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3話

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ルーシーはキメラに駆け寄ると大地を蹴り、飛び上がると同時に刀を振る
キメラの山羊の首が真っ二つに切断され、首が落ちる

カーラは緊張して大剣を構えた

「やるじゃん、でもこれからが本番」

傷ついたキマイラはよろけながら咆哮し大きく息を吸うと火炎を吐き出してきた
カーラが火炎に包まれ、耐えている

「うっ…」

カーラは炎から抜け出し、キマイラに飛び掛かった
キマイラはカーラが飛び掛かると同時に体当たりをし、カーラは跳ね返される
ガードはしていたが思いのほか強く入ってしまったようで苦しむ声が聞こえる

「ぐぅぅ…!くっ」

カーラは片膝をつき、わき腹を抱えすぐには動けなさそうだ
ルーシーは援護するようにキマイラの腰に刀を差し込む

ゴアァァァァァ!

キマイラは咆哮し、ルーシーを見た

「うぅ、ルーシー逃げて!」

キマイラはルーシーに飛び掛かってきた
ルーシーは前足の攻撃をさらりと躱し、距離を取る

「う…おぉぉぉぉ!」

カーラが力を振り絞り大剣を振り上げキマイラに切りかかる
キマイラの頭に大剣が当たるも、頭蓋骨が固く、キマイラは耐えた
キマイラはカーラを見ると前足で薙ぐ

前足はカーラは直撃し吹き飛ばされる、ゴロゴロと転がると伏せたまま起き上がらない

(もう限界だろうな…)

ルーシーは無造作にキマイラに近づき、刀で首を落とした
ゾットの声が演習場に響き渡る

「よーしそこまで、カーラは医務室へ転送する」

カーラは魔法陣に包まれ、消えた

「しかしブラザー強いな今まで何してたんだ?」
ルーシーは答えた

「修行かな…これより強い魔物はいないの?」
「残念ながら勇育で呼び出せるのはキマイラが最強だ。魔王の目が現れたらもっと強いのが現れると思うぞ」
「魔王の目?」
「たまに現れる黒い亀裂だ、中からわんさか魔物が出てくる。勇者は魔王の目を閉じるのも仕事の一つだ、現れたらルーシーも招集されるぞ」

(魔界と一時的につながる穴の事か、こっちでは魔王の目って呼ばれてるんだな)

「わかった、部屋へ案内してくれ。亀裂が現れたら呼んでくれればいい」
「オイオイブラザー!授業があるんだよ!演習場まで付き合ったんだから授業も付き合え!」
「む…仕方ないな…」



授業が終わり、教室を出るとカーラが走ってきた
医務室には腕のいい治療士がいるのだろうか?ピンピンしている

「ルーシー!待って!」
「なに?」
「聞いたよ!あの後一人でキマイラ倒したって!ねぇねぇ、授業おわりでしょ?筋トレ教えてよ!なにしてるの?」

カーラは目を輝かせながらルーシーの体をベタベタと触り始める
ルーシーは慌てて話した

「ちょ!なに?なに??」
「へー大胸筋はこんな感じか、広背筋と僧帽筋は…ふむふむ三角筋は…」

ルーシーは驚いて離れ、顔を赤らめて聞いた

「ちょっと、なにするの」
「あ、ごめんね。筋トレでどこ鍛えてるのか気になっちゃって…」
「筋トレはしてないよ…」
「うそでしょ!それでキマイラ一人で倒したの?アハー!すーごいじゃん。」

カーラは抱き着くとどさくさに紛れてあちこち触りながら質問を繰り返す

「普段何やってるの?食事は?どんなメニュー組んでるの?ねぇねぇねぇねぇ教えて~」
「や、ちょ!触りすぎ!今度キマイラの倒し方教えてあげるから放して!」
「やったぁ~!約束だよ!これからご飯でしょ?一緒に食堂行こうよ」

カーラは強引にルーシーの手を引くと食堂までぐいぐい引っ張って行った

食堂に到着すると、かなりの量の人がいた
カーラが説明する

「その辺に料理が積まれたテーブルがあるでしょ、あそこから好きなだけ自由にとっていいよ。なくなれば補充される」

ルーシーは肉をつまんで口に放り込む

「へー、おいしいな」
「アハー!ルーシー豪快。お皿にとってテーブル行こうよ」

いくつか料理を取り分けてテーブルに座る
周りを見ると三つの大きな人だかりが見える

ルーシーはカーラに質問した

「カーラ、あの人だかりは何?」
「ん?あーあれ、他の英雄クラスの勇者たちに群れてるんだよ」
「んん?他の勇者?カーラは群れてないの?」
「ボクは自分より弱い人たちと群れたくない、武器が大剣だし、巻き込んじゃうからね」
「なるほど、友達いないんだろ?」
「いーまーすー!ルーシーっていう女の子ですー!」
「俺?しょうがないな、友達になってやるよ」
「アハー!ルーシーいい人だね。ボク頑張ってすぐ強くなるから待ってて!」

(向上心はあるのか、時間はかかりそうだけど期待はできるな)

しばらくカーラと談笑しながら食べていると、勇者の群れがこちらへ近づいてくる

「カーラ、弱いやつと群れないんじゃなかったの?」

声をかけてきたのは黒いローブに身を包んだ長身の美女だった
ルーシーは声をかけてきた勇者を睨む
カーラは美女を見て話し出す

「げぇ~ラミアじゃん。ルーシー気を付けてね。こいつ性格悪いから」
「ご挨拶ね?カーラが他人と一緒にお食事なんて珍しいものだから」
「はぁ、彼女はルーシー、一人でキマイラ倒せる新しい英雄クラスの勇者だよ」

ラミアはルーシーに顔を向け見下した、取り巻きたちも偉そうに見下してくる

「あら、キマイラを一人で?すごいわ。カーラはその目で見たの?」
「う…ボクは気絶してた…」
「じゃあ気のせいでしょう?大方教師の方が装置を止めたのよ。こんな小娘がキマイラなんて倒せるわけないじゃない」

ルーシーは怒りを通り越して呆れかえった

(こいつはダメだ…見込みがない、追い出すか性根を叩き直さないと他人の足をひっぱるぞ。小物の魔物に多いタイプだ)
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