最強勇者の最弱物語

暗黒魔界大帝国王リク@UNKnown_P

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第一章~魔王討伐編~

7.決戦

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 魔王城に来て、俺が出会ったものは理不尽だったんだ。
奴はゲームだとか言っているがこんなのはゲームでも何でもない。俺の選択次第で誰かが死んでしまう。
スフィカはパーティーを助けてあげて。と言っているが、俺の数少ない女友達のので、見殺しにするなんて絶対できない!クソ!!

 「どっちも助ける方法はねえのかよ!!」
気づいたら俺は、怒りと憎しみでぶっ壊れそうな自分の心を何とか取り押さえながら叫んでいた。
―さすが人間
「何がだ!!」
―欲がたっぷりありますねえ
「くっ!!」
―ならば、余を殺してみて下さい。そしたら全員助かることができますよ
静かなその声は俺の折れかけた精神に一筋の光を与えた。

 「本当なんだよな!!」
―まさしく。このたんぱく質と無機質の塊たちは余の出した毒入りのお茶で死んじゃったよ。さっきこれらが飲んでいたお茶に含まれている毒はもはや呪いといっても過言ではないのです。余が消滅する時、再びこの大地を踏むことが可能となるでしょう
魔王はうつ伏せになって倒れているヴァニラの左手を握りながら俺に向ってそういったのだ。

 「おい!その子に触るな!!」
紙を握るヴァニラはかわいらしいものなのだが、魔王の手を握るヴァニラはかわいくない。
―嗚呼。このメス猫か。ところで、貴様は気づいていないのか...?
「何をだよ!!!」

―貴様もあのお茶を飲んだということを。

 「そ、そうか。」
思い出してみれば、そうだった気がする。この部屋に入る前、みんなで一気飲みしたことを俺は思い出した。
「ウっ。腹が痛い。」

―作戦通り、始めよう。戦いを
そういうと魔王は、左手に握っていたスフィカを放り投げ、腹の痛い俺に二十センチメートルほどの短い魔法の杖を突き付けてきた。
 「てめえを倒し!みんなも!!世界も救う!!!」

 実は、さっきまでフラニック・オブ・クライネスは初期装備用の剣の鞘にしまっておいておいたのだが、戦いが始まったということで、初期装備用の剣の鞘から取り出して、握った。首の紋章は相変わらず紫に光り、腹の痛みは少なくなってきた。

―来なさい
魔王からの合図があったので、俺はフラニック・オブ・クライネスを横に向け「うおおおおおおおおおおおおおお」と声を荒げながら魔王の心臓めがけて走り出した。

 (グサッ)

 俺が魔王の心臓に向けて刺した勝利のつるぎは見事に命中した。
「どうだ!魔王よ!!」
―......
「何も言わないのか?」
魔王は動かなくなった。まるでこの城を造り出しているレンガの一つになったかのようだ。死んだのか?
「おーい!」

 (グサッ)

「ぐわっ!?」
俺の右胸から包丁の先端が飛び出している。赤色の液体が俺の目の前を横切った。時がやけにゆっくり進んでいる気がする。なぜか痛みは感じない。そうか、フラニック・オブ・クライネスのおかげか。そして、目の前には、魔王の死体が転がっている。

 刺された。魔王ではない別の何かに...。
「勇者くん。死んで。」
「!?」
突然の出来事に混乱しながら振り向けば、そこに立っているのはスフィカだった。
「戦わないでって言ったよね?」
笑顔をこっちに向けてくるスフィカ。だが、声のトーンは低く、俺に恐怖という二文字を覚えさせた。

 「ス、スフィカ!?ご、ごめん。だけど、お前を助けるためにやったんだぞ!!切れると恐ろしい子だとは思っていたけど.....暴力をふるってくる子だとは思わなかった。見損なったぞ。」
そう、スフィカが俺に呆れ叱ってばかりだったのは事実だ。しかし、暴力お振るわれたことは長い付き合いの中でまだ一回もない。

 「...じゃあ、これが初めての...いや、最初で最後のボウリョクダネ...。」

「は!?」
「さすがのあなたでも、心臓をさされたら死ぬよね?」
スフィカはそう言うと、俺の右胸に刺さっている包丁を抜き、再度包丁を構えた。

 「ハハ...。最後か。どうぞ、刺していいよ。」
俺が最後の言葉を言い残すと、彼女は包丁を振り下ろした。


 (グサッ)(グサッ)





......。俺は死んでいなかった。


刺さった。


包丁は確かに刺さった。

...スフィカの心臓に。そして、静かな時が再び流れる。
「に、二回目だね...こんなに静かなのって...。」
彼女が包丁を地面に落としてそういった。
「...え?ス、スフィカ...!?」

 「あのね、私、魔王が死ぬ直前に魔法をかけられていたの。実はさっきまで意識が半分とりつかれていたいみたいで...。」
片方の目をぴくぴくさせながらそう言うスフィカ。
「もしかしたら、俺を殺させる魔法か?」
「そう、勇者君を殺さないと永遠に闇の世界へと閉じ込められるっていう魔法...。」
「は、は?俺を殺せばよかっただろ?そうしないと君は闇の世界とかいうところに閉じ込められるんだろ...?」

「あのね。勇者君は私を二回も助けてくれたのに。私...ゴホッ!!...私は一回...も助けることができていなかったから...。」
スフィカが吐血しながら『僕』に向かってそう語る。
この子の前では『僕』って一人称だったな。

 「し、死ぬな!!刺したのは許すから!!むしろ刺せ!!」
スフィカ...が両目をつぶり、俺の目の前で倒れこんでしまった。
「う、嘘だろ!?起きろ!!スフィカ!!」

 「スフィカ...。お前は本当に方向音痴だよ!!お前のいくところは間違っている!!おい!!」

聞こえていないのは分かっている...。

 スフィカの体に一滴の水滴が落ちた。ちなみに俺の目から出た汗なんだがな...。
「運動...したからな。汗が出ちゃったよ。スフィカ。体は痛くないけど心が痛いよ。」
俺は、いや。僕は横倒れになったスフィカに寝そべった。
 「今までほんとにありがとう。」
俺がそういった後、スフィカが少しだけ笑顔になったのは気のせいだったのかもしれない。
 その様子を柱から見守る三人がいることを俺はすっかり忘れていた。
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