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二章 ウィダー王国編
バレた
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前のめりに倒れた副長は完全に白目を向いていて、意識がなくなっている。もしかしてリューネの時より威力が上がっている? でも、何で急に上がったんだ? それにさっきの【 虎擲竜挐】を合わせて【特殊能力】を3つも使ったのに、意識を失う程には疲れていない。どうなっているんだ?
「おやおや、困ったもんだねぇ」
うわぁ! な、なんだ? いきなりばあさんが現れたぞ!? 一体いつからいたんだ?
「ばあや!? いつからそこにいた?」
「最初からおりましたよ。それにしてもお嬢。自慢の兵士がこの体たらくでは困りますなぁ。これでは他の貴族から、あの件についての賛同を得る事など夢のまた夢でしょうなぁ? ふぇふぇふぇふぇ」
「わかっている! いちいち嫌味を言うな! 相変わらず口の減らない奴め!」
な、なんか辺境伯様が随分と子供っぽくなった気がするぞ。もっと威厳のある人だと思ってたんだけど。それにしても、このばあちゃんは何者だ? ローブを纏った怪しげな風貌からすると魔法使いか? ばあやと呼ばれているところから見ると、辺境伯の縁者かな?
「そこのお主、ちょっといいか?」
「俺ですか?」
「お前さん、随分と変わった能力を持っているようじゃな。魔力では無く気力を使うとはのぅ」
「気力? 気力って、あの人間の発する気のことですか?」
「お主は気と言うのか? 大陸の北ではチャクラやオーラといった言い方をする事もあるが、何にせよ生命力を根源とした力で違いない」
生命力を根源とした力、か。そういや、俺が特殊能力を使った時に魔力を使った形跡がないってドーナさんが言ってたっけ。魔力と気力は全く別物ってわけか。
「気力はコントロールする事が難しいから使い手自体が珍しいんじゃが、ここまでコントロールできている者を見るのは初めてじゃ。どうかのぅ? ちょいと儂の研究に付き合わんか? 痛くはせんぞ?」
「お断りします。元々痛くするつもりの無い人はわざわざそんな事を言いませんから」
「ふぇふぇふぇふぇ! 聡明聡明! 益々気に入ったぞ、お若いの。儂はブレンダ・モシンナガ。お嬢の元家庭教師じゃ」
家庭教師か。道理で辺境伯の頭が上がらないわけだ。子どもの頃の恩師って大人になってからも頭が上がらないもんだからな。
「おれ……私はセイゴと申します。しがない鉄級冒険者です」
「鉄級じゃと? お主、出身は?」
大阪、なんて言ってもわからないだろうし、ここは最初にいた街って事にしておこう。
「ベロリンの辺境です」
「ベロリンか。なるほどのぅ。こいつは更に興味深い事になってきおったわい。どれ、続きは茶でも飲みながら話すとしよう。お嬢、ええかの?」
「好きにしろ。お前達! いつまでもボサっとしていないで、さっさと副長を医者のところに連れて行け!」
「は、はいっ!」
茫然自失となっていた兵士達が慌てて副長を連れていき、俺達はさっきの応接室とは違う部屋に連れて行かれた。今度の部屋は随分と妙な部屋だな。窓がないし、四方の壁には何か魔法文字のような物がたくさん書かれている。
「この部屋は密談専用の部屋でな。魔法による結界を幾重にもかけてあるんじゃよ。ここなら話しやすかろう?」
老婆の怪しい瞳が俺をしっかりと捉えていて、まるで全てを見透かされているようで不気味だ。密談用の部屋に連れて来たって事は俺を怪しんでいるのは間違いないだろう。何とか上手く誤魔化して切り抜けないとな。
「まぁ座れ。茶ぐらい出してやる。安心せい、何も入っておらんわい」
何処からともなく出されたのは紅茶っぽかったけど、わざわざそんな事を言うのは怪し過ぎる。目ためには普通だし、臭いもおかしな感じはしないけど、一応【鑑定】してみるか。
って、思いっきり幻惑剤が入ってるじゃねぇか! 何を考えてるんだ! このばあさんは!
「その顔、気づいたか。やはり儂の睨んだ通りじゃな。まさか戦場以外で会えるとは思わなんだわぃ。のぅ? 転生者殿」
て、転生者ってバレた!? どうして? 何でバレたんだ!? ご、誤魔化さないと!
「顔に出やすいのぅ。よいか? その茶には確かに幻惑剤が入っておる。しかし、それを飲まずに幻惑剤と察知出来るのは鑑定の能力を持つ転生者だけじゃよ。これまでの社会への疎さと合わせて考えれば、お主が今年のベロリンの転生者で間違いないというわけじゃ」
す、鋭い……誤魔化す言葉を思いつく暇もなかった。
「転生者だと!? セイゴ、卿はベロリン王の手下かっ!?」
ぎゃぁああああああ! いきなりマリエール辺境伯が剣を抜いた! ヤ、ヤバい! 完全にスパイだと思われてる!
「セ、セイゴ……お前はベロリン王の手の者だったのか? 私がウィダーの者だと知って私を利用したのか? 私はお前に……」
こっちはこっちで利用されたと思って泣いてる!? そんなつもり無いって! リューネに戦いを挑んだのは……ウィダーに逃げるためだから利用したと言われても仕方ないかも……いや、でもベロリンのためじゃないから! でも、この状況じゃ信じてもらえないよね! お、終わったかも……俺の旅。
「おやおや、困ったもんだねぇ」
うわぁ! な、なんだ? いきなりばあさんが現れたぞ!? 一体いつからいたんだ?
「ばあや!? いつからそこにいた?」
「最初からおりましたよ。それにしてもお嬢。自慢の兵士がこの体たらくでは困りますなぁ。これでは他の貴族から、あの件についての賛同を得る事など夢のまた夢でしょうなぁ? ふぇふぇふぇふぇ」
「わかっている! いちいち嫌味を言うな! 相変わらず口の減らない奴め!」
な、なんか辺境伯様が随分と子供っぽくなった気がするぞ。もっと威厳のある人だと思ってたんだけど。それにしても、このばあちゃんは何者だ? ローブを纏った怪しげな風貌からすると魔法使いか? ばあやと呼ばれているところから見ると、辺境伯の縁者かな?
「そこのお主、ちょっといいか?」
「俺ですか?」
「お前さん、随分と変わった能力を持っているようじゃな。魔力では無く気力を使うとはのぅ」
「気力? 気力って、あの人間の発する気のことですか?」
「お主は気と言うのか? 大陸の北ではチャクラやオーラといった言い方をする事もあるが、何にせよ生命力を根源とした力で違いない」
生命力を根源とした力、か。そういや、俺が特殊能力を使った時に魔力を使った形跡がないってドーナさんが言ってたっけ。魔力と気力は全く別物ってわけか。
「気力はコントロールする事が難しいから使い手自体が珍しいんじゃが、ここまでコントロールできている者を見るのは初めてじゃ。どうかのぅ? ちょいと儂の研究に付き合わんか? 痛くはせんぞ?」
「お断りします。元々痛くするつもりの無い人はわざわざそんな事を言いませんから」
「ふぇふぇふぇふぇ! 聡明聡明! 益々気に入ったぞ、お若いの。儂はブレンダ・モシンナガ。お嬢の元家庭教師じゃ」
家庭教師か。道理で辺境伯の頭が上がらないわけだ。子どもの頃の恩師って大人になってからも頭が上がらないもんだからな。
「おれ……私はセイゴと申します。しがない鉄級冒険者です」
「鉄級じゃと? お主、出身は?」
大阪、なんて言ってもわからないだろうし、ここは最初にいた街って事にしておこう。
「ベロリンの辺境です」
「ベロリンか。なるほどのぅ。こいつは更に興味深い事になってきおったわい。どれ、続きは茶でも飲みながら話すとしよう。お嬢、ええかの?」
「好きにしろ。お前達! いつまでもボサっとしていないで、さっさと副長を医者のところに連れて行け!」
「は、はいっ!」
茫然自失となっていた兵士達が慌てて副長を連れていき、俺達はさっきの応接室とは違う部屋に連れて行かれた。今度の部屋は随分と妙な部屋だな。窓がないし、四方の壁には何か魔法文字のような物がたくさん書かれている。
「この部屋は密談専用の部屋でな。魔法による結界を幾重にもかけてあるんじゃよ。ここなら話しやすかろう?」
老婆の怪しい瞳が俺をしっかりと捉えていて、まるで全てを見透かされているようで不気味だ。密談用の部屋に連れて来たって事は俺を怪しんでいるのは間違いないだろう。何とか上手く誤魔化して切り抜けないとな。
「まぁ座れ。茶ぐらい出してやる。安心せい、何も入っておらんわい」
何処からともなく出されたのは紅茶っぽかったけど、わざわざそんな事を言うのは怪し過ぎる。目ためには普通だし、臭いもおかしな感じはしないけど、一応【鑑定】してみるか。
って、思いっきり幻惑剤が入ってるじゃねぇか! 何を考えてるんだ! このばあさんは!
「その顔、気づいたか。やはり儂の睨んだ通りじゃな。まさか戦場以外で会えるとは思わなんだわぃ。のぅ? 転生者殿」
て、転生者ってバレた!? どうして? 何でバレたんだ!? ご、誤魔化さないと!
「顔に出やすいのぅ。よいか? その茶には確かに幻惑剤が入っておる。しかし、それを飲まずに幻惑剤と察知出来るのは鑑定の能力を持つ転生者だけじゃよ。これまでの社会への疎さと合わせて考えれば、お主が今年のベロリンの転生者で間違いないというわけじゃ」
す、鋭い……誤魔化す言葉を思いつく暇もなかった。
「転生者だと!? セイゴ、卿はベロリン王の手下かっ!?」
ぎゃぁああああああ! いきなりマリエール辺境伯が剣を抜いた! ヤ、ヤバい! 完全にスパイだと思われてる!
「セ、セイゴ……お前はベロリン王の手の者だったのか? 私がウィダーの者だと知って私を利用したのか? 私はお前に……」
こっちはこっちで利用されたと思って泣いてる!? そんなつもり無いって! リューネに戦いを挑んだのは……ウィダーに逃げるためだから利用したと言われても仕方ないかも……いや、でもベロリンのためじゃないから! でも、この状況じゃ信じてもらえないよね! お、終わったかも……俺の旅。
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