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1章-1節.薬師の名門ブレルスクに入学した私は…
14.退学するまで続けます。
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「そういうわけで、来週には退学になると思います。」
「平然と語るでないわい。お前の情緒はどうなっとるんじゃい。」
「こうなってるとしか言えませんね。」
「おかしいのぉ。質問の答えが返って来んのじゃが?」
ここは薬慈院。今しがた、マサールさんにさっきまでの出来事を説明し終えたところだ。
「しっかし、ヤツらの鼻を明かすとは痛快じゃのぉ!!ふぉっふぉっふぉっふぉっ!!」
今思えば、退学になったら、こうしてマサールさんと話す事も無くなるのか。
それは少し…ほんの少しだけど………寂しいかもしれないな。
「では、次の仕事があるので。」
「待て。」
呼び止められた。
「退学通知を確認したら、ここへ来い。」
「はい?何故です?」
元々そのつもりだったけど、何だろう?
「なぁに、お前さんとの日々は存外充実しておった。餞別くらい渡してやるでのぉ。」
「いや…それだと患者からの物品の授受に……」
「散々見舞い品を喰らっておいて今更何を言いおるか。」
「いや……あれは毒味って体裁があるから……」
「それに、退学するならもはや薬慈院との関わりも無くなる。見舞い人として来るならば、何も問題あるまい。」
確かに。
「わかりました。また来ます。」
「おぉ、待っとるぞ。」
てか、まだ1週間はここに通い続けるんだけど……それ言っちゃうのは野暮か。
「待ってる……か。」
そう言ってくれる人が居る事は純粋に嬉しい。だが、重苦しくもある。別れが尚のこと辛くなる。
まぁ、だからあまり深く関わらない様にしてるんだけどな。
「………ん?」
何だか、見覚えのある顔が……あれ?
「テルマ?」
「ん?おぉ、アレク。」
花束を抱えたテルマが居た。さっきの今で邂逅するとはな。
「何でこんな所に?」
「それはこっちのセリフだ。」
「ここでバイトしてんだよ。そういうお前は?」
「ここの患者の一人が、おれの爺ちゃんと仲が良かったからたまに見舞いに来てるんだよ。」
「そうか。元気になると良いな。」
「そう思ってるのは、俺だけかもな。」
「……なるほど。」
貴族の界隈では、よくある話らしい。家の実権を握るために、先代の家主を病の治療を大義名分にして薬慈院に放り込んでしまうという。さっき見てきたマサールさんも、その口かもしれない。
「寂しいもんだよな。誰も見舞いに来ねぇんだよ。」
「何言ってんだ。お前がいるだろ?」
「…………そうだな。」
そんな中、こうして見舞いに来てくれる話し相手が嬉しいのは私にもわかる。マサールさんが、私を構うのもそういった理由だろう。別に私じゃなくても、餞別を渡してただろうな。
人は、寂しさには勝てない。私はそれを、身を以て経験しているからわかる。
あの人にも、こういう話し相手がいれば良いんだけどな。
新しい担当者が、あの人の孤独を埋めてくれる事を願おう。
「それじゃ、私仕事あるから。」
「どんな仕事してんだ?」
「掃除・洗濯・荷物運び・患者の介抱その他諸々。」
「結構あるな。」
「色んな先輩達から仕事丸投げされてるからな。」
「お前はそれで良いの?」
「あぁ、もちろん。色々良い経験になってると思うよ。一つだけ残念なのは、私が退学になって先輩方が泡を吹く頃には王都を旅立ってるだろうから、その姿を閲覧出来ない事くらいだな。」
「お前………もしかして最初から……?」
「いやいや、毛頭無かったよ。結果的にはそう見えるかもだけどね。」
まぁ、いつかはそうなると予想出来てたけど。
「邪魔したな。俺はもう行くわ。明日の授業、よろしく頼む。」
「あぁ、その事なんだけど…」
「ん?どうした?」
「体裁上、私から切り込むとか無理だ。あくまで、教員が授業を放棄したら……って話で良いか?」
流石にこれまで黙って聞いてた奴が、いきなりイチャモンをつけるのもどうかと思うからな。
「ん~……わかった。それで良い。」
「悪いな。あくまで私は一人の生徒でしかないからさ。」
「気にすんなって。じゃあまた明日な。」
「あぁ、また明日。」
***
そんなこんなで、仕事を終えた私は、屋敷へと帰って来た。
「……ふぅ。」
やっと今日が終わった。まさか、私が教員の代理で授業をする事になるとはね。自分で自分に驚いてるよ。
「……1週間、か。」
あれだけの啖呵を切ったのだから、退学処分を受けるのは目に見えているだろうけど、まさか1週間の執行猶予が着くとはな。
別に後悔とかは無い。これであの教員の顔を見ずに済むし、クラスメイトとの居心地の悪い空気に肺をやられることもないし、薬慈院のワンオペとも無縁になれる。ただ……
「……楽しかったな。」
前世では、諸事情で勉強とバイトの両立に忙殺されていた。ゼミに入るまでは誰かと関わる事もなかった。
今世でも同じ事の繰り返しかと覚悟していたが、思いの外穏やかな学園生活を満喫出来ていた。
退学した後、あの人との面識が無くなると思うと、正直惜しいな。
「………」
それは、彼女にも言える事だ。流石にあんな別れ方は良くなかった。
まぁ、あと1週間あるし何とかするしかないな。
「平然と語るでないわい。お前の情緒はどうなっとるんじゃい。」
「こうなってるとしか言えませんね。」
「おかしいのぉ。質問の答えが返って来んのじゃが?」
ここは薬慈院。今しがた、マサールさんにさっきまでの出来事を説明し終えたところだ。
「しっかし、ヤツらの鼻を明かすとは痛快じゃのぉ!!ふぉっふぉっふぉっふぉっ!!」
今思えば、退学になったら、こうしてマサールさんと話す事も無くなるのか。
それは少し…ほんの少しだけど………寂しいかもしれないな。
「では、次の仕事があるので。」
「待て。」
呼び止められた。
「退学通知を確認したら、ここへ来い。」
「はい?何故です?」
元々そのつもりだったけど、何だろう?
「なぁに、お前さんとの日々は存外充実しておった。餞別くらい渡してやるでのぉ。」
「いや…それだと患者からの物品の授受に……」
「散々見舞い品を喰らっておいて今更何を言いおるか。」
「いや……あれは毒味って体裁があるから……」
「それに、退学するならもはや薬慈院との関わりも無くなる。見舞い人として来るならば、何も問題あるまい。」
確かに。
「わかりました。また来ます。」
「おぉ、待っとるぞ。」
てか、まだ1週間はここに通い続けるんだけど……それ言っちゃうのは野暮か。
「待ってる……か。」
そう言ってくれる人が居る事は純粋に嬉しい。だが、重苦しくもある。別れが尚のこと辛くなる。
まぁ、だからあまり深く関わらない様にしてるんだけどな。
「………ん?」
何だか、見覚えのある顔が……あれ?
「テルマ?」
「ん?おぉ、アレク。」
花束を抱えたテルマが居た。さっきの今で邂逅するとはな。
「何でこんな所に?」
「それはこっちのセリフだ。」
「ここでバイトしてんだよ。そういうお前は?」
「ここの患者の一人が、おれの爺ちゃんと仲が良かったからたまに見舞いに来てるんだよ。」
「そうか。元気になると良いな。」
「そう思ってるのは、俺だけかもな。」
「……なるほど。」
貴族の界隈では、よくある話らしい。家の実権を握るために、先代の家主を病の治療を大義名分にして薬慈院に放り込んでしまうという。さっき見てきたマサールさんも、その口かもしれない。
「寂しいもんだよな。誰も見舞いに来ねぇんだよ。」
「何言ってんだ。お前がいるだろ?」
「…………そうだな。」
そんな中、こうして見舞いに来てくれる話し相手が嬉しいのは私にもわかる。マサールさんが、私を構うのもそういった理由だろう。別に私じゃなくても、餞別を渡してただろうな。
人は、寂しさには勝てない。私はそれを、身を以て経験しているからわかる。
あの人にも、こういう話し相手がいれば良いんだけどな。
新しい担当者が、あの人の孤独を埋めてくれる事を願おう。
「それじゃ、私仕事あるから。」
「どんな仕事してんだ?」
「掃除・洗濯・荷物運び・患者の介抱その他諸々。」
「結構あるな。」
「色んな先輩達から仕事丸投げされてるからな。」
「お前はそれで良いの?」
「あぁ、もちろん。色々良い経験になってると思うよ。一つだけ残念なのは、私が退学になって先輩方が泡を吹く頃には王都を旅立ってるだろうから、その姿を閲覧出来ない事くらいだな。」
「お前………もしかして最初から……?」
「いやいや、毛頭無かったよ。結果的にはそう見えるかもだけどね。」
まぁ、いつかはそうなると予想出来てたけど。
「邪魔したな。俺はもう行くわ。明日の授業、よろしく頼む。」
「あぁ、その事なんだけど…」
「ん?どうした?」
「体裁上、私から切り込むとか無理だ。あくまで、教員が授業を放棄したら……って話で良いか?」
流石にこれまで黙って聞いてた奴が、いきなりイチャモンをつけるのもどうかと思うからな。
「ん~……わかった。それで良い。」
「悪いな。あくまで私は一人の生徒でしかないからさ。」
「気にすんなって。じゃあまた明日な。」
「あぁ、また明日。」
***
そんなこんなで、仕事を終えた私は、屋敷へと帰って来た。
「……ふぅ。」
やっと今日が終わった。まさか、私が教員の代理で授業をする事になるとはね。自分で自分に驚いてるよ。
「……1週間、か。」
あれだけの啖呵を切ったのだから、退学処分を受けるのは目に見えているだろうけど、まさか1週間の執行猶予が着くとはな。
別に後悔とかは無い。これであの教員の顔を見ずに済むし、クラスメイトとの居心地の悪い空気に肺をやられることもないし、薬慈院のワンオペとも無縁になれる。ただ……
「……楽しかったな。」
前世では、諸事情で勉強とバイトの両立に忙殺されていた。ゼミに入るまでは誰かと関わる事もなかった。
今世でも同じ事の繰り返しかと覚悟していたが、思いの外穏やかな学園生活を満喫出来ていた。
退学した後、あの人との面識が無くなると思うと、正直惜しいな。
「………」
それは、彼女にも言える事だ。流石にあんな別れ方は良くなかった。
まぁ、あと1週間あるし何とかするしかないな。
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