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2章-3節. ヘルデス家の争族を切り抜けた私は…
8.友人を匿います。
しおりを挟む「(…バタンッ)…よし、無事に着いた。」
屋敷の扉を閉じたテルマは、そう呟いた。
「エリックの様子は?」
「まだ寝てる。大丈夫そうだ。」
「一旦ベットに寝かせるか。」
テルマの案内のお陰で道中誰にも見つかる事なく無事に屋敷まで辿り着く事が出来た。
「(タタタタッ)お帰りなさいませ……何があったんですか?」
「何がとは?」
「いえ、その……黒いので…」
出迎えてくれたカンナが若干戸惑っている。
そりゃそうだ。さっきまで家事現場に居たんだから煤けてるよな。
「いやぁ……色々ありましてね。」
「色々とは?」
火事場に飛び込んだ事は伏せた方が良いよな。
「燃え盛る図書館に飛び込んでコイツら助けて来た。」
「えぇっ!?」
またコイツは……
「大丈夫なんですか?!」
「ああ、見ての通り2人とも無事だ。俺らも火事程度でどうこうなるほど軟弱じゃないからな。取り敢えず、コイツ寝かせるからベット用意してくれ。あと、俺ら煤けてるから風呂も…」
「あの、そもそも食材を取りに行かれたんですよね?それが何故…」
「おいおい、来客をいつまでも待たせるつもりか?」
「(スン)かしこまりました。」
そう言ってカンナは、その場を後にした。
条件反射って奴かな。それとも、プロフェッショナルってそういうものなのかな。どっちにしろ、完全に手球に取られてる様に思えてならない。
「…今のメイドって、どっちの?」
「アイツはカンナ、アレクの……」
「クラスメイトだ。決してメイドではない。」
「そうだ。メイド服を着て住み込みで屋敷の給仕をしているただのクラスメイトだ。」
「………いや、それどう考えてもメイ…」
「そういえば、紹介がまだだったな。コイツはテルマ。カンナさんと同じで私のクラスメイトで……私の弟子だ。確か、そうだったよなぁ?テルマ?」
「あぁ、俺からアレクに弟子入りした。」
「じゃあ、弟子入りしたその日のうちに私が言った事は覚えているか?」
「もちろん。師匠ではなくアレクと呼び捨てにして、敬称を省いたタメ口で話す様にって言ってたな。」
「ならば、再び師匠としてお前に命じる。今後一切、余計な事は言うな。わかったか?」
「はいはい、仰せのままに。」
「………師弟…ね。」
全く、油断も隙もない奴だ。
「…(コホン)テルマにも紹介しよう。コイツはヴラド 、D級の冒険者だ。寝てる方は………」
さて、どう伝えるかな。エリックの本名を教えて良いものか……けど、ここまでエリックと呼び続けて来たのに今更偽名を教えるのも……
「紹介に預かったヴラド だ。こっちの寝てる奴はエリック。俺のダチだ。どうやら、アレクとも友達だったみたいだけどな。」
代わりにヴラド が紹介してくれた。
というか、エリックはヴラド とも知り合いだったのか。
「てか、何であんなとこにいたんだ?」
「たまたま通りがかってな。燃え盛る図書館にコイツが飛び込んで行くのを見て止めるつもりが……あの有様だ。倉庫が閉まって開かなくなっちまった。」
「なるほど。そいつは災難だったな。」
「とにかく、二人のお陰で助かった。ありがとう。」
「いいってことよ。」
「けど、あんまり無茶はしてくれるなよ。友人が、自分の為に犠牲になるなんて夢見が悪いからな。」
「あぁ、今後とも気を付けるよ。」
エリックも、目を覚ましたらその辺りを問い詰めてやろう。
「それにしてもすごかったな。あの煙って、お前の従魔?」
「あぁ、名前はハクエンだ。今後とも宜しく。」
「おう、よろしく。」
正直、今回の一件で私はテルマを侮っていたんだなと痛感した。
ハクエンの汎用性の高さもそうだが、契約したその日のうちに従魔の能力をあそこまで引き出せるものだろうか?
プヨで色々試した事のある私にはわかる。以前から構想を膨らませていたにしても、いざやってみるとうまくいかないなんてザラだ。
それを、ぶっつけ本番でいきなり成功させたというのなら……とんでもないとしか言葉が出ないな。
その中で、特筆すべきはその順応性だ。
突発的に変化した状況下でも臨機応変に対応出来る柔軟性に優れている……と言えばそれまでだが、それとは次元の違う何かを感じてやまない。
今回はテルマがいた事で安全に助け出す事が出来た。少なくとも、火事場が危険だからと遠ざけた私の判断は間違いだったと言わざるを得ないな。
裏切らないでくれ…なんて、頼める筈もないし覚悟しておかなきゃならないな。
「…さて、それじゃあ立ち話も何だし茶でも…」
「かしこまりました。すぐご用意致します。」
「え゛ぁっ!?」
突然背後からカンナが現れる。
「ヴラドさん、ベットメイクが出来ました。お手数をおかけしますが、エリックさんを背負ったまま着いてきてください。」
「わ、わかった。」
「アレクさん、テルマさん、客間でお待ち頂けますか?」
「「へ?」」
「ヴラドさんを風呂場までお連れしたらすぐ参りますので。」
「えっ?…いやいや、俺は別に…」
「いえ、どうかごゆっくりとしていってください。その間に、先程仰っていた『色々』をお二人からお聞きしたいと思いますので。」
「…わかった。」
「お二人も、それでよろしいでしょうか?」
「「………はい。」」
誤魔化せなかったか。
というか、完全に主導権を握られてしまった。
どうやら、カンナの方が一枚上手だった様だな。
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