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4.開会早々
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「………」
俺は今、壇上に並ぶ3つの椅子の一番左に座っていた。
何故かって?
本来登壇する筈の代表者が捕まえられなかったらしい。
エリックはもちろん、件のフルスコア君も検問で捕まえることが出来ず、このまま式を行えば学園側は間違いなく恥をかくことになるんだとか。
そこで、フルスコア君と同郷の俺を登壇させる事で体裁を保とうという魂胆の様だ。
早い話、俺はフルスコア君の代役にされたって事だな。
「……(ハァ)…マジかよ。」
かなりやばい学園に入学してしまったかもしれない。
無茶苦茶だよ。こんなの。
どこの世界に、新入生代表者の代役を頼む学校があるのだろうか?
まだまだこの学園について、わからない事だらけだ。
だが、はっきりしている事もある。
「おい、どうした?大丈夫か?」
私のせいで、このゴタゴタにキールを巻き込んでしまったという事だ。
「……キール、本当にごめん。」
「あぁ、その事か。」
「俺が、あんな罠にかかったりしなければ……」
「気にすんなよ。お前は助けようとしただけだろ?悪いのは、お前の善意に漬け込んだあの恥知らずの馬鹿共だ。」
「でも…」
「俺は、気にしてない。」
「っ!」
「それより、すまねぇ。助けたかったのに、助けられなかった。」
キールは、一番右の席で不思議なほど落ち着いていた。
こいつは俺よりも過酷だ。おまけ感覚でエリックの代役を押し付けられてしまったんだからな。
「格好が付かないなぁ。助けようとして、俺まで登壇することになるなんて……とんだお笑い草だ。」
それなのに、落ち着いているというか、場馴れしているというか。それに比べて俺は……
「俺、ちゃんとやれるかな?」
「こんなもん、抱負を言うだけだ。他は適当にやれば良いだけだろ。」
「適当って……大丈夫なのか?もし代役だってことがバレたりしたら……」
「おいおい?それって、俺たちの責任か?」
「え?」
「それで問題が起こっても、あいつらの責任だろ?」
「……あぁ、言われてみればそうだな。」
「どうせなら、そん時はさっきまでのあれやこれやを全部告発してやろうぜ?(ニカッ)」
「……なるほど。良いな、それ。」
「だろぉ?(ニヤニヤ)」
連中の、慌てふためく様が目に浮かぶな。
キールのお陰で大分緊張感が解れた。
本当に頼もしい奴だ。
「「……それにしても(チラッ)」」
2人で、真ん中の席を見る。
「何故、マスルーツの坊ちゃんだけ居ないんだ?」
「俺たち、強制連行されたのにな。」
マスルーツ家……部外者を巻き込んでるのにやってる事が本当に滅茶苦茶の無茶苦茶だな。
〈(コッコン)〉
スピーカーから起動音が響く。
「お、そろそろ始まるみたいだな。」
「…このまま始めんのか?」
「しかないだろうな。」
「……もう、どうにでもなれ。」
紆余曲折どころか、とんでもない始まり方をしようとしている俺の学園生活。
だけど、そこまで悪い走り出しじゃないと思う。
見方を変えれば、わざわざ晴れ舞台を用意してもらったようなもんだからな。
そして、走り出したからには前進あるのみだ。
この先にどんな事があっても、乗り越え踏み越え、走り抜けてみせる。
ま、これ以上の受難が待ち受けているとは思えないけど。
〈これより、第63期入学式を執り行います。一同――〉
“「(ドゴッ!バリバリバリッ!!)」“
会場の壁に、突如風穴が空く。
〈………え?〉
司会者も、何が起こったかわからない様子だ。
「「「「「(ザワザワ…ザワザワザワ……」」」」」
前言撤回。
まだまだ上がありました。
俺は今、壇上に並ぶ3つの椅子の一番左に座っていた。
何故かって?
本来登壇する筈の代表者が捕まえられなかったらしい。
エリックはもちろん、件のフルスコア君も検問で捕まえることが出来ず、このまま式を行えば学園側は間違いなく恥をかくことになるんだとか。
そこで、フルスコア君と同郷の俺を登壇させる事で体裁を保とうという魂胆の様だ。
早い話、俺はフルスコア君の代役にされたって事だな。
「……(ハァ)…マジかよ。」
かなりやばい学園に入学してしまったかもしれない。
無茶苦茶だよ。こんなの。
どこの世界に、新入生代表者の代役を頼む学校があるのだろうか?
まだまだこの学園について、わからない事だらけだ。
だが、はっきりしている事もある。
「おい、どうした?大丈夫か?」
私のせいで、このゴタゴタにキールを巻き込んでしまったという事だ。
「……キール、本当にごめん。」
「あぁ、その事か。」
「俺が、あんな罠にかかったりしなければ……」
「気にすんなよ。お前は助けようとしただけだろ?悪いのは、お前の善意に漬け込んだあの恥知らずの馬鹿共だ。」
「でも…」
「俺は、気にしてない。」
「っ!」
「それより、すまねぇ。助けたかったのに、助けられなかった。」
キールは、一番右の席で不思議なほど落ち着いていた。
こいつは俺よりも過酷だ。おまけ感覚でエリックの代役を押し付けられてしまったんだからな。
「格好が付かないなぁ。助けようとして、俺まで登壇することになるなんて……とんだお笑い草だ。」
それなのに、落ち着いているというか、場馴れしているというか。それに比べて俺は……
「俺、ちゃんとやれるかな?」
「こんなもん、抱負を言うだけだ。他は適当にやれば良いだけだろ。」
「適当って……大丈夫なのか?もし代役だってことがバレたりしたら……」
「おいおい?それって、俺たちの責任か?」
「え?」
「それで問題が起こっても、あいつらの責任だろ?」
「……あぁ、言われてみればそうだな。」
「どうせなら、そん時はさっきまでのあれやこれやを全部告発してやろうぜ?(ニカッ)」
「……なるほど。良いな、それ。」
「だろぉ?(ニヤニヤ)」
連中の、慌てふためく様が目に浮かぶな。
キールのお陰で大分緊張感が解れた。
本当に頼もしい奴だ。
「「……それにしても(チラッ)」」
2人で、真ん中の席を見る。
「何故、マスルーツの坊ちゃんだけ居ないんだ?」
「俺たち、強制連行されたのにな。」
マスルーツ家……部外者を巻き込んでるのにやってる事が本当に滅茶苦茶の無茶苦茶だな。
〈(コッコン)〉
スピーカーから起動音が響く。
「お、そろそろ始まるみたいだな。」
「…このまま始めんのか?」
「しかないだろうな。」
「……もう、どうにでもなれ。」
紆余曲折どころか、とんでもない始まり方をしようとしている俺の学園生活。
だけど、そこまで悪い走り出しじゃないと思う。
見方を変えれば、わざわざ晴れ舞台を用意してもらったようなもんだからな。
そして、走り出したからには前進あるのみだ。
この先にどんな事があっても、乗り越え踏み越え、走り抜けてみせる。
ま、これ以上の受難が待ち受けているとは思えないけど。
〈これより、第63期入学式を執り行います。一同――〉
“「(ドゴッ!バリバリバリッ!!)」“
会場の壁に、突如風穴が空く。
〈………え?〉
司会者も、何が起こったかわからない様子だ。
「「「「「(ザワザワ…ザワザワザワ……」」」」」
前言撤回。
まだまだ上がありました。
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