向かって高速でペンを走らせていた。描いているのは絵で、髑髏のマスクを付けたオレだった。綾はショートカットの髪に飾り気のない髪留めをしていて一見では目立たない姿をしているのだが、彼女の猫を思わせる眼力のある瞳に睨まれれば男女問わずに言葉に詰まってしまうだろう。その瞳が誰かを捉えることは滅多になく、クラスでは単独行動を好む変人扱いされている。
「おぉ、ノってるね!」
「当然でしょ。そっちも早くプロット上げてよね」
青木綾。
オレの夢に興味を持つ二人目の友人。
付き合いは圭太と同じくらい長いのだが彼女にも色々と手助けをしてもらっている。
彼女が絵を描くことによって夢の中で武器を安定して取り出せるようになるからだ。
夢の中で武器を取り出すのはとても難しく、実物に手を触れて感触を確かめなければ作り出すことはできない。ゲームに出てくる銃は手で触れる事ができない。
ではどうしたらいいか、段ボールで武器に似たモノを作りポーズをとる。それを綾が模写する事で武器を持っているオレの絵ができあがる。
これを見る事で武器のイメージが定着し、取り出しやすくなる。何十種類もの装備と武器のシンプルでありながら機能性のあるデザインを考えたのは彼女だ。
武器の変な名前はほとんどが圭太が考えたものだ。
「風太郎、今日はブラストエッジの絵を練習するから用意しといて」
「へいへい」
伊藤圭太、シナリオ。
青木綾、絵。
美里風太郎、モデル。
三年前、WEB漫画『ナイト/ナイツ/ナイトメア』は三年前に中学生三人で立ち上げられ描かれていた。
漫画は閲覧数六百万を超えたとかなんとか、詳しいことは知らないが圭太はこの漫画に広告を挟む事でお金を稼いでいるらしい。
出版社が目を付けてオファーが来ているとかも聞いたが、モデルくらいしかできないオレに決定権も何もなかった。
漫画化の件もその他のことも全部任せっきりで、オレは常に自分の悪夢で精一杯だった。
「風太郎、そっちの準備はいいかしら?」
インク付きのブレザーを脱ぎ、圭太が作った壁掛け式の武器置き場から剣を取る。剣だけではなく無数の武器を模った物が丁寧に安置されてあり、作りかけの何か分からない物が床に散乱している。
「ハイハイどんなポーズでもどーぞ。あと、圭太お前のせいでインク付いたんだから洗い落としてこいよ」
「はは、スマン手を洗うついでに洗ってくるわー」
圭太は美術準備室をから出て行った。オレは大剣と呼ぶほど大きな剣。片刃で身長ほどの大きさ。ジェットエンジン搭載で飛行機の翼をイメージした剣、という設定のブラストエッジを取る。綾はこちらを向き座ったまま指示を出す。
「セリフA」
「来い、ブラストエッジ」
何も無い空間から抜刀するように大剣を振る。そこから構え敵と対峙する。
剣を何度か振り回す。動きは非常にゆっくりとした動きで、いつでも静止できるように心がける。
「セリフB」
「サルベーション!」
更に大きなモーションでとどめを刺す動きをする。倒れた敵の頭を狙い、全体重を乗せ剣先で潰し、引き抜く。
「セリフC」
「これは殺しなんかじゃない。オレが生きる為の救済方法だ」
敵の頭を潰した剣を肩に担ぐ。遠くを見て少しアゴを上げる。左足に重心を乗せて脇は少し広げる。
「頭傾けて、左少し」
言われた通りにする。どこか気に入らないのか綾は椅子から立ち上がり、手で頭の位置をなおし。腕の位置も調整する。それからオレは棒立ちではなく右足は段ボールの箱を踏まされた。
「こっち見て」
目線の調整。
「うん、いいね。そのまま」
席に戻り、絵を描き始める。十五分から二十分はこのままだろう。視線すら動かす事は許されない。
「喋ってもいいか?」
しかし、圭太に話すのとは別に、綾に話しておきたいことがあった。
「いつもは黙っているのに珍しいわね。何かしら」
「正直言いたくないんだが、実はオレも今回の夢はどこか変な気がするんだ。いつも見ている夢というか、化け物が……化け物とちゃんと話ができたのが珍しくってさ。次の夢で情報が拾えるかもしれないけど、それを漫画に組み込むのは大丈夫なのか?」
「それは圭太の仕事。私は描くだけ」
役割は役割と言わんばかりに割りきった回答だった。オレからもこの先のシナリオに口出しできる立場じゃないので綾に話したが、無駄に終わったようだ。
「目線動かさないで」
「はい」
綾はモデルを見て描きたがる。服の皺をもっと上手く描く為に服を着た人間を描きたい。ポーズを取っても絶対に動いてはいけない。今は描くのが早くなったが昔は休憩を挟み一時間近く同じ体制を取ったこともあった。
しかし彼女が本当に描きたいのは二人が組み合う絵や皺が複雑になる絵で、描く時は今でも時間かかる。
「お喋りな圭太もいないし、たまには私も質問していいかしら」
「どうぞお好きに」
「モデルをしている時って何か考えているの?」
「なにも」
実際何も考えてない。
考えることは苦手だ。今ここが現実か夢か区別する方法は実は無いからだ。
痛みを感じる夢を見る事もあるし、自分を取り戻せないまま夢が終わる事もある。
現実が現実である確証は何で判断するべきか未だわかっていない。夢から醒めれば現実だと言うのなら、現実という長い夢である可能性だってある。
「私もそうかもしれない。描く時は描くことしか考えてない。風太郎の見る夢だけど、私はそれが本当の事か作り話かなんてどうでもいい。圭太の調整したシナリオが面白いから私は付き合うし、風太郎がモデルしてくれるから描くのが楽しい。ただそれだけ」
用紙に視線を落とす彼女の横顔は氷のように無表情だ。
「クールだねぇ。惚れちまいそうだ」
楽しいと言う割には、綾の笑った顔が見られるのは原稿が終わった一瞬だけ。それ以外で表情が崩れたのを見た事が無い。
「セリフFを頼んだ覚えはないわ」
「今のは本心さ。主人公ナイトのセリフじゃなくてね」
こんなお世辞も顔色一つ変えず取りあってくれない。圭太はどうやって綾を仲間に引き込んだのか今でも分からなかった。
「それとね、圭太の事だから白髪の美女をそのまま登場させると思う。ビジュアル化の為にいくつかイメージを描いておくから近い物を選んでくれるかしら。パーツ部分の指摘で組み合わせるのもかまわないわ」
「自分で言っておいてなんだが夢の中で見た絶世の美女ってのと、あの変貌っぷりを是非とも漫画にして欲しいね。あの裏切られた気分は本当に今思い出しても許せないくらいだ」
「ふうん……客観的に言うと、何で許せないのかしら」
「え?」
綾は走らせるペンを止めて聞いた。
「悪夢の中で美女が出てきて酷い顔をしたなんて今まで何回も聞いたわ。喚き続ける女とか、石を抱えた母親とか、笑顔で血の涙を流す女神とか。どんなに気味の悪い話も何とも無いように言っていたじゃない」
「……うーん、それは」
どうしてだろうか、あの夢の中の白い美女の変貌ぶりが許せないのは何故なのか。
脳裏に白髪の美女の笑みが浮かび、醜く崩れる。
「たぶん世界一上手いサッカー選手がいきなりボールを抱えてゴールにヘッドスライディングしたら観客は怒るだろ? ラグビーじゃなくてサッカーしろって思うじゃん、それと同じかな」
「美人は美人らしくして欲しいって話ね、理解したわ」
「と言う訳で、綾はもう少し愛想良くした方がいいと思うぞ。せっかくの美人なんだからさ」
慣れないお世辞を言うが、どうも届いている様子は無かった。
「興味無い。私が興味あるのは絵を描く事と漫画の事だけだから」
「クールだねぇ」
オレも綾も表情は変えないまま話は終わった。内心でオレは笑っていたし、もしかしたら綾も内心笑っているかもしれない。そんな気がした。
それから圭太がブレザー持ってきて、部分的に洗えばいいものを水浸しにしやがって、ブラストエッジで頭を叩き割ってやるフリをすると、圭太は白刃取りをした。それがよかったのか、綾はこの瞬間を念密に描きたいと強く求められ、解散時間までモデルをすることとなった。
帰宅時間になり、帰り道でも『ナイト/ナイツ/ナイトメア』の進展について話し合った。途中ゲーセンに寄ったり文房具屋で画材をあさったり、至って普通の学生らしい放課後を過ごす。
これがオレの日常であり、心が休まる現実での話。それでも夜が近づいてくると不安になる。秒針の動く音は悪夢が近づく足音だった。
「じゃ、がんばれよ! 明日、報告を楽しみにしているからな!」
別れ際に圭太はそう言って綾を家まで送って行く。
「また明日。いい悪夢が見られるといいわね」
悪夢に良いも悪いもないが、気遣いだけは受け取っておいた。
「ああ、また明日な」
挨拶を済ませ背を向けた。これから二人がどこか寄り道をして行くのを知っている。
本当は二人が付き合っているのも、見て見ぬふりをしている。知っていても知らないふりをするし、ちゃんと内明けてくれるのをオレは待っている。どうして二人が本当の事を言ってくれないのかは知らない。
今の協力関係が崩れるのなら聞かない方がいいだろう。
オレができることは悪夢を見て、話しをして、絵のモデルをするくらいだ。
「今夜はどんな悪夢を見るんだろうな」
道は別れオレは一人になるが、明日また親友二人に会うために悪夢と戦う。
とは言えベッドに入るまでが日常だ。帰ったら学校で出された課題をするとしよう。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる