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2章-4節. 停学期間を折り返した私は…
7.重責にたじろぎます。
しおりを挟む「おい、どういう事だ?退路が無いって……」
街へ買い出しへ出た私とテルマは、追われているオルブを商会まで送る道中で魔術羊皮紙を発動してしまい、この迷宮に迷い込んでしまう。
何とか脱出しようとオルブから話を聞くと、どうやらこの迷宮には退路が無いらしい。
まぁ、それも充分気掛かりだが、それよりも気になる事がある。それは……
「……あの、テルマさんはご存知ないのですか?以前も詳しかった様子でしたので、てっきり知っているものかと思いましたが……」
「えっ?…あ~その、知り合いからの口伝だから知識に偏りがあってな。」
「なるほど。では、僕からちゃんとお教え致します。」
「おう、頼む。」
何だろう……今日のテルマは精細に欠くというか……危なっかしい感じがするな。心なしか、勘も鈍くなっている気がする。不調なのかな?けど、バイタルは異常ないし……そういえばあの時……転移直前は凄い取り乱し様だったな。
まぁ、気にするだけ不毛か。敢えて触れないでおこう。
「このタイプの迷宮は移動用の魔法陣で転移する事で次の階層に移動するんです。」
「それって、俺たちがここへ来たあれみたいなヤツか?」
「はい。まぁ、あれは使い捨てですが似た様なものですね。」
「するってっと、俺が感知したあれがその移動用の魔法陣だな。」
「えぇ、恐らく次の階層に通じているのでしょう。」
「次の階層?ここって中層なんだろ?前の階層に戻る魔法陣は何処にあるんだ?」
「ありません。」
「は?」
「それが転移陣式の迷宮の厄介な所なんです。一度潜ったら、全ての階層を踏破するか帰還用のスクロールを使わなければ出られません。」
なるほど。それで退路が無いって言ったのか。
「おい待て、さっき想定でBランク相当って言ってたよな?」
「えぇ、踏破するならばBランク相当です。冒険者は標準装備として帰還用のスクロールを携帯していますので、そもそも脱出の難易度は想定されていないんですよ。」
「……あぁ、なるほど。」
「確かに、それは厄介そうだな。」
つまり、帰還用のスクロールが無い私達は、正面突破するしかないと言う事か。
「つーか、そもそも何で俺らそんなややこしい所に飛ばされてんだよ。」
「えっと、それは……」
「私が、小屋に落ちてた転移のスクロールを誤って開いてしまったから……だな。」
「えぇ、恐らく冒険者が落とした使用済みの帰還用スクロールで間違いないかと。」
「……使用済み?」
「本来、転移の魔術は現在地点と目的地を往復する目的で用いられます。故に、スクロールにもそういう魔法陣が記されています。ちゃんとした職人が作ったなら、片道になる様に調整されていますが、低コストで作られた粗悪品にはそんなものありません。故に、こういった事故が起きてしまう訳です。」
「えっ……と……それって色々と問題が無いか?」
「えぇ、問題は多いです。しかし、帰還用のスクロールって高いんですよ。冒険者は、基本的に迷宮を踏破する前提で挑むのでお守り程度の意味しかありませんし、経年劣化もしますから定期的に買い替えなきゃいけません。それに、冒険者によっては迷宮へ再挑戦するのにうってつけだと愛用する人もいます。まぁ、多くの場合は一回使ったら直ぐに捨ててしまうんですけどね。危険なので。」
何というか……切実な理由だな。
「……ん?ちょっと待て。今転移は行き来する魔法って言ったよな?だったら……」
「言いたい事はわかります。しかし、転移の魔法陣は前の階層にあります。この階層からはどうやっても干渉出来ません。」
「……八方塞がりか。行けるって希望がチラついた分、キッツいなぁ。」
その気持ち、すごいわかる。
「……って、嘆いても仕方ねぇ!じゃあ脱出改め踏破に向けて頑張るか!!」
「そうだな。しかもテルマなら転移陣の位置が分かる。最短ルートを攻めればあっという間なはずだ。」
「えぇ、そこが僕らにとっての優位点です。攻略しましょう。この3人で!」
何だろうなぁ。結構な窮地なのに2人ともあんまり絶望感が無いな。やっぱりメンタルが強いのかな。
「まぁ、そもそもアレクが居るなら大抵の事は何とかなるな。」
「えぇ、アレクさんさえいれば何も恐れる事なんてありません。進みましょう。」
「………」
重いなぁ。責任と期待が。
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