きっと私は悪役令嬢

麻生空

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「これから二人で大事な話しがあるんだ。話が終わったら呼ぶからそれまで下がってて」

ニコリと微笑まれるアレンデル殿下。

大事な話とはなんぞや?

あれ?
そう言えば私寝惚けていたとは言え、普通にエドに男装してもアレンデル殿下は驚く事もなかったような……。

まさか、既に気付いている?

もしくは、カナリア様から聞いている?

とか?
どっちだろう?
けど、エリスがエドだという事を知っているのは事実で……。

サッと顔の血が引いて行くのを感じてしまい、まざまざと昨夜のアレンデル殿下の様子が頭を横切った。

その瞬間、昨夜アレンデル殿下にキスされた事を思い出して引いた血の気が一瞬で顔に戻ってしまう。

「あぁぁぁ……」

思わず左手で唇を押さえて言葉にならない言葉を紡ぐ私。
その様子を見ていたアレンデル殿下が楽しそうに微笑まれた。

「昨夜の事を思い出したんだね。エドは本当に初々しい。ごめんね、君の初めてを奪ってしまって」

そう言ってアレンデル殿下は私の右手をそっと自身の方へと引き寄せると「チュッ」と音を立てて口付けした。

『ボン』
と、一瞬で意識が現実逃避する。

「おっと危ない」

アレンデル殿下の焦ったような声と同時に私を支えてくれる身体の温もり。

何処か安心出来るような優しい香り。

一拍置いてパタパタと走り去る足音と

「「失礼致しました」」

とハモる男女の声。

『バタン』という扉が閉まる音がやたらと大きく聞こえてしまった。

すると「ククククク」と笑う声が聞こえて来る。

目を開けるとやたらと近い距離にアレンデル殿下の顔があり「ひぇ~」と令嬢にあるまじき声を発してしまった。

「ででででで……殿下」

ジタバタとする私の背中をポンポンと優しく軽く叩くアレンデル殿下。
まるで赤子をあやすようなその仕草に不思議と気持ちが落ち着く。

「少しは落ち着いた?エドはルドルフから聞いていたよりも面白い人なんだね」

クスクスと笑うアレンデル殿下。

「何故そこでルドルフ様なのですか?」

正直ルドルフ様は良く分からない。

ある意味理解の範疇はんちゅうを越えると言うか、ウザイと言うか。

「一応君の婚約者なのだろう?」

そう言ってアレンデル殿下は私を解放してくれた。

「先ずは食事をしようか」

そう言って自身が座っていた椅子を引くと「どうぞ座って下さいレディ」と私を促す。

「あっ……ありがとうございます」

軽く会釈してアレンデル殿下が引いた椅子に座った。

流石に王子にそこまでして貰って断る勇気もないし。
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