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第三章
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「明日、アキラくんと会いたいの」
「ふーん。彼バイト忙しくないの ?」
「明日の昼で年内は終わりだって」
「へぇ ?」
「28日からは、I豆の温泉ホテルでアルバイト」
「泊まり込みか。頑張るね」
「だから、年内最後のデート、お願い」
「まあ、いいよ」
「ありがと」
翌日。
友介が、年内最後の職員会議を終え、牛丼を食べて
帰ろうとすると、また美奈子からLIMEに着信。
「明日アキラくんの見送りに行っていい?」
「その後に、先生のところに行くから」
「うーん……」
「お願い」
「お願い」
「明日の何時の電車?」
「12時」
「いいよ」
「ありがとう」
「その代わり、行きたいところがあるから付き合って」
「うん どこ?」
「お楽しみに」
「おや? 葛城くんと上条くん。お出かけかい ?」
H駅構内で、二人が別れを惜しんでいると、声をかけてくる人がいる。
「あっ、浜田先生、こんにちは !」
「っ!?……」
(ど、どーしてここにいるの !?)
「奇遇だね。ボクはちょうど出先から帰ってきたところさ」
「僕は、今からI豆のホテルでバイトに行くんです。
葛城さんは見送りに来てくれました」
「へぇ、そーなんだ」
友介は、白々しく相槌を打つ
「ホテルでバイトということは、年末年始泊まり込みかい ?
頑張るね」
「いゃあ、こうしてのんびりバイトできるのも、推薦いただけた
おかげです。学校には本当に感謝して……」
「上条くん、そろそろ電車来るよ。行かないと」
「おっと、そうだね。それじゃ、先生失礼します」
「せっかくだし、階段上るだけだから、ボクも見送ろう」
「「えぇっ?……」」
友介は、素知らぬ顔で階段を上り始める。
そして、出発までの間、バイト先の場所や周囲の観光地などの話などを聞き出す始末だ。
「はあっ……」
美奈子は、せっかくのふたりの暫しのお別れの時間を邪魔されて、ため息をつくばかりだ。
ヂリヂリヂリ……出発の合図だ。
「いってらっしゃい ! 」
「バイト頑張れよ」
手を振るふたり。
アキラも車窓から手を振り返す。
(しっかし、なんでまた偶然浜田先生に会うかなぁ。
美奈子ちゃんの担任だし、無碍にできないし……
あれ ? なんか妙に二人が近くないか……気のせいかな……)
いつの間にか手を振る美奈子が前に出て、先生が重なって
後ろにいるように見える。
瞬間的に疑問に思ったものの、
列車はすぐに走り始めた。
(最後、美奈ちゃん、顔、真っ赤にして別れを惜しんでくれてる
みたいで可愛かったなぁ……
お正月、ホントに来てくれるかな。おじいちゃんと相談して
みると言ってたけど……
待てよ、おじいちゃんって……4葛城理事か。やっば ! )
(それにしても、昨日のデートは楽しかったなー。
Y浜のみなと近辺で、色々遊んだあとの観覧車でのキスは、狙い通り !
絶対女のコが好きなやつ。
美奈ちゃんも、喜んでくれた。
ホントは、その勢いで、ラブホに行きたくて近くまで行ったのに、
入ろうと言えなかった……
あれは、大反省ポイント !
もっと、堂々と誘わないと ! いや、堂々って変か……)
にやついたり、悩んだり、ひとり百面相を続ける自分に、ふと我に返って周りを見回すが、
当然誰も気にしない。
ともかく、アキラの頭の中は、恋人のことでいっぱいだ。
何せ、結局は恋人を送って行ったら、また部屋にあげてくれのだから……
(あれ、絶対美奈ちゃんも、ラブホを意識してたよな。
だから、気を使って部屋に上げてくれたのかな。
あー、自分がもっとイニシアチブ取らないとダメだー !!
まあ、だからこそI豆のホテルは強く誘ったわけだし……)
アキラの百面相は、乗り換えのO駅に着くまで続いた。
一方の見送り達は、列車が動き出すと、そのままの体制で
会話をはじめた。
「もう、どうして来てるのよ……」
「いやぁ、たまたまね」
「今日、まだ学校でしょ」
「昨日と今朝で仕事頑張って片づけて、早退したんだ」
「このために?……」
「そろそろ、その手も……」
「あっ、痛いなぁ ! せっかく可愛いお尻を愛でたのに」
「な、撫でるなんて生易しいものじゃ……」
「こんなのはダメ ?」
友介は、先ほど迄よりも深く、お尻の割れ目に沿って、更に
指先を秘所方向にさする。
「あちち~、いったいなぁ。そんなに本気で抓らなくても……」
ようやく、友介の手が抜け、
美奈子は、呆れたため息をつきながら、ホームを歩きはじめた。
「わたしがアキラくんにバレないよう。
おとなしくしていると思って……ここ駅よ」
「大丈夫、ボクのコートでカバーしてたから」
「そういう問題じゃないわ……
それじゃ、帰りますね……」
「いやいや、待ってよ。今日、行きたいところあると言ったでしょ」
「えっ、今から ?」
「まあ、もう会ったからいーじゃないか」
「それに、ミナも顔真っ赤にして、気分出てるでしょ ? 」
「あち、あちち、いたたた。今度は本気だった。
これは痛いゾ……」
顔を伏せていても雰囲気でわかるほどの美少女を、太った中年男が慌てて追いかける。
どうかすると、鉄道公安官を呼ばれそうな様相だ……
階段でようやく友介が追い付く。
「ク、クルマが駐車場にあるからさ、まずはそちらへ」
「じゃあ、先に行ってください。 ついて来ますから」
「へいへい、じゃあ、こちらへ……」
「ふーん。彼バイト忙しくないの ?」
「明日の昼で年内は終わりだって」
「へぇ ?」
「28日からは、I豆の温泉ホテルでアルバイト」
「泊まり込みか。頑張るね」
「だから、年内最後のデート、お願い」
「まあ、いいよ」
「ありがと」
翌日。
友介が、年内最後の職員会議を終え、牛丼を食べて
帰ろうとすると、また美奈子からLIMEに着信。
「明日アキラくんの見送りに行っていい?」
「その後に、先生のところに行くから」
「うーん……」
「お願い」
「お願い」
「明日の何時の電車?」
「12時」
「いいよ」
「ありがとう」
「その代わり、行きたいところがあるから付き合って」
「うん どこ?」
「お楽しみに」
「おや? 葛城くんと上条くん。お出かけかい ?」
H駅構内で、二人が別れを惜しんでいると、声をかけてくる人がいる。
「あっ、浜田先生、こんにちは !」
「っ!?……」
(ど、どーしてここにいるの !?)
「奇遇だね。ボクはちょうど出先から帰ってきたところさ」
「僕は、今からI豆のホテルでバイトに行くんです。
葛城さんは見送りに来てくれました」
「へぇ、そーなんだ」
友介は、白々しく相槌を打つ
「ホテルでバイトということは、年末年始泊まり込みかい ?
頑張るね」
「いゃあ、こうしてのんびりバイトできるのも、推薦いただけた
おかげです。学校には本当に感謝して……」
「上条くん、そろそろ電車来るよ。行かないと」
「おっと、そうだね。それじゃ、先生失礼します」
「せっかくだし、階段上るだけだから、ボクも見送ろう」
「「えぇっ?……」」
友介は、素知らぬ顔で階段を上り始める。
そして、出発までの間、バイト先の場所や周囲の観光地などの話などを聞き出す始末だ。
「はあっ……」
美奈子は、せっかくのふたりの暫しのお別れの時間を邪魔されて、ため息をつくばかりだ。
ヂリヂリヂリ……出発の合図だ。
「いってらっしゃい ! 」
「バイト頑張れよ」
手を振るふたり。
アキラも車窓から手を振り返す。
(しっかし、なんでまた偶然浜田先生に会うかなぁ。
美奈子ちゃんの担任だし、無碍にできないし……
あれ ? なんか妙に二人が近くないか……気のせいかな……)
いつの間にか手を振る美奈子が前に出て、先生が重なって
後ろにいるように見える。
瞬間的に疑問に思ったものの、
列車はすぐに走り始めた。
(最後、美奈ちゃん、顔、真っ赤にして別れを惜しんでくれてる
みたいで可愛かったなぁ……
お正月、ホントに来てくれるかな。おじいちゃんと相談して
みると言ってたけど……
待てよ、おじいちゃんって……4葛城理事か。やっば ! )
(それにしても、昨日のデートは楽しかったなー。
Y浜のみなと近辺で、色々遊んだあとの観覧車でのキスは、狙い通り !
絶対女のコが好きなやつ。
美奈ちゃんも、喜んでくれた。
ホントは、その勢いで、ラブホに行きたくて近くまで行ったのに、
入ろうと言えなかった……
あれは、大反省ポイント !
もっと、堂々と誘わないと ! いや、堂々って変か……)
にやついたり、悩んだり、ひとり百面相を続ける自分に、ふと我に返って周りを見回すが、
当然誰も気にしない。
ともかく、アキラの頭の中は、恋人のことでいっぱいだ。
何せ、結局は恋人を送って行ったら、また部屋にあげてくれのだから……
(あれ、絶対美奈ちゃんも、ラブホを意識してたよな。
だから、気を使って部屋に上げてくれたのかな。
あー、自分がもっとイニシアチブ取らないとダメだー !!
まあ、だからこそI豆のホテルは強く誘ったわけだし……)
アキラの百面相は、乗り換えのO駅に着くまで続いた。
一方の見送り達は、列車が動き出すと、そのままの体制で
会話をはじめた。
「もう、どうして来てるのよ……」
「いやぁ、たまたまね」
「今日、まだ学校でしょ」
「昨日と今朝で仕事頑張って片づけて、早退したんだ」
「このために?……」
「そろそろ、その手も……」
「あっ、痛いなぁ ! せっかく可愛いお尻を愛でたのに」
「な、撫でるなんて生易しいものじゃ……」
「こんなのはダメ ?」
友介は、先ほど迄よりも深く、お尻の割れ目に沿って、更に
指先を秘所方向にさする。
「あちち~、いったいなぁ。そんなに本気で抓らなくても……」
ようやく、友介の手が抜け、
美奈子は、呆れたため息をつきながら、ホームを歩きはじめた。
「わたしがアキラくんにバレないよう。
おとなしくしていると思って……ここ駅よ」
「大丈夫、ボクのコートでカバーしてたから」
「そういう問題じゃないわ……
それじゃ、帰りますね……」
「いやいや、待ってよ。今日、行きたいところあると言ったでしょ」
「えっ、今から ?」
「まあ、もう会ったからいーじゃないか」
「それに、ミナも顔真っ赤にして、気分出てるでしょ ? 」
「あち、あちち、いたたた。今度は本気だった。
これは痛いゾ……」
顔を伏せていても雰囲気でわかるほどの美少女を、太った中年男が慌てて追いかける。
どうかすると、鉄道公安官を呼ばれそうな様相だ……
階段でようやく友介が追い付く。
「ク、クルマが駐車場にあるからさ、まずはそちらへ」
「じゃあ、先に行ってください。 ついて来ますから」
「へいへい、じゃあ、こちらへ……」
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