きっと私は悪役令嬢

麻生空

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さて、国王夫妻の次は王太子夫妻にご挨拶である。

良く見るとあちらは二人を中心に複数の方達と談笑中らしい。

ルドルフ様はそんな中を私の右手を掴んでグイグイと進む。 
先程から無言のルドルフ様は異様な殺気すら感じるレベルで人垣を割って歩いていた。

「あら。エリス~こちらよ」

カナリア様が私に気付いて此方へ手を振り上げた。

えっと……一応私の前を貴女様の弟が歩いていますよね。

普通に考えれば「ルドルフ~」とか弟を呼んでも良いのでは?

カナリア様の声に王太子夫妻を囲んでいた他の貴族も私達に気付き、更に人垣が割れた。
なにこれ?
映画のワンシーン?

故意的に作られた道をズカズカと進むや、その中心部まで来るとルドルフ様は私を隣に寄せて恭しく臣下の礼を取った。
私もルドルフ様に習うように淑女らしく礼を取る。

「ご無沙汰しております、カイザル殿下」
ルドルフ様は恭しく頭を下げながら開口一番に王太子殿下へと挨拶をした。

「ふむ。息災のようで何よりだよルドルフ」

王太子カイザル殿下はそう言うとルドルフ様に右で差し出し熱く握手をした。

間近で見るとアレンデル殿下に似ていて、きっとアレンデル殿下が大人になったらこんな感じと言うのを体現したような美丈夫である。

「そちらの者はルドルフの婚約者かな?」

カイザル殿下はチラリと私の方を見て問い掛けた。

勿論私が返答する訳にもいかず、代わりにルドルフ様が私を紹介する。

「はい。僕の婚約者のエリス・リトラーです」

ルドルフ様の言葉にカイザル殿下が「エドワードの妹か」と呟いた。

えっ……カイザル殿下はお兄様をご存知?

ヤバい。

どうしよう。

「エリス。私の前での発言を許す、顔を上げよ」

「はい。殿下」

カイザル殿下の声に私は淑女の礼を解き前を見た。

「これは、えらく別嬪な婚約者だなルドルフ。まぁ、エドワードも綺麗な容姿だが……あっいや、それはまた別の機会に話そう。今日は祝いの席だからな」

カイザル殿下はそう言うとニコニコと笑う。

「ええ、そうですわ。それに、この後わたくしエリスとお約束をしておりますので少し席を外させて頂きますわね」

カナリア様はカイザル殿下に微笑みながらそう言うと

「ああ、先程の話か。楽しみにしているよ。行っておいで」

と、速攻OKが出る。

勿論、この後にカナリア様にはエドになる話をしているから、カイザル殿下もその事を知っているのだろう。

では、何処までの人がそれを知っているのか?

さてさて、ミランダさん。
守秘義務はどうなっているんでしょうか。
事と次第によっては更なるお仕置きが必要ですよね。
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