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ソラマメくん
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僕は、空豆太なんて嫌だったんだ。
どうしてこんな名前にしたのか前に聞いたことがある。
そうしたらお母さんたら、こういうんだ。
「お父さんの名前が、空美太でしょ。そら、みた。なんてソラミタコトカってよくからかわれていたらしいの」
そうだろうね。友達がそういう名前だったら僕もそういうと思う。
だから、どうせからかわれるなら、ソラマメの方がまだいいんじゃないか。豆は良くまめまめしくってお正月にも出されるほど縁起がいい食べ物だし、健康にいいからってつけたらしい。
「ふざけるなー」って僕は、その時につい小さく叫んでしまった。
「あら、名前嫌い?」お母さんが聞いた。
「そんなことはないけどさ」
「好きじゃないのね」
「うん」
僕がうなずくと、お母さんは悲しそうに眼を閉じた。
「豆ちゃんっていいやすいし、親しみがわいていい名前だと思ったんだけど」
「僕がおじいちゃんになったとき、豆爺さんだよ?」
「かわいいじゃない」
お母さんがクスッと笑った。
「豆太はどんな名前がよかったんだ」
お父さんも話に入ってきた。
「今どきのキラキラネームとか、それとか慎太郎とか淳一郎とか太郎とかきっぱりした名前がよかったよ」
「そうか……」
お父さんも悲しそうに眼を閉じた。
「でもな、ソラマメっていうのは皮が厚いわりに豆はちょっとしか入ってなかったりするだろ」
「そうなの?」
僕は、そんな話興味がなかった。
第一お父さんの話は理屈っぽいんだ。
その時、野菜室の扉がそっと開いた。
ソラマメが野菜室から出てきた。
「やあ、空家のみなさん」
「ああ、ソラマメくん」
お父さんが普通に挨拶をした。
「あらあ、ソラマメちゃん。久しぶりね」
お母さんもニコニコしている。
僕はただただ唖然としていた。
「豆太くん。自分の名前がいやなの?」
「そうらしいの。最近、お年頃なのか自分の名前が変だって言い始めちゃって」
「豆太くん。僕の皮をむいてみて」
僕は、ソラマメの言う通り皮をむいた。
ソラマメの皮はふかふかで羽毛布団みたいだった。
「僕の皮の中には豆が二つくらい、中には一つも入っていないこともある」
あまり料理をしないから知らなかった。
「ソラマメの豆っていうのは、奇跡に近いんだよ」
「そうそう」
お父さんとお母さんが大きくうなずいている。
「お父さんとお母さんが出会ったのもソラマメの豆が三つ入っているときのように奇跡的だ」
そうかな、と僕はうなった。
「豆太くんは、皮の中に入っているソラマメと同じくらい奇跡的に産まれてきたんだよ」
「豆太が産まれて、家で名前を考えていた時もソラマメくんがそう言ってくれたんだよ」
「ソラマメくんがあなたの名付け親なのよ」
「それほどでもないけど……」
ソラマメが照れている。
小さいころの光景。
ソラマメくんは、大きくなった僕のところにはやってこない。
いや、出る機会をうかがっているのかもしれないな。
どうしてこんな名前にしたのか前に聞いたことがある。
そうしたらお母さんたら、こういうんだ。
「お父さんの名前が、空美太でしょ。そら、みた。なんてソラミタコトカってよくからかわれていたらしいの」
そうだろうね。友達がそういう名前だったら僕もそういうと思う。
だから、どうせからかわれるなら、ソラマメの方がまだいいんじゃないか。豆は良くまめまめしくってお正月にも出されるほど縁起がいい食べ物だし、健康にいいからってつけたらしい。
「ふざけるなー」って僕は、その時につい小さく叫んでしまった。
「あら、名前嫌い?」お母さんが聞いた。
「そんなことはないけどさ」
「好きじゃないのね」
「うん」
僕がうなずくと、お母さんは悲しそうに眼を閉じた。
「豆ちゃんっていいやすいし、親しみがわいていい名前だと思ったんだけど」
「僕がおじいちゃんになったとき、豆爺さんだよ?」
「かわいいじゃない」
お母さんがクスッと笑った。
「豆太はどんな名前がよかったんだ」
お父さんも話に入ってきた。
「今どきのキラキラネームとか、それとか慎太郎とか淳一郎とか太郎とかきっぱりした名前がよかったよ」
「そうか……」
お父さんも悲しそうに眼を閉じた。
「でもな、ソラマメっていうのは皮が厚いわりに豆はちょっとしか入ってなかったりするだろ」
「そうなの?」
僕は、そんな話興味がなかった。
第一お父さんの話は理屈っぽいんだ。
その時、野菜室の扉がそっと開いた。
ソラマメが野菜室から出てきた。
「やあ、空家のみなさん」
「ああ、ソラマメくん」
お父さんが普通に挨拶をした。
「あらあ、ソラマメちゃん。久しぶりね」
お母さんもニコニコしている。
僕はただただ唖然としていた。
「豆太くん。自分の名前がいやなの?」
「そうらしいの。最近、お年頃なのか自分の名前が変だって言い始めちゃって」
「豆太くん。僕の皮をむいてみて」
僕は、ソラマメの言う通り皮をむいた。
ソラマメの皮はふかふかで羽毛布団みたいだった。
「僕の皮の中には豆が二つくらい、中には一つも入っていないこともある」
あまり料理をしないから知らなかった。
「ソラマメの豆っていうのは、奇跡に近いんだよ」
「そうそう」
お父さんとお母さんが大きくうなずいている。
「お父さんとお母さんが出会ったのもソラマメの豆が三つ入っているときのように奇跡的だ」
そうかな、と僕はうなった。
「豆太くんは、皮の中に入っているソラマメと同じくらい奇跡的に産まれてきたんだよ」
「豆太が産まれて、家で名前を考えていた時もソラマメくんがそう言ってくれたんだよ」
「ソラマメくんがあなたの名付け親なのよ」
「それほどでもないけど……」
ソラマメが照れている。
小さいころの光景。
ソラマメくんは、大きくなった僕のところにはやってこない。
いや、出る機会をうかがっているのかもしれないな。
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