凡人の俺が伝説の剣士に

こーちゃん

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第7話

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翌朝、サクヤはヘトヘトの状態で訓練場所へと朝早くからやって来ていた。クルージーも同じく到着している。
一方のナーサリーは、朝食を持って訓練場所へとやって来た。

「ナーサリー、そこへ置いといてくれ」

「さっさと訓練を始めてくれ」

「そう焦るな、サクヤ。しかし、いつもは昨日の体力作りで諦める。お前は、強くなりたいって言う意思が伝わる」

「余興は要らねえ」

「では、今日は炎を扱うという事で炎を出す訓練に入る」

それは、人差し指に炎を灯す物であった。
簡単に見えて難しい訓練である。実際にサクヤは一切火が灯さない。

「これは先が長くなりそうだ」

クルージーは、サクヤに聞こえないように小声で言う。彼は全く聞こえていない。

·····炎聖拳·····

「なんで炎を纏えないんだよ!」

「サクヤは、力みすぎなんだ。拳に炎を灯すイメージで軽い考えを持つのだ」

彼は、クルージーに言われた時に実行に移すが炎は灯す気配は全くない。
そう簡単に炎を纏える筈もないため、そんなに焦ってはいなかった。しかし、サクヤは思った通りにいかず力む。
その度に、クルージーは説教する。

「気晴らしに山走って来るわ」

そう言うと、サクヤは山道を走る為に山を下る。その様子を見たクルージーは、先が更に遠く感じると思ってしまう。
彼は、昔から自分が出来ないと思う事は全て諦めてしまう性格をしていた。それが今、出始める。
結局、サクヤは自分の気が済むまで走り続け訓練2日目が終わった。クルージーは訓練が終わる度に、村長に現在の状況報告を毎日している。

「ふぅ……。何故、炎が纏えないのだ」

サクヤは両手を見ながら口に出す。
この世で火を使えるのは限られており、特別な扱いをされている。その為、炎の素質があっても、そう簡単には上手く使いこなせないのが現状である。
夜通しサクヤは考えたが、どうすれば纏えるかを必死に探っていた。
そこへ、ナーサリーがやって来る。

「サクヤ君、体調は大丈夫?」

「あぁ、俺は大丈夫」

「なら良かった。あまり無理しないでね!ご飯を机の上に置いとくね!」

そう言うとナーサリーは部屋から出てく。
彼女は、村で1番の高潔無比と言われているため、村のみんなから慕われている。
そして、次の日。
昨日までとは打って変わり、天候は雨が降っており勢いも強いため、訓練は中止とクルージーから教えられた。
しかし、サクヤは雨とは関係なく外に出て炎を纏う訓練を始める。

「ナーサリー、サクヤ殿は炎を纏えそうか?」

「私は纏えると信じてます」

「ナーサリーが、そこまで言うとはな!それよりも龍聖弓の特訓は大丈夫なのか?」

「はい、順調です」

「訓練は怠るなよ!いずれは伝説の武器を持つ者達と旅に出るのだから」

「はい、重々承知してます」

そこへ、伝令がやって来る。
最近、西で力を増しているゴブリン兵、東で勢力を拡大している怒羅魂騎士(ドラゴンナイト)の二代勢力がエルフ族の領地を攻めようとしていた。
ゴブリン兵との距離は約3里、怒羅魂騎士との距離約4里ほどである。
この伝言を村長は幹部、サクヤを呼び寄せ、会議が開かれる事となった。
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