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22.婚約者の変化
次の日、私はさっそくアンディ様と教会へ向かうことになった。
大聖女の証である銀色のドレスは綺麗だけど、落ち着かない。
リリーは美人だから似合っているのだが、非道な行いをしてきた私に相応しくないんじゃないかと思ってしまう。
「リリー様、ハークロウ様がいらっしゃいましたよ」
さきほどまで準備を手伝ってくれていたアネッタが、部屋に戻って来た。
「い、今行きます……」
私は昨日のことを思い出し、顔が熱くなった。
アンディ様は私の瞳にキスを何度もした後、何事もなかったかのように屋敷まで送ってくれた。
帰りの馬車の中で、私は誤魔化すように治療院での話をたくさんした。
何か喋っていないと変になりそうだった。
とめどもない私の話をアンディ様はただ静かに微笑んで聞いてくれていた――。
「坊ちゃん、お忙しいのはわかりますけど、リリー様を放っておいてはいけませんよ!」
「そうそう、私たち、坊ちゃんの奥様はリリー様以外考えられませんので、他の男に取られないでくださいませね!」
部屋を出て玄関ホールに下りると、ハークロウ家のメイドさんたちがアンディ様を囲み、問い詰めていた。
(わわ、嬉しいですけど、アンディ様は婚約破棄されたいのに!)
慌てて皆の所に駆け寄ると、アンディ様は破顔した。
「はは、リリーは随分とお前たちに懐かれているようだ! 俺よりもな」
声を出して笑うアンデイ様に、メイドさんたちが「わかっているんですか!?」と目くじらを立てる。
「わかっている。お前たちの忠告はありがたく胸に刻もう」
楽しそうに笑うアンディ様に、私の視線は釘付けになる。
(アンディ様は、この場を納めるため言ったにすぎません……)
同時に私の胸がきゅうと痛くなる。
「リリー」
私に気付いたアンディ様がその眼差しを柔らかいまま向けた。
痛かった胸がドキンと大きく音を立てる。
メイドさんたちが開けた私までの道を、早足で歩いて来る。
「……君のその姿を見るのは初めてではないのに、今日は一段と美しく感じる」
(メ、メイドさんたちの手前、そう言うしかないんですよね!?)
私の手を取りそんな甘い言葉を吐くアンデイ様は、今や目覚めたときとは別人すぎて、どうしていいかわからない。
「行こうか」
真っ赤になる私にくすりと笑うと、彼が手を差し出したので、自身の物を重ねる。
メイドさんたちからは黄色い声が飛び交っていて、私はいたたまれなかった。
アンデイ様の私に触れる手が、大切な物を扱うかのように優しくて、私はまた勘違いしそうになってしまう。
「行ってらっしゃいませ!」
今日は教会に行くため、アネッタとダンさんに治療院を任せた。……アンディ様と二人きりである。
皆に見送られながら、私たちは馬車に乗り込み出発した。
「きょ、教会ってどんな所なんでしょう? 貴族の治療院もすぐそばにあるんですよね?」
向かいに座るアンディ様と顔を合わせるのが恥ずかしい私は、またペラペラと話し出した。
「君はあの区域では地位も権力もある。ただ、昨日の君の話を聞く限り、油断はできない。君を刺した犯人も捕まっていないんだ。けして俺から離れないように」
「はい……!」
私は結局、昨日の馬車の帰り道でマークさんからの話をアンディ様にした。
私の話を疑わずしっかりと聞き、自身の聖騎士団についても調査すると言ってくれた。
私は誠実な彼に応えるように、しっかりと返事をした。
「……やっと目が合ったな」
するとアンディ様は目を細め、私の手を取った。
「あ、あの!?」
思わず目を逸らしてしまう。
「リリー」
アンディ様に取られた手を引き寄せられ、私は彼の膝の上へ座る形になった。
「ア、アンディ様……っ」
降りようとする私をアンディ様はがっちりと掴んで離さない。
「なんでこちらを見ないんだ」
「あ、あのっ……」
色気のある声が耳をくすぐり、何も考えられなくなってしまう。
「昨日、あんなことをしたから嫌われてしまっただろうか?」
「そ、そんなことないです!!」
しゅんとする彼の声に慌てて否定すると、間近で目が合う。
「あ……」
いっぱいいっぱいな私は視線を漂わせた。
顔が熱くなりすぎて、ゆでだこのようかもしれない。
「じゃあ、俺のこと、どう思っているんだ?」
「え――――」
アンディ様は一体、どうしてしまったんだろう。
甘い表情に、声、その発言に許容量を超えた私は瞳を潤ませて彼を見た。
「……リリー、そんな顔、俺意外に見せてはダメだぞ」
「えっ? えっ!?」
アンデイ様は私の肩に頭をぽすんと置いた。
どういうことかわからない私は、ますます挙動不審になる。
「はあ……君を惑わせていい気になってしまったようだ。普段惑わされっぱなしだからな」
「……悪女ということでしょうか?」
アンディ様の大きな溜息に不安になり、つい彼の騎士服をぎゅうと握りしめてしまった。
「ああ。君はとんでもない悪女だ」
そう言われても悲しくなかったのは、アンディ様の表情が何だか嬉しそうだったからだ。
見上げた彼の瞳は、まるで愛しい人を見るような優しさで満ちていた。
「だから俺の目の届く場所にいるように」
そう言うとアンディ様は、私の頬に口付けた。
大聖女の証である銀色のドレスは綺麗だけど、落ち着かない。
リリーは美人だから似合っているのだが、非道な行いをしてきた私に相応しくないんじゃないかと思ってしまう。
「リリー様、ハークロウ様がいらっしゃいましたよ」
さきほどまで準備を手伝ってくれていたアネッタが、部屋に戻って来た。
「い、今行きます……」
私は昨日のことを思い出し、顔が熱くなった。
アンディ様は私の瞳にキスを何度もした後、何事もなかったかのように屋敷まで送ってくれた。
帰りの馬車の中で、私は誤魔化すように治療院での話をたくさんした。
何か喋っていないと変になりそうだった。
とめどもない私の話をアンディ様はただ静かに微笑んで聞いてくれていた――。
「坊ちゃん、お忙しいのはわかりますけど、リリー様を放っておいてはいけませんよ!」
「そうそう、私たち、坊ちゃんの奥様はリリー様以外考えられませんので、他の男に取られないでくださいませね!」
部屋を出て玄関ホールに下りると、ハークロウ家のメイドさんたちがアンディ様を囲み、問い詰めていた。
(わわ、嬉しいですけど、アンディ様は婚約破棄されたいのに!)
慌てて皆の所に駆け寄ると、アンディ様は破顔した。
「はは、リリーは随分とお前たちに懐かれているようだ! 俺よりもな」
声を出して笑うアンデイ様に、メイドさんたちが「わかっているんですか!?」と目くじらを立てる。
「わかっている。お前たちの忠告はありがたく胸に刻もう」
楽しそうに笑うアンディ様に、私の視線は釘付けになる。
(アンディ様は、この場を納めるため言ったにすぎません……)
同時に私の胸がきゅうと痛くなる。
「リリー」
私に気付いたアンディ様がその眼差しを柔らかいまま向けた。
痛かった胸がドキンと大きく音を立てる。
メイドさんたちが開けた私までの道を、早足で歩いて来る。
「……君のその姿を見るのは初めてではないのに、今日は一段と美しく感じる」
(メ、メイドさんたちの手前、そう言うしかないんですよね!?)
私の手を取りそんな甘い言葉を吐くアンデイ様は、今や目覚めたときとは別人すぎて、どうしていいかわからない。
「行こうか」
真っ赤になる私にくすりと笑うと、彼が手を差し出したので、自身の物を重ねる。
メイドさんたちからは黄色い声が飛び交っていて、私はいたたまれなかった。
アンデイ様の私に触れる手が、大切な物を扱うかのように優しくて、私はまた勘違いしそうになってしまう。
「行ってらっしゃいませ!」
今日は教会に行くため、アネッタとダンさんに治療院を任せた。……アンディ様と二人きりである。
皆に見送られながら、私たちは馬車に乗り込み出発した。
「きょ、教会ってどんな所なんでしょう? 貴族の治療院もすぐそばにあるんですよね?」
向かいに座るアンディ様と顔を合わせるのが恥ずかしい私は、またペラペラと話し出した。
「君はあの区域では地位も権力もある。ただ、昨日の君の話を聞く限り、油断はできない。君を刺した犯人も捕まっていないんだ。けして俺から離れないように」
「はい……!」
私は結局、昨日の馬車の帰り道でマークさんからの話をアンディ様にした。
私の話を疑わずしっかりと聞き、自身の聖騎士団についても調査すると言ってくれた。
私は誠実な彼に応えるように、しっかりと返事をした。
「……やっと目が合ったな」
するとアンディ様は目を細め、私の手を取った。
「あ、あの!?」
思わず目を逸らしてしまう。
「リリー」
アンディ様に取られた手を引き寄せられ、私は彼の膝の上へ座る形になった。
「ア、アンディ様……っ」
降りようとする私をアンディ様はがっちりと掴んで離さない。
「なんでこちらを見ないんだ」
「あ、あのっ……」
色気のある声が耳をくすぐり、何も考えられなくなってしまう。
「昨日、あんなことをしたから嫌われてしまっただろうか?」
「そ、そんなことないです!!」
しゅんとする彼の声に慌てて否定すると、間近で目が合う。
「あ……」
いっぱいいっぱいな私は視線を漂わせた。
顔が熱くなりすぎて、ゆでだこのようかもしれない。
「じゃあ、俺のこと、どう思っているんだ?」
「え――――」
アンディ様は一体、どうしてしまったんだろう。
甘い表情に、声、その発言に許容量を超えた私は瞳を潤ませて彼を見た。
「……リリー、そんな顔、俺意外に見せてはダメだぞ」
「えっ? えっ!?」
アンデイ様は私の肩に頭をぽすんと置いた。
どういうことかわからない私は、ますます挙動不審になる。
「はあ……君を惑わせていい気になってしまったようだ。普段惑わされっぱなしだからな」
「……悪女ということでしょうか?」
アンディ様の大きな溜息に不安になり、つい彼の騎士服をぎゅうと握りしめてしまった。
「ああ。君はとんでもない悪女だ」
そう言われても悲しくなかったのは、アンディ様の表情が何だか嬉しそうだったからだ。
見上げた彼の瞳は、まるで愛しい人を見るような優しさで満ちていた。
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