聖女の取り巻きな婚約者を放置していたら結婚後に溺愛されました。

しぎ

文字の大きさ
39 / 53
番外

愉悦

しおりを挟む
「…レーブ様」
「…シャガート…」

「カル」
「…どうしてここに、ブラーナ」

「ベンネル、誰この人たち?」
私がこっそり小声で聞くと、2人の婚約者だと教えてくれた。
みんなが私に優しくなってそう日が立たないある日、王宮にレーブとカルの婚約者がやってきた。
2人ともタイプの違う美人だ。
薄い銀髪に濃い緑の瞳のおっとりした感じの美人さんがレーブの婚約者のシャガートさん。
短い金髪に紫の瞳のかっこいい感じの美人がカルの婚約者のブラーナさん。
シャガートさんは悲しそうに、ブラーナさんは怒ったように婚約者を見つめてる。顔を歪めてても絵になるってすごいね。
「…アイリス様が、王宮に来るようにと、何か試したいことがあるからと」
レーブから目を離さずにシャガートさんが言う。
試したいことってなんだろう。アイリスさんがってことは私、聖女関連?2人の婚約者が私に関連することって?
「…アイリス様がここにいないのなら、私たちはここで失礼させてもらうことにします。行こう、シャガート」
ブラーナさんがシャガートさんを促して出て行こうとする。
そのブラーナさんの腕をカルが掴んだ。
「…まってくれ」
「…なにか言いたいことでも?」
ブラーナさんに睨まれてちょっとだけ気まずそうな顔をするカル。
「…後で、話を」
その瞬間、外がピカッと眩しく光って思わず飛び上がる。
雷だ。すんごい突然。続いて雨も降り出した。ここ数日降らなかったのに。
外を呆然と見ていたカルは何故か私のことを一瞬ちらっと見て、ブラーナさんの腕を掴んでいた手を離した。
「…またいつか」
カルがブラーナさんから離れて私の方に近づいてくる。
「…学園で会おう」
レーブもシャガートさんに一言だけ残して私の方に来る。
「…勉強を続けようか」
「…それかお茶にするか」
レーブとカルを見つめていた婚約者さんたちは我に返ったように静かに礼をして去って行った。
…去り際のあの視線。私のことを悲しげな嫉妬で、怒りに隠れた羨みで見つめる瞳たち。
なんだろうこれ。私は何がこんなに嬉しくて楽しいんだろう。分かんないのになんだか気持ちいい。俯いた私を心配したのかベンネルに肩を抱かれる。私がベンネルたちに囲まれている中、ブレイグはただぼんやりとした視線で周囲を見回しているだけだった。
雨もすっかり止んでいた。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~

サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

(完結)お荷物聖女と言われ追放されましたが、真のお荷物は追放した王太子達だったようです

しまうま弁当
恋愛
伯爵令嬢のアニア・パルシスは婚約者であるバイル王太子に突然婚約破棄を宣言されてしまうのでした。 さらにはアニアの心の拠り所である、聖女の地位まで奪われてしまうのでした。 訳が分からないアニアはバイルに婚約破棄の理由を尋ねましたが、ひどい言葉を浴びせつけられるのでした。 「アニア!お前が聖女だから仕方なく婚約してただけだ。そうでなけりゃ誰がお前みたいな年増女と婚約なんかするか!!」と。 アニアの弁明を一切聞かずに、バイル王太子はアニアをお荷物聖女と決めつけて婚約破棄と追放をさっさと決めてしまうのでした。 挙句の果てにリゼラとのイチャイチャぶりをアニアに見せつけるのでした。 アニアは妹のリゼラに助けを求めましたが、リゼラからはとんでもない言葉が返ってきたのでした。 リゼラこそがアニアの追放を企てた首謀者だったのでした。 アニアはリゼラの自分への悪意を目の当たりにして愕然しますが、リゼラは大喜びでアニアの追放を見送るのでした。 信じていた人達に裏切られたアニアは、絶望して当てもなく宿屋生活を始めるのでした。 そんな時運命を変える人物に再会するのでした。 それはかつて同じクラスで一緒に学んでいた学友のクライン・ユーゲントでした。 一方のバイル王太子達はアニアの追放を喜んでいましたが、すぐにアニアがどれほどの貢献をしていたかを目の当たりにして自分達こそがお荷物であることを思い知らされるのでした。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 全25話執筆済み 完結しました

氷の公爵は、捨てられた私を離さない

空月そらら
恋愛
「魔力がないから不要だ」――長年尽くした王太子にそう告げられ、侯爵令嬢アリアは理不尽に婚約破棄された。 すべてを失い、社交界からも追放同然となった彼女を拾ったのは、「氷の公爵」と畏れられる辺境伯レオルド。 彼は戦の呪いに蝕まれ、常に激痛に苦しんでいたが、偶然触れたアリアにだけ痛みが和らぐことに気づく。 アリアには魔力とは違う、稀有な『浄化の力』が秘められていたのだ。 「君の力が、私には必要だ」 冷徹なはずの公爵は、アリアの価値を見抜き、傍に置くことを決める。 彼の元で力を発揮し、呪いを癒やしていくアリア。 レオルドはいつしか彼女に深く執着し、不器用に溺愛し始める。「お前を誰にも渡さない」と。 一方、アリアを捨てた王太子は聖女に振り回され、国を傾かせ、初めて自分が手放したものの大きさに気づき始める。 「アリア、戻ってきてくれ!」と見苦しく縋る元婚約者に、アリアは毅然と告げる。「もう遅いのです」と。 これは、捨てられた令嬢が、冷徹な公爵の唯一無二の存在となり、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転溺愛ストーリー。

処理中です...