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1章
注意力散漫なクラスメート達
しおりを挟むバサッと音がして「あ、いけね」と教科書を拾う右斜め前のナントカくん。…まだいまいち名前が覚えられない。
てっちゃんの助言に従って俺は友達作りの為に、先ずは身近なクラスメート達を観察する事にした。
「ビックリさせた? ごめんね」
拾い上げながらこっちを向いて、困った様にニヘラと笑うナントカくん。
いやいや、いいんだ。誰にでもうっかりはあるもんだしな。だが気をつけ給え。
俺はドンマイの意を込めて小さく首を横に振ってやった。ナントカくんは更にヘラヘラ笑ってる。
う~…ん、早く前を向いた方がいいと思うよ? 何しろ今は授業中だ。
「こら大木!黒板はこっちだぞ」
ほら見ろ。
先生に注意を受けたナントカくん…、もとい大木くんは「へ~い」と言って前に向き直った。ホント、気をつけ給えよ。そして先生、ナントカくんの名前を教えてくれてありがとうございます。
俺が心の中でお礼を言うと、何故か先生はうんうん小さく頷いた。あれ、聞こえたの? まさかね。
暫くすると今度は、前席の鈴木くんがポトリと小さな何かを落とした。壁のように大きな背中をした鈴木くんは「あれあれ」とか言いながら、落とした何かをキョロキョロと探してる。それから急に後ろを向いてきて「ごめんね棚橋くん、足元の消しゴム、取ってくれる?」と話し掛けてくる。ん?と思い下を向くと、俺の机の下に小さな消しゴムが落ちていた。
おお、これは気付かずにすまなかった。
うんうん頷いて素早く拾い上げた消しゴムを、鈴木くんの差し出した大きな手のひらに乗せてやる。「ありがとねぇ」とにこにこする鈴木くん。ちょっと強面で粗暴なタイプかと思っていたけど、案外礼儀正しいんだね。見た目で人を判断するのは良くないな。失礼した。
ごめんなさいの意を込めて、俺はお辞儀を返してやった。
お辞儀から顔を上げると、今度は右隣から「ねぇ棚橋くん」と呼ばれた。何だ何だとそちらを向くと、の……、の……、えっとなんて名前だっけ? 『の』ナントカくんが困ったように「ここの英文の和訳、ちょっと教えてくれる?」と教科書を指差して聞いてくる。
何なに…、ん~…と、
「ミカはテイクアウト…、あぁ、そっか。えぇと、ミカはマイクが提示した問題を家に持ち帰った。…かな」
「うわぁ、流石棚橋くん。ありがとう」
さ、流石とか、イヤだなぁ。でも悪い気はしない。ふふん、もっと聞いてくれてもいいんだぞ。
『の』ナントカくんは俺の教えた和訳を教科書に書き込むと、またまた「ねぇねぇ」と話し掛けてきた。
今度は何だね、流石な俺に聞いてみ給え。「ねぇねぇ」の続きを聞いてやろうと右側に身を乗り出そうとしていたら、「おいコラ野島!ちゃんと自分で考えなきゃ、勉強にならんだろうが!」という、先生のお叱りを受けてしまった。
『の』ナントカくん…もとい野島くんは、「へいへ~い」と不貞腐れた返事を返したが、一緒に注意を受けた俺は先生に向かって深く頭を垂れた。
申し訳ありません!情は人の為ならず、ですよね。……反省。
先生は顔を上げた俺に向かって、「分かったならよろしい」といった表情で、またまたうんうんと頷いてくれた。どうやら俺の反省は伝わったみたいでひと安心。よかったよかった。
………と、ホッとしたところで左隣りを伺えば、今日もすやすやと気持ちよさそうに居眠りをしている葛西がいる。友達作りも大事かもだけど、せっかく神様がくれた至福の時間を疎かには出来ない。
本当は起きてる葛西の方がカッコよくて好きだけど、こうして目を閉じててくれないと、そのカッコよさも堪能出来ない。
柔らかそうなフワッとした茶色い髪、キリリとした男らしい眉毛。耳にはピカピカ光るシルバーのピアスが3つも並んでる。アレはちょっと痛そうだけど、そんな痛そうな物を3つも付けてる、ちょっとワイルドな所もカッコいい!
いつもワイシャツのボタンを2つくらい外して、そこに緩めたネクタイを掛けてるのも、何かカッコいいんだよな。他の人がやったらただのだらしない人だけど、葛西がやると何故か様になるんだもん。ズルいぞ、イケメン。
腕に埋もれて見えない口元は、口角がちょっと上がってるから、常に薄っすらと笑ってるように見えて、それがまたまたカッコいいんだ!
5秒眺めては「ほぅ…」と息を吐く。5分経ったらまたその繰り返し。その間もトクトクトクと、心拍はうなぎ登りに上がっていく。ほっぺたなんかカイロを当てたみたいに熱くなる。
赤い顔を誰かに見られるのは恥ずかしくて嫌だけど、授業中ならその心配もないから、俺は安心して「睡眠中の葛西」を心のアルバムに刻み込めるってわけ。
葛西が寝ている授業中は、これが俺の密かな楽しみだ。
こうして神様がくれた特別なご褒美のお陰で、俺はこんなに近くでカッコいい葛西を観察出来る。なんて幸せ者なんだろう。その内席替えでもしたら、この楽しい時間はなくなる。それまでは目一杯、この幸せな時間を味わわせて貰おう。
その後もインターバルを挟みつつ、心行くまで葛西観察を堪能した俺は、その日もフワフワとした幸せ気分で1日を終えた。
…………でも何でかな。
放課後、気付くと何時も葛西の机の周りには、小さなゴミが散らかってるんだ。葛西は寝てるだけなのにな。
変なの。
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