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一巡して何とかなってしまった件
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婚約破棄だ!
いきなり聞こえたその声に、
おやおや、
と私はシャンパングラスを傾けた。
流石に王宮で出されるシャンパンは高級だ。それが学生用のアルコール度数低めのお子様シャンパンでも。
是非ともおかわりし、テーブルのキャビアをつまみたいところだが、流石に今それをやったら顰蹙だろう。
私はグラスに残ったチェリーを名残惜しげに見つめた後、城の大広間の中央で、胸を張る皇太子に目を向けた。
(ついにやらかしたか)
このところ、各国で断罪イベントが流行っている。
隣国でも隣々国でも、真実の愛を旗頭に、皇太子、第二王子、果ては王様まで、次々と騒ぎを起こしている。
事の発端はベストセラーになった小説とか。
…が、現実と二次元の区別がつかない権力者とは、なんとも嘆かわしい。
見た目は良いが、流行り好きの短絡思考の我が国の皇太子が、いずれやるのでは、と、思ったことがないわけではない。
などと思いながらも、実のところ、私に憂いは一つもなかった。
(所詮、他人事だしね)
婚約破棄を言い渡されたのは、私ではないのだ。
そもそも私には婚約者などいない。
王家と学園主催のこの学生と父兄を招いた春の夜会で、誰か良い人を見つけてくれと、親に懇願されているくらいだ。
言っておくがモテないわけではない。
それよりも家の手伝いが面白いだけだ。
では破棄を宣告されたのは誰かといえば、皇太子の目の前に立つ公爵令嬢カトリーヌ様。
先代王弟の第一子にして、容姿端麗、才色兼備、品行方正。
(欠点といえば、プライドの高さくらい?)
正直、今皇太子の左腕にしがみついているキャロライン嬢と比較すれば月とスッポン。
勿論、カトリーヌ様が月だ。
キャロラインは、私と同じ男爵令嬢で、平民だったのも同じ。
うちは商人の成り上がりだが、彼女は光魔法を見いだされ、男爵家の養女になったとか、実は男爵の婚外子だとか。
このキャロラインは、とにかくモテる。
生粋のお貴族様の中に混じると、かなり浮いているのだが、それを逆手に取って楽しい学園生活を送っている。
金髪に目がくりっとした、可愛い子系。愛嬌があり、自分の長所を最大限に活かし、躊躇なく媚を売るのは、お貴族様には真似できない。
まあ、それは女性陣目線で、男性陣から見ると、庇護欲をかきたてるらしい。
(まったく、男どもが単純すぎるのだ)
その筆頭たる皇太子は、真実の愛というこの設定に完全に酔いしれている。
池に突き落としたとか、
教科書を破られたとか、
ああ出た、階段から突き落とし。
(きっとキャロラインも、あの小説を読んだんだろうなぁ)
それで、ワンチャンありと見て、皇太子に粉をかけたら、上手くいったというところか。
(でもねぇ…)
私はグラスを揺すって、手のひらにチェリーを上手に乗せると、バレないように、そのままパクリと食べた。
甘さの中に、酸味が効いている。
砂糖漬けではなく、酢漬けというのは、まさにこの場に適している。
(ねえ、キャロライン。それに皇太子様。もうその流行りは下火なんですよ)
いや、下火どころか、この流れに乗った
やんごとなき方々は、ことごとく失脚しているのだ!
商人は情報こそが命。
だから私は知ってる。
国をまたいで構築された商人ネットワークは半端ではない。
もちろん、王様だって知っているだろうに、息子に教えなかったのは、まさか我が子がやらかすとは思っていなかったのか。
奥に鎮座する王様の様子をうかがうと、かの王は不動の構え。
固まっているのか。
呆れているのか。
はたまた静観しているのか。
(他国と違い廃嫡できないからね)
数年前に逝去した先代王が、孫であるこの皇太子を溺愛していたことが大問題。
先王は病気を患い、10年前に息子に王位をゆずっていたが、今際の際に、くれぐれも孫を頼むと、現王の手を握り息絶えたのは有名な話だ。
親孝行の王様は、実父の遺言を反故にはしないだろう。
ではこのまま公爵令嬢を破談にし、男爵令嬢を後釜に据えるのか?
(それは絶対にない)
地位が低いのはまだしも、かの男爵家は罪を犯している。
人身売買。
叩けば埃が出て前が見えなくなるほど真っ黒。
逮捕は秒読み段階まで来ているのを、私は知っている。
しかし、だからと言って、ここまで大々的に破棄を宣言された公爵家が、復縁というのはかなり難しいに違いない。
奇特にも、カトリーヌ様は皇太子のことを憎からず思っていると聞いている。
だが、流石に公衆の面前での破談劇は許容範囲外だろう。
ああ、それ以前に父親である公爵が青筋を立てて動こうとしているではないか。それを側近が必死に止めている。
止めているのは、向かう方向が、皇太子でなく父親の王様の方だからか。
(なるほど、だから王様は動けなかったのか)
二人は従兄弟。
公爵の方がひと回り年上なこともあり、王様の指南役だったとか。
言わば師弟関係の弟子の子供が、師匠の愛娘を、公共の場で貶めたのだ。
それは怒り心頭だろう。
(これはもう、破談間違いなし)
すると、次の王妃候補は……
(もう一人の公爵家。シフォンヌ嬢しかいないだろう)
私はシフォンヌ嬢に視線を向けた。
扇を握りしめた手は震え、その顔は青ざめて見える。
(喜んでない?そういえば、シフォンヌ嬢には、内定している婚約者がいるんだっけ?)
噂によると相思相愛で、(やらかしてない方の)隣国の第三王子との婚約間近とか。
ただ内定で、決定ではないのが問題で、それが彼女を青ざめさせている。
(だけど、どうだろう。これはない気がする)
彼女の父親である公爵は、王妃様の実の兄で、父は先々代王の末子で、祖母が先代王の妹君。
つまり十分NOと言えるポジションだ。
これがまた娘を溺愛している父親で、
一人娘を嫁にやらずに、婿を取って手元に置いておけるのを、ことのほか喜んでいると聞く。
今更、それをひっくり返して、他国の反感を買ってまで、皇太子に嫁入りさせようとは思うまい。
(すると、もう公爵家に適齢期の女性はいないのだから、侯爵家しかいない)
私がそう思うのと、アン侯爵令嬢が青ざめるのは、ほぼ同時だった。
同じ結論に達したのだろう。
なぜ、青ざめているかと言えば、アン様には婚約者がすでにいるし、なにより、彼女の長兄はカトリーヌ様の妹と婚約済。
ゆくゆくは男子のいない公爵家の後を継ぐ予定だったのだ。
カトリーヌ様が破談してしまえば、兄の跡継ぎ自体が危うくなる。ましてや、そのカトリーヌ様の後釜にアン様が入るなど、公爵家からすれば許せる話ではない。
(すると、残りの侯爵令嬢二人のどちらか)
私は考えて、すぐに首を振った。
(いや、だめだ)
リュシエンヌ侯爵令嬢は、次兄がアン侯爵令嬢の婚約者その人ではないか。
公爵家の遠縁になるわけで、同じ理由で、婚約など受け入れられるわけがない。
そもそも、リュシエンヌ様自身も子爵家と婚約済だ。
ではもう一人のリリー侯爵令嬢はどうかと言えば、こちらは傾いた家を公爵家の援助で復興させた経緯がある。
王族の親戚になれるとはいえ、大恩ある公爵家に後ろ足で砂をかけるようなことをすれば、社交界で生き残る術はないだろう。
(すると伯爵家?)
私の視線の方が早く、遅れて伯爵令嬢は青ざめた。
この伯爵家は相関図的にはいいのだが、立地が悪かった。何しろ、彼女の領地は、公爵家の隣。
山間の領地は公爵家領を通らずにはどこにも行けず、ライフラインを完全に握られている。
ではもう一人の伯爵令嬢はといえば……、なんということだ。
彼女の母親は、カトリーヌ様の実母の妹。二人は従姉妹ではないか。
(ええ!?こんなにお貴族様って人間関係が入り組んでるの?)
歴史が長ければそれだけしがらみも深くなるというわけか。
まるで蜘蛛の巣のように縦と横の糸が入り組んでいる。
(では、当初より、かなり落ちるが子爵家から誰か)
私はパーティ会場を見渡した。
年頃の子爵令嬢は3人いる。
1人は留学中で、先方で相手を見つけたという話だし、もう1人は実家が公爵家の寄り子だった。
(長年の寄親は子爵家の裏も表も熟知しているだろう)
不興を買えば、取り潰せるネタなどいくらでも握っているに違いない。
(ならば、残り1人の子爵令嬢か)
と、かの子爵令嬢を見ると、こちらはすっかり青ざめていた。
(そうだ、彼女も既に婚約済だ)
しかも、家の根幹事業を公爵家と共同経営している。出資率は公爵家が80%だ。
公爵にそっぽを向かれたら、一瞬で家が潰れてしまう。
公爵家という名は伊達じゃない。
だからこそ、次期王妃として選ばれ、他家と調整を重ねてきたに違いない。
いうなれば戦略を巡らせたチェス。このチェス盤を、このバカ皇太子はひっくり返したのだ。
簡単に収拾などつくわけがない。
他人事ながら、段々と腹が立ってきた。
(ああ、これならいっそ、しがらみの少ない男爵家の方がいいかもしれない)
そう、例えば…
偶然にも横に立っていたビアンカ男爵令嬢を見た。互いの視線が合う。
あっ…!
ビアンカ嬢の口がOの字になり、たちまち血の気が引いていった。だが、それは誰あろう私も同じだった。
思わず口に含んだチェリーの種をこぼしそうになり、慌ててハンカチの中へと隠してたたむ。
しがらみのない男爵家。
例えば、ビアンカのような、王国設立時よりの歴史を持つ、代々の文官の家系とか。
(もしくは…)
ビアンカが私を見ている。きっと同じことを考えている。
もしくは、公爵家並みに財力があり、世界的に見れば王室よりもネットワークを持つ、商人の成り上がりの男爵家とか……。
そう、我が家だ!!
(嘘でしょう。対岸の火事だと思っていたのに!)
あり得る?
いや、通常ならあり得ない。
(成り上がりの男爵家だよ)
でも今回ばかりはあり得る、回ってくる!
その可能性は否定できない。
この場合、私にまだお相手がいないのも痛いだろう。
(ああ、こんなことなら虫除けに、適当に婚約しておけば良かった)
王族になるメリットとデメリット。私は頭を抱えながらも計算した。
無理だ。
民を支え、統治し国を豊かにするのが王室なら、民に必要な物資を与え、自らを豊かにするのが商人だ。
似ているが全く違う。
それに商人は清廉潔白ではない。
商いのためには、グレーゾーンに立ち入ることもある。王室だって同じだろうが、王室はそれが政治で、商人は商売だ。軋轢は目に見えている。
(このままじゃマズイ!)
私はビアンカと目を合わせた。
以心伝心。互いに強く頷いた。
私が中央から左。彼女が中央から右にすばやく視線を走らせる。
公侯伯子男
全ての爵位の令嬢が交互に視線を交え、
そして一斉に頷いた。
「異議あり!」
私はずっと握っていたグラスをテーブルに置くと叫んだ。
「私たちが未来の王妃様として崇めるのは
カトリーヌ様を置いて他にはございません」
続いたのはアン侯爵令嬢。
「慈悲深きお方」
「天賦の才」
「その美しさ」
「エレガントさ」
「まさに現王妃様と並び遜色のない人物はカトリーヌ様以外ございません」
私がつけ足した。
(これ重要)
「そもそも、破られた教科書を私も見ましたが、あれは上製本の歴史の教科書。女子が簡単に破れるものではありません」
おっと、重要証言まで飛び出した。
「池に落ちた日、私はカトリーヌ様とずっとダンスのレッスンをしておりました。練習室を出た後、彼女が落ちたことを聞くまでずっと一緒におりました。何度もそう申し上げましたよね」
続々と。
「階段から落ちた日、私はすぐそばにいました。目撃したわけではないので、今まで、申し上げませんでしたが、あの音ではせいぜい落下は2、3 段。2階にいたカトリーヌ様の手が届くとは思えません」
「そもそも、カトリーヌ様を疑うのがおかしいのです」
「手を伸ばしているのを見たですって?そんなの、心配になって手を差し伸べただけに決まっているではありませんか」
そうだ、そうだと声が上がる。
「カトリーヌ様にお仕えできないのならば、私は他国に嫁ぎます」
「私は修道院に入ります」
カトリーヌ様
カトリーヌ様
王妃様
王妃様
万歳
万歳
一同が皇太子とキャロラインを囲みだし、喝采のもと、輪を縮め詰め寄った。
集団心理とは恐ろしい。
いつの間にか男性陣が加わっている。
自分の婚姻が危ういと気づいた聡い者、単純にカトリーヌ様が凄いと思っている者。
今や王子は革命軍に取り囲まれた処刑間近の亡国の王子だ。
「か、カトリーヌ……」
皇太子がカトリーヌ様を見た。
彼女はこんなに慕われていたのかと、激しく動揺しているのが明らかだ。
今です!カトリーヌ様!
私はここぞとばかりに目配せした。
流石は王妃たる教育を受けていた公爵令嬢。
カトリーヌ様は、おだやかに微笑むと、一同に向かって見事なカーテシーをして見せた。
完璧なる淑女の礼は、それだけで、一枚の絵画のよう。
おおおおお!!!!
怒声に近い歓声があがり、私も思わず握っていたハンカチを振り回していた。
チェリーの種が床に飛ぶのを気にするものはいなかった。
カツーン
種のかわりに、王笏が床を着く音が響いた。
一同は静まりかえった。
パチ パチ パチ
小さな拍手が続く。手をたたきながら、王様が皇太子に近づいていった。
一同が道を開ける。
皇太子とキャロラインは腰を抜かしたように、大理石の床に尻もちをついたままだ。
王様の後にはご満悦顔の王妃が続く。
かの王様、親孝行でもあるが、愛妻家でも有名だった。
そう、私のさっきの発言は満更おべっかではないのだ。
かの王妃を射止めるべく、各国の王子の争奪戦が行われのは、一昔前の人々には有名な話だ。
その王妃が何やら、王様に耳打ちし、王様がご満悦で頷いた。
「さて、楽しい余興であった」
「余興?」
王様の言葉を、皇太子がオウム返しした。
「これも皆、次期王妃たるカトリーヌがいかに慕われているのかを、知らしめる為に、皇太子が仕組んだ余興。見事であった。わしも楽しめたわ」
王様にこう言われては、もう何も言えない。
いや、周りが何も言わせない。
わあっ、
と歓声が上がり、人々が皇太子をまた取り囲んだ。
気を利かせた従者が、恭しくカトリーヌ様の手を取り、皇太子の隣へと導く。
そうかと思えば、キャロラインは誰ともなく、うまいこと人々に押され、輪の外に放り出された。
「世紀のカップル」
「奇跡の巡り合わせ」
「伝説の2人」
褒めちぎられ、すっかり、皇太子はご満悦。さっきの発言など完全に忘れてしまっているようだ。
開いた口がふさがらないのはキャロライン。
輪の外に追い出された彼女は、すかさず衛兵に取り押さえられ、退出させられた。
一声も上げさせないのは見事な手際だ。
実は背後から首に手刀を一発。
おそらく、あれで完全に意識不明。
そうとは見えず、ただ歩くのを介助するように退出させたところを見ると、あれは噂の王様の影の集団か。
(いや、これ以上の詮索は危険だ)
私は待望の二杯目のグラスを取り、シャンパンに口をつけた。
なんと、美味しいことか。
キャビアをつまみながら、今や幸せの絶頂にあるカトリーヌ様に視線向けた。
ひとまず、今回のやらかしはこれで相殺されたようだ。
誰もが胸をなで下ろし、そこからは乾杯のコールラッシュ。一同の喜びは2人が笑顔で退出するまで続いた。
後に伝説となる黄金の一夜。
あの後二人はめでたく結婚し、公侯伯子男のご令嬢方も、各々、元より決まっていた相手と結ばれた。
私はと言えば、あの時、少しばかり目立ってしまったらしい。
今や王太子妃となったカトリーヌ様に可愛がられ、右腕とまで言われている。
そして、無事お相手も見つかった。
なんと、あの時、キャロラインに手刀を浴びせた王室の影。
正体は宰相の次男だった。
誰にも気づかれないはずが、気づいた私に興味を持ったようで、この春めでたく結婚した。
そして我が家といえば、なんと子爵を飛び越え、侯爵に叙爵された。
父と兄からは私が余計なことをしたからだと文句を言われたが、なったからには、この地位を上手く使い、商売を広げると息巻いているところを見ると、内心、喜んでいるようだ。
特筆すべきは、この異例の昇格にどこからも、待ったが掛からなかったことだ。
どの家も女性が強いらしい。
あの場を治めた私に皆が感謝しているとのこと。
素晴らしいことに、あの時、生まれた団結は崩れるどころか、今や確固たるものとなり、わが国は完全に一枚岩となった。
史上、最も統制がとれ、潤った治世は各国が舌を巻くほどである。
まさに大団円。
不正を働き、処刑された男爵とその令嬢の話を口にする者など一人もいない。
でも実は覚えている。
時折、青空を見上げ、思い出したように呟く。
ありがとう、キャロライン。
あなたのやらかしのおかげで、あなた以外全員が幸せになりました。
いえ、これだけ、善行を重ねたあなたは、きっと天国に行けているでしょう。
そうすると、不幸せになった者が一人もいない。完全なる幸福。
こんなことホントにあるんだ。
いきなり聞こえたその声に、
おやおや、
と私はシャンパングラスを傾けた。
流石に王宮で出されるシャンパンは高級だ。それが学生用のアルコール度数低めのお子様シャンパンでも。
是非ともおかわりし、テーブルのキャビアをつまみたいところだが、流石に今それをやったら顰蹙だろう。
私はグラスに残ったチェリーを名残惜しげに見つめた後、城の大広間の中央で、胸を張る皇太子に目を向けた。
(ついにやらかしたか)
このところ、各国で断罪イベントが流行っている。
隣国でも隣々国でも、真実の愛を旗頭に、皇太子、第二王子、果ては王様まで、次々と騒ぎを起こしている。
事の発端はベストセラーになった小説とか。
…が、現実と二次元の区別がつかない権力者とは、なんとも嘆かわしい。
見た目は良いが、流行り好きの短絡思考の我が国の皇太子が、いずれやるのでは、と、思ったことがないわけではない。
などと思いながらも、実のところ、私に憂いは一つもなかった。
(所詮、他人事だしね)
婚約破棄を言い渡されたのは、私ではないのだ。
そもそも私には婚約者などいない。
王家と学園主催のこの学生と父兄を招いた春の夜会で、誰か良い人を見つけてくれと、親に懇願されているくらいだ。
言っておくがモテないわけではない。
それよりも家の手伝いが面白いだけだ。
では破棄を宣告されたのは誰かといえば、皇太子の目の前に立つ公爵令嬢カトリーヌ様。
先代王弟の第一子にして、容姿端麗、才色兼備、品行方正。
(欠点といえば、プライドの高さくらい?)
正直、今皇太子の左腕にしがみついているキャロライン嬢と比較すれば月とスッポン。
勿論、カトリーヌ様が月だ。
キャロラインは、私と同じ男爵令嬢で、平民だったのも同じ。
うちは商人の成り上がりだが、彼女は光魔法を見いだされ、男爵家の養女になったとか、実は男爵の婚外子だとか。
このキャロラインは、とにかくモテる。
生粋のお貴族様の中に混じると、かなり浮いているのだが、それを逆手に取って楽しい学園生活を送っている。
金髪に目がくりっとした、可愛い子系。愛嬌があり、自分の長所を最大限に活かし、躊躇なく媚を売るのは、お貴族様には真似できない。
まあ、それは女性陣目線で、男性陣から見ると、庇護欲をかきたてるらしい。
(まったく、男どもが単純すぎるのだ)
その筆頭たる皇太子は、真実の愛というこの設定に完全に酔いしれている。
池に突き落としたとか、
教科書を破られたとか、
ああ出た、階段から突き落とし。
(きっとキャロラインも、あの小説を読んだんだろうなぁ)
それで、ワンチャンありと見て、皇太子に粉をかけたら、上手くいったというところか。
(でもねぇ…)
私はグラスを揺すって、手のひらにチェリーを上手に乗せると、バレないように、そのままパクリと食べた。
甘さの中に、酸味が効いている。
砂糖漬けではなく、酢漬けというのは、まさにこの場に適している。
(ねえ、キャロライン。それに皇太子様。もうその流行りは下火なんですよ)
いや、下火どころか、この流れに乗った
やんごとなき方々は、ことごとく失脚しているのだ!
商人は情報こそが命。
だから私は知ってる。
国をまたいで構築された商人ネットワークは半端ではない。
もちろん、王様だって知っているだろうに、息子に教えなかったのは、まさか我が子がやらかすとは思っていなかったのか。
奥に鎮座する王様の様子をうかがうと、かの王は不動の構え。
固まっているのか。
呆れているのか。
はたまた静観しているのか。
(他国と違い廃嫡できないからね)
数年前に逝去した先代王が、孫であるこの皇太子を溺愛していたことが大問題。
先王は病気を患い、10年前に息子に王位をゆずっていたが、今際の際に、くれぐれも孫を頼むと、現王の手を握り息絶えたのは有名な話だ。
親孝行の王様は、実父の遺言を反故にはしないだろう。
ではこのまま公爵令嬢を破談にし、男爵令嬢を後釜に据えるのか?
(それは絶対にない)
地位が低いのはまだしも、かの男爵家は罪を犯している。
人身売買。
叩けば埃が出て前が見えなくなるほど真っ黒。
逮捕は秒読み段階まで来ているのを、私は知っている。
しかし、だからと言って、ここまで大々的に破棄を宣言された公爵家が、復縁というのはかなり難しいに違いない。
奇特にも、カトリーヌ様は皇太子のことを憎からず思っていると聞いている。
だが、流石に公衆の面前での破談劇は許容範囲外だろう。
ああ、それ以前に父親である公爵が青筋を立てて動こうとしているではないか。それを側近が必死に止めている。
止めているのは、向かう方向が、皇太子でなく父親の王様の方だからか。
(なるほど、だから王様は動けなかったのか)
二人は従兄弟。
公爵の方がひと回り年上なこともあり、王様の指南役だったとか。
言わば師弟関係の弟子の子供が、師匠の愛娘を、公共の場で貶めたのだ。
それは怒り心頭だろう。
(これはもう、破談間違いなし)
すると、次の王妃候補は……
(もう一人の公爵家。シフォンヌ嬢しかいないだろう)
私はシフォンヌ嬢に視線を向けた。
扇を握りしめた手は震え、その顔は青ざめて見える。
(喜んでない?そういえば、シフォンヌ嬢には、内定している婚約者がいるんだっけ?)
噂によると相思相愛で、(やらかしてない方の)隣国の第三王子との婚約間近とか。
ただ内定で、決定ではないのが問題で、それが彼女を青ざめさせている。
(だけど、どうだろう。これはない気がする)
彼女の父親である公爵は、王妃様の実の兄で、父は先々代王の末子で、祖母が先代王の妹君。
つまり十分NOと言えるポジションだ。
これがまた娘を溺愛している父親で、
一人娘を嫁にやらずに、婿を取って手元に置いておけるのを、ことのほか喜んでいると聞く。
今更、それをひっくり返して、他国の反感を買ってまで、皇太子に嫁入りさせようとは思うまい。
(すると、もう公爵家に適齢期の女性はいないのだから、侯爵家しかいない)
私がそう思うのと、アン侯爵令嬢が青ざめるのは、ほぼ同時だった。
同じ結論に達したのだろう。
なぜ、青ざめているかと言えば、アン様には婚約者がすでにいるし、なにより、彼女の長兄はカトリーヌ様の妹と婚約済。
ゆくゆくは男子のいない公爵家の後を継ぐ予定だったのだ。
カトリーヌ様が破談してしまえば、兄の跡継ぎ自体が危うくなる。ましてや、そのカトリーヌ様の後釜にアン様が入るなど、公爵家からすれば許せる話ではない。
(すると、残りの侯爵令嬢二人のどちらか)
私は考えて、すぐに首を振った。
(いや、だめだ)
リュシエンヌ侯爵令嬢は、次兄がアン侯爵令嬢の婚約者その人ではないか。
公爵家の遠縁になるわけで、同じ理由で、婚約など受け入れられるわけがない。
そもそも、リュシエンヌ様自身も子爵家と婚約済だ。
ではもう一人のリリー侯爵令嬢はどうかと言えば、こちらは傾いた家を公爵家の援助で復興させた経緯がある。
王族の親戚になれるとはいえ、大恩ある公爵家に後ろ足で砂をかけるようなことをすれば、社交界で生き残る術はないだろう。
(すると伯爵家?)
私の視線の方が早く、遅れて伯爵令嬢は青ざめた。
この伯爵家は相関図的にはいいのだが、立地が悪かった。何しろ、彼女の領地は、公爵家の隣。
山間の領地は公爵家領を通らずにはどこにも行けず、ライフラインを完全に握られている。
ではもう一人の伯爵令嬢はといえば……、なんということだ。
彼女の母親は、カトリーヌ様の実母の妹。二人は従姉妹ではないか。
(ええ!?こんなにお貴族様って人間関係が入り組んでるの?)
歴史が長ければそれだけしがらみも深くなるというわけか。
まるで蜘蛛の巣のように縦と横の糸が入り組んでいる。
(では、当初より、かなり落ちるが子爵家から誰か)
私はパーティ会場を見渡した。
年頃の子爵令嬢は3人いる。
1人は留学中で、先方で相手を見つけたという話だし、もう1人は実家が公爵家の寄り子だった。
(長年の寄親は子爵家の裏も表も熟知しているだろう)
不興を買えば、取り潰せるネタなどいくらでも握っているに違いない。
(ならば、残り1人の子爵令嬢か)
と、かの子爵令嬢を見ると、こちらはすっかり青ざめていた。
(そうだ、彼女も既に婚約済だ)
しかも、家の根幹事業を公爵家と共同経営している。出資率は公爵家が80%だ。
公爵にそっぽを向かれたら、一瞬で家が潰れてしまう。
公爵家という名は伊達じゃない。
だからこそ、次期王妃として選ばれ、他家と調整を重ねてきたに違いない。
いうなれば戦略を巡らせたチェス。このチェス盤を、このバカ皇太子はひっくり返したのだ。
簡単に収拾などつくわけがない。
他人事ながら、段々と腹が立ってきた。
(ああ、これならいっそ、しがらみの少ない男爵家の方がいいかもしれない)
そう、例えば…
偶然にも横に立っていたビアンカ男爵令嬢を見た。互いの視線が合う。
あっ…!
ビアンカ嬢の口がOの字になり、たちまち血の気が引いていった。だが、それは誰あろう私も同じだった。
思わず口に含んだチェリーの種をこぼしそうになり、慌ててハンカチの中へと隠してたたむ。
しがらみのない男爵家。
例えば、ビアンカのような、王国設立時よりの歴史を持つ、代々の文官の家系とか。
(もしくは…)
ビアンカが私を見ている。きっと同じことを考えている。
もしくは、公爵家並みに財力があり、世界的に見れば王室よりもネットワークを持つ、商人の成り上がりの男爵家とか……。
そう、我が家だ!!
(嘘でしょう。対岸の火事だと思っていたのに!)
あり得る?
いや、通常ならあり得ない。
(成り上がりの男爵家だよ)
でも今回ばかりはあり得る、回ってくる!
その可能性は否定できない。
この場合、私にまだお相手がいないのも痛いだろう。
(ああ、こんなことなら虫除けに、適当に婚約しておけば良かった)
王族になるメリットとデメリット。私は頭を抱えながらも計算した。
無理だ。
民を支え、統治し国を豊かにするのが王室なら、民に必要な物資を与え、自らを豊かにするのが商人だ。
似ているが全く違う。
それに商人は清廉潔白ではない。
商いのためには、グレーゾーンに立ち入ることもある。王室だって同じだろうが、王室はそれが政治で、商人は商売だ。軋轢は目に見えている。
(このままじゃマズイ!)
私はビアンカと目を合わせた。
以心伝心。互いに強く頷いた。
私が中央から左。彼女が中央から右にすばやく視線を走らせる。
公侯伯子男
全ての爵位の令嬢が交互に視線を交え、
そして一斉に頷いた。
「異議あり!」
私はずっと握っていたグラスをテーブルに置くと叫んだ。
「私たちが未来の王妃様として崇めるのは
カトリーヌ様を置いて他にはございません」
続いたのはアン侯爵令嬢。
「慈悲深きお方」
「天賦の才」
「その美しさ」
「エレガントさ」
「まさに現王妃様と並び遜色のない人物はカトリーヌ様以外ございません」
私がつけ足した。
(これ重要)
「そもそも、破られた教科書を私も見ましたが、あれは上製本の歴史の教科書。女子が簡単に破れるものではありません」
おっと、重要証言まで飛び出した。
「池に落ちた日、私はカトリーヌ様とずっとダンスのレッスンをしておりました。練習室を出た後、彼女が落ちたことを聞くまでずっと一緒におりました。何度もそう申し上げましたよね」
続々と。
「階段から落ちた日、私はすぐそばにいました。目撃したわけではないので、今まで、申し上げませんでしたが、あの音ではせいぜい落下は2、3 段。2階にいたカトリーヌ様の手が届くとは思えません」
「そもそも、カトリーヌ様を疑うのがおかしいのです」
「手を伸ばしているのを見たですって?そんなの、心配になって手を差し伸べただけに決まっているではありませんか」
そうだ、そうだと声が上がる。
「カトリーヌ様にお仕えできないのならば、私は他国に嫁ぎます」
「私は修道院に入ります」
カトリーヌ様
カトリーヌ様
王妃様
王妃様
万歳
万歳
一同が皇太子とキャロラインを囲みだし、喝采のもと、輪を縮め詰め寄った。
集団心理とは恐ろしい。
いつの間にか男性陣が加わっている。
自分の婚姻が危ういと気づいた聡い者、単純にカトリーヌ様が凄いと思っている者。
今や王子は革命軍に取り囲まれた処刑間近の亡国の王子だ。
「か、カトリーヌ……」
皇太子がカトリーヌ様を見た。
彼女はこんなに慕われていたのかと、激しく動揺しているのが明らかだ。
今です!カトリーヌ様!
私はここぞとばかりに目配せした。
流石は王妃たる教育を受けていた公爵令嬢。
カトリーヌ様は、おだやかに微笑むと、一同に向かって見事なカーテシーをして見せた。
完璧なる淑女の礼は、それだけで、一枚の絵画のよう。
おおおおお!!!!
怒声に近い歓声があがり、私も思わず握っていたハンカチを振り回していた。
チェリーの種が床に飛ぶのを気にするものはいなかった。
カツーン
種のかわりに、王笏が床を着く音が響いた。
一同は静まりかえった。
パチ パチ パチ
小さな拍手が続く。手をたたきながら、王様が皇太子に近づいていった。
一同が道を開ける。
皇太子とキャロラインは腰を抜かしたように、大理石の床に尻もちをついたままだ。
王様の後にはご満悦顔の王妃が続く。
かの王様、親孝行でもあるが、愛妻家でも有名だった。
そう、私のさっきの発言は満更おべっかではないのだ。
かの王妃を射止めるべく、各国の王子の争奪戦が行われのは、一昔前の人々には有名な話だ。
その王妃が何やら、王様に耳打ちし、王様がご満悦で頷いた。
「さて、楽しい余興であった」
「余興?」
王様の言葉を、皇太子がオウム返しした。
「これも皆、次期王妃たるカトリーヌがいかに慕われているのかを、知らしめる為に、皇太子が仕組んだ余興。見事であった。わしも楽しめたわ」
王様にこう言われては、もう何も言えない。
いや、周りが何も言わせない。
わあっ、
と歓声が上がり、人々が皇太子をまた取り囲んだ。
気を利かせた従者が、恭しくカトリーヌ様の手を取り、皇太子の隣へと導く。
そうかと思えば、キャロラインは誰ともなく、うまいこと人々に押され、輪の外に放り出された。
「世紀のカップル」
「奇跡の巡り合わせ」
「伝説の2人」
褒めちぎられ、すっかり、皇太子はご満悦。さっきの発言など完全に忘れてしまっているようだ。
開いた口がふさがらないのはキャロライン。
輪の外に追い出された彼女は、すかさず衛兵に取り押さえられ、退出させられた。
一声も上げさせないのは見事な手際だ。
実は背後から首に手刀を一発。
おそらく、あれで完全に意識不明。
そうとは見えず、ただ歩くのを介助するように退出させたところを見ると、あれは噂の王様の影の集団か。
(いや、これ以上の詮索は危険だ)
私は待望の二杯目のグラスを取り、シャンパンに口をつけた。
なんと、美味しいことか。
キャビアをつまみながら、今や幸せの絶頂にあるカトリーヌ様に視線向けた。
ひとまず、今回のやらかしはこれで相殺されたようだ。
誰もが胸をなで下ろし、そこからは乾杯のコールラッシュ。一同の喜びは2人が笑顔で退出するまで続いた。
後に伝説となる黄金の一夜。
あの後二人はめでたく結婚し、公侯伯子男のご令嬢方も、各々、元より決まっていた相手と結ばれた。
私はと言えば、あの時、少しばかり目立ってしまったらしい。
今や王太子妃となったカトリーヌ様に可愛がられ、右腕とまで言われている。
そして、無事お相手も見つかった。
なんと、あの時、キャロラインに手刀を浴びせた王室の影。
正体は宰相の次男だった。
誰にも気づかれないはずが、気づいた私に興味を持ったようで、この春めでたく結婚した。
そして我が家といえば、なんと子爵を飛び越え、侯爵に叙爵された。
父と兄からは私が余計なことをしたからだと文句を言われたが、なったからには、この地位を上手く使い、商売を広げると息巻いているところを見ると、内心、喜んでいるようだ。
特筆すべきは、この異例の昇格にどこからも、待ったが掛からなかったことだ。
どの家も女性が強いらしい。
あの場を治めた私に皆が感謝しているとのこと。
素晴らしいことに、あの時、生まれた団結は崩れるどころか、今や確固たるものとなり、わが国は完全に一枚岩となった。
史上、最も統制がとれ、潤った治世は各国が舌を巻くほどである。
まさに大団円。
不正を働き、処刑された男爵とその令嬢の話を口にする者など一人もいない。
でも実は覚えている。
時折、青空を見上げ、思い出したように呟く。
ありがとう、キャロライン。
あなたのやらかしのおかげで、あなた以外全員が幸せになりました。
いえ、これだけ、善行を重ねたあなたは、きっと天国に行けているでしょう。
そうすると、不幸せになった者が一人もいない。完全なる幸福。
こんなことホントにあるんだ。
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