人類は仮想世界に移住しました。最強のアバターを手にいれたので、無双します

新人賞落選置き場にすることにしました

文字の大きさ
6 / 27

寮へ

しおりを挟む
 蛇女も担がれて行って、女王も立ち去って、バトルステージ残されているのは、ノウノとエダのふたりだけだった。


 あえてそういう造りにしているのかもしれないが、廃墟のような建物が建ち並んでいるため、どことなく、スラムという風情がある。


 壁が半壊して、屋内が露出していたり、あきらかに干からびた植物が風に揺られている。一部は、ノウノと蛇女のバトルによって崩れた場所もある。


「女王からバトルを断られちゃった」
 と、ノウノがつぶやく。


「仕方あるまい。あやつは特別じゃからな。学園を仕切っているのも……というか、この世界を管理しているのも、ロジカルンじゃからな」
 と、エダが応じた。


「選考があるって言ってたけど」


「VDOOL学園祭という、行事が定期的に行われておる。その学園祭までに、フォロワーを集めておくことじゃな。吾輩が知っているときとルールが変わってるやもしれん。詳しいことは、学園内の者に聞いてみるしかあるまい」


「うん」


 やがて他のアバターたちがやって来た。


 「良いバトルだったよ」「期待の新人さんだね」……などと声をかけてくれた。


 そのアバターたちは、人の形のものもあれば、ボールから足が生えたような奇抜な形状のものもいた。
 アバターたちは、その場に座り込んで、何やら作業をしはじめた。メガネをかけて、何もない空間を叩いたり、撫でまわしたりしている。


「この人たちは、何してるの?」


「こやつらは、いわゆる土方の連中じゃな。オヌシが破壊した場所なんかの、修繕なんかをしてくれているんじゃろ」


「へぇ」


 たしかに、通路に散乱していた瓦屋根が、霧散するように消えて行った。かわりに屋根に張り付けられていた。


「コーディングを行っているんじゃろう。邪魔にならぬように、吾輩たちも退散しようではないか」


「りょ」


 エダは両手を挙げていた。抱っこしろということだろう。まるで赤ん坊みたいである。たいして重くもないので、ノウノはエダのことを抱え上げた。エダの身体は、まるで綿菓子みたいに軽いのだ。


 廃墟エリアを抜ける。学園の庭園にあるのは、廃墟だけではない。校舎前のあたりには、芝の敷かれたエリアがある。そのあたりではバトルは行われないらしく、平穏な雰囲気が満ちていた。


 木々は、キリンやらゾウといった動物の形にかたどられている。噴水からあふれ出てくる水か、川となって、川のあいだには橋がかかっている。


 ノウノはその橋を渡ってみた。べつに意味はない。石造りのアーチ橋となっており、弓なりに曲がった橋には、蔓性植物がからみついており、おしゃれだなぁ、と思って渡ってみたくなっただけである。


 橋を渡っていると、周りにいたアバターたちが、ノウノのまわりに集まってきた。「バトル見てたよ」「すごかったよ」……と、称賛を与えられた。


 女王に軽くあしらわれて気分が冷めていたのだが、称賛されるとまた気分が昂ぶってきた。「えへえへ。どもども」と、照れながら頭を下げた。


 蛇女たちは腐ってもロジカルンのアバターであり、それを倒したのだから、けっこう凄いことなのだ、という実感を得ることが出来た。


 握手してくださいと言われたり、フォローしても良いですか、と声をかけられた。女王と戦うためにはフォロワー数が必要だということだったし、何よりフォロワーは大歓迎である。


 そうして他のアバターたちと、じゃれあっているだけでも、フォロワーは微増していった。


 チヤホヤされて上機嫌となって、橋を渡り切った。


「なんだか有名人になった気分。っていうか、もう有名人って言って良いのかな。5万人もフォロワーいるし」


 鼻歌なんかも漏れ出てきちゃう。


「愛想良くするのも大事じゃな。またフォロワーが微増したではないか」


「ちょっとだけだけどね」


 12人のフォロワーが増えた。ウサギの着ぐるみだったときは、12人でも幸せだっただろうが、5万も稼ぐとさすがに色褪せて感じる。


 やっぱりフォロワーを稼ぐには、バトルがいちばん手っ取り早いのだろう。


「愛想良くすることに越したことはない。炎上するかもしれんからな」

「それもそうね」

「ある程度は、企業である吾輩がヘイトタンクになってやりたいところじゃが、今の吾輩にはあまりチカラがないでな。ひとたび炎上してしまうと、フォロワー数が激減する可能性もあるからな」

「私だって、好きで炎上したりするつもりはないよ」

「アバターの調整を行いたいから、一度部屋に戻ろうではないか」

「部屋ってどこにあるの?」

「学園は全寮制になっておる。名簿に登録したときに、部屋が割り振られているはずじゃ」

「案内お願いできる?」

「うむ」


 エダの指示に従って、ノウノは足を進めた。校舎に入って、吹き抜けになっている玄関ホールの2階へと上がった。
 この学園を移動するには、必ずこの吹き抜けの玄関ホールを通る必要があるようだった。


 吹き抜けの塔の周囲には、石造りの螺旋階段があり、そこから上がることができた。2階からは、当たり前だが、吹き抜けになっている1階を見下ろすことができた。


 2階の吹き抜け廊下に歩いているアバターも多くいた。
 たぶん、生徒たちなんだろう。


「そこの扉を入って、通路を抜けると寮に入ることができる」
 と、エダが教えてくれた。


 木造扉があった。ドアノブは蛇の顔になっていた。ロジカルンの企業ロゴが蛇なのだ。それを意識しているのかもしれない。蛇のドアノブの部分は金属製らしくて、触れると冷たい感触が伝わってきた。ひねって、木造扉を開けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...