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寮へ
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蛇女も担がれて行って、女王も立ち去って、バトルステージ残されているのは、ノウノとエダのふたりだけだった。
あえてそういう造りにしているのかもしれないが、廃墟のような建物が建ち並んでいるため、どことなく、スラムという風情がある。
壁が半壊して、屋内が露出していたり、あきらかに干からびた植物が風に揺られている。一部は、ノウノと蛇女のバトルによって崩れた場所もある。
「女王からバトルを断られちゃった」
と、ノウノがつぶやく。
「仕方あるまい。あやつは特別じゃからな。学園を仕切っているのも……というか、この世界を管理しているのも、ロジカルンじゃからな」
と、エダが応じた。
「選考があるって言ってたけど」
「VDOOL学園祭という、行事が定期的に行われておる。その学園祭までに、フォロワーを集めておくことじゃな。吾輩が知っているときとルールが変わってるやもしれん。詳しいことは、学園内の者に聞いてみるしかあるまい」
「うん」
やがて他のアバターたちがやって来た。
「良いバトルだったよ」「期待の新人さんだね」……などと声をかけてくれた。
そのアバターたちは、人の形のものもあれば、ボールから足が生えたような奇抜な形状のものもいた。
アバターたちは、その場に座り込んで、何やら作業をしはじめた。メガネをかけて、何もない空間を叩いたり、撫でまわしたりしている。
「この人たちは、何してるの?」
「こやつらは、いわゆる土方の連中じゃな。オヌシが破壊した場所なんかの、修繕なんかをしてくれているんじゃろ」
「へぇ」
たしかに、通路に散乱していた瓦屋根が、霧散するように消えて行った。かわりに屋根に張り付けられていた。
「コーディングを行っているんじゃろう。邪魔にならぬように、吾輩たちも退散しようではないか」
「りょ」
エダは両手を挙げていた。抱っこしろということだろう。まるで赤ん坊みたいである。たいして重くもないので、ノウノはエダのことを抱え上げた。エダの身体は、まるで綿菓子みたいに軽いのだ。
廃墟エリアを抜ける。学園の庭園にあるのは、廃墟だけではない。校舎前のあたりには、芝の敷かれたエリアがある。そのあたりではバトルは行われないらしく、平穏な雰囲気が満ちていた。
木々は、キリンやらゾウといった動物の形にかたどられている。噴水からあふれ出てくる水か、川となって、川のあいだには橋がかかっている。
ノウノはその橋を渡ってみた。べつに意味はない。石造りのアーチ橋となっており、弓なりに曲がった橋には、蔓性植物がからみついており、おしゃれだなぁ、と思って渡ってみたくなっただけである。
橋を渡っていると、周りにいたアバターたちが、ノウノのまわりに集まってきた。「バトル見てたよ」「すごかったよ」……と、称賛を与えられた。
女王に軽くあしらわれて気分が冷めていたのだが、称賛されるとまた気分が昂ぶってきた。「えへえへ。どもども」と、照れながら頭を下げた。
蛇女たちは腐ってもロジカルンのアバターであり、それを倒したのだから、けっこう凄いことなのだ、という実感を得ることが出来た。
握手してくださいと言われたり、フォローしても良いですか、と声をかけられた。女王と戦うためにはフォロワー数が必要だということだったし、何よりフォロワーは大歓迎である。
そうして他のアバターたちと、じゃれあっているだけでも、フォロワーは微増していった。
チヤホヤされて上機嫌となって、橋を渡り切った。
「なんだか有名人になった気分。っていうか、もう有名人って言って良いのかな。5万人もフォロワーいるし」
鼻歌なんかも漏れ出てきちゃう。
「愛想良くするのも大事じゃな。またフォロワーが微増したではないか」
「ちょっとだけだけどね」
12人のフォロワーが増えた。ウサギの着ぐるみだったときは、12人でも幸せだっただろうが、5万も稼ぐとさすがに色褪せて感じる。
やっぱりフォロワーを稼ぐには、バトルがいちばん手っ取り早いのだろう。
「愛想良くすることに越したことはない。炎上するかもしれんからな」
「それもそうね」
「ある程度は、企業である吾輩がヘイトタンクになってやりたいところじゃが、今の吾輩にはあまりチカラがないでな。ひとたび炎上してしまうと、フォロワー数が激減する可能性もあるからな」
「私だって、好きで炎上したりするつもりはないよ」
「アバターの調整を行いたいから、一度部屋に戻ろうではないか」
「部屋ってどこにあるの?」
「学園は全寮制になっておる。名簿に登録したときに、部屋が割り振られているはずじゃ」
「案内お願いできる?」
「うむ」
エダの指示に従って、ノウノは足を進めた。校舎に入って、吹き抜けになっている玄関ホールの2階へと上がった。
この学園を移動するには、必ずこの吹き抜けの玄関ホールを通る必要があるようだった。
吹き抜けの塔の周囲には、石造りの螺旋階段があり、そこから上がることができた。2階からは、当たり前だが、吹き抜けになっている1階を見下ろすことができた。
2階の吹き抜け廊下に歩いているアバターも多くいた。
たぶん、生徒たちなんだろう。
「そこの扉を入って、通路を抜けると寮に入ることができる」
と、エダが教えてくれた。
木造扉があった。ドアノブは蛇の顔になっていた。ロジカルンの企業ロゴが蛇なのだ。それを意識しているのかもしれない。蛇のドアノブの部分は金属製らしくて、触れると冷たい感触が伝わってきた。ひねって、木造扉を開けた。
あえてそういう造りにしているのかもしれないが、廃墟のような建物が建ち並んでいるため、どことなく、スラムという風情がある。
壁が半壊して、屋内が露出していたり、あきらかに干からびた植物が風に揺られている。一部は、ノウノと蛇女のバトルによって崩れた場所もある。
「女王からバトルを断られちゃった」
と、ノウノがつぶやく。
「仕方あるまい。あやつは特別じゃからな。学園を仕切っているのも……というか、この世界を管理しているのも、ロジカルンじゃからな」
と、エダが応じた。
「選考があるって言ってたけど」
「VDOOL学園祭という、行事が定期的に行われておる。その学園祭までに、フォロワーを集めておくことじゃな。吾輩が知っているときとルールが変わってるやもしれん。詳しいことは、学園内の者に聞いてみるしかあるまい」
「うん」
やがて他のアバターたちがやって来た。
「良いバトルだったよ」「期待の新人さんだね」……などと声をかけてくれた。
そのアバターたちは、人の形のものもあれば、ボールから足が生えたような奇抜な形状のものもいた。
アバターたちは、その場に座り込んで、何やら作業をしはじめた。メガネをかけて、何もない空間を叩いたり、撫でまわしたりしている。
「この人たちは、何してるの?」
「こやつらは、いわゆる土方の連中じゃな。オヌシが破壊した場所なんかの、修繕なんかをしてくれているんじゃろ」
「へぇ」
たしかに、通路に散乱していた瓦屋根が、霧散するように消えて行った。かわりに屋根に張り付けられていた。
「コーディングを行っているんじゃろう。邪魔にならぬように、吾輩たちも退散しようではないか」
「りょ」
エダは両手を挙げていた。抱っこしろということだろう。まるで赤ん坊みたいである。たいして重くもないので、ノウノはエダのことを抱え上げた。エダの身体は、まるで綿菓子みたいに軽いのだ。
廃墟エリアを抜ける。学園の庭園にあるのは、廃墟だけではない。校舎前のあたりには、芝の敷かれたエリアがある。そのあたりではバトルは行われないらしく、平穏な雰囲気が満ちていた。
木々は、キリンやらゾウといった動物の形にかたどられている。噴水からあふれ出てくる水か、川となって、川のあいだには橋がかかっている。
ノウノはその橋を渡ってみた。べつに意味はない。石造りのアーチ橋となっており、弓なりに曲がった橋には、蔓性植物がからみついており、おしゃれだなぁ、と思って渡ってみたくなっただけである。
橋を渡っていると、周りにいたアバターたちが、ノウノのまわりに集まってきた。「バトル見てたよ」「すごかったよ」……と、称賛を与えられた。
女王に軽くあしらわれて気分が冷めていたのだが、称賛されるとまた気分が昂ぶってきた。「えへえへ。どもども」と、照れながら頭を下げた。
蛇女たちは腐ってもロジカルンのアバターであり、それを倒したのだから、けっこう凄いことなのだ、という実感を得ることが出来た。
握手してくださいと言われたり、フォローしても良いですか、と声をかけられた。女王と戦うためにはフォロワー数が必要だということだったし、何よりフォロワーは大歓迎である。
そうして他のアバターたちと、じゃれあっているだけでも、フォロワーは微増していった。
チヤホヤされて上機嫌となって、橋を渡り切った。
「なんだか有名人になった気分。っていうか、もう有名人って言って良いのかな。5万人もフォロワーいるし」
鼻歌なんかも漏れ出てきちゃう。
「愛想良くするのも大事じゃな。またフォロワーが微増したではないか」
「ちょっとだけだけどね」
12人のフォロワーが増えた。ウサギの着ぐるみだったときは、12人でも幸せだっただろうが、5万も稼ぐとさすがに色褪せて感じる。
やっぱりフォロワーを稼ぐには、バトルがいちばん手っ取り早いのだろう。
「愛想良くすることに越したことはない。炎上するかもしれんからな」
「それもそうね」
「ある程度は、企業である吾輩がヘイトタンクになってやりたいところじゃが、今の吾輩にはあまりチカラがないでな。ひとたび炎上してしまうと、フォロワー数が激減する可能性もあるからな」
「私だって、好きで炎上したりするつもりはないよ」
「アバターの調整を行いたいから、一度部屋に戻ろうではないか」
「部屋ってどこにあるの?」
「学園は全寮制になっておる。名簿に登録したときに、部屋が割り振られているはずじゃ」
「案内お願いできる?」
「うむ」
エダの指示に従って、ノウノは足を進めた。校舎に入って、吹き抜けになっている玄関ホールの2階へと上がった。
この学園を移動するには、必ずこの吹き抜けの玄関ホールを通る必要があるようだった。
吹き抜けの塔の周囲には、石造りの螺旋階段があり、そこから上がることができた。2階からは、当たり前だが、吹き抜けになっている1階を見下ろすことができた。
2階の吹き抜け廊下に歩いているアバターも多くいた。
たぶん、生徒たちなんだろう。
「そこの扉を入って、通路を抜けると寮に入ることができる」
と、エダが教えてくれた。
木造扉があった。ドアノブは蛇の顔になっていた。ロジカルンの企業ロゴが蛇なのだ。それを意識しているのかもしれない。蛇のドアノブの部分は金属製らしくて、触れると冷たい感触が伝わってきた。ひねって、木造扉を開けた。
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